contents memorandum はてな

目次とメモを置いとく場

『ソシュールを読む』(丸山圭三郎 講談社学術文庫 2012//1983)

著者:丸山 圭三郎[まるやま・けいざぶろう] (1933-1993) 言語哲学ソシュール研究。フランス文学。
解説:末永 朱胤[すえなが・あかたね] ソシュール研究。記号論
備考:「ソシュール:『一般言語学講義』を読む」と題されたセミナー(岩波市民セミナー、1982年)を書籍化したもの。
NDC:801 言語学
件名:Ferdinand de Saussure(1857-1913)
件名:一般言語学講義


『ソシュールを読む』(丸山 圭三郎):講談社学術文庫|講談社BOOK倶楽部


【目次】
目次 [003-007]


第一講 ソシュールと現代 011
1 ソシュール思想の現代性 011
  問題の所在
  構造主義ブームから記号論ブームへ
  構造主義者と反構造主義
  構造主義論争
  アメリカの実体論的構造主義
  ソシュール思想への誤解
  ヨーロッパ的知への異議申し立て
  科学批判としてのエピステモロジー
  科学的真理とはなにか
  十九世紀パラダイムの変革
  「脱領域的営為」としての記号学
  現代社会を批判する装置
  文化のフェティシズム
  一般言語学と神話・アナグラム研究

2 『一般言語学講義』とは何か 026
  小林英夫の訳
  未完の講義
  第一回講義
  第二回講義
  第三回講義
  『パンセ』
  断章形式
  『講義』の原資料
  講義の出席者
  「ソシュール未刊手稿」
  行方不明のノート
  ルガールの批判

3 「読む」とはどんな営為か 035
  表現と内容は一体
  読みは解読行為か
  新しい生命の付与
  テクストの快楽


第二講 『講義』と原資料 040
4 ゴデルの『原資料』とエングラー版 040
  原資料の発見
  二回目の発見
  三回目の発見
  『原資料』の刊行
  エングラー版
  『校訂版』の問題点

5 言語価値形相論 046
  『講義』とエングラー版との照合
  反要素主義
  コトバと思想は分離できない
  〈メニング〉
  主知主義批判
  音も未分節
  ランガージュの役割
  「思考=音」
  ラングとランガージュの差異
  相互差異化活動
  指向
  認識=命名
  幼児の言語習得
  ヘレン・ケラーの言語体験
  シーニュの二重性
  シーニュとラングの混同
  記号学とは何か
  編者による転倒
  記号の恣意性
  価値は記号である
  即時的価値の否定
  恣意的価値体系のア・ポステリオリ性


第三講 講義I ――言語学批判 070
6 講義Iの構成と視点 070
  言語学とは何か
  実証主義批判
  講義Iの構成

7 実体論批判  073
  言語学のイドラ
  四つのイドラ
  言語変化を転訛とみる誤謬
  書記言語を優先させる誤謬
  規範文法批判
  「音声学の原理」
  〈音韻論〉の誕生
  否定的要因の重視とラングの関係性
  実体的同一性と関係的同一性
  意味をもつのは差異だけ
  否定的な本質体
  関係=形相としてのラング
  物的世界像批判

8 言語の非自然性 084
  三つの批判
  コトバと諸制度
  言語有機体論
  言語能力は本能ではない
  言語の非自然性
  音声変化の偶然性
  音の変化は体系の変化を意味しない
  二項の差異
  価値は差異から生じる
  語の不透明化
  二種の〈変化〉


第四講 講義I ――言語学批判(続) 094
9 類推現象とラング、パロールの相互依存症 094
  関与的変化
  類推的変化
  類推と音声変化の差異
  ラングとパロールの相互依存関係
  ラングとパロール弁証法

10 「客観的分析」批判 100
  言語の単位は主体の分節により発生
  語る主体による主観的分析の重要性
  〈形態素境界画定〉
  客観性とはなにか
  主客未分離の〈生ける自然〉
  浅薄なジャパネスク論
  素朴な科学信仰
  科学という名のイデオロギー
  質を計量することの危険性
  パラダイムを超える困難
  静態言語学への絶望と沈黙


第五講 講義II ――記号学とは何か 111
11 講義IIの構成と視点 111
  二つの序説
  講義II「序説」の重要性
  記号学の提唱
  ラングには差異しかない
  講義IIの構成

12 コトバの両義性とランガージュ、ラング、パロール 117
  言語のもつ二つのパラドックス
  両義性
  広義のコトバ
  ランガージュとラングの定義
  パロール
  ランガージュの特性
  ランガージュの普遍性とラングの個別性
  マルティネのラング−パロール
  機能主義的情報理論の限界

13 記号学の誕生 126
  記号学の要請
  言語学記号学
  バルトによる転倒
  記号学の対象
  差異と対立
  記号とシニフィアンの混同
  記号の価値の否定性と示差性の好例
  指向対象はコトバ以前に存在しない
  ソシュールにおける恣意性の意味
  語の価値は関係のみにより決まる
  記号の形相性
  言語学者でない人々の言語研究
  悪しき循環論
  言語=名称目録観批判
  アトミズム批判
  ラングの物神性
  記号の非自然性


第六講 講義II ――記号学とは何か(続) 146
14 単位、同一性、価値 146
  単位の非現実性
  関係の一次性
  〈同一性〉とは何か
  二種の同一性
  〈形相〉の世界
  実体は同じでも関係が異なる場合とその逆の場合
  文化の本質は形相
  本質体を構成しているもの
  体系に関与するもののみが内的だ
  〈関与性〉pertinence
  語の価値と意義
  価値・意義はラングに、意味はパロールに属する

15 構造と歴史 160
  歴史における関与性と非関与性
  〈構造史〉
  〈実質1〉と〈実質2〉
  実質2の再分節化
  〈特定共時的
  対立化現象
  単位とは対立の差異化現象
  二つの言語学――共時的と通時的
  共時言語学の方法論的優先
  実態の変化と価値の変遷
  個的現象を体系の中で捉える方法
  点の歴史から面の歴史へ
  〈出来事〉
  歴史における法則性への懐疑
  言語の歴史・社会性

16 連辞関係と連合関係 177
  言語学の伝統的区分
  記号の表現と内容は不可分離
  主体は差異しか意識しない
  語同士の関係の二つの領域
  〈群化〉=〈差異化〉
  ディスクールとラング
  連辞・連合関係に対応する人間の機能
  語の〈結合価〉


第七講 講義III ――ラングの解明 188
17 講義IIIの構成と視点 188
  講義IIIの特徴
  事実としてのパロール、本質としてのラング
  記号学的装置としてのラングとパロール
  恣意性と必然性
  ラングのデジタル性
  〈否定性〉の積としての〈実定性〉
  講義IIIの構成
  構造主義的分析思考の壁

18 恣意性の原理 196
  言語学の領域
  ランガージュ解明の手順
  諸言語からラングへ
  文脈のなかで意味が生れる
  パロールの二重性
  ラングの支えとしてのパロール
  差異化活動としてのパロール
  ラングとパロールの相互依存性
  〈聴覚映像〉 と〈概念〉
  用語上の混乱
  シーニュの〈非記号性〉
  〈セーム〉
  術語シニフィアンシニフィエの採用
  恣意的な絆
  根強い「言語=名称目録観」
  二つの恣意性
  記号学の領域
  言語記号の特徴
  事物や概念の分節の基盤
  シーニュの恣意性と必然性
  バンヴェニストの誤解

19 線状性の原理と言語の本質性 218
  シニフィアンの線状性
  線状性の二側面
  デジタル化された時間
  論述的推論の陥穽
  モノのコト化
  言語の本質体をとらえる困難さ
  記号学的還元
  二重にして不可分離な本質体
  文化と自然のはざまにある身体
  関係を実体と錯覚
  シニフィアンシニフィエの誤解
  シニフィエは潜勢としての価値
  〈同一性〉と主観
  結合価
  二つの抽象
  構成するものと弁別するものは同一物


第八講 講義III ――ラングの解明(続) 234
20 相対的恣意性 234
  相対的動機づけの存在
  個別言語内のシーニュの合成
  体系内の辞項間の連帯性
  文化の恣意的動機づけ
  語の透明度

21 時間のファクター 239
  ラングの恣意性と必然性
  人間のになう二重の必然性
  シーニュの不易性と可易性
  ラングの恣意性のもたらす二つの結果
  価値の変動
  分節線のずれ
  人間の自由

22 価値の恣意性と示差性 247
  記号学の対象は恣意的価値
  経済学と言語学
  シーニュ内の絆の恣意性
  シーニュ間の関係の恣意性
  価値の恣意性
  連合関係の恣意性
  連辞関係の恣意性
  言語の中には差異しかない
  シーニュの実定性
  関係の物神化
  恣意性と示差性は相関的


第九講 ソシュール人間学 258
23 ヒトと動物のあいだ 258
  西洋思想の系譜
  根強い人間至上主義
  動物のコミュニケーション
  チンパンジーの身分け行為
  ヒトと動物の不連続性
  ヒト=動物+(-α)

24 身分け構造と言分け構造 266
  身分け構造
  ユクスキュルの〈環境世界〉概念
  ホモ・ロクエンス
  ホモ・ロクエンス先行説
  ランガージュの概念
  〈演じられる記憶〉と〈表象される記憶〉
  言分け構造
  人間は裸のサルではない
  欠陥動物
  〈言分け構造〉の出現による〈身分け構造〉の破綻
  人為による動物の退行
  認識が知覚を蝕む
  文明の畸形化
  生理的欲求から文化的欲求へ
  〈欲求神話〉経済主義の誤り
  コスモスと共に生じるカオス
  脳の爆発的進化と直立歩行
  欲望を生むランガージュ
  内なる自然の破壊
  人間文化の異化


第十講 ソシュールと文化記号学 288
25 記号学的還元 288
  リクールのソシュール批判
  二分法への誤解
  静態と動態
  力動的一元論
  二つの記号学
  人間文化の解明
  カオスを読む
  所与としてのラング、パロール
  記号学的還元の装置としてのラング、パロール
  理論モデルとしてのラング、パロール

26 解明のための記号学 298
  ランガージュの解明
  不在の現前
  映像的なものの復権
  記号の世界
  表象世界の破産
  パロールの解明
  形相の実質化と実質の形相化
  パロールによるラング変革

27 乗り超えのための記号学 306
  コスモス、カオス間の往復運動
  「記号の世界」の否定
  コトバの多義性の回復と「記号の本質」の否定
  コトバの映像化
  コトバの未分節化
  アナグラムの示唆するもの
  コトバの身体性
  記号学の円環運動

28 文化のフェティシズム 313
  新しい人間学としての記号学
  コトバと文化現象のパラレリズム
  事物の記号化
  使用価値と交換価値
  コト→記号→物神
  〈文化のフェティシズム
  解明の記号学のメリットと限界
  反構造的契機としての非記号性
  反機能化・反制度化活動
  「制度の機能」の否定
  四つのイドラの破壊
  異文化による相対化
  影の部分への照射
  根本原理としての〈恣意性〉
  文化記号学の射程


あとがき(一九八三年二月 丸山圭三郎) [329-331]
ソシュール略年譜(1857〜1913) [332-335]
ソシュール著作目録 [336-339]
参考文献 [340-351]
解説(末永朱胤 成城大学准教授) [352-359]
索引 [361-373]