著者:大門 正克[おおかど・まさかつ] (1953-) 日本近現代史。
【目次】
はじめに──「語る歴史,聞く歴史」から開ける世界 [i-vii]
目次 [viii-xii]
第1章 声の歴史をたどる──幕末維新の回顧録から柳田民俗学まで 001
語る歴史を文字にする試み
人は話を聞き,語ってきた──声と文字のあいだ
前近代における歴史の編さんと聞く歴史
近代の歴史学の成立と政治を聞く歴史
明治時代の速記と幕末維新回顧ブーム
『福翁自伝』
『光雲懐古談』という座談
「話上手」の時代──篠田鉱造の『百話』
声を記述する方法
柳田国男と民俗学の誕生──アカデミズム歴史学への批判
柳田国男の「聞く」
瀬川清子
瀬川清子の「聞く」
戦前の「語る歴史,聞く歴史」
代書屋
声の文化の終焉と黙読の時代
第2章 戦後の時代と「聞く歴史」の深化──戦争体験を中心にして 045
一九五〇~六〇年代の「語る歴史,聞く歴史」
画期としての一九七〇~八〇年代
戦後における「語る歴史,聞く歴史」の特質
戦後の政治を聞く歴史
国会図書館の政治談話録音
植民地を聞く歴史
朴慶植の強制連行を聞く歴史
野添憲治『花岡事件の人たち──中国人強制連行の記録』
『沖縄県史・沖縄戦記録』──戦争体験を聞く
『東京大空襲・戦災誌』──戦争体験を書く
沖縄戦を語る,聞く,叙述する──『沖縄県史・沖縄戦記録1』を読む
一九八〇年代までの「語る歴史,聞く歴史」
第3章 女性が女性の経験を聞く──森崎和江・山崎朋子・古庄ゆき子の仕事から 091
女性の経験を聞く動き
森崎和江
聞き書きとしてまとめられた『まっくら』
「聞く」ことへの自覚
山崎朋子
『サンダカン八番娼館』を再読する
『サンダカン八番娼館』へ至る道
山崎朋子と森崎和江
古庄ゆき子
『ふるさとの女たち』
朝鮮人女工二人の聞き書き
「オモニのうた」
記念碑的な作品
森崎・山崎・古庄──女性が女性の経験を聞く
戦後における二つの聞く歴史
第4章 聞き取りという営み──私の農村調査から 135
なぜ,聞き取りにとりくんだのか
私の聞き取りを振り返る
聞く方法と想定外の話
「テーマを聞く」から「人生を聞く」へ
「聞く」ということ── ask とlisten のあいだ
桜林信義さんの場合
壁にぶつかった私の聞く歴史
なぜ語ってもらうことができなかったのか
歴史叙述の困難
第5章 聞き取りを歴史叙述にいかす 161
二つの課題を受けとめる──聞く歴史と歴史叙述
沈黙という言葉── ask からlisten へ
listen から聞こえてきたこと
試される聞き手──被害の委譲
歴史のなかに「語る歴史,聞く歴史」を置き直す
「語る歴史,聞く歴史」をふまえた通史の構想
『戦争と戦後を生きる』での挑戦
通史への反応
戦後の学問と「語る歴史,聞く歴史」
中村政則『労働者と農民』
吉沢南の場合──難民との衝撃の出会い
聞き取りにおける「資料批判」
『私たちの中のアジアの戦争』の叙述方法
オーラル・ヒストリーの検討へ
「語る歴史,聞く歴史」をふまえた歴史叙述の試み
第6章 歴史のひろがり/歴史学の可能性 207
歴史はどこに?
一九九〇年代以降の現在と「語る歴史,聞く歴史」
なぜ「聞く歴史」がひろがっているのか
介護民俗学の聞き書きの〈現場〉で
性をめぐる困難を背負った人たちの〈現場〉から
体験を聞く歴史が成り立つ条件とは?
文字史料と「語る歴史,聞く歴史」,あるいは定義をめぐって
戦争体験を受け継ぐ,受け渡す
自分の言葉に責任をもつ
東日本大震災のあとで──すぐそばにある歴史
継続して聞くなかで
「語る歴史,聞く歴史」の可能性
あとがき(二〇一七年一〇月 大門正克) [245-249]
参考文献 [251-263]
【表一覧】
表1 戦前の「語る歴史、聞く歴史」(政治,座談,ジャーナリズム,民俗学など) 038-039
表2 戦後の「語る歴史、聞く歴史」1(政治,行政,ジャーナリズム,植民地,戦争体験) 048-049
表3 戦後の「語る歴史、聞く歴史」2(女性,労働/社会運動,学問) 050-051