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『批評の教室――チョウのように読み、ハチのように書く』(北村紗衣 ちくま新書 2021)

著者:北村 紗衣[きたむら・さえ]
編集協力:飯島 弘規  編集者
イラスト:とくなが あきこ グラフィックデザイナー、イラストレーター。


筑摩書房 批評の教室 ─チョウのように読み、ハチのように書く / 北村 紗衣 著

 批評はなによりも、作品を楽しむためにあります。本書では、批評を「精読する」「分析する」「書く」の3つのステップに分けて、そのやり方を解説していきます。チョウのように軽いフットワークで作品を理解し、ハチのように鋭い視点で読み解く方法を身につけましょう。必要なのは、センスではなく調査力と注意深さ。そしていくつかのコツを飲み込めば、誰でも楽しく批評ができます。作品をより深く理解し、たくさんの人とシェアするための、批評の教室へようこそ。


【目次】
目次 [003-006]


プロローグ 批評って何をするの? 007


第一章 精読する 017
1 精読とは? 018
  ストーキングが許される場所はテクストだけ
  精読の始まり
  探偵になるために

2 精読のためにすべきこと 026
  作品内の事実を認定しよう
  作品が言っていることを読み取ろう
  トイレには死が潜んでいるので、少しだけパラノイアになろう
  ヒロインに優しくする男はだいたい口説こうとしている
  自分に邪な性欲があることを自覚しよう

3 精読のためにすべきではないこと 049
  みんなウソをついているので、誰も信じないようにしよう
  ウソを見抜けるようになろう
  とりあえず作者には死んでもらおう
  作者は死んでも歴史的背景は殺さないようにしよう


第二章 分析する 069
1 批評理論とは? 070
  巨人の肩の上に立とう
  インフィニティ・ウォーの勝ち方
  社会が決めた条件づけ
  一見簡単そうに見えて……

2 タイムラインに起こしてみる 085
  デレク・ハートフィールド作戦
  怪物を飼い慣らす
  タイムワープにご用心

3 とりあえず図に描いてみる 097
  人物相関図に起こしてみる
  詩も図にできる
  物語を要素に分解する
  『リア王』とおとぎ話
  モチーフ早見表を作る

4 価値づけする 114
  うまく書かれているか、ヘタに書かれているか
  愛はどこからくるのか
  作品の「友達」を見つける
  ネットワーキングの方法
  ウサギは全部追いかけろ


第三章 書く 131
1 書き始める 132
  自分は芸術家だということは覚えておこう
  一箇所から切り込もう
  タイトルは自分を縛るためにつける
  暗い嵐の夜じゃダメ

2 切り口を提示し、分析する 143
  うなぎをつかまえよう
  食に殉じるごん狐
  書けない時は照明を褒める(かけなす)

3 書くためのテクニック 143
  自由にのびのび書いてはいけない
  ほとんどの人間はラスキンじゃない
  ただの人間の感動には誰も興味はない
  オレに話してんのか?
  ルビッチならどうする?
  ルールすべてを無視しなさい
  あなたが實重ならどんなに型にはめても結局は實重になる
  人に好かれたいと思うのはやめよう


第四章 コミュニティをつくる──実践編 181
1 『あの夜、マイアミで』 186
2 『華麗なるギャツビー』 203


エピローグ 221


もっと学びたい人のための読書案内 [226-230]
参考文献 [230-238]





【抜き書き】
・「プロローグ」から。

 この本は批評方法の入門書です。作品について楽しく掘り下げたい、作品について他の人と考えを共有したいけれどもやり方がよくわからない、という人は多いと思います。そういう時に自分の分析を明確に文章にするような批評ができるようになると、作品を他の人と楽しくシェアできるようになります。この本はそうした読者や視聴者に向けて、楽しむための方法としての批評のやり方を一から解説するものです。批評というのは映画やアニメのような「芸術作品」としてイメージしやすいものから、ゲームやスポーツ、広告やファッションのようなものまで、何でも対象にできます。

 批評というのは、何をするものなのでしょうか? これについてはややこしい議論がいろいろあるのですが、ものすごく雑にまとめると、作品の中から一見したところではよくわからないかもしれない隠れた意味を引き出すこと(解釈)と、その作品の位置づけや質がどういうものなのかを判断すること(価値づけ)が、批評が果たすべき大きな役割としてよくあげられるものだと思います。