編者:根岸 隆[ねぎし・たかし](1933-) 経済学、厚生経済学、経済学史。
【目次】
はしがき
1 経済学における科学と思想――パラダイムの内と外
1 哲学から科学へ 001
制度化された経済学 001
哲学と科学 003
2 科学の条件 006
実証主義の科学観 006
ポパーの反証主義 008
パラダイムと科学的研究プログラム 011
発見の文脈と維持の文脈 014
3 科学における主体 017
知識の有用性の分析 018
思想と理論における主体 023
経済学は「科学」か 024
4 外からの見方 026
2 「見えざる手」と市場の体系――スミス・リカード・マルサス
1 アダム・スミスと現代 031
市場の復権 031
ステュアートとスミス 032
スミスの生涯と著作 034
2 『諸国民の富』 038
分業と市場 038
分業と資本蓄積 040
「見えざる手」 042
安価な政府 043
3 自然価格の体系 045
長期均衡価格 045
成長と賃金率の上昇 046
成長と利潤率の低下 048
スミスの観察と直観 049
4 マルサスとリカード 050
スミスの忠実な後継者 050
偉大なスミス批判者 052
3 市場の体系と労働の価値――リカード・マルクス・スラッファ
1 はじめに 055
2 労働価値説 056
3 リカード、マルクスの主要命題 057
分配法則 058
分配の動学 060
マルクスによる搾取の発見 064
4 労働価値説によらない諸命題の証明 065
均等利潤率に基づく相対価格の体系 066
分配法則 067
動学命題 071
搾取の存在 074
5 スラッファの理論が浮かび上がらせた古典派の特徴 076
4 ジェヴォンズの二つの革命――限界革命と政策革命
1 ジェヴォンズと現代 079
自由主義の理論と政策 079
ジェヴォンズの生涯 081
2 古典派経済学の衰退と一八七〇年代の経済学方法論争 084
『国富論』出版百年記念 084
演繹法対帰納法 086
3 科学者ジェヴォンズから経済学者ジェヴォンズへ 089
ニュートンの科学論と経済学 089
経済学の数理科学化と効用理論 094
『経済学の理論』 096
4 自由放任政策の破綻と改革の時代 098
功利主義と自由放任政策 098
政策方法論としての論証 101
改革の時代と実験的立法 102
5 営利企業体制の経済理論――ヴェブレンの理論
1 消費と労働 109
『有閑階級の理論』 109
記号論? 110
労働の忌避 113
インダストリーとビジネス 115
2 株式会社と営利企業体制 117
制度とその進化 117
経済の旧秩序と新秩序 119
二つの秩序を分かつもの 122
所有と支配の分離 125
3 企業資本の概念 127
資本概念を峻別する必要性 127
産業資本と営利資本 129
無形資産の重要性 131
資産としての「のれん」 134
4 信用と景気変動 136
株式会社の行動目的 136
バランスシートの自己拡大 138
担保・信用・景気変動 140
5 市場か組織か――コースの問題提起と経済学 145
「見えざる手」は万能か 145
市場か組織か 148
市場と組織の中間形態 151
市場取引の限界 152
契約・法・取引慣行、そして企業組織 157
ゲームの理論 161
取引慣行 167
経済理論への影響 169
7 シカゴ学派の経済学――ナイトの社会科学観
1 はじめに 175
2 ミラーの解釈 178
五つの特色 179
フリードマンの位置づけ 180
3 スティグラーのコメント 182
反論 182
同意点 183
スティグラーの『回顧録』 184
ケインジアンへの攻撃 185
4 フリードマン以後 186
価格理論 187
マクロ経済学 188
5 ベッカーの貢献 189
市場と差別 190
犯罪と刑罰 191
家族の形成と消滅 193
人的資本理論 194
6 ひとつの推理――フランク・ナイトの意味 196
8 ケインズ経済学と混合経済――不況・失業の経済学から現代
1 歴史的背景 199
2 ケインズの経済学の移り変わり 201
国際金本位制度をめぐって 201
国内の不況・失業問題 205
ケインズ経済学の誕生 207
3 ケインズ経済学の拡張 211
経済成長理論 211
ミクロ的基礎 212
4 消費関数とマクロ計量モデル 214
産業連関分析 214
マクロ計量モデルの作成 215
消費関数論争 217
5 マクロ経済政策をめぐる論争 217
フィリップス曲線 217
マネタリスト 218
新しい古典派経済学 220
6 まとめ 221
9 産業化のダイナミックスと経済学――経済学の歴史の再検討
1 産業化とは何か? 227
産業革命はなかった 227
真の革命は一九世紀半ば 228
科学史のなかの限界革命 230
マルクス主義と歴史・制度学派の意味 231
産業化の三段階 232
2 第一期――混乱と市場への不信 234
費用逓減的技術革新 234
新技術の普及と恐慌 235
シスモンディ、マルクス、ケインズ 237
分配問題と帝国主義・ファシズム 238
3 第二期――政府の積極的役割と繁栄 240
安定と高度成長 240
社会主義の行き詰まり 241
日本的政策体系 242
フレキシブル生産を先取りした日本 243
4 第三期――アジアの台頭と、市場の復権? 245
先進国協調・国連とアジア問題 245
情報技術革命 246
アジアの台頭とソ連・東欧社会主義の崩壊 247
市場原理主義の錯誤 249
「満足の文化」の病理 251
5 これからの経済と経済学の課題 253
長期的視野の必要性 253
相続動機の公共化 254
一ドル=百円の国際通貨供給 255
長期継続的関係の活性化 256
索引