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『平成史【増補新版】』(小熊英二[編] 河出書房新社 2014//2012)

編者:小熊 英二 社会学
著者:井手 英策 財政学。
著者:貴戸 理恵 教育社会学
著者:菅原 琢  政治学
著者:中澤 秀雄 地域社会学
著者:仁平 典宏 社会学
著者:濱野 智史 社会学、批評、アイドルのプロデュース。
著者:韓 東賢  社会学
シリーズ:河出ブックス;068
NDC:210.77 日本史 
NDLC:GB571
備考:ないものねだりだが、この書名なら経済または金融の専門家を入れてほしかった。


「平成」の世も四半世紀。「ポスト冷戦」と軌を一にし、バブル崩壊と長きにわたる経済停滞を含みこむこの期間、日本の社会構造と社会意識はいかなる変遷をとげてきたのか――。政治、経済、地方‐中央関係、社会保障、教育、情報化、外国人政策、国際環境とナショナリズム…気鋭の論者たちが集い、白熱の議論を経て描く、新たなる現代史のすがた。さらなる政権交代以後も視野に収めた大増補版。


※2019年、さらなる改訂があった。『平成史【完全版】』 ソフトカバーから、ハードカバーに発展している。


【目次】
序文(二〇一四年一月 小熊英二) [003-008]
目次 [009-011]


◎総説 「先延ばし」と「漏れ落ちた人びと」〔小熊英二〕 013
  工業化時代の想像力 014
  ポスト工業化 018
  福祉におけるポスト工業化社会のバリエーション 021
  移民と地方経済 026
  「日本型工業化社会」の成立 032
  バブル期から九〇年代へ 044
  政治の推移 053
  「中流崩壊」と「ゆとり教育」 065
  女性労働少子化 072
  「格差」と「地方」 076
  現状認識の転換を 083
註 090


◎政治 再生産される混迷と影響力を増す有権者菅原琢〕 099
1 本章の目的と構成――平成の政治を如何に捉えるか 100
2 平成の政治史 102
  (一)  自公民路線と政治改革運動 (1989〜93年) 106
  (二)  選挙制度改革と政界再編 (1993年〜96年) 108
  (三)  民主党の伸長と自民党の危機 (1996年〜01年) 111
  (四)  小泉政権構造改革 (2001年〜06年) 114
  (五)  末期自民党政権の迷走 (2006年〜09年) 117
  (六)  民主党政権とねじれ国会(2009年〜) 120
3 日本政治の変化 123
  (一)  政党と政治家 125
  一党優位体制の崩壊/終わらない政界再編/派閥・党内グループの軟化/政治家の流動化とリーダーシップの動揺
  (二)  有権者とメディア 135
  選挙結果の流動化/都市部有権者の影響の増大/政党支持の流動化/内閣支持率の乱高下と世論調査政治/変わらないメディアの政治報道
  (三)  制度改革と政策 146
  政治改革の目的と成果/行政改革と首相のリーダーシップ/政策課題の先送り
4 日本政治の混迷構造 151
  (一)  政権の不安定化と混迷の再生産 153
  政治を見放す冷めた世論/政府に抵抗する与党/妥協を拒み対決を志向する野党/日本政治混迷の循環構造
  (二)  混迷脱出の方向性 158
5 有権者が決定権をもつ現代日本政治 161
註 164
謝辞 176


◎経済 「土建国家」型利益分配メカニズムの形成、定着、そして解体〔井手英策〕 177
はじめに――統治の全体史として平成の経済政策史を描く 178
1 平成経済政策史・前史――プロト土建国家の枠組み 179
2 全面開花した土建国家―― 一九九〇年代に何を受け継ぎ、何が変わったのか 186
  相次ぐ景気対策、そして国債発行の環境整備186
  揺らぐ戦後経済政策史の前提条件189
3 経済構造の転換――見いだされない脱土建国家の統治モデル 194
  経済が地殻変動を起こした194
  国際的な資金循環に飲み込まれた日本経済199
  小泉構造改革民主党政権の歴史的意味202
  おわりに――世界金融危機、そしてアベノミクスへ 207
註 213


◎地方と中央 「均衡ある発展」という建前の崩壊〔中澤秀雄〕 217
はじめに――「中央」対「それに含まれないもの」218
  平成の中央‐地方関係
1 空間ケインズ主義と都市圏立地政策 225
  地域開発の二つの顔
  角栄式リスク補償政治
  「都市圏立地政策」への静かな転換
  「地域間格差」の諸側面
2 中央‐地方関係の昭和史・平成史 237
  昭和後期の中央‐地方関係
  昭和後期の「地方国」
  夕張の事例
  補償政治の終焉
  平成の市町村大合併
  大都市起点のリスケーリング
  「山と海」の自治
3 まちづくり運動の水脈 253
4 結論 259
註 262


社会保障 ネオリベラル化と普遍主義化のはざまで〔仁平典宏〕 267
1 はじめに――課題と枠組み 268
  「喪失の時代」のあとで
  日本に「ネオリベラリズム」概念は使えるか
  本章の枠組み
  時期区分について
2 昭和と日本型生活保障システムの成立 275
  昭和I期(1926年〜1945年)
  昭和II期(1945年〜1973年頃)
  昭和III期(1973年頃〜1981年頃)
  昭和IV期(1981年頃〜1989年)
3 平成I期――日本型生活保障システムの終焉 288
  生産/再生産レジームの変容
  平成I期の社会政策
  少子化対策としての育児政策
  介護保険と年金
  平成II期への助走
4 平成II期――日本版ネオリベラリズムゼロ年代 297
  劣化する雇用
  雇用の「ネオリベラルルートとその影響」
  ゼロ年代の育児政策――ネオリベラル化と脱ジェンダー化の交錯
  リスク化する高齢者福祉
  格差と再分配
  「格差ではなく貧困の議論を」
  ワークファーストの失敗(1)――ホームレス/ネットカフェ難民
  ワークファーストの失敗(2)――母子世帯
  ワークファーストの失敗(3)――障害者自立支援法
平成II期とは何だったのか――〈神学なきネオリベラリズム〉の両義性
5 平成III期――脱ネオリベラリズムの模索 320
  平成III期とは何か
  社会投資国家
  非正規雇用の就労支援――アクティベーションへの細道か
  社会的包摂への四つのポイント
  少子高齢化への対応――医療と介護の抑制・子ども手当・保育制度改革
  どんな論理で「一元化」するか
  ユニバーサルな社会
  平成III期が提起したこと
6 平成IV期――「平成的なもの」の終わりと反復 332
  転移される対立軸
  脱デフレという問題系
  賃上げ・ブラック企業対策・消費税増税――デフレ脱却と社会政策
  普遍化主義の隘路と社会保障制度改革
  ネオリベラル化の隘路と生活保護「改正」
  ネオリベラル化の隘路と雇用政策
  雇用のネオリベラル化は進んだのか
  夢の出口で
註 350


◎教育 子ども・若者と「社会」とのつながりの変容〔貴戸理恵〕 365
はじめに――日本的移行過程における「メンバーシップ主義」 366
1 学校と企業が成功しすぎた社会 371
  はじまりの明治
  第二次世界大戦後の「平等=画一的」な中等教育の整備
  新卒者の「学校から仕事への移行」の整備
  能力主義における学校と企業の連続性
  「学校・企業=社会」の誕生
  対抗言説の存在
2 新規学卒就職の揺らぎと若者労働市場の悪化 388
  綻びの発生
  誰もが漏れ落ちうる
  特定の存在が漏れ落ちやすい
  「問題化されない」という差別
  変化のまとめ――メンバーシップ主義の揺らぎと残存
3 対策 405
  若者雇用対策
  教育改革
    一九九〇年代〜文部省主導の「ゆとり」改革/二〇〇〇年代〜新自由主義の教育改革
4 結論――学校と企業に限定されない「社会」の展望 415
  「メンバーシップ主義」における利点・欠点のまとめ
  失われる「利点」、顕在化する「欠点」
  「必要最低限」の確保へ
  対抗言説の可能性へ
註 425


◎情報化 日本社会は情報化の夢を見るか〔濱野智史〕 431
1 問題意識と本論の構成 432
2 インフラ層の情報化 434
  平成以前
  平成以降
  なぜ急速なインターネット・インフラの整備に成功したのか?
3 アプリケーション層の情報化 443
  「夜」の領域とインターネット
  「昼」の領域その1:情報化と経済領域
    ミクロ視点:日本のインターネット・ビジネスは「タイムマシン経営」/マクロ視点:なぜ日本経済は情報化の恩恵を蒙らないのか?
  「昼」の領域その2:情報化と政治領域
    電子公共圏という夢、匿名サイトとの戦い/情報化と政治領域の実際
4 まとめ――日本社会は情報化の夢を見ることができるか 462
註 465


◎外国人 包摂型社会を経ない排除型社会で起きていること〔韓東賢〕 467
1 はじめに 468
2 「多文化主義なき多文化社会」としての「平成日本の排除型社会」 470
3 日本の外国人政策――冷戦下の切り捨て、外圧とプライドによる譲歩 472
  「多民族帝国」から「国民国家」へ
  転機をもたらしたインドシナ難民
4 九〇年代日本の外国人政策――経済大国化となし崩しの「多文化社会」化 477
  「国際化」のかけ声とバブル景気
  建前維持の陰で開けた「三つのドア」
5 二〇〇〇年代日本の外国人政策――「包摂」への模索と新たな「排除」 481
  移民受け入れへの「熱気」
  多文化共生と治安維持、その矛盾の産物
6 おわりに 487
  象徴としての「朝鮮学校
  「多文化主義なき多文化社会」の行方
註 493


◎国際環境とナショナリズム 「フォーマット化」と擬似冷戦体制〔小熊英二〕 499
1 従来の史観 500
2 「ピラミッド型」から「フォーマット化」へ 504
3 冷戦後の国際情勢の変化 511
4 安全保障の変化 519
5 戦後日本の安全保障体制 528
6 疑似冷戦体制の構築 537
7 対アジア外交と象徴的国益問題 547
8 「ナショナリズム」をめぐる状況 544
9 結論 568
註 570


平成史略年表 [i-vi]