contents memorandum はてな

目次とメモを置いとく場

『アルコール・薬物依存症を一から見直す――科学的根拠に基づく依存症の理解と支援』(William R. Miller, Kathleen M. Carroll[編] 森田展彰[監訳] 佐藤明子[訳] 誠信書房 2020//2006)

原書:Rethinking Substance Abuse: What the Science Shows, and What We Should Do about It (The Guilford Press, 2006)
編者:William R. Miller 心理学、精神医学(アディクションに対する行動療法)。
編者:Kathleen M. Carroll 精神医学(物質使用障害に対する行動療法)。
監訳者:森田 展彰[もりた・のぶあき] 精神科医。司法精神医学、精神衛生学。
訳者:佐藤 明子[さとう・あきこ] 翻訳家。
装幀:吉田 憲二[よしだ・けんじ] 装丁家
NDC:493.156 アルコール中毒


【目次】
はじめに [iii-v]
謝辞 [vi-vii]
目次 [viii-xii]


  第 I 部 序論 001

第1章 問題の定義と取り組み[Kathleen M. Carroll,William R. Miller] 002
一から見直すべき時があるとしたらそれは今だ 002
話は変わって…… 004
どんな用語を使うかは重要だ 005
幅広い見方 006


第2章 森と木々――複雑な自己組織化システムとしてのアディクション[Warren K. Bickel,Marc N. Potenza] 009
起源 011
遂行能力と相互作用 015
自己組織化 017
多モジュール自己組織化系の発生――モデル案 020
問いへの答え 022
結論 024
確かな原則 024
推奨文献 026


  第II部 生物学的要因 029

第3章 アディクションの神経生物学――快楽に関するカルヴァン主義の見方[George F. Koob] 030
アルコール・薬物に対する乱用と依存の動物モデル 030
  静脈内薬物自己投与
  脳刺激報酬
  場所選好
  薬物摂取量の増大
  薬物離脱の動機づけ作用の動物モデル
  渇望の動物モデル
中毒の神経薬理学 038
  ドーパミン
  オピオイドペプチド
  γ-アミノ酪酸
  エンドカンナビノイド
依存の動機づけ作用の神経薬理学 043
  脳内報酬機能の低下――アディクション
  脳内ストレス系の活性化
再発の神経薬理学 046
  薬物誘発性の薬物探求行動の再開
  キュー誘発性の薬物探求行動の再開
  ストレス誘発性の薬物探求行動の再開
アディクションへの脆弱性――遺伝的標的 047
アロスタシスから見たアディクションの神経薬理学 049
  対抗適応
  神経適応とアロスタシス
今後の展望 051
要約と結論 052
確かな原則 053
謝辞/推奨文献 054


第4章 ヒトの脳画像が教えてくれるアディクションの発症と再発に対する脆弱性[Anna Rose Childress] 056
当事者に目標を持たせ,依存症になったことに関する責任から解放すること 057
生まれたときから始まる脳の違い――遺伝はアディクション脆弱性を高める脳の違いを作り出す可能性がある 058
思春期――脳の「進め!」回路と「止まれ!」回路の発達がアンバランスな時期 059
脳画像を用いてアディクションのある人の脳の中を「見る」ことができる 061
  脳画像はアディクションのある人の「進め!」システムにおける違いを示している
    D_2ドーパミン受容体の少なさ
      【結果なのか原因なのか】
      【まとめ】
      【予防や治療のための意味づけ】
    乱用薬物および「進め!」と命じる薬物キューに対する脳の反応
      【乱用薬物に対する脳の反応】
      【「進め!」と命じる薬物キューに対する脳の反応】
脳画像はアディクションのある成人における「止まれ!」システムの弱点も示している 068
    原因なのか結果なのか
    予防や治療のための意味づけ
確かな原則 071
推奨文献 072


  第III部 心理学的要因 075

第5章 自然変化と「やっかいな」物質使用――ライフコースの観点から[Carlo C. DiClemente] 076
自然変化と問題使用の発現 079
物質乱用歴 082
自然変化と意図的行動変化のプロセス 084
結論 091
確かな原則 092
謝辞/推奨文献 093


第6章 物質使用障害と精神障害の併存[Kim T. Mueser,Robert E. Drake,Win Turner,Mark McGovern] 095
併存症の有病率と結果 095
  精神障害と物質使用障害の併存率
  併存症がもたらす結果
高い併存率を理解する 097
  二次的精神病理モデル(Secondary Psychopathology Models)
  二次的物質乱用モデル(Secondary Substance Abuse Models)
  共通因子モデル(Common Models)
  双方向モテ(Bidirectional Models)
  まとめ
全体的アプローチ 104
  統合治療モデル(Integrated Treatment Models)
  4象限モデル(Quadrant Models)
  まとめ
思春期の子どもたちにおける併存障害 109
  包括的な反復評価
  有病率
  併存症がもたらすまいなすの影響
  予防の機会
  思春期の子どもたちにおける併存障害治療
  まとめ
確かな原則 115
推奨文献 116


第7章 アディクション行動における動機づけ要因[William R. Miller] 118
個人内の動機づけ 119
  心理測定学的な概念構成体
  自然言語からの推測
  行動からの推測
  何に対する動機づけなのか
  まとめ
対人的な動機づけ 122
  治療者効果(Therapist Effect)
  コミットメント(Commitment)
  動機づけ面接
  家族を介した介入
  まとめ
背景(コンテクスト)からの動機づけ 126
  規範(適切な飲酒量の認識)
  変化の障壁
  随伴性
  まとめ
変化を予測する 129
  まとめ
変化への動機づけに影響を与える 131
  何がうまくいかないのか
    啓発(Enlightenment
    対決
    罰
  何がうまくいくのか
  まとめ
断片をつなぎ合わせる 136
確かな原則 138
推奨文献 139


  第IV部 社会的要因 141

第8章 家族などの親密な人間関係[Barbara S. McCrady] 142
前置きとして 142
  親密な関係を定義する
  広範な問題
家族,社会的ネットワーク,そして物質使用障害についてわかっていること 145
  アルコールや他の薬物の使用障害を抱えている人たちは,家族や友人のネットワークの中で生活しており,また家族や友人のネットワークとの関係性を持っている
  家族関係は,アルコール問題や薬物問題の発生を防ぐ役割を果たすことがある
  飲酒者や薬物使用者の家族や他の親しい人たちは,物質使用・物質使用障害の発症や維持の一因となることがある
  飲酒者や薬物使用者の家族や他の親しい人たちは,本人の問題認識と援助希求を助けるうえで役割を担う
  飲酒者や薬物使用者の家族や他の親しい人たちは,変化のプロセスや治療の成功に重大な影響を及ぼす
  飲酒者や薬物使用者の家族や他の親しい人たちは,変化の維持に重要な役割を果たす
  物質使用障害を抱えている人がいる家庭では,暴力が蔓延しており,このことを治療や予防における主要な懸念事項とすべきである
何がうまくいくのか 154
  効果的な予防的家族介入
  物質乱用者のための効果的な家族/社会的ネットワークアプローチ
    問題認識と援助希求
    治療/能動的変化を促す積極的な関わり
  家族を巻き込んだ方がいい場合,巻き込まない方がいい場合
確かな原則 158
推奨文献 159


第9章 社会的背景と物質使用[Rudolf H. Moos] 161
理論的視点 161
家族と物質使用・乱用 163
  家族と思春期の子どもたち
    絆の形成とモニタリング
    親によるモデリング(モデル提示)
    ストレスと対処
    相互的影響のプロセス
    長期的影響
  家族と若い成人および成人
    役割の移行と社会的絆
    選択的配偶と配偶者モデリング
    夫婦家族における絆の形と社会的統制
  家族と治療開始および治療転帰  
友人・仲間集団と物質使用・乱用 167
  友人・仲間集団と思春期の子どもたち
    ピア・クラスター理論とピア・モデリング
    学校での規範,モデリング,そして社会的統制
    仲間の影響の調整因子
    相互的影響のプロセス
  友人・仲間集団と若い成人および成人
    仲間集団の影響の源
    ピア・モデリングと大学生の物質使用
    ピア・ネットワークと成人における大量飲酒
    相互的影響のプロセス
    友人・仲間集団と寛解・再発のプロセス
仕事と物質使用・乱用 173
  アルバイトと思春期の子どもたち
  若い成人および成人における仕事
    モデリング,規範,入手しやすさ
    モニタリングと監督
    職業ストレッサーと対処
居住地域と物質使用・乱用 175
  物質使用の規範とモデリング
  モデリングと社会的統制
  居住地域の貧しさとストレッサー
  領域横断的な影響
介入と予防のプログラム 177
  社会的絆とモニタリング
  モデリングと仲間意識
確かな原則 179
  理論的視点
  家族
  友人・仲間集団
  仕事
  居住地域
  介入と予防のプログラム
謝辞/推奨文献 182


  第V部 介入 185

第10章 行動療法――グラスさえあれば半分は満たせるのに[Bruce J. Rounsaville,Kathleen M. Carroll] 186
背景と概要 186
問題のある物質使用の根底にある基礎的プロセス 188
  古典的な条件づけおよびオペラント条件づけによる連合学習に基づく過剰な動因
  神経適応,神経毒性,発症前から存在する脳内報酬回路の弱点のうちいずれか,あるいはすべて
ブレーキを補強し動因を弱める――行動療法の有効性 190
  短期療法(ブリーフセラピー)モデルと動機づけモデル
  随伴性マネジメントモデル
  社会的学習,スキルトレーニング,認知行動モデル
  社会的支援,社会的ネットワーク,家族モデル
物質依存における行動療法と基本プロセス 196
  ブレーキの補強
  動因の低減
今後の展望 199
確かな原則 202
  行動療法的介入の有効性
謝辞/推奨文献 204


第11章 宗教,スピリチュアリティと,「やっかいな」物質使用[Keith Humphreys,Elizabeth Gifford] 206
序論と背景 207
  定義
  宗教とその物質使用に対する見解
  スピリチュアリティを志向する相互支援団体とその物質使用に対する見解
  社会科学と宗教・スピリチュアリティを志向する団体
「やっかいな」物質使用の発症予防 211
  宗教との関わりがもつ保護的作用
  宗教と予防政策
  予防におけるパートナーとしての宗教団体と科学者
  スピリチュアリティを志向する相互支援団体と予防法
宗教/スピリチュアリティを志向するアディクション治療 215
  宗教は活発なアイデンティティを抑えられるのか
  宗教/精神性に基づく治療の評価
  宗教やスピリチュアリティの治療転帰への貢献
  断酒・断薬達成後の宗教やスピリチュアリティ
  治療と回復におけるパートナーとしての宗教団体や聖職者
アディクションからの回復の開始因子および維持因子としてのスピリチュアリティを志向する相互支援グループ 220
  アラノン【Al-Anon】への参加の転帰
  アルコホーリクス・アノニマス(AA)
  コカイン・アノニマスとナルコティクス・アノニマス
  12ステップグループが物質使用に与える影響の仲介因子
  12ステップグループへの参加のスピリチュアリティに関する転帰
  結論
確かな原則 226
謝辞/推奨文献 227


第12章 必要なのはシステムだ――柔軟で有効な物質乱用治療システムを構築する[A. Thomas McLellan] 229
治療コンポーネントに関する研究結果の概略 230
  治療場所の提供
  治療機関の長さと治療へのコンプライアンス
  アルコホーリクス・アノニマスなどのピアサポート型治療への参加
  治療者またはカウンセラー
  薬物療法
    オピオイド依存に対する薬物療法
    アルコール依存に対する薬物療法
    精神刺激薬依存に対する薬物療法
    薬物療法について一般的にいえること
  専門分野別サービスの提供
  患者と治療のマッチング
現在のアディクション治療システムの概略 243
  アディクション専門部門による成人を対象としたアディクション治療システム
  専門部門による思春期の子どもたちを対象としたアディクション治療システム
    専門資格をもつスタッフの不足
    サービス提供のための資金の不足
まとめと考察 247
確かな原則 249
謝辞/推奨文献 249


第13章 科学的知識を統合して全体像を描く―― 10の原則,10の提言[William R. Miller,Kathleen M. Carroll] 251
アルコールや薬物の使用およびアルコール・薬物問題に広く適用できる原則 253
  〈原則1〉アルコールや薬物の使用は選択された行動である
  〈原則2〉アルコール・薬物問題は徐々に現れ,重症度連続体の全域で起こる
  〈原則3〉いったん確立されてしまうと,アルコール・薬物問題は自己永続的になる傾向がある
  〈原則4〉動機づけが予防と介入の中核をなす
  〈原則5〉アルコールや薬物問題は
  〈原則6〉アルコール・薬物問題は単独で起こるのではなく,行動クラスターの一部として起こる
  〈原則7〉問題となるアルコール・薬物の使用には特定可能かつ修正可能な危険因子と保護因子がある
  〈原則8〉アルコール・薬物問題は家族的背景の中で生じる
  〈原則9〉アルコール・薬物問題はより大きな社会的背景に影響される
  〈原則10〉治療者とクライアントの関係性は重要だ
介入と社会政策のための提言 263
  〈提言1〉介入は,専門家に任せるべき問題ではなく,多くの公共・民間セクターで共有すべき幅広い社会的弱者責任である
  〈提言2〉最も深刻化したケースだけではなく,さまざまなレベルの問題をもつ事例の全般に対して,その問題をスクリーニングし,対処すること
  〈提言3〉アルコールや薬物の使用およびアルコール・薬物問題をより大きな人生背景の中で理解し,包括的なケアを提供すること
  〈提言4〉アルコールや薬物の使用とアルコール・薬物問題の解決法を探る際には,個人の背後にあるものまで視野に入れること
  〈提言5〉変化への動機づけとコミットメントを高めることが介入の早期目標かつ主要要素でなければならない
  〈提言6〉しっかりと確立されてしまったアルコールや薬物の使用パターンに変化を起こすプロセスは,通常,パターンを中断して断薬(断酒)の最初の期間を作り出すことから始まる
  〈提言7〉不使用に対する正の強化を高め,アルコール・薬物使用に代わる報酬源へのアクセスを充実させること
  〈提言8〉アルコールや薬物の使用の報酬としての側面を弱めること
  〈提言9〉サービスを,アクセスしやすく,低負担で,歓迎的で,助けになり,強力で,迅速で、魅力的なものにすること
  〈提言10〉科学的根拠に基づくアプローチを用いること
推奨文献 276


監訳者あとがき(2020年2月 筑波大学医学医療系 森田展彰) [277-280]
索引 [281-286]
編者紹介 [287]
執筆者紹介 [288-289]
監訳者紹介 [290]




【メモランダム】
・原著の版元サイトから、編者と寄稿者の紹介。

◆ABOUT THE EDITORS
William R. Miller, PhD, is Distinguished Professor of Psychology and Psychiatry at the University of New Mexico. A recipient of the Jellinek Memorial Award for alcoholism research, he is fundamentally interested in the psychology of change, and has focused in particular on the development, testing, and dissemination of behavioral treatments for addictions. Dr. Miller's publications include more than 30 books and 300 articles and chapters spanning behavior therapies, motivation, self-regulation, and the interface of psychology with spirituality and religion. He is named by the Institute for Scientific Information as one of the "world's most cited scientists."
All titles by William R. Miller

Kathleen M. Carroll, PhD, is Professor of Psychiatry at the Yale University School of Medicine. The author of over 180 journal articles and chapters, her research and clinical interests lie in the area of developing and evaluating behavioral therapies for substance use disorders, and combining therapies to maximize treatment outcome. Dr. Carroll is the past president of Division 50 (Addictions) of the American Psychological Association, and holds both Senior Scientist and MERIT awards from the National Institute on Drug Abuse, the latter being awarded to the top 1% of National Institute of Health investigators.


◆CONTRIBUTORS
Warren K. Bickel, PhD, Department of Psychiatry and Center for Addiction Research, University of Arkansas for Medical Sciences, Little Rock, Arizona

Robert G. Carlson, PhD, Center for Interventions, Treatment, and Addictions Research, Department of Community Health, Wright State University Boonshoft School of Medicine, Dayton, Ohio

Kathleen M. Carroll, PhD, Department of Psychiatry, Yale University School of Medicine, New Haven, Connecticut; Department of Psychiatry, Veterans Affairs Connecticut Healthcare Center, West Haven, Connecticut

Anna Rose Childress, PhD, Addiction Treatment Research Center and Department of Psychiatry, University of Pennsylvania School of Medicine, Philadelphia, Pennsylvania

Carlo C. DiClemente, PhD, Department of Psychology, University of Maryland, Baltimore, Maryland

Robert E. Drake, MD, Departments of Psychiatry and Community and Family Medicine, New Hampshire-Dartmouth Psychiatric Research Center, Dartmouth Medical School, Hanover, New Hampshire

Elizabeth Gifford, PhD, Program Evaluation and Resource Center, Veterans Affairs Health Care System, Menlo Park, California

Deborah Hasin, PhD, Departments of Epidemiology and Psychiatry, Columbia University, New York, New York; Department of Research Assessment and Training, New York State Psychiatric Institute, New York, New York

Mark Hatzenbuehler, BA, Department of Psychology, Yale University, New Haven, Connecticut

Michie N. Hesselbrock, PhD, University of Connecticut School of Social Work, West Hartford, Connecticut

Victor M. Hesselbrock, PhD, Department of Psychiatry, University of Connecticut Health Center, Farmington, Connecticut

Harold D. Holder, PhD, Prevention Research Center, Pacific Institute for Research and Evaluation, Berkeley, California

Keith Humphreys, MD, Program Evaluation and Resource Center, Veterans Affairs Health Care System, Menlo Park, California

George F. Koob, PhD, Department of Neuropharmacology, The Scripps Research Institute, La Jolla, California

Thomas R. Kosten, MD, Department of Psychiatry, Yale University School of Medicine, New Haven, Connecticut; Department of Psychiatry, Veterans Affairs Connecticut Healthcare Center, West Haven, Connecticut

Barbara S. McCrady, PhD, Graduate School of Applied and Professional Psychology and Center of Alcohol Studies, Rutgers University, Piscataway, New Jersey

Mark McGovern, PhD, Department of Psychiatry, New Hampshire-Dartmouth Psychiatric Research Center, Dartmouth Medical School, Hanover, New Hampshire

A. Thomas McLellan, PhD, Treatment Research Institute, Philadelphia, Pennsylvania

William R. Miller, PhD, Departments of Psychology and Psychiatry, University of New Mexico, Albuquerque, New Mexico

Rudolf H. Moos, PhD, Center for Health Care Evaluation, Veterans Affairs Health Care System, Menlo Park, California; Department of Psychiatry and Behavioral Sciences, Stanford University, Stanford, California

Kim T. Mueser, PhD, Departments of Psychiatry and Community and Family Medicine, New Hampshire-Dartmouth Psychiatric Research Center, Dartmouth Medical School, Hanover, New Hampshire

Stephanie S. O'Malley, PhD, Department of Psychiatry, Yale University School of Medicine, New Haven, Connecticut

Marc N. Potenza, MD, Problem Gambling Clinic, Connecticut Mental Health Center, New Haven, Connecticut; Women and Addictions Core of Women's Health Research and Department of Psychiatry, Yale University School of Medicine, New Haven, Connecticut

Bruce J. Rounsaville, MD, Department of Psychiatry, Yale University School of Medicine, New Haven, Connecticut; Department of Psychiatry, Veterans Affairs Connecticut Healthcare Center, West Haven, Connecticut

Win Turner, PhD, Department of Psychiatry, Dartmouth Medical School, Hanover, New Hampshire

Rachel Waxman, BA, Department of Research Assessment and Training, New York State Psychiatric Institute, New York, New York


・つづいて簡易目次。

,TABLE OF CONTENTS,
   I. Introduction
1. Defining and Addressing the Problem, Kathleen M. Carroll and William R. Miller

2. The Forest and the Trees: Addiction as a Complex Self-Organizing System, Warren K. Bickel and Marc N. Potenza

   II. Biological Factors
3. The Neurobiology of Addiction: A Hedonic Calvinist View, George F. Koob

4. What Can Human Brain Imaging Tell Us about Vulnerability to Addiction and to Relapse?, Anna Rose Childress

5. Genetics of Substance Use Disorders, Deborah Hasin, Mark Hatzenbuehler, and Rachel Waxman

   III. Psychological Factors
6. Natural Change and the Troublesome Use of Substances: A Life-Course Perspective, Carlo C. DiClemente

7. Developmental Perspectives on the Risk for Developing Substance Abuse Problems, Victor M. Hesselbrock and Michie N. Hesselbrock

8. Comorbid Substance Use Disorders and Psychiatric Disorders, Kim T. Mueser, Robert E. Drake, Win Turner, and Mark McGovern

9. Motivational Factors in Addictive Behaviors, William R. Miller

   IV. Social Factors
10. Racial and Gender Differences in Substance Abuse: What Should Communities Do about Them?, Harold D. Holder

11. Family and Other Close Relationships, Barbara S. McCrady

12. Social Contexts and Substance Use, Rudolf H. Moos

13. Ethnography and Applied Substance Misuse Research: Anthropological and Cross-Cultural Factors, Robert G. Carlson

   V. Interventions
14. Behavioral Therapies: The Glass Would Be Half Full If Only We Had a Glass, Kathleen M. Carroll and Bruce J. Rounsaville

15. Pharmacotherapy of Addictive Disorders, Stephanie S. O'Malley and Thomas R. Kosten

16. Religion, Spirituality, and the Troublesome Use of Substances, Keith Humphreys and Elizabeth Gifford

17. What We Need Is a System: Creating a Responsive and Effective Substance Abuse Treatment System, A. Thomas McLellan

18. Drawing the Science Together: Ten Principles, Ten Recommendations, William R. Miller and Kathleen M. Carroll

【抜き書き】

・「監訳者あとがき」の冒頭部(p. 277)。

 本書は,William R. Miller and Kathleen M. Carroll (Eds.). Rethinking Substance Abuse: What the Science Shows, and What We Should Do about It. Guilford Press, 2006 の抄訳である。原書は5部構成の全18章から成っており,そのうち邦訳を出版するうえでの分量・価格のバランスをとるために,断腸の思いで5章(遺伝的要因,エスノグラフィー,社会的文脈など)を省略している。興味のある方はぜひ原書にあたってほしい。


・本書の成り立ち。

〔……〕米国でアディクションに関する研究や臨床を中心になって進めてきた26人が2004年にニューメキシコで会合し,3日間のプレーンストーミングを通じて,今行われているアルコール・薬物依存の理解や働きかけをいったん棚上げして,純粋にこれまでの研究を基にしたら,どのような支援や治療が考えられるのかが話し合われた。たとえば,診断名として「物質依存」という言葉もいったんはやめて,あえて「やっかいな使用:troublesome use」という言葉を用いており,依存症というのがくっきりと分けられる疾病だということを前提にしない立場をとっている。本書はその会議の成果としてまとめられたものである。
 生物学,薬理学,心理学,社会学などの視点から,アルコール・薬物依存が生じるメカニズムそして,それに対する有効な介入を述べたのちに,それらを総合して,最後の章では,原則や提言にまとめている。その原則や提案は,一般に日本の社会で信じられがちな依存症への偏見と大きく異なるものであり,さらに臨床家でもやや混乱している考え方を正してくれるものになっている。


・同末尾(p. 280)

 本書は,上述のようにアルコール・薬物問題への厳罰主義と異なっているのみではなく,日本の臨床家が用いている依存症=病気モデルとも異なる幅広い視点を提供している。つまり,一部の危ないアルコール・薬物中毒者の治療を考えるのではなく,各個人のアルコール・薬物使用の裏にある多様なリスクを取り上げ,それに対処する力を促進する支援や情報提供を行うものである。これはアルコール・薬物使用を取りしまる「ユースリダクション(使用の低減)」の限界を超えるために世界的に用いられるようになった社会全体の損害=ハームを減らす「ハームリダクション(損傷の低減)」というアルコール・薬物政策に通じるものである。このハームリダクションは日本でも近年注目され始めているが,十分に理解されているとはいえず,注射針やコンドームを配る方法や単純に節酒を認める方法だと勘違いしている者も多い。監訳者としては,多くの人に,本書の示すエビデンスに基づく原則や提言にふれていただき,それがエビデンスを基にした広い視点からの,アルコール・薬物依存問題への対応や支援に関する議論の契機になることを期待している。

・「はじめに」から(p. iv)。あるカンファレンスの開催と本書のもつ特徴。

私たちは,2004年にニューメキシコ州で「シンクタンク」会議を開催した。「やっかいな物質使用と闘うためのアプローチに関する会議」(Conference on Approaches for Combating the Troublesome Use of Substances: CACTUS)と題されたこの会議の開催は,ロバート・ウッド・ジョンソン基金からの資金援助も受けて実現した。本書に寄稿している執筆者たちは全員,CACTUS に参加したメンバーである。〔……〕会場での発表は各レビューのごく簡単な要約のみで,ほとんどの時間を複数分野の研究成果の相互関係について議論したり,実践のための意味づけをブレーンストーミングしたりすることに充てた。〔……〕その後,執筆者たちは,CACTUS での議論をもとに自分のレビューを修正した。この本を構成する各章は,その最終産物である。
 本書は,いくつかの点で型破りだ。私たちはまず,科学の伝統である文献引用を禁止した。参照項目をはさむと文の流れが途切れてしまうからだ。その代わりに,私たちは,各執筆者の専門分野でわかっていることや,少なくとも安当なエビデンスが得られている事柄の要約を提供してくれるようお願いした。〔……〕私たちはまた,介入に関連づけることができそうな科学的知見から,一連の原則を導き出してほしいともお願いした。最後に私たちがお願いしたのは,有名な治療法や,慣れ親しんだサービスモデルやサービスシステムをいったん脇に置いてほしい。そして,介入のための具体的な勧告も差し控えてほしい,ということだった。したがって,本書の各章は,個々の実践よりも原則に焦点を当てている。



・「第1章 問題の定義と取り組み」から、用語法について。

  どんな用語を使うかは重要だ
 われわれが取り組んださらに複雑な問題の一つは,アルコールや他の薬物の使用に関連した概念や,一連の問題を記述するために使う用語の問題だった。現象を描写するために用いる名称は,人が問題をどのように考え,それに対処するかに影響を与える。この分野は,多くの意味を帯びてしまっている用語であふれている。長いあいだ,飲み過ぎに関連する問題を抱える人々には「飲んだくれ」 ,〔……〕「アルコール乱用者」といった名称が使われてきた。違法薬物使用者は「嗜癖者」,〔……〕「薬物乱用者」と呼ばれてきた。これらの用語には,それぞれ特定の付加された意味[注2 付加された意味としては、たとえば道徳的に悪いものであるとする偏見などがある。]が含まれている。同じように,「治療」(これ自体がある種の前提を含む概念である)という言葉も,矯正,リハビリテーション,回復,しらふでいること,再発防止,そしてハームリダクションにつながるものとして,さまざまな捉え方をされてきた。
 このような取り組みには,この分野にありがちな隠語やレッテルや軽蔑的表現を避けようと自らを律する以上の意味がある。政治的に正しい婉曲表現を見つけることが目的だったわけではなく,目的はむしろ,自分たちが取り組んでいる問題のもっと幅広い本質について,別の見方をするよう自らに強いることだった。われわれは,CACTUS 会議の標題に「『やっかいな』使用」(troublesome use)という表現を使うことにした。それが望ましい表現だからではない。それが馴染みのない言い回しで,快適な慣習からわれわれを引き離してくれたからだ。このことが,次にいくつかの基礎的な前提を明確にする助けとなった。


・薬物問題の背後にある、人の問題(pp.6-7)。

いくつかの意味で,この分野の中心的な問題が示してきたのは,昔からある人間のジレンマの縮図といえるものである。そのなかには,なぜ明らかに破壊的な結果を招く行動パターンに固執してしまうのかということや,生物学的自己・個人的自己・社会的自己のあいだの緊張関係,感情調節の可否や方法,そしてどのように目先の欲求充足と個人・家族・地域のより長期的な幸福のあいだで折り合いをつけてきたのか,ということを含んでいる。このように,「やっかいな」物質使用は,より広範な個人的・社会的・生物学的ドラマの一つの表れにすぎないのである。根底にある同じような問題や脆弱性がある人には薬物依存として,他の人には悲しみや引きこもりとして,別の人には攻撃的行動や犯罪行為として,さらに別の人にはそれらすべてを含むものとして表出する。〔……〕そのような人間共通の問題が,ときにアルコールや薬物の「やっかいな」使用として表出するだけのことなのである。