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『問題解決のための「社会技術」――分野を超えた知の協働』(堀井秀之 中公新書 2004)

著者:堀井 秀之[ほりい・ひでゆき](1958-) 社会技術論、イノベーション論、岩盤力学。
NDC:360 社会
NDC:361.98 社会計画[社会工学],社会開発


問題解決のための「社会技術」|電子書籍|中央公論新社



【目次】
はじめに [ii-v]
目次 [vi-ix]


第1章 複雑化する社会問題
なぜ解決困難な問題が多いのか
SARS問題から見えてくるもの
問題の高度化
価値観の多様化?
活用できる知を総動員する


第2章 問題解決の方法論
問題解決の心理学
ヒューリスティックが鍵を握る
クリエイティヴな発想のメカニズム
アルゴリズム、メンタルモデル、アナロジー推論
問題解決と「設計」
プロセスをモデル化する
「講義が面白くない」を解決する
コラム複雑な事柄を取り扱う技術


第3章 社会問題を解決する技術
社会技術とは何か
社会技術の設計
全体像の把握から具体的解決へ
社会技術の立案
制度をどう組み合わせるか
社会の変化を予測する
評価のプロセス
コラム 議論を噛み合わせる価値マップ


第4章 安心社会を実現するために
社会技術の研究体制
問題の全体像を把握する技術
原発トラブル隠しの要因
俯瞰的アプローチ
リスクマップを作成する
リスクへの有効な対策
診療ナビゲーションシステム
交通安全性を向上させるシステム
原子力災害の危機管理システム
会話型知識プロセスの構築
コラム 途上国の問題を解決する


第5章 組織に生かす社会技術
コンプライアンス経営とは
現場のモラルハザードをどう防ぐか
あるシンクタンクの取り組み
問題の本質を明らかにする
社会技術の方法論を援用する
失敗学からどう学ぶか
コンプライアンス強化の具体策
社会技術研究がブレークスルーを生む


参考文献 [162-166]
あとがき [167-172]





【抜き書き】

 発明という行為にも、科学の創造と同じようなところがある。ニーズがあり、そのニーズに応える工夫を思いつくということは、現象を説明する法則の発見とよく似ている。発明においても、工夫を思いついたあと、その工夫によって、どのような結果が得られるかという演繹的推論が行われる。
 観察された現象を説明する法則を、帰納的推論にもとづいて導くという創造的思考過程と、ニーズに応える発明を思いつく過程には共通点が多い。どちらも暗黙知(言葉で説明できないが、経験などを通じて理解して使っている知識)をフルに活用する行為であり、特に、どのような法則がどのような現象を説明するのか、どのような工夫がどのような利便性をもたらすのかという因果関係に関する予測能力、すなわち、演繹的推論の能力が重要な役割を果たす。どのような工夫がどのようなニーズに応えるかという因果関係を、数多く、そして幅広い対象に関して経験し、記憶していることが、優れた発明者の必要条件である。