著者:室井 康成[むろい・やすなり](1976-)
地図作成:地図屋もりそん
表作成:関根美有
NDC:210.6 日本史(近代 1868- ,明治時代 1868-1912)
事大主義―日本・朝鮮・沖縄の「自虐と侮蔑」|新書|中央公論新社 (chuko.co.jp)
- 作者: 室井康成
- 出版社: 中央公論新社
- 発売日: 2019/03/16
- メディア: 新書
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【メモランダム】
・メタ・国民性論。
なお、冒頭の「はしがき」・「目次」・「地図」(pp. i-xiii)で、余白下部のページ表記を一ヶ所だけミスってる(この三つは中公新書の慣例に従い、頁表記をローマ数字にしているが、十二頁のみアラビア数字になっている)。
・版元の内容紹介文。
事大主義とは、強者に追随して保身を図る態度である。国民性や民族性を示す言葉として、日本や朝鮮、沖縄で使われてきた。本書は、福沢諭吉、陸奥宗光、柳田国男、朴正熙、金日成、司馬遼太郎などの政治家や知識人を事大主義の観点で論じ、時代の変遷を描く。日本への「島国根性」という批判や、沖縄への差別意識はどこに由来するのか。韓国と北朝鮮の相剋の背景は何か。自虐と侮蔑が交錯した東アジアの歴史が浮き彫りに。
http://www.chuko.co.jp/shinsho/2019/03/102535.html
【目次】
はしがき [i-vii]
目次 [viii-xii]
東アジア周辺地図 [xiii]
タイトル [001]
凡例 [002]
序章 「事大主義」という見方 003
柳田国男の「日本人」像
引き継がれる事大主義観
韓国・北朝鮮批判としての事大主義言説
第1章 「国民」の誕生と他者表象 011
1 「事大」とは何か 011
語源は『孟子』の一節
朝鮮での「事大」の解釈
儒教的安全保障論
琉球での捉え方
悪い意味ではなかった
2 福沢諭吉“造語説”の真偽 021
漢語と訳語の組み合わせ
『福翁自伝』で語られたこと
明治維新直後の日朝関係
甲申政変への福沢の関与
福沢のいう事大主義
一人歩きする事大主義
3 朝鮮に対する全体表象へ 033
日清戦争
「国民」の成立
「他者」としての朝鮮の発見
陸奥宗光の「事大」観
「頼る」という意味の定着
「事大根性ぜんぜん呈露す」
第2章 反転する「事大主義」――他者喪失によるベクトルの内向 045
1 韓国併合と意味の変質 045
日露戦争勝利の内的リアクション
他者喪失としての韓国併合
事大主義普遍説
反転しなかった人々
朝鮮独立運動と事大主義観の変化
2 「島国」の国民性 058
柳田国男の捉えた事大主義
非主体性としての意味の確定
「島国」という特性
「日本=島国=事大主義」観の形成
3 大正デモクラシーと事大主義批判 067
日本人の克服対象
辛亥革命と北一輝の事大主義観
普通選挙導入への危惧
事大主義の打破が叫ばれた衆議院総選挙
政治教育と青年団運動
政治改良論としての柳田民俗学構想
女たちの事大主義批判
第3章 沖縄「事大主義」言説を追う――「島国」をめぐる認識の相克 087
1 沖縄はかく「発見」された 087
共通課題の発見
沖縄の自画像
折口信夫の日琉同祖論
2 伊波普猷と沖縄県民性論 095
「事大主義」は自称か
県民性という理解
アイデンティティの模索
3 軍からの眼差し 104
陸軍首脳への現地報告
事大主義観の暴力性
第4章 戦後日本の超克対象として――「事大主義」イメージの再生 109
1 敗戦前後の事大主義観 109
国民性論からの乖離
ファシズムへの警鐘
山川菊栄の一貫性
「一億総懺悔」と「悔恨共同体」
2 新憲法論議の中の「事大主義」 118
日本国憲法と教育基本法
敗戦要因としての事大主義
白熱する事大主義論争
国民性論への回帰
3 「良き選挙民」を育てるために 128
戦後民俗学の新目標
想定された民俗
「なんぼ年寄りでも、是は確かに臆病な態度であつた」
マス・コミュニケーションに抗せよ
4 戦後沖縄の自己表象と事大主義言説 198
アメリカ施政下での自己認識として
「自分で事大を主義などといったわけではない」
読み替えの陥穽
県政界の他者化
現状から考えさせられたこと
第5章 朝鮮半島への「輸出」――南北対立の中の事大主義言説 151
1 ふたたび「他者」となった韓国・北朝鮮 151
朝鮮の解放・分断
日本統治下の事大主義言説
限定的な情報
想起される「事大主義」
2 南北いずれが事大主義か 160
朴正煕の登場
北朝鮮の反応
対概念としての「主体思想」
民俗の否定
「漢江の奇跡」と事大主義言説の変化
3 先鋭化する「事大主義」
イデオロギー化の恐怖
金泳三の粛清理由
朴正熙が仕掛けた政敵排撃
「亡国」の論理として
終章 “鏡”としての近現代東アジア 185
戦後日本の事大主義イメージ
「事大主義」から「事小主義」へ
「空気」を読む
本当に国民性なのか
「事大主義」を超えて
あとがき(二〇一九年三月四日 「平成」の終焉を来月に控えて 室井康成) [197-201]
参考文献 [203-212]
【メモ】
語源。「梁惠王 下」から
齊宣王問曰:「交鄰國有道乎?」
孟子對曰:「有。惟仁者為能以大事小,是故湯事葛,文王事昆夷。惟智者為能以小事大,故太王整事獯鬻,勾踐事吳。以大事小者,樂天者也;以小事大者,畏天者也。樂天者保天下,畏天者保其國。《詩》云:『畏天之威,於時保之。』」
王曰:「大哉言矣!寡人有疾,寡人好勇。」
・この記事では著者の名前の読みを「Yasunari」としておいたが、こちらの書評の末尾で松岡正剛は、「Kousei」としている。ただ、著者のresearchmapのURL("https://researchmap.jp/muroikosei")とヘッダー部での氏名表記において、名前の読みが異なっているので、このように読み手が混乱してしまうのは仕方ないかもしれない。