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『進化倫理学入門』(Scott James[著] 児玉聡[訳] 名古屋大学出版会 2018//2010)

原題:An Introduction to Evolutionary Ethics (Wiley-Blackwell)
著者:Scott M. James 価値論、道徳心理学。進化論の哲学。
訳者:児玉 聡[こだま・さとし](1974-) 倫理学
装丁:耳塚 有里[みみづか・あり](1974-) デザイン。
カヴァー図版:Paul Vozdic / Man in Rock Hall


進化倫理学入門 « 名古屋大学出版会


【目次】
目次 [i-vii]
凡例 [viii]


序文 哲学者と生物学者がバーに入っていくと…… 001


第I部 「利己的な遺伝子」 から道徳的な存在へ――ダーウィン以後の道徳心理学 009

第1章 自然選択と人間本性 015
  1 基本的な説明 016
  2 いくつかのよくある誤解 020
  3 修繕屋としての母なる自然 022
  4 進化心理学と人間の本性 025
  5 進化した心の道具箱 027
  6 (さらに) いくつかのよくある誤解 030
  7 本章のまとめ 038
  文献案内 039


第2章 正しさの (最も初期の) 起源 041
  1 団結すれば頑張れる? 043
  2 包括適応度と 「遺伝子目線」 の観点 045
  3 汝の隣人を愛せ――しかし汝の家族を真っ先に愛せ 050
  4 偽陽性とコアシステム 053
  5 「利他性」 についての手短な注意 056
  6 互恵的利他性 057
  7 本章のまとめ 065
  文献案内 066


第3章 穴居人の良心――人間の道徳の進化 068
  1 道徳的生物はどういう意味で道徳的なのか 070
  2 道徳性の進化 081
  3 道徳判断の本質を説明する 089
  4 本章のまとめ 092
  文献案内 093


第4章 公正な報い 094
  1 最後通牒ゲーム 096
  2 公共財ゲーム 099
  3 勝者は罰しない 102
  4 罪 (の意識) の利点 106
  5 ライオンに囲まれた子羊か? 110
  6 道徳全体の説明になっているか? 113
  7 普遍道徳か普遍理性か? 116
  8 本章のまとめ 121
  文献案内 122


第5章 美徳と悪徳の科学 123
  1 苦悩テスト 126
  2 心を読む 134
  3 「ならぬものはならぬ」 138
  4 道徳の生得性と言語との類比 141
  5 配電盤、バイアス、情動共鳴 149
  6 非生得主義者の疑念 157
  7 本章のまとめ 159
  文献案内 162


第II部 「何であるか」 から 「何であるべきか」 へ――ダーウィン以降の道徳哲学 163

第6章 社会的調和――善と悪、および生物学的な醜さ 169
  1 存在の大いなる連鎖から生命の樹、道徳性まで 169
  2 生命の樹を引っこ抜く 175
  文献案内 181


第7章 ヒュームの法則 182
  1 演繹的に妥当な論証 184
  2 入れていないものを取り出すことはできない 189
  3 「決定的な重要性」 191
  4 力から正義への移行を阻止すること 192
  5 ダーウィン主義と、人類を保存すること 195
  6 本章のまとめ 197
  文献案内 198


第8章 ムーアの自然主義的誤謬 199
  1 未決問題テスト 200
  2 未決問題テストに落第する――欲求することを欲求すること 202
  3 未決問題テストに落第する――スペンサー 204
  4 未決問題テストに落第する――ウィルソン 206
  5 本章のまとめ 207
  文献案内 208


第9章 ムーアとヒュームを再考する 209
  1 未決問題テストに関するいくつかの予備的な疑念 210
  2 事物が何を意味するか 対 事物が何であるか 212
  3 社会ダーウィン主義に対する含意 214
  4 「である」 と 「べし」 の隔たりに対する挑戦―― サール 215
  5 「である」 と 「べし」 の隔たりに対する挑戦―― レイチェルズ 218
  6 本章のまとめ 223
  文献案内 224


第10章 進化論的反実在論――初期の試み 225
  1 神の住まう脳 232
  2 準備事項 234
  3 E・O・ウィルソン 236
  4 特異性論法 239
  5 重複論法 241
  6 因果関係、正当化、そして……腐った死体 244
  7 本章のまとめ 248
  文献案内 249


第11章 最近の進化論的反実在論 251
  1 ナポレオンの錠剤 252
  2 ダーウィン主義のジレンマ 256
  3 本章のまとめ 261
  文献案内 262


第12章 進化論的実在論者が取りうる選択肢 263
  1 選択肢1 ――正・不正の学習 266
  2 選択肢2 ――反応依存性 268
  3 選択肢3 ――自然化された徳倫理学 273
  4 選択肢4 ――道徳的構成主義 281
  5 実在主義者の選択肢に対する批判 288
  6 本章のまとめ 294
  文献案内 296


訳者解説(二〇一七年一一月 児玉 聡) [297-306]
注 [13-19]
引用文献 [6-12]
索引 [1-5]




【抜き書き】
□p. 1

序文 哲学者と生物学者がバーに入っていくと……


  一九七五年、ハーバード大学の昆虫学者であり社会生物学の父であるE・O・ウィルソンは、よく知られているようにこう述べた。「科学者と人文学者は、倫理が哲学者の手を離れて生物学化されるべき時がやってきたという可能性について、共に考えるべきである」(Wilson 1975:520)。哲学者たちは、明らかに、〔倫理を解明することに関して〕彼らなりの試みを行なってきた――しかし、彼らの努力に反して大した結果を残さなかった。今や生物学者たちは、人間進化に関する包括的な知識を携えて、最も人間らしい特徴である正と不正の感覚を説明する準備ができている。しかし、熱狂のあまり、ウィルソンと彼の支持者たちは、「生物学化(biologicization)」とは正確には何を意味するのかを明確にしなかった。というのも、ウィルソンの提案が残した印象とは裏腹に、生物学は道徳理論において、異論のないものから重大な論争になるものまで、様々な役割を果たすことができるし、また果たしてきたということが(誰あろう、哲学者たちによって)直ちに指摘されたからである。
  このことが意味するのは、何よりもまず、真の問題は「生物学は道徳の説明において何らかの役割を果たすだろうか」ではないということだ(明らかに、それは何らかの役割は果たしている)。真の問題はこうである。「生物学は道徳の説明においてどのような種類の役割を果たすだろうか」。言い換えるなら、人間進化の物語は、我々の道徳的な生――すなわち、我々の道徳判断、道徳的感情、道徳的な区別、不正を避けようとする傾向、自己犠牲の称賛、不正をなした者に対する敵意など――に関する我々の考え方に対して、何らかの影響を及ぼすべきなのだろうか。この問題こそが、大ざっぱに言えば、進化倫理学と我々が考えるものの核心にある。