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『言語学講義――その起源と未来』(加藤重広 ちくま新書 2019)

著者:加藤 重広[かとう・しげひろ](1964-) 日本語学(統語論、語用論)。
NDC:801 言語学


筑摩書房 言語学講義 ─その起源と未来 / 加藤 重広 著


【目次】
はじめに [003-006]
  言語学ってなに?
  全体像と新しい姿
目次 [007-012]


第1章 言語学の現在地 013
1 社会言語学と多様性研究 014
  近代冒語学の基本姿勢
  階級による言語格差はあるのか
  社会言語学が注目する地域差
  日本社会と変異
  士族の移住と移植方言
  言語変種と標準語
  時代とともに変わるもの
  江戸は「方言の島」だった
  標準語とは何か
  関酉弁から首都圏語へ
  方言調査、今昔
2 社会言語学と差別の問題 034
  新しい方言研究と社会言語学
  日本における言語生活研究
  東京方言は標準語か共通語か
  「標準語」としたうえでの「中間言語
  方言からのリバイバル語彙
3 亡びる言語・亡びない言語 042
  「言語死」はどうしたら防げるか
  言語を選択する権利と言語復興
  ヘブライ語が復興を遂げた理由
  言語は「使われ続ける」ことこそがキモ
  日本語は消滅するのか?
  バイリンガルは滅びへの道 
4 政策としての言語 052
  使う言語を選ぶ権利と、言語管理政策
  現存する「言語純化
  日本に言語政策はあるのか
  公用語のない日本
  「英語を公用語にする」とどうなるか?
  英語教育早期化は吉か凶か
  高等教育が英語でないのは世界の非常識?
  国家戦略としての言語教育
5 AI時代の言語学 065
  会話を支える知能と語用論
  「必要最小限」の規則体系
  易しい命令、難しい命令
  語用論と対話の妙味


第2章 言語学をいかに役立てるか 075
1 接触する言語とクリオール 077
  「英語転換」という劇的変化
  英語の利点
  英語の変容と技術革新
  言語接触の風景
  神戸市のニュータウンで起こった標準語化
  ピジンという混合言語
  すべての言語はクリオール
  日本語のルーツ
  近世中国における言語接触
  国内2言語態勢による統治
2 語用論の使い方 097
  言語変化のコントロール
  正しさと望圭しさのせめぎ合い
  私たちの会話は「推論」で進む
  誤用でも通じさせる「合理性の原則」
  「伝えたい内容」を重視する語用論
  発達障害言語学
  会話と交感機能
  心の理論と言語学
  なぜ異性のことを理解しにくいか
3 男ことば女ことばとキャラクター 113
  ジェンダーとことばづかい
  女性は「僕」や「俺」を本当に使わないか
  ウェブ時代のジェンダーことば
  キャラクターとことばづかい
  役割語の誕生
4 言語学はどこに向かうのか 124
  わかりやすさと専門用語
  「……的な」というカプセル表現
  人類学や進化学的視点からの言語学
  出生前からの言語習得という新地平


第3章 近代言語学を読みなおす 133
1 近代言語学の誕生 135
  インドにて
  近代言語学の誕生
  現実と象徵はずれている
  ことばの歴史をさかのぼる
  ことばのルーツが同じ?
  言語学の知識がずれていくとき
  「アーリア人」という民族は?
  言語学における「遺伝か環境か」
2 ことばをタイプ別に区別していくために 149
  文法とは何か
  言語の関心が外に向けられるとき
  屈折のある言語、ない言語
  屈折語膠着語孤立語、「抱合語」でなく「複統合語」
  言語学の成立が逆投影するもの
  フンボルトは差別的だったのか
  主観としての美意識
3 印欧語族という括りが成立するとき 162
  後戻りできない流れに向かうとは
  「古典語のトライアングル」の転換
  ポップによる比較言語的アプローチ
  シュライヒヤーによる比較言語学の基盤確立
  「アーリア」括りの変遷
  言語・民族・宗教を一緒くたに考えたミュラー
  過激な師のトンデモ説
  言語学的「アーリア人」から「アーリア民族」への変容
  言語学と戦争と福祉
  言語学の「記述的」態度と「規範的」態度
4 言語の単一性と多様性 178
  バベルの塔と単一言語幻想
  グローバル化した日本の逆説
  言語は災厄のもとか、解決の手段か


第4章 記述言語学の技法 185
1 言語学は自然科学だ 186
  科学性の呪縛
  科学的な見方が「正否」を判断できるか?
  非文の存在と、理論言語学
  方法論の異なりをうまく利用する
  日本語文法研究にある込み入った事情
  言語学の科学性の弱点
  デジタルではなく連続体として見る
  正しく「違和感」の正体を見極める
  性差、年齢差、地域差を考慮した変異
2 「正しい日本語」という呪縛 204
  語用論として情報を解釈する
  正解を求める心理と発想
  文法と論理を重ね合わせる背景
  明治における「標準語」維新
  単純化という葛藤
  押しつけのゆがみが噴き出すとき
  「正しい日本語」の追求は、マウンティングに過ぎない
  戦前からの「官製文迭への反発」
3 記述言語学の手法 221
  記述するとはどういうことか
  音声学の知識から音韻体系へ
  「が」の多様性
  テクスト化という難関
  言語学三点セットの位置づけ
4 言語死とどう向き合うか 234
  滅びゆく言語とあいまいな誤解
  日本における危機言語
  言語死の回避と、記録収集と


第5章 社会言語学から複雑系言語学へ 241
1 言語学の表舞台とバックステージ 243
  主流であることの意味
  メジャー言語、マイナー言語?
  研究の実を取るか、生活の現実を取るか
2 ソシュールという里程標と亡霊 249
  「ソシュールはもうたくさん」なのか
  ソシュール著作の実像
  日本におけるソシュール
  言語学の足場であり足かせでもあること
  シニフィアンシニフィエ
  ソシュール批判の虚実
  つじつまが合わないまま放置できない
  不可逆性と単層性
  「構成性の原理」と経済合理性
3 体系か混沌か 268
  「そこそこ」「ある程度」の体系性を認める
  社会言語学的な柔軟視点
  「もったいない」精神からの体系性?
  体系の科学性を疑ってみる
  「言語=体系」から出発する
4 複雑系言語学という布石 278
  生成文法の手法
  「複雑・複合的・不透明・予測が困難」を前提に
  「言語学の非自律性」という旗幟
  言語共同体という設定
  解体するのか、更新するのか
  言語の「自己組織性」
  言語におけるバタフライ効果


おわりに(2019年 厳冬の札幌にて 加藤重広) [292-296]
参考文献 [i-vi]