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『記号と再帰――記号論の形式・プログラムの必然』(田中久美子 東京大学出版会 2010)

著者:田中 久美子[たなか・くみこ] 
装幀:加藤光太郎デザイン事務所
装画:M. C. Escher, “Print Gallery”
NDC:007.1 情報科学


UTokyo BiblioPlaza - 記号と再帰 新装版
記号と再帰 新装版 - 東京大学出版会


【目次】
目次 [i-iv]
転載図版一覧 [v-vi]


第1章 人工言語記号論 001
1.1 本書の目的
1.2 記号論の形式化
1.3 人工言語の必然性
1.4 関連研究
1.5 本書の構成


第2章 情報記号 
2.1 導入
2.2 二つのプログラム例
2.3 識別子
2.4 識別子の解釈層
  2.4.1 ハードウエアの層
  2.4.2 プログラミング言語の層
  2.4.3 自然言語の層
2.5 汎記号主義


  第I部 記号のモデル 

第3章 バビロンの混乱 031
3.1 二元論と三元論
3.2 二つの仮説
  3.2.1 既存の仮説
  3.2.2 新仮説
3.3 二つのパラダイムと記号モデル
  3.3.1 二元的識別子・三元的識別子
  3.3.2 関数型パラダイムと二元論
  3.3.3 オブジェクト指向パラダイムと三元論
3.4 二元論 三元論の対応
3.5 まとめ


第4章 記号が一体化する時 055
4.1 記号の基本的性質
4.2 ラムダ計算
4.3 ラムダ項と記号のモデル.
4.4 記号の再帰的定義
4.5 記号のモデルと再帰
4.6 ソシュールの差異
4.7 まとめ


第5章 「である」と「する」 083
5.1 「である」と「する」
5.2 クラスと抽象データ型
5.3 「である」に基づく構成
5.4 「する」に基づく構成
5.5 「である」「する」と記号モデル
5.6 「である」と「する」の融合
5.7 まとめ


  第II部 記号の種類

第6章 文 x := x + 1 109
6.1 三つの異なる記号
6.2 指示の曖昧性
6.3 イェルムスレウの記号の分類
6.4 パースの記号の分類
6.5 二つの記号分類の対応
6.6 まとめ


第7章 三種類の項 131
7.1 三次性
7.2 定義文と式
7.3 カリー化
7.4 チャーチの変換
7.5 プログラム中の三次性
7.6 まとめ


第8章 ある■・その■ 151
8.1 是態
8.2 語りの自動化ある実例
8.3 是態の種類
8.4 是態の復旧
  8.4.1 最適化
  8.4.2 インタラクション
  8.4.3 是態と再帰
8.5 その■の種類
8.6 まとめ


  第III部 記号のシステム

第9章 構造的・構成的 171
9.1 暴走する機械
9.2 記号と再帰
9.3 自然言語:構造的な記号系
9.4 情報記号系:構成的な記号系
9.5 構造的・構成的
9.6 まとめ


第10章 記号と時間 
10.1 インタラクション
10.2 状態遷移機械
10.3 参照透明性
10.4 副作用
10.5 記号の時間性
10.6 副作用と記号系
10.7 まとめ


第11章 系の再帰と進化 
11.1 自然言語系の再帰性
11.2 記号系の再帰性
11.3 言語系の再帰性の種類
11.4 情報記号系の再帰性
11.5 情報記号系の系の再帰性
11.6 まとめ


第12章 結語 


謝辞 [233-]
用語集 [235-]
  記号論 (235) / プログラミング (238)
参考文献 [243-]
索引 [253-]




【抜き書き】
・巻末の用語集から数個だけ抜粋。



・「記号」。

記号:本書における記号とは意味を担う媒体のことを表す.他に二つの一般的な定義を挙げておく.一つは,『広辞苑』から.

「一定の事柄を指し示すために用いる知覚の対象物」

もう一つの定義はソシュールから.

「言語記号は,二つのとても異なるものが頭の中で結びついた上にあるものです.その二つのものは,心理的なもので主体の中にあるものです.聴覚イメージが概念と結び付けられているのです.」

本書の記号は,以上の定義に従うが,特に情報記号の定義については第2章に定義される.


・「内容」。

内容:イェルムスレウは,記号を二元論で捉え,ソシュールシニフィエに相当する記号の要素を内容(content)と呼んだ.本書でも,ソシュールシニフィエ,パースの直接対象に相当する記号の要素を内容と呼ぶ(3.5節,6.3節).なお,日本語の著作ではパースの解釈項を解釈内容と訳しているものもあるため,用語の違いに注意されたい.本書では,パースの解釈項には使用を当てている.


・「再帰」。

再帰:狭義には,定義する記号自身に即して記号を定義することを言う.本書においては記号の再帰はこの意味で用いる.ここから派生し,本書では自身に即して自身を規定することを広く再帰という.また,系の再帰とは,系の出力を再び入力することをいい,それの繰り返しとして系が規定されることを表す(第4章,第7章).