著者:仲正 昌樹[なかまさ・まさき] (1963-) 政治思想史、社会思想史、社会哲学。
NDC:321.1 法哲学。
※2020年に新装版が刊行。
いまこそロールズに学べ - 春秋社 ―考える愉しさを、いつまでも
【目次】
目次 [003-009]
序論 「正義」と〈Justice〉――似て非なるもの 013
正義をめぐる勘違い
「正義」と〈Justice〉、その違い
「正義論」はなにをめざすのか
ロールズ『正義論』のインパクト
本書の構成
第1章 なぜ「正義」を問題にしたのか 025
1 メタ倫理学からはなれて 026
メタ倫理学とはなにか
「善」から「正義」へ
正義の原理の探求へ
2 功利主義の検討 032
功利主義の歴史
功利主義へのスタンス
功利主義の二つのルール観
3 「公正としての正義」とは 042
正義の二つの原理
正義が受け入れられる根拠とは
功利主義との対決へ
4 なにが「公正としての正義」を支えるのか 051
人格に備わった「正義感覚」
カントを発展させて
「憲法的自由」による平等
「平等な自由」がもたらすもの
5 分配的正義をめぐって 062
ロールズの経済観
格差原理の導入
政府の役割
改良を重ねて
6 市民的不服従をめぐって 073
公民権運動の盛りあがりを受けて
「無知のヴェール」の導入
立憲民主制における「市民不服従」とは
「市民的不服従」の三条件
第2章 自由と平等の両立をめざして――「正義論」の世界 083
1 『正義論』はなにをめざしたのか 084
思想史的な位置づけ
功利主義との決別
2 はじまりとしての「原初状態」 088
社会契約論を発展させて
原初状態という仮説
「無知のヴェール」の役割
3 「正義論」の仮想敵 096
「目的論」との対決――仮想敵(1)
「直観主義」との対決――仮想敵(2)
4 あらためて正義の二原理とは 105
「正義の原理」の定式化
正義の原理が採用される根拠
「マクシミン・ルール」の採用
5 「反省的均衡」とはなにか 114
修正を重ねることによって
暫定的な正義の条件として
「平均効用原理」との対決
6 正義の制度化をめぐって 122
四段階のプロセス
「政治的自由の価値」の重要性
市場を前提にした「分配的正義」
世代間の格差をめぐって
正義の原理の再定式化
7 制度における個人の役割 134
個人の「義務」と「責務」
制度を補正する手段としての「市民的不服従」
8 「正義」と「善」の関係をめぐって 141
二つの善理論
アリストテレス的原理と自尊
道徳的学習について
第3章 ロールズの変容――『正義論』への批判をうけて 147
1 マクシミン原理をめぐって 148
功利主義からの批判
アローからの批判
ハーサニからの批判
ロールズの返答――マクシミン基準の擁護
「自由で平等な人格」をもった市民による選択
2 リバタリアンの攻勢 160
ノージックからの批判
分配的正義の“恣意性”をめぐって
ロールズの返答――「基礎構造」の問題
3 「自由の優先」は自明か 170
ハートからの批判
ロールズが想定する「人間像」への懐疑
ロールズの返答(1)――二つの道徳的な力
ロールズの返答(2)――正義に適った基礎構造
4 ロールズのカント主義的転回 184
「カント的」とは
「道理的なもの」による「合理的なもの」の制約/手段としての「基本財」
5 「形而上学」から「政治」へ 194
普遍主義との決別
キャラとしての「契約当事者」
「重なり合う合意」をめざして
“政治的転回”をなぜしたのか
第4章 「正義」の射程はどこまでか――「政治的リベラリズム」の戦略 203
1 『政治的リベラリズム』の狙い 204
制度的実践をともなう思想として
非自由主義的思想といかに折り合うか
2 偏りのない政治的構想をめざして 209
あまねく受け入れられる理念として
立憲民主制における「市民」の条件とは
なにが「寛容さ」を可能にするのか
形而上学的前提からはなれて
3 安定した合意をめざして 221
「重なり合う合意」の戦略
善への対処
ガイドラインとしての「公共的理性」
制度的保証としての「最高裁判所」
4 ハーバマスとの対話 234
アメリカとドイツ、二つの戦後
二人の差異をめぐって
5 グローバルな正義をめざして 243
「政治的リベラリズム」から「万民の法」へ
原初状態の二段階化
共存できる非リベラルな民衆の条件とは
グローバルな意思決定のあり方
「無法国家」との対時
終章 「正義」のゆくえ――ロールズが切り開いた地平から 259
“第三の道”としてのリベラリズム
論争をつうじて
「リベラリズム」の未来
注 [271-303]
ロールズを中心とする思想地図 [304-305]
関連年表 [306-313]
あとがき(二〇一三年三月 金沢大学角間キャンパスにて 仲正昌樹) [314-318]