著者:岡本雅享[おかもと・まさたか] (1967-) 社会学。地域研究。アメリカ・中国のマイノリティ研究。
NDC:210.04 日本史
件名:日本人
件名:民族問題--日本
【目次】
はじめに [v-viii]
目次 [ix-xiii]
第一章 出雲からみた民族の創出 001
一 漢字語「民族」の誕生 002
1 NATIONの訳語
2 幕末のわれわれ意識
二 神武創業の始めに原〔もと〕づく王政復古 008
1 神話時代への回帰
2 出雲信仰の排除と国家神道
三 大和民族の登場 014
1 記紀神話に基づく民族の創出
2 倭〔ヤマト〕神話と出雲
四 出雲民族の誕生 020
1 出雲民族概念の出現
2 出雲民族意識の発生と広がり
3 複数層の民族概念
4 民族の違いを実感させたもの
5 戦後の出雲民族論
五 民族のるつぼとしての混合民族論 034
六 民族概念再構築の課題 041
1 日本のマジョリティは何民族か?
2 まつろわぬ人々の復権
注 049
第二章 言語不通の列島から単一言語発言への軌跡 057
一 言語不通の列島 058
1 時代劇のうそ
2 文語を話す
3 江戸時代の共通語は漢語?
4 標準語不在の明治前半期
二 国語と標準語の創作 068
1 標準語と国語の登場――東京山手の教育ある中流家庭の言葉
2 天皇家の母語喪失――標準語になれなかった京都言葉
3 人工の言語――標準語の創造
4 民族国家の希求と方言の撲滅
三 出雲言葉からみる言語画一化の過程 078
1 ラジオ放送の始まりと方言コンプレックス
2 日本語均質化の完成
四 言語と方言の境界 085
五 風土と文化と言葉 090
注 094
資料1 山浦玄嗣『ケセン語入門』序論「母なる国ケセン」(抜粋) 099
資料2 山浦玄嗣『ケセン語の世界』(抜粋) 106
第三章 二人の現津神――出雲からみた天皇制 109
一 出雲国造〔こくそう〕――天〔あめ〕の下造らしし大神〔おおかみ〕の祭祀王 110
1 一世紀で乖離した国造と天皇の知名度
2 古代出雲王の末裔
3 前近代における出雲国造の権威
二 王権を受け継ぐ御杖代〔みつえしろ〕――国造の火継式と天皇の大嘗祭 116
三 天皇〔スメラミコト〕の変貌――祭祀王から絶対神へ 120
1 スメラミコト――古代ヤマト王の末裔
2 幕末のミカド――山城国の宗教的権威
3 操り人形の玉〔ぎょく〕
四 二人の生き神と民衆 126
1 天子(様)の宣伝――天皇像の民衆への浸透
2 国造の巡教、天皇の巡幸
3 民衆の生き神信仰と国造、天子
五 出雲の抹殺? 137
1 出雲の周縁化
2 政治家への転向
3 祭祀権を失った現津神――天皇存在の意義
注 149
第四章 創られた建国神話と民族意識――記紀と出雲神話の矛盾 155
一 記紀神話と出雲 156
二 神話を根拠に成り立つ国家と大和民族 160
三 大和神話と出雲神話の矛盾 166
四 戦後の建国神話教育――戦前との連続性 172
五 いくつもの創世神話が共存する多元社会 177
注 183
第五章 島国観再考――内なる多文化社会論構築のために 189
一 日本の島国観と単一文化論 190
1 孤立した島国の農耕民という自画像
2 対馬・宮古島からみる島国論の矛盾
3 大きな島の小さな根性
二 人を繋ぐ東アジアの巨大の内海 198
1 逆さ地図が語るもの
2 国引き神話と海流の道
3 海の道のフロンティア
三 新羅や越〔こし〕と結ぶ出雲の海人文化 213
1 新羅と結ぶ出雲
2 越前の反り子と小羽山三〇号墓
3 出雲地名とオオナムチの伝承
4 寄り神信仰と文化圏
5 海人文化の伝播――アイの風と出雲節
四 近代国家の誕生と人を隔てる海への転換 226
1 近世まで続いた海の道
2 裏日本の創造
3 水上から陸上へ――交通網の転換と南北の逆転
4 本州北岸域の人為的凋落とヤマト起源史観の拡がり
五 裏日本の復権と多元社会観の構築 236
1 日本海文化論を巻き起こした出雲型墳墓
2 海でつながる多元世界
注 244
第六章 アテルイ復権の軌跡とエミシ意識の覚醒 251
一 エミシをめぐる自意識と他者認識 252
1 民族国家の形成とエミシ
2 矛盾する自己認識
3 中近世から近代日本における他社による奥羽・東北観
二 アテルイの戦いと悪路王の伝説 259
三 東北「熊襲」発言事件にみる現代日本のエミシ観 267
1 ヤマトの侵略とエミシの抵抗
2 東北の鬼と悪路王の伝説
四 エミシの末裔という自意識 274
五 アテルイ復権を導いた人々とその思い 278
1 一力一夫河北新報社長
2 「延暦八年の会」と「アテルイを顕彰する会」
3 関西アテルイ顕彰会(北天会)
4 映画「アテルイ」と鳥居明夫・シネマとうほく社長
5 アテルイ復権をめぐるその他の動き
六 東北の風土が育むエミシ民族 288
注 294
第七章 クマソ復権運動と南九州人のアイデンティティ 301
一 熊本県球磨郡免田町のクマソ復権運動 302
1 クマソの子孫というコンプレックス
2 免田町一職員の奔走とクマソ復権元年
3 鎏金〔りゅうきん〕神獣鏡がシンボル
4 クマソ復権運動の始動
5 のクマソ復権を目指すドラマ作り
6 ドラマ後のクマソ復権運動
二 クマソ・ハヤトとは何者か 316
三 ヤマト勢力の南進とクマソ・ハヤトの抵抗 320
1 広大な日向国とヤマト勢力の南限
2 薩摩国の創設(七〇二年)
3 大隅国の創設(七一三年)
4 ハヤトの蜂起(七二〇年〜七二一年)
四 ネイション・ビルディングの中でクマソ民族像 331
1 教科書に書かれた熊襲
2 日常生活に息づくクマソ伝説
五 クマソ・ハヤトをめぐる自意識 335
注 343
第八章 新たな民族の誕生――池間民族に関する考察 349
一 誇り高き池間民族 350
1 映画「さよならニッポン!」と池間島
2 池間島を元島とする移民の末裔
二 池間民族をめぐる言説 356
三 池間民族意識を根拠づけるもの 360
四 民族とは何か? 363
五 宮古諸島の多様性と池間民族 368
六 多元社会・日本における民族観 372
注 375
終章 同質社会幻想からの脱却と多元社会観の構築 379
一 単一民族発言が望むもの 379
二 単一民族ではなく、同質民族ならいいのか? 382
三 高度経済成長期の企業社会構造と同質化 384
1 企業社会と単一社会
2 企画大量生産型近代工業社会の体質と気質
四 多元社会観への転換 391
1 郷土を犠牲にする国家
2 網野善彦が残した課題
3 多元国家としての日本像
注 399
あとがき(出雲の神々に感謝して 二〇一四年五月 岡本雅享) [403-408]
コラム
三宅米吉「国々のなまり言葉につきて」 071
伊勢神宮の改造と神々の抹殺 140
漂流がもたらした文化の伝播 201
映画「アテルイ」制作上映の呼びかけ(抜粋) 285
映画「アテルイ」エンディング(ATERUI will HERO) 287
アタカラの星 371