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『「外国人嫁」の国際社会学――「定住」概念を問い直す』(大野恵理 有信堂高文社 2022)

著者:大野 恵理[おおの・えり] 国際社会学。移民研究、ジェンダー研究。
カバーデザイン:CRAFT
件名:外国人 (日本在留)
件名:ジェンダー -- 日本
件名:国際結婚
NDLC:EF72 社会・労働 >> 社会問題 >> 女性・家庭問題 >> 日本
NDC:367.21 社会 >> 家族問題.男性問題・女性問題 >> 女性史・事情 >> 日本


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【目次】
目次 [i-iv]


序章 本書の問題意識/結婚移住女性をめぐる国際移動研究
1. 問題意識 003

2. 先行研究の検討 004
  (1) 日本における国際結婚の概観
  (2) 農村や地方都市 (外国人散在地域) の国際結婚研究
  (3) 移民研究における結婚移住女性に関する研究の位置づけ
  (4) 先行研究における結婚移住女性の「定住」議論の限界

3. 研究課題 020
  (1) 課題① 結婚移住女性はモビリティをどのように発揮して居場所を見出したのか
  (2) 課題② 結婚移住女性の居場所には、どのような権力関係や構造が埋め込まれているか

4. 用語の定義 022
  (1) モビリティ(移動/移動性)
  (2) 国際結婚
  (3) 結婚移住女性
  (4) 外国人散在地域

5. 調査方法 027
  (1) 調査方法
  (2) 調査地の選定
  (3) 複数の調査地と対象者

6. 本書の構成 039


第1章 移住女性の「定住」をとらえる――「ホーム」をめぐる理論的検討

1. 移民研究における「定住」の議論とその限界 041
  (1) 研究対象者の偏りと捉え直し――定住「化」/「定住」
  (2) 移民の「定住」と「ホーム」

2. 「ホーム」は “Home, Sweet Home" ではない――フェミニスト地理学の知見の援用 050
  (1) フェミニスト地理学概観
  (2) フェミニスト地理学の「ホーム」 と移動

3. 移り変わる 「ホーム」 をとらえる―― A・ハーシュマンを援用して 055


第2章 農村空間のジェンダーと「ホーム」
1. はじめに 059
  (1) A市B地区(中山間地)概況――地理と歴史、産業
  (2) 地理的環境とジェンダー構造
  (3) 主要な対象者のプロフィール
    ①ダナ
    ②ブレンダ
    ③メロディー
    ④ルビー

2. 「農村花嫁」としての結婚移住プロセス 068
  (1) 旧B町の国際結婚と結婚移住プロセス
    ①旧B町の国際結婚の開始
    ②「お見合いツアー」と「農村花嫁」の条件
    ③「お見合い」に参加したフィリピン女性――ライフストーリーを中心に
    ④お見合いから結婚移住まで
  (2) 旧B町での移住後の生活
    ①行政による支援
    ②地域社女性との交流――「お茶のみ」への参加
  (3) 結婚移住プロセスに潜む理想化された「ホーム」

3. 結婚移住女性の農業・農外就労、 再生産労働 085
  (1) 「農村花嫁」の労働に関する先行研究
    農村社会における農家女性の労働
      「三重の苦労」負担
      農政の変化と農家女性の「社会的な営為」
  (2) 「農家の嫁」としての結婚移住女性のライフストーリー
    ①メロディーのケース
    ②ダナのケース
    ③ルビーのケース
  (3) 地域社会の社会的営為の継承と「ホーム」の抑圧

4. 新たな農家女性としての活動――地域住民とのトランスローカル農業ビジネス 100
  (1) 結婚移住女性の出身地域と特産品ビジネス
  (2) 出身家族の親族ネットワークと「塩のビジネス」の展開
    ① 地域社会にもたらした変化――フィリピンのイメージの向上
    ②「弟とか家族のためだからね、それだけです」――地域住民との協力関係
  (3) 相互補完的「協力」関係

5. 農村社会と「ホーム」 112
  (1) ジェンダー化された結婚移住と国境を越える「ホーム」
  (2) 農村社会における地域住民との関係性

6. 小括 113 


第3章 地域社会に埋め込まれたジェンダーと「ホーム」
1. はじめに 117
  (1) AC地区の概況
  (2) 空間的ジェンダー構造
  (3) 主要な対象者のプロフィール

2. 家族からの 「離脱」 結婚移住女性のライフストーリーから 125
  (1) 結婚移住女性の家族と社会関係に関する先行研究
  (2) ホンのライフストーリー ――積極的「離脱」から居場所を求めて
  (3) イルファのライフストーリー ――見えない圧力から逃れて

3.それでも、よりよい 「ホーム」を求めて 149
  (1) 非対称なジェンダー構造に絡み取られる結婚移住女性
  (2) 交流空間におけるインターセクショナリティ
  (3) 限定的な「離脱」と交渉

4. 小括 152


第4章 移民ネットワーク内のジェンダーと「ホーム」
1. はじめに 155
  (1) A市D地区の概要
  (2) 地理的環境とフィリピン女性へのスティグマ
  (3) 主要な対象者のプロフィール

2. 社会的ネットワークの変容と形成 159
  (1) 結婚移住女性の「定住」におけるネットワークに関する先行研究

3. 生活支援のネットワークの形成と分断 164
  (1) カトリック教会の概要と在日フィリピン女性支援
  (2) 教会ネットワークの形成――教会の支援を「結節点」としたつながり
  (3) 教会とネットワーク内部の変化――ステレオタイプと「噂」をする行為
  (4) 地域社会のジェンダー構造と移住女性規範の参照軸化は何をもたらすか

4. ネットワークからの 「離脱」と新たな「ホーム」 181
  (1) 多文化交流センターを起点としたフィリピン女性エスニックグループと「夫の会」
  (2) エスニックネットワークを離れた女性たちのその後――再構築される居場所

5. 連鎖的に移り変わる「ホーム」 196
6. 小括 197


終章 「ホーム」をめぐるジェンダーとモビリティ

1.本研究の結論 199
  (1) 課題① 結婚移住女性はモビリティをどのように発揮して居場所を発見したのか
  (2) 課題② 結婚移住女性の居場所にはどのような権力関係や構造が埋め込まれているか
  (3) 結婚移住女性の「定住」を問い直す

2. 今後の課題 205
  (1) 子どもの存在とジェンダー・ポリティクス
  (2) 中年世代で移住した女性の葛藤


参考文献 [209-221]
あとがき(雪おろしの鳴り響く初冬の新潟にて 大野 恵理) [223-226]
索引 [227-228]
著者紹介・奥付 [229]






【抜き書き】


・「あとがき」から初出情報。

 本書は、2020年3月にフェリス女学院大学人文科学研究科に提出した博士論文 「外国人散在地域における結婚移住女性の「定住」を問い直す――フェミニスト地理学の「ホーム」概念を手掛かりに」をもとに加筆修正したものである。
 博士論文の執筆過程では日本学術振興会特別研究員奨励費 (18J11413) の助成を受けた。 本書の出版にあたっては、 日本学術振興会科学研究費補助金研究成果公開促進費 (21HP5137) の助成を受け、 出版を実現することができた。
 また本書の一部は以下の既発表論文に基づいている。 ただし大幅な加筆・修正を行っている。


第1章
大野恵理, 2021 「移住女性の『ホーム』概念に関する予備的考察――その柔軟性と身体との関連について」 『理論と動態』 14:135-149.

第4章
大野恵理, 2019 「外国人非集住地域におけるフィリピン女性ネットワーク――分断をもたらす噂に着目して」『国際ジェンダー学会誌』 17:88-105.