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『事大主義――日本・朝鮮・沖縄の「自虐と侮蔑」』(室井康成 中公新書 2019)

著者:室井 康成[むろい・やすなり](1976-) 
地図作成:地図屋もりそん
表作成:関根美有
NDC:210.6 日本史(近代 1868- ,明治時代 1868-1912)

 

事大主義―日本・朝鮮・沖縄の「自虐と侮蔑」|新書|中央公論新社 (chuko.co.jp)

 【メモランダム】

・メタ・国民性論。
 なお、冒頭の「はしがき」・「目次」・「地図」(pp. i-xiii)で、余白下部のページ表記を一ヶ所だけミスってる(この三つは中公新書の慣例に従い、頁表記をローマ数字にしているが、十二頁のみアラビア数字になっている)。 

 

・版元の内容紹介文。

事大主義とは、強者に追随して保身を図る態度である。国民性や民族性を示す言葉として、日本や朝鮮、沖縄で使われてきた。本書は、福沢諭吉陸奥宗光柳田国男朴正熙金日成司馬遼太郎などの政治家や知識人を事大主義の観点で論じ、時代の変遷を描く。日本への「島国根性」という批判や、沖縄への差別意識はどこに由来するのか。韓国と北朝鮮の相剋の背景は何か。自虐と侮蔑が交錯した東アジアの歴史が浮き彫りに。

http://www.chuko.co.jp/shinsho/2019/03/102535.html

 

 


【目次】
はしがき [i-vii]
目次 [viii-xii]
東アジア周辺地図 [xiii]
タイトル [001]
凡例 [002]

 

序章 「事大主義」という見方 003
  柳田国男の「日本人」像
  引き継がれる事大主義観
  韓国・北朝鮮批判としての事大主義言説

 

第1章 「国民」の誕生と他者表象 011
1 「事大」とは何か 011
  語源は『孟子』の一節
  朝鮮での「事大」の解釈
  儒教的安全保障論
  琉球での捉え方
  悪い意味ではなかった
2 福沢諭吉“造語説”の真偽 021
  漢語と訳語の組み合わせ
   『福翁自伝』で語られたこと
  明治維新直後の日朝関係
  甲申政変への福沢の関与
  福沢のいう事大主義
  一人歩きする事大主義
3 朝鮮に対する全体表象へ 033
  日清戦争
  「国民」の成立
  「他者」としての朝鮮の発見
  陸奥宗光の「事大」観
  「頼る」という意味の定着
  「事大根性ぜんぜん呈露す」

 

第2章 反転する「事大主義」――他者喪失によるベクトルの内向 045
1 韓国併合と意味の変質 045
  日露戦争勝利の内的リアクション
  他者喪失としての韓国併合
  事大主義普遍説
  反転しなかった人々
  朝鮮独立運動と事大主義観の変化
2 「島国」の国民性 058
  柳田国男の捉えた事大主義
  非主体性としての意味の確定
  「島国」という特性
  「日本=島国=事大主義」観の形成
3 大正デモクラシーと事大主義批判 067
  日本人の克服対象
  辛亥革命北一輝の事大主義観
  普通選挙導入への危惧
  事大主義の打破が叫ばれた衆議院総選挙
  政治教育と青年団運動
  政治改良論としての柳田民俗学構想
  女たちの事大主義批判

 

第3章 沖縄「事大主義」言説を追う――「島国」をめぐる認識の相克 087
1 沖縄はかく「発見」された 087
  共通課題の発見
  沖縄の自画像
  折口信夫の日琉同祖論
2 伊波普猷沖縄県民性論 095
  「事大主義」は自称か
  県民性という理解
  アイデンティティの模索
3 軍からの眼差し 104
  陸軍首脳への現地報告
  事大主義観の暴力性

 

第4章 戦後日本の超克対象として――「事大主義」イメージの再生 109
1 敗戦前後の事大主義観 109
  国民性論からの乖離
  ファシズムへの警鐘
  山川菊栄の一貫性
  「一億総懺悔」と「悔恨共同体」
2 新憲法論議の中の「事大主義」 118
  日本国憲法教育基本法
  敗戦要因としての事大主義
  白熱する事大主義論争
  国民性論への回帰
3 「良き選挙民」を育てるために 128
  戦後民俗学の新目標
  想定された民俗
  「なんぼ年寄りでも、是は確かに臆病な態度であつた」
  マス・コミュニケーションに抗せよ
4 戦後沖縄の自己表象と事大主義言説 198
  アメリカ施政下での自己認識として
  「自分で事大を主義などといったわけではない」
  読み替えの陥穽
  県政界の他者化
  現状から考えさせられたこと

 

第5章 朝鮮半島への「輸出」――南北対立の中の事大主義言説 151
1 ふたたび「他者」となった韓国・北朝鮮 151
  朝鮮の解放・分断
  日本統治下の事大主義言説
  限定的な情報
  想起される「事大主義」
2 南北いずれが事大主義か 160
  朴正煕の登場
  北朝鮮の反応
  対概念としての「主体思想
  民俗の否定
  「漢江の奇跡」と事大主義言説の変化
3 先鋭化する「事大主義」 
  イデオロギー化の恐怖
  金泳三の粛清理由
  朴正熙が仕掛けた政敵排撃
  「亡国」の論理として

 

終章 “鏡”としての近現代東アジア 185
  戦後日本の事大主義イメージ
  「事大主義」から「事小主義」へ
  「空気」を読む
  本当に国民性なのか
  「事大主義」を超えて

 

あとがき(二〇一九年三月四日 「平成」の終焉を来月に控えて 室井康成) [197-201]
参考文献 [203-212]

 

 

 

【メモ】
語源。「梁惠王 下」から

 齊宣王問曰:「交鄰國有道乎?」
  孟子對曰:「有。惟仁者為能以大事小,是故湯事葛,文王事昆夷。惟智者為能以小事大,故太王整事獯鬻,勾踐事吳。以大事小者,樂天者也;以小事大者,畏天者也。樂天者保天下,畏天者保其國。《詩》云:『畏天之威,於時保之。』」
  王曰:「大哉言矣!寡人有疾,寡人好勇。」

孟子/梁惠王下 - 维基文库,自由的图书馆

 

 

・この記事では著者の名前の読みを「Yasunari」としておいたが、こちらの書評の末尾で松岡正剛は、「Kousei」としている。ただ、著者のresearchmapのURL("https://researchmap.jp/muroikosei")とヘッダー部での氏名表記において、名前の読みが異なっているので、このように読み手が混乱してしまうのは仕方ないかもしれない。