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目次とメモを置いとく場

『はじめてのUXリサーチ――ユーザーとともに価値あるサービスを作り続けるために』(松薗美帆, 草野孔希 翔泳社 2021)

著者:松薗 美帆[まつぞの・みほ] 文化人類学マーケティング。UXリサーチ。
著者:草野 孔希[くさの・こうき] システムデザイン・マネジメント。UXリサーチ。
NDC:675.2 マーケティング(市場調査.市場予測)


はじめてのUXリサーチ ユーザーとともに価値あるサービスを作り続けるために(松薗 美帆 草野 孔希)|翔泳社の本


【目次】
Introduction はじめに [003-009]
  なぜ本書を書こうと思ったのか
  UXリサーチ実践者の悩みに寄り添う
  本書を手に取って欲しい人
  本書が想定する実践のステージ
目次 [010-013]
問い合わせ先 [014]


Chapter 1 UXリサーチの捉え方
UXリサーチとは 016
UXリサーチの必要性が高まっている背景を捉える 017
UXリサーチのメリットを捉える 019
  リリース前に小さく失敗しながら学びを増やせる
  データを解釈する精度を高められる
  組織づくりに使える
UXリサーチを手段として捉える 025
  状況や目的に合ったサイクルを選ぶ
UXリサーチの分け方を捉える 028
  探索/検証のリサーチ
    探索のリサーチ
    検証のリサーチ
  質的/量的
    質的リサーチ
    量的リサーチ
  UXの要素ごとのリサーチ
    UXエレメント
    UXタイムスパン
    UXの要素を組み合わせて考える
  UXリサーチとマーケティングリサーチ
定義に囚われすぎない 036
  真摯なのリサーチを心がけよう
  自分の好みや得意も大切にしよう


COLUMN|UXリサーチで好きなところは? 039


Chapter 2 UXリサーチの始め方
始めること自体は目的ではない 042
まずは小さく始めてみよう 043
  高い専門性がなくても始められる
  予算がなくても始められる
  特別な設備や機材がなくても始められる
  時間がなくても始められる
  上司や同僚の理解がなくても始められる
実はもう始めていたUXリサーチ 046
何から始めるか 049
  探索のリサーチから始める
    活用例
  検証のリサーチから始める
    活用例
  すでにあるデータの活用から始める
    活用例
ひとつでも学びが得られたら前進している 052
より良いUXリサーチを目指す工夫 054
  ウォークスルーをやってみる
  自分1人で振り返りする
  他の人にフィードバックを依頼する
  他の人のスタイルから学ぶ
調査の実施だけではないUXリサーチのプロセス 054
  ○もっと詳しく学びたいときは 054


COLUMN|メルペイでのUXリサーチの始まり 056


Chapter 3 UXリサーチの組み立て方
UXリサーチで歩む7つのステップ 058
組み立て方の概要 059
状況を理解するには 060
  プロジェクトの状況
  リソース
    ヒト
    モノ
    カネ
    リソースに合わせて組み立て方は柔軟に考える
  権限
問いを立てるには 065
結果の活用を考えるには 067
  調査・分析作業への同席を通して共有する
  レポートで共有する
  ワークショップで共有・議論する
調査手順を考えるには 071
  調査対象を考えるには
  調査分析手法を選ぶには
  調査のスケジュールを考えるには
組み立てたプランをまとめて、準備を進める 073
  調査の実施手順を具体化する
  調査協力者を集める準備を進める


COLUMN|調査企画書ってどう書けばいいの? 077


Chapter 4 UXリサーチの手法を知る
本章で紹介する手法 082

ユーザーインタビュー 083
  どんなときに使うと良いか
  組み立て方
    一対一で行うか、一体複数で行うか
    質問することをどれぐらい決めて臨むか
    質問項目を考える
  実施手順
    序盤
    中盤
    終盤
  テクニック
    クローズド・クエスチョンとオープン・クエスチョンを組み合わせる
    5W3Hで深掘る
    オウム返し
    似ているものを挙げてもらう
    リフレーミング
    間接的な一般論で聞く
    複数の選択肢を提示する
  ○もっと詳しく学びたいときは 092


ユーザビリティテスト 093
  どんな時に使うと良いか
  組み立て方
    探索と検証
    タスクとシナリオを設計する
    実施時間の目安
    気軽に反復できるようにする
    書画カメラを活用する
  実施手順
    1. 事前インタビュー
    2. タスクの実行
    3. 事後インタビュー
  実施時のポイント
    思考発話をお願いする
    ぐっとこらえて観察する
    目撃者を増やす
  注意点
    実は念入りに
    タスクの実施順序に注意する
    良い悪いの結果だけに囚われない


コンセプトテスト 101
  どんなときに使うと良いか
  実施手順
    1. 事前インタビュー
    2. コンセプトの提示
    3. コンセプトの評価
  注意点
  ○もっと詳しく学びたいときは 103


アンケート 104
  どんなときに使うと良いか
  組み立て方
    計画を立てる
    対象者を定義する
    質問を設計する
  実施手順
    アンケートを配信する
    実施した結果を分析する
  注意点
  ○もっと詳しく学びたいときは 107


フィールド調査 108
    参与観察
    訪問調査
    行動観察
  どんなときに使うと良いか
  ○もっと詳しく学びたいときは 109


ダイアリー調査 110
    どんなときに使うと良いか
    ○もっと詳しく学びたいときは 110


質的データの分析手法とは 111
  KA法
    どんなときに使うと良いか
    ○もっと詳しく学びたいときは 112
  SCAT[Steps for Coding and Theorization]
    どんなときに使うと良いか
    ○もっと詳しく学びたいときは 114
  mGTA[modified Grounded Theory Approach]
    時に使うと良いか
    ○もっと詳しく学びたいときは 115
  KJ法
    どんなときに使うと良いか
    ○もっと詳しく学びたいときは 117
  ペルソナ
    どんなときに使うと良いか
    ○もっと詳しく学びたいときは 119
  カスタマージャーニーマップ
    どんなときに使うと良いか
    ○もっと詳しく学びたいときは 121
  サービスブループリント
    どんなときに使うと良いか
    ○もっと詳しく学びたいときは 122
  分析手法の実務での使い方


COLUMN|質的データだけではないUXリサーチャー 124


Chapter 5 UXリサーチを一緒にやる仲間の増やし方
段階に応じた仲間の増やし方 126
まずは一度引き込んでみよう 126
  UXリサーチという単語を使わず、相手の視点から説明する
  小さく実績を作って共有しながら、おすすめする
    実績を用いて引き込んでいった事例
  キックオフとラップアップで関わりやすい雰囲気を作る
    実際の流れ


継続的な関係を構築しよう 132
  UXリサーチが必要な状況を察知できるようにする
  UXリサーチに関する情報を蓄積して参照しやすくする


より広く・多くの人を引き込もう 134
  組織の中で情報発信する
  外部に情報を発信して、組織の中に伝播させる
  主体的にUXリサーチを継続できる人を増やす


UXリサーチを文化にしよう 136
COLUMN|デザイナーからみたUXリサーチャー 139


Chapter 6 UXリサーチを活かす仕組みの作り方
ResearchOpsとは 142
  ResearchOpsの6要素
    ①リクルーティングの効率化
    ②ガバナンス
    ③ツール
    ④ナレッジマネジメント
    ⑤コンピテンシー
    ⑥広報活動


ResearchOpsの実践例 143
  ①リクルーティングの効率化
    リクルーティング手順を定義する
    調査協力者のデータベースを構築する
    スクリーニングのアンケート例を用意する
    日程調整を効率化する
    謝礼の管理コストを下げる
    リクルーティングをルーティン化する
  ②ガバナンス
    UXリサーチでご案内すべきことを定める
    同意書を用意する
    個人情報の管理ルールを作る
  ③ツール
    ソフトウェアを整備する
    ハードウェアを整備する
  ④ナレッジマネジメント
    データを一元化する
    データのアクセスしやすさを考える
  ⑤コンピテンシー
    テンプレートを整備する
    マニュアルを整備する
    学習コンテンツを用意する
  ⑥広報活動
    UXリサーチの価値を広げる


外部のパートナーと協働する 155
    調査会社に相談する
    リサーチアシスタントに委託する
    研修やセミナーを活用する


COLUMN|UXリサーチに役立つツール 157


Chapter 7 UXリサーチのケーススタディ
事例のラインナップ 160


事例1:利用上限金額の設定機能 161
  どのような取り組みか
  状況の理解
  組み立て方
  準備・実施・分析の進め方
    コンセプトテスト
    ユーザビリティテスト
  結果の活用
  仲間の増やし方
  仕組みの作り方
 

事例2:maruhadaka PJ 165
  どのような取り組みか
  状況の理解
  組み立て方
    調査全体
  準備・実施・分析の進め方
    デプスインタビュー
    ダイアリー調査
    訪問調査
  結果の活用
  仲間の増やし方
  仕組みの作り方


事例3:おくる・もらう 180 
  どのような取り組みか
  状況の理解
  組み立て方
  準備・実施・分析の進め方
    1. 戦略検討
    2. サービス検討
    3. マーケティングプラン検討
  結果の活用
    1. 戦略検討
    2. サービス検討
    3. マーケティングプラン検討
  仲間の増やし方
    1. 戦略検討
    2. サービス検討
    3. マーケティングプラン検討
  仕組みの作り方


事例4:定額払い 189
  どのような取り組みか
  状況の理解
  組み立て方
  準備・実施・分析の進め方
    お客さまを深く理解するためのデプスインタビュー
    お客さま像を俯瞰して理解するための価値の構造化とペルソナの作成
    想いを固めてコンセプトを作るデザインワークショップ
    ワークショップの後はコンセプトテスト
    要件策定のためのユーザビリティテスト&改善
    サービスを俯瞰して体験をデザインするための検討合宿
  結果の活用
  仲間の増やし方
  仕組みの作り方


事例5:初期設定フロー 202
  どのような取り組みか
  状況の理解
  組み立て方
  結果の活用
  仲間の増やし方
  仕組みの作り方
  注意点


事例6:Weekly UXリサーチ 205
  どのような取り組みか
  状況の理解
  組み立て方
  仕組みの活用
    リリース前
    リリース後
    リニューアル
  結果の活用
  仲間の増やし方
  仕組みの作り方
    phase1:調査会社との協働
    phase2:リクルーティングの内製化
    phase3:リクルーティングの横断化


事例7:リモートUXリサーチ 212
  どのような取り組みか
  状況の理解
  組み立て方
  実施の仕方
  仕組みの活用
  リモートのメリット
  結果の活用
  注意点


COLUMN|UXリサーチャーのしくじり 219


Chapter 8 UXリサーチの実践知の共有
組織の中でUXリサーチの実践知を共有しよう 222
  お互いの活動を観察し合う
  日々の業務の中でレビューし合う
  KPTをして活動を振り返る機会を作る
  スキルを棚卸しするワークショップを行う 
  メンターに相談できる環境を作る

組織の外・業界と交流しよう 224
  イベント型の情報共有をする
  コミュニティ型の情報共有をする
  関連コミュニティで情報発信をする

COLUMN|本を書くための調査とは? 228


Appendix 付録 [230]
あとがき [231]




【メモランダム】
 本筋とは関係のない、かなり細かい点について、個人的な感想を書く。


 本書「7章 UXリサーチのケーススタディ」の「事例4:定額払い」(pp.189-201)が、興味深いが、不穏に感じらっれる。
 この「事例4:定額払い」では、2020年7月にサービスが開始された、「メルペイ定額払い」(厳密には「メルペイスマート払いの、定額払い」)実装までのリサーチが紹介されている。そして私が気になったのは二点;大雑把にいうと「開始した理由が嘘っぽいこと」「危険性の意識が甘いこと」。


・開始した理由:「事例4:定額払い」冒頭では「どんなリサーチを行ったか」を詳しく解説しているものの、「定額払いが必要なのか」にはほとんど答えていない。せいぜい「お客様の要望があった」と一行述べてあるだけだ。どの程度要望が届いたのかはわからない。しかし私は「それはあくまで建前で、実際は企業側が収益を拡大する意図で進めたのだろう」と邪推している。実際、メルカリ以外に大手のカード会社でも実質リボ払いのサービスを用意している(後述するように、すでに悪評がたってしまっている「リボ払い」という名称を避け「定額支払い」など別の名称をつけたうえで)。


・企業側の危険性の意識、または注意喚起:「事例4:定額払い」には、この定額払いが要注意のリボ払いであることもほとんど書かれていない。負の面について言及してあるの箇所も、「使いすぎへの不安や嫌な体験をしたという声があった」と3行で済ませてある(著者たちも知識として知っているはずだが)。
 これは注意喚起としては分量が足りないし、定額払いにまつわる表現もオブラートで多重に包装してしまっている印象を受ける。この点に関しては、消費者庁が「分かりづらいリボ払い」について取り上げている(意図せぬリボ払い 利用明細は必ず確認(見守り情報)_国民生活センター)。


・そもそも本当に危険なのか、については長くなるので割愛。私は「消費者サイドは注意すべき」というスタンス。
 納得しない方には、1990年代までの日本の小口金融を概観した『サラ金の歴史――消費者金融と日本社会』(小島庸平 中公新書 2021年)を参照して、金融包摂の意義と過去の社会問題を再度確認してほしい。なお『サラ金の歴史』ではリボ払いの存在感が薄いこと(そしてその代わりにサラ金が発達したこと)も指摘されている。


 本書では(金融とユーザーがかかわる問題として)「定額払いが必要なのか」または「本当に必要か」という重大な問いがスルーされてしまっていることに、私は引っかかった。もちろんクレジットカードやサラ金が、金融のひとつの役割を担っていることが確かなのと同様に、くだんの「定額払い」にも意義はある。しかし、名称だけ変えて(過去の消費者が経験し獲得してきた)注意のアンテナをかいくぐるような行為には納得できない。
 もちろん、「その問題を吟味することは市場調査の領域にあるのか」や「市場調査の入門書に載せることか」という点は、読者それぞれで意見が異なるかもしれない。私と意見が異なる方からすると、「この苦情は宛先が違う」ということになる。