著者:加藤 重広[かとう・しげひろ](1964-) 日本語学(統語論、語用論)。
NDC:801 言語学
【目次】
はじめに [003-006]
言語学ってなに?
全体像と新しい姿
目次 [007-012]
第1章 言語学の現在地 013
1 社会言語学と多様性研究 014
近代冒語学の基本姿勢
階級による言語格差はあるのか
社会言語学が注目する地域差
日本社会と変異
士族の移住と移植方言
言語変種と標準語
時代とともに変わるもの
江戸は「方言の島」だった
標準語とは何か
関酉弁から首都圏語へ
方言調査、今昔
2 社会言語学と差別の問題 034
新しい方言研究と社会言語学
日本における言語生活研究
東京方言は標準語か共通語か
「標準語」としたうえでの「中間言語」
方言からのリバイバル語彙
3 亡びる言語・亡びない言語 042
「言語死」はどうしたら防げるか
言語を選択する権利と言語復興
ヘブライ語が復興を遂げた理由
言語は「使われ続ける」ことこそがキモ
日本語は消滅するのか?
バイリンガルは滅びへの道
4 政策としての言語 052
使う言語を選ぶ権利と、言語管理政策
現存する「言語純化」
日本に言語政策はあるのか
公用語のない日本
「英語を公用語にする」とどうなるか?
英語教育早期化は吉か凶か
高等教育が英語でないのは世界の非常識?
国家戦略としての言語教育
5 AI時代の言語学 065
会話を支える知能と語用論
「必要最小限」の規則体系
易しい命令、難しい命令
語用論と対話の妙味
第2章 言語学をいかに役立てるか 075
1 接触する言語とクリオール 077
「英語転換」という劇的変化
英語の利点
英語の変容と技術革新
言語接触の風景
神戸市のニュータウンで起こった標準語化
ピジンという混合言語
すべての言語はクリオールだ
日本語のルーツ
近世中国における言語接触
国内2言語態勢による統治
2 語用論の使い方 097
言語変化のコントロール
正しさと望圭しさのせめぎ合い
私たちの会話は「推論」で進む
誤用でも通じさせる「合理性の原則」
「伝えたい内容」を重視する語用論
発達障害と言語学
会話と交感機能
心の理論と言語学
なぜ異性のことを理解しにくいか
3 男ことば女ことばとキャラクター 113
ジェンダーとことばづかい
女性は「僕」や「俺」を本当に使わないか
ウェブ時代のジェンダーことば
キャラクターとことばづかい
役割語の誕生
4 言語学はどこに向かうのか 124
わかりやすさと専門用語
「……的な」というカプセル表現
人類学や進化学的視点からの言語学
出生前からの言語習得という新地平
第3章 近代言語学を読みなおす 133
1 近代言語学の誕生 135
インドにて
近代言語学の誕生
現実と象徵はずれている
ことばの歴史をさかのぼる
ことばのルーツが同じ?
言語学の知識がずれていくとき
「アーリア人」という民族は?
言語学における「遺伝か環境か」
2 ことばをタイプ別に区別していくために 149
文法とは何か
言語の関心が外に向けられるとき
屈折のある言語、ない言語
屈折語、膠着語、孤立語、「抱合語」でなく「複統合語」
言語学の成立が逆投影するもの
フンボルトは差別的だったのか
主観としての美意識
3 印欧語族という括りが成立するとき 162
後戻りできない流れに向かうとは
「古典語のトライアングル」の転換
ポップによる比較言語的アプローチ
シュライヒヤーによる比較言語学の基盤確立
「アーリア」括りの変遷
言語・民族・宗教を一緒くたに考えたミュラー
過激な師のトンデモ説
言語学的「アーリア人」から「アーリア民族」への変容
言語学と戦争と福祉
言語学の「記述的」態度と「規範的」態度
4 言語の単一性と多様性 178
バベルの塔と単一言語幻想
グローバル化した日本の逆説
言語は災厄のもとか、解決の手段か
第4章 記述言語学の技法 185
1 言語学は自然科学だ 186
科学性の呪縛
科学的な見方が「正否」を判断できるか?
非文の存在と、理論言語学
方法論の異なりをうまく利用する
日本語文法研究にある込み入った事情
言語学の科学性の弱点
デジタルではなく連続体として見る
正しく「違和感」の正体を見極める
性差、年齢差、地域差を考慮した変異
2 「正しい日本語」という呪縛 204
語用論として情報を解釈する
正解を求める心理と発想
文法と論理を重ね合わせる背景
明治における「標準語」維新
単純化という葛藤
押しつけのゆがみが噴き出すとき
「正しい日本語」の追求は、マウンティングに過ぎない
戦前からの「官製文迭への反発」
3 記述言語学の手法 221
記述するとはどういうことか
音声学の知識から音韻体系へ
「が」の多様性
テクスト化という難関
言語学三点セットの位置づけ
4 言語死とどう向き合うか 234
滅びゆく言語とあいまいな誤解
日本における危機言語
言語死の回避と、記録収集と
第5章 社会言語学から複雑系言語学へ 241
1 言語学の表舞台とバックステージ 243
主流であることの意味
メジャー言語、マイナー言語?
研究の実を取るか、生活の現実を取るか
2 ソシュールという里程標と亡霊 249
「ソシュールはもうたくさん」なのか
ソシュール著作の実像
日本におけるソシュール観
言語学の足場であり足かせでもあること
シニフィアンとシニフィエ
ソシュール批判の虚実
つじつまが合わないまま放置できない
不可逆性と単層性
「構成性の原理」と経済合理性
3 体系か混沌か 268
「そこそこ」「ある程度」の体系性を認める
社会言語学的な柔軟視点
「もったいない」精神からの体系性?
体系の科学性を疑ってみる
「言語=体系」から出発する
4 複雑系言語学という布石 278
生成文法の手法
「複雑・複合的・不透明・予測が困難」を前提に
「言語学の非自律性」という旗幟
言語共同体という設定
解体するのか、更新するのか
言語の「自己組織性」
言語におけるバタフライ効果
おわりに(2019年 厳冬の札幌にて 加藤重広) [292-296]
参考文献 [i-vi]