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『バイリンガルの世界へようこそ――複数の言語を話すということ』(François Grosjean[著] 西山教行[監訳] 石丸久美子ほか[訳] 勁草書房 2018//2015)

原題:parler plusieurs langues: le monde des bilingues.
著者:François Grosjean  心理言語学
監訳者:西山 教行[にしやま・のりゆき](1961-) 言語教育学、フランス語教育学、言語政策。
訳者:石丸 久美子[いしまる・くみこ]
京都外国語大学国語学部准教授. 大阪大学博士(言語文化学)
訳者:大山 万容[おおやま・まよ]
京都大学国際高等教育院非常勤講師. 京都大学博士(人間・環境学).
訳者:杉山 香織[すぎやま・かおり]
西南学院大学文学部准教授. 東京外国語大学博士(学術).
装丁:吉田 憲二

著者のサイト
https://www.francoisgrosjean.ch/index.html



【目次】
日本語版序文(二〇一八年五月六日 スイス、ヌーシャテルにて フランソワ・グロシャン) [i-ii]
序 [iii-vii]
目次 [viii-xi]
凡例 [xi]


第1章 バイリンガルの世界 001
バイリンガリズムをどのように定義するか 
フランス語圏の国々 
フランス 


第2章 バイリンガリズムの特徴 021
言語知識と言語使用 
なまり(アクセント) 
相補性の原理 
言語の変化 
言語モード 
言語の選択 
他の言語の介入 
他の言語が求めずとも入ってくるとき 


第3章 バイリンガルになる 075
バイリンガリズムになる要因 077
同時的バイリンガリズム 081
継続的バイリンガリズム 086
バイリンガルの子どもとその複数言語 091
家庭におけるバイリンガル 098
  両親の接し方
  変化の要因
バイリンガルの子どもと共に暮らす 107
学校でのバイリンガリズム 112
  バイリンガリズムを励まさない学校
  バイリンガリズムを励ます学校


第4章 バイリンガリズムのさまざまな側面 131
バイリンガリズムのイメージ 131
  これまでのイメージ
  現在のイメージ
  バイリンガル話者はバイリンガリズムをどのように考えているか
バイリンガリズムの種類を分類することの危険性 143
バイリンガリズムの効果 147
イカルチュラリズム 158
  バイカルチャーの人をどのように特徴づけるか
  バイカルチャーになる
  バイカルチャーであること
  人格が変わるのか
  どのようなアイデンティティ
例外的なバイリンガル 180
  ポリグロット、第二言語教師、通訳、翻訳者
  手話と口話バイリンガルである「ろう者」
  バイリンガル作家


結論 201


参考文献 [207-216]
監訳者あとがき [217-224]
索引 [ii-viii]
訳者紹介 [i]



【抜き書き】



「監訳者あとがき」(pp. 217-223)から。

 本書はフランソワ・グロジャン「バイリンガルの世界へようこそ――複数言語を話すこと」(原題:さまざまな言語を話すことバイリンガルの世界)François Grosjean (2015), Parler plusieurs langues - le monde des bilingues, Albin Michel の全訳です。

□著者。

◆心理言語学者グロジャン
 グロジャンの専門は心理言語学で、知覚や言語受容・産出、手話を研究しており、本書の取り扱うバイリンガリズムの分野で国際的な第一人者です。これまでに一三冊の著作と、バイリンガリズム、言語の知覚と受容、言語産出、手話とろう者のバイリンガリズム失語症自然言語処理、応用言語学に関する二〇〇本以上の論文があります。
 グロジャンはこれまで英語による著述を行ってきましたが、本書はフランス語で書かれたバイリンガリズムに関する初めての啓蒙書です。一般向けの著作で平明な記述ではありますが、心理言語学や言語教育学の最新の知見を活用するもので、知的な妥協を行っているものではありません。


□日本での「バイリンガル」観

 日本においてもバイリンガリズムは人々の関心を集め、いわばあこがれの的となっています。英語を日本語のように話したい、ネイティブ並みの発音でぺらぺらと話せるのなら、なんとすてきなのだろう。〔……〕メディアは過剰なまでに英語と日本語のバイリンガリズムを賞賛しています。そのため日本人の多くはバイリンガリズム、それも日本語と英語のバイリンガリズムに対する過大な期待や夢を思い描いているのではないでしょうか。
 実際のところ、これまでバイリンガリズムはきわめて特殊な能力であると考えられてきました。
 バイリンガルとは二つ以上の言語を母語なみによく知り、自由自在に使える人と考えられてきました。同時通訳者のように二言語をマスターしていなければ、バイリンガルと名乗ることはできないかのように考えられてきたのです。そして、そのような卓越した言語能力を身につけるには幼少時から二言語による教育を受けなければならないと考えられてきたのではないでしょうか。


□本書における「バイリンガル」の範囲。

 ところが本書を一読された皆さんは、グロジャンの提出するバイリンガリズム観にずいぶんと驚き、また戸惑ったのではないでしょうか。グロジャンによれば、人類のおよそ半数はバイリンガルか、あるいは三言語以上を使用するプルリリンガル(複言語話者)であり、バイリンガルは決して珍しい現象ではないのです。
 グロジャンはバイリンガルをきわめて広い意味でとらえ、母語(第一言語)とほかの外国語(第二言語)といった組み合わせだけではなく、第一言語とその方言といった組み合わせもバイリンガルであると主張します。日本では、標準語(共通語)と方言の組み合わせをバイリンガルととらえることは少ないと思いますが、グロジャンのとなえるバイリンガル観こそむしろ現実の言語使用により即したものといえます。 

 グロジャンは、二言語以上を日常生活の中で定期的に使用する人をバイリンガルと定めます。このような観点から見ると、日本においても日常生活のなかで標準語以外にも何らかの言語をさまざまなレベルで使用している人がいることに気がつきます。〔……〕このような人々は二つ以上の言語について均等な能力を持つことなく、その技能は均等に発達しているわけではありませんが、グロジャンはそのような言語能力を持つ人々をバイリンガルと考えているのです。



【関連記事】

『ことばの力学――応用言語学への招待』(白井恭弘 岩波新書 2013)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20180321/1521231822
……特に「2章 国家と言語――言語政策」と「3章 バイリンガルは悪か」が、本書に関連する内容。