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『子どもを信じること』(田中茂樹 大隅書店 2011)

著者:田中 茂樹(1965-) 医師・臨床心理士。高次脳機能の研究。地域医療・カウンセリング。
装画:岡田 千晶
装丁:加藤 恒彦
NDC:379.9 家庭教育

 

子どもを信じること|さいはて社

子どもを信じること

子どもを信じること

 

【目次】
題辞 [/]
はじめに [001-005]
目次 [007-011]

 

この本の目的と構成 012
  具体的な方法を提案すること
  悩みの仕組みを解き明かすこと
  私の知識と経験のベースについて
  子どもの問題の多くは歓迎すべきもの
  子どもの問題に本は役に立たない?
  ふだんから子どもにやさしく接する
  この本の構成

 

I 診察や面接で気がついたこと

1 親にできるのは自分が変わること 026
  子どもを変えることはできない
  親はただちに変わることができる
  通常のカウンセリングと親面接の違い
  親の代わりにSOSを発信する子どもたち


2 目に見えるものに偏りすぎていないか 036
  親面接でしばしば出会う気になる傾向
  「指示や行動を促す言葉」と「思いや考えを伝えあう言葉」
  目に見えるものばかりを求めない
  ファンタジーの重要性
  不安があるからこそ信じこもうとする
  勉強や学歴は手段か目的か
  広い土地にはいろいろな建物ができていく
  「羨ましがられる」よりも「幸せだと感じられる」方が大切


3 勉強よりも大切なこと 044
  人として育っていく上で習得すべきこと
  ロボットや人工知能にはできないこと
  相手の気持ちを知るよりも大事なこと
  子どもの持っている力のすばらしさ


4 先んずれば人を制す? 050
  幼少期は子どもにとって大事な時期である
  文字や数字にないものの大切さ
  教えなくても子どもは自分で「発見」する
  文字のない時期を大切にする


5 不登校は勇気ある行動である 058
  不登校は困ったことではない
  不登校がはじまる時、子どもはかなり弱っている
  サボりたくて不登校になるような子はほとんどいない
  意気地があるからこそ不登校を選べる
  不登校で問題なのは「勉強が遅れる」とか「進学できない」などではないはず
  家庭内暴力について
  再登校のタイミング
  不登校のタイミングと子どもの持っている強さ


6 子どもを信じて愛情を与える 069
  カウンセリングの基本は話を聴くこと
  子どもは良くなっていこうとする力を持っている
  愛情はなんでもない時に何回でも
  愛情には条件をつけない


7 まず好きになる 075
  私がしでかした失敗
  学びの順序
  「まず好きになる」は「生きることを好きになる」につながる


8 きちんとすることよりも好きになることを 079
  食べることも「まず好きになる」が大切
  きちんとできるのはその後で
  食事は家族の楽しみの時間
  偏食も必要以上に気にしない
  子どもを信じて待ってやる
  トイレで食事する大学生たち
  本当に子どもの幸せに役立つのかを意識する
  きちんとすることより好きになることを


9 子どもは導かないと成長しないのか? 088
  子どもは叱られなくても褒められなくてもきちんとしようと思っている
  自分で牛乳を飲むと言い出した四歳の息子
  騒がずに淡々と振る舞う


II 親子の関係

10 親と子の別れ 094
  親と子には何度も別れがある
  四つの別れの段階
  第1の別れ――「誕生」
  第2の別れ――「再接近期」
  第3の別れ――「一次反抗期」
  第4の別れ――「二次反抗期」
  親も動揺することがあるのは当然のこと


11 子どもと親の距離――近すぎる親、遠すぎる親 102
  理想的な親・子・現実の三者関係
  子どもと親の距離はどうやって測るのか
  「近すぎる親」――子どもの問題がいつしか自分の問題になってしまっている
  「遠すぎる親」――子どもは自分を賞賛する鏡か自分のアクセサリー


12 近すぎる親の問題――子どもの出会う現実を加工する 108
  近すぎる親・子・現実の三者関係
  事実を事細かに語る傾向と主語を省略する傾向
  子どもと一体になって苦しみ悩んでしまう
  若いカウンセラーがしがちな失敗
  「現実を加工している」という自覚を持つ
  現実を加工しないのと放っておくのは違う
  安全な失敗を体験するべき時期がある


13 遠すぎる親の問題――子どもの気持ちに無関心 117
  遠すぎる親・子・現実の三者関係
  子ども自分を賞賛する鏡
  子どもは自分の一部か持ち物の一つ
  「遠すぎる親」はなかなか相談に来ない
  「遠すぎる親」の子どもに見られる傾向
  自分の子どもたちが何者なのか見届けたい
  子ども本人が「自分は幸せである」と感じられること


14 現実を受け容れるということ 123
  受容のプロセス
  まず認めない、やがて怒る
  「怒り」から「困った」へ
  困るのは子どもであるべき


15 叱りすぎることの危険性 128
  集中するのが得意な子と苦手な子
  叱ることへの依存
  叱ることに依存している親への働きかけの難しさ
  感情のスイッチを切る――解離という防衛機制
  やさしく見守ることのメリット


16 母親は子どもに去られるためにそこにいなければならない 135
  急がないかぎり子どもは自分で親から離れていく
  無理に外に出そうとするとかえってしがみつく
  去られるものとしての親の悲しみ
  惜しまず与えてあとは任せる


17 空腹の自由、食欲の自由、排泄の自由 142
  自分で痛い目に遭うことの大切さ
  空腹の自由、食欲の自由
  排泄の自由
  トイレの失敗はSOSの表現である
  勉強の自由だって同じこと


18 頼りないので手放さない 149
  いつまでも未熟なままでいて欲しい
  いつまでも自分の手元に置いておきたい
  親の子離れも、少しずつ、心配しながら、子どもを信じて


19 食べ物は毒? 154
  食べ物への過剰なこだわりは子どもにどういうイメージをもたらすのか
  親の脅しは効きすぎるということをわすれてはいけない
  まず楽観的になること、世界を好きになることが重要


20 優等生はなぜいじめられやすいのか 159
  厳しく育てることの問題
  優等生はなぜいじめられやすいのか(その1)――思春期という問題
  優等生はなぜいじめられやすいのか(その2)――親のしつけの問題


21 自分を守る心の仕組み ――防衛機制について 165
  ぶどうを取れなかったキツネの負け惜しみ
  名付けたのはフロイト
  防衛機制は悪者ではなく必要なもの
  防衛機制は日常の場面にいくらでも現れている 


22 自分の世界にこもることで自分を守る――引きこもりの防衛 168
  チャイルドシートど眠りに落ちる赤ん坊
  退屈な授業と真っ赤な十円玉の思い出
  他にもたくさんある引きこもりの防衛の例
  大人だってしばしば引きこもることをやっている


23 不快をもたらす現実を受け容れない――否認の防衛 173
  防衛機制の種類を判別するのは難しい
  否認の防衛とは
  子どもの不登校を認めたくない
  親が変われば子どもも変わる


24 育児の不安、親の不安――置き換えの防衛 181
  置き換えの防衛
  受験の不安と手洗いの儀式
  それが防衛機制であることを意識することが基本
  面接に苦情を言いに乗り込んでくる親
  子どもへの接し方の問題を指摘することの難しさ
  過剰な干渉ではなく見守る勇気を
  置き換えの防衛の例――予防接種をめぐる不安


25 自分の思いを相手に映し出す――投影による防衛 192
  自分の中の認めたくないものを他人に映し出す
  「投影」と「抑圧」の違い
  親子の関係に現れる投影の例


26 子は親の鏡――だから親の過去を映すこともある 196
  子どもの欠点を許せない
  子は親の鏡
  親は子どもに「自分の過去」を暴かれたような気分になる
  親がしてやるべきことは先輩としてのやさしい支え


27 できたと思って喜ぶとすぐ逆戻り――打ち消しの防衛 201
  自立する嬉しさは親から離れる淋しさとセットである
  子どもが成長すると親も淋しい
  成長する子どもの側にも葛藤がある
  保育園ではできるのに家ではできない

 

28 なんでも思い通りになるという感覚――万能感による防衛 208
  万能感――幼い時は誰でも感じていたもの
  子どもの万能感とどうつきあっていくか
  成功することよりも大事なことがある

 

29 責められるより責める方が楽――攻撃者への同一化 215
  攻撃する側に立つことで心を楽にする
  虐待されている子どもに多く見られる防衛機制

 

30 親が子どもを守るということ 219
  親は子どものために先回りする
  いじめに備えて準備する親たち
  準備することの問題


III 子どもとのコミュニケーション

31 先に進まない 224
  先に進まない
  聞き手が主導してしまうというのはどういうことか
  5W1H を使いたくなったら注意!
  事実をやりとりするよりも、思いを伝えあう
  話し手が主導すると会話はどのようなものになるか
  先に進まず聞いてもらえると「話したいこと」に近づける
  聞いてもらえたという体験の大切さ
  聞いてもらうことの持つ大きな力
  アドバイスが欲しいんじゃない、聞いて欲しいだけ
  子どもの話を聞く喜び 

 

32 小言を控える 234
  子どもの頃を思い出してみる
  小言は癖になる
  指示をしていないように見える指示――「○○しても良いし、○○しなくても良いし」
  子どもに起こる変化を予告しておく理由


33 指示しない 239
  過剰な指示は子どもの自発性が育つのを邪魔する
  あくまでも家ではくつろげることが重要
  親が子どもを褒めることの難しさ
  良かれと思っての言葉がけが子どもを苦しめることもある
  子どもから話しかけてくれるということの嬉しさ


34 子どもに起きてくる変化 250
  欲求や衝動性が高まる
  親を避けていた子どもが、親と顔を合わせるのを嫌がらなくなる
  テレビを見て笑い声を立てるようになる
  欲しいものを要求しはじめる
  以前にあった出来事の不満を親に話すようになる

35 押しつけないことで伸びるものがある 259
  勉強しなさいと言われていないAくん
  自分で問いを立てられるということ
  子どもの能動性を大事に育てることの難しさ

36 子どもが失敗した時は愛情を与えるチャンス 263
  こぼすのはわざとじゃない
  子どもに愛情を与える絶好のチャンス
  母親に余裕がなければ父親の出番
  「大丈夫だよ」と言ってあげても大丈夫

37 おしゃれや化粧は自分を守る 268
  退行が起きたらそれはやり直しのチャンスである
  おしゃれや化粧に興味を出すのは良い兆候

38 衝動を制御する力はどう育つのか 272
  わがままを聞いてもらえた子はわがままを自制できるようになる
  子どもはみな衝動的である
  受容的な状況でそれまで抑えられていた衝動が現れてくることがある
  一見大人びて見えるような子どもが問題を抱えている場合もある
  親との関係は他人との関係に引き継がれる

39 家ではくつろがせてやる 280
  家ではくつろぐ、外では頑張る
  制服を片付けてやる
  そんなに甘くて大丈夫なのか

40 子どものペースで 285
  指導しすぎる大人たち
  子どもが自分のペースでいられることの大切さ

41 子どもは「嬉しい」や「悲しい」をどう学ぶのか 289
  言葉はどうやって覚えるのか
  高田馬場の思い出
  感情を表す言葉はどのように習得されるのか
  自分の気持ちが分からない――アレキシサイミアの苦しみ
  「そんなの平気でしょ!」と言われてしまうと
  「美味しい」や「不味い」も同じこと

42 子どもをやる気にさせる 298
  やるのは子ども
  いつまで指示できるか

43 自分の意見を言える子どもはどうやれば育つのか 304
  自分の話を聞いてもらえた子どもは、自分の意見を言える人になる
  自分の話を聞いてもらえた子どもは、相手の話を聞ける人になる
  君のことを思うとお父さんはいつも勇気が出るよ

44 見守る 309
  計算されたリスクをおかせ
  保育園の坂道のこと
  親が注意しないと子どもは転び続けるのか?
  見守ることの難しさ
  子どもが大きくなっても親はなにか言いたい
  見守ることは放置するのとはまったく違う

 

45 アイスクリーム療法 317
  子どもを元気にするかなり有効な方法
  アイスはできるだけ多くの種類のものを買うこと
  アイスを楽しんでいる時に小言を言わないこと
  条件をつけないこと
  片付けは親がすること
  子どもが太りませんか?
  なんのためにやるのか?
  子どもが持っている自己制御の能力を信じる
  アイスクリーム療法は親のための認知行動療法でもある

 

参考文献 [327]
おわりに(二〇一一年八月 田中茂樹) [328-331]

 





【抜き書き】

・24章「育児の不安、親の不安――置き換えの防衛」からの一節(p. 185)。 

 

子どもに暴力が出てくる場合、親の側には次のような共通点が多く見られます。①子どもの要求を頑として受け容れない、②宗教や権威のある人の考えなどを、親が頑なかたくなに信じていて、その価値観を子どもに押しつける、などです。つまり、子どもの意見や主張を認めていないのです。〔……〕/このような状況では、子どもからの発信が伝わらないか、伝わっても聞き流されてしまい、親からの返信がありません。/そうなると、子どもは、なにか価値あるものを傷つけて、親の関心をなんとしてでも惹こうとします。/「学校に行かない」ということは、自分の人生を傷つけることです。拒食や過食、リストカットは、自分の身体を傷つけることです。家のものを壊すことは、親の財産を傷つけることです。

 

 

・冒頭の題辞から。

Mothers have to be there to be left. 
――― Erna Furman

著名な精神科医Erna Furman(1926-2002)の言葉。