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『専制国家史論――中国史から世界史へ』(足立啓二 ちくま学芸文庫 2018//1998)

著者:足立 啓二[あだち・けいじ] (1948-) 東洋史
NDC:222.01 中国史 >> 通史:興亡史,文化史,民族史,災異史,対外交渉史


筑摩書房 専制国家史論 ─中国史から世界史へ / 足立 啓二 著


【目次】
序 [003-006]
目次 [007-014]


第I章 専制国家認識の系譜 017
第一節 中国における専制国家の発見 018
  1 顧炎武 018
  2 梁啓超 022


第二節 中国における専制国家の形成 027
  1 内藤湖南 027
  2 一九三〇年代社会科学の中国認識 030
    (1) ヨーロッパ社会科学と中国認識 030
      (a) 専制国家認識の古典的形成 
      (b) 二〇世紀社会科学の諸潮流 
    (2) 専制国家=共同体論の展開 036
    (3) 専制国家=非共同体論の登場 039


第三節 戦後日本の研究動向 044
  1 「世界史の基本法則」 044
  2 専制国家論への再接近 047

註 051


第II章 専制国家と封建社会 057
第一節 中国社会と日本社会 058
  1 中国の村落と日本のムラ 058
    (1) 境界 059
    (2) 業務 060
    (3) 決定と執行の機構 062
    (4) 構成員 063
    (5) 紛争処理 064
    (6) 日本のムラの光と影 065
  2 家族・同業者組織 066
  3 中国における社会再生産 069
  4 中国社会の結合原理 075


第二節 権力の編成形態 079
  1 団体重積体としての日本封建社会 079
  2 専制国家の社会・政治編成 081

註 084


第III章 専制国家の形成 089
第一節 前国家社会の発展理論 090
1 共同体解体史から団体形成史へ 090
2 ヒト社会の形成 093
3 バンドから首長制まで 101
    (1) バンド社会 101
    (2) 農耕化と社会発展 105
    (3) 首長制 112


第二節 中国専制国家の形成 114
  1 中国首長制の形成 114
  2 国家形成に導く二つの力 119
  3 専制国家の形成 124
    (1) 春秋初期の政治構造 124
    (2) 春秋中期以降の編成替え 127
    (3) 専制国家的複合体 130


第三節 古典古代国家と日本古代国家の形成 134
  1 古典古代国家 134
  2 古代国家形成の日本的特質 140


第四節 国家段階の位置 145
  1 集団発展の屈折点としての国家段階 145
  2 初期国家論 147
  3 段階・類型・相互関係 149

註 151


第IV章 封建社会専制国家の発展 159
第一節 日本封建制の形成と発展 160
  1 小経営・共同体・領主制 160
  2 共同体と領主制の強化発展 164


第二節 専制国家発展のメカニズムと諸段階 169
  1 成立期専制国家 169
  2 専制国家の変質過程 174

註 180


第V章 近代への移行――その一 経済 183
第一節 社会類型と経済発展 184


第二節 中国社会の経済形態 187
  1 早熟な流通形成 187
  2 棉業に見る日中の市場形成過程 192
  3 中国的流通の基本形態 195
  4 日本封建社会における流通機構の形成 199
  5 中国社会と中国的流通 205
  6 労働力支配の実現形態 213


第三節 中国における資本主義の形成 218
  1 中国型資本主義 218
  2 経済組織化の進行とその規程要因 226

註 230


第VI章 近代への移行――その二 政治 239
第一節 日本封建社会の成熟と近代国家への移行 240
  1 絶対主義 240
  2 市民革命 243
  3 近代日本と専制 246


第二節 中国における近代移行の社会的前提 250


第三節 中国における近代的統合の形成過程 254
  1 任意団体による「自治」 254
  2 共和政の試行 261
  3 任意団体代表制権力構想 265
  4 中国国民党の党=国家制 267
  5 中国共産党の党=国家制 273

註 277


終章 世界統合と社会 283
註 296


あとがき(一九九八年二月二八日 足立啓二) [297-298]
文庫版あとがき(二〇一七年一二月三日 足立啓二) [299-303]
索引 [i-v]





【抜き書き】



儒教倫理(p.131)。p.41も関連する。

そこでは社会構成員の間で、確定的・一般的に共有されるべき道徳律が存在せず、個々の人間関係の局面において、個別的な「情」にしたがって採用すべき行動原則が現れてくる。共同体も確定した規範も存在しない社会に照応する行動倫理であり、個別的な服従の総体として人倫は体系づけられる。

大塚久雄「前期的資本」のアイデアに異議を唱える記述。(pp. 210-211)

中国の流通経費の高さを、封建的な市場構造に帰する解説は多い。しかし実際にはむしろ封建的でなかったことに原因がある。商業資本の市場支配と搾取に求めるのも誤りである。むしろ市場支配力のない零細な修行資本の乱立が、高い流通経費を生んでいた。日本では、封建的な独占性と固定制が、大局的には流通経費を引き下げ、しかも先の買次問屋で銀両表示1000両程度の粗収入を生んでいた。