著者:小塩 隆士[おしお・たかし] (1960-) 社会保障、所得分配、教育経済学。
NDC:331.85 分配の理論:地代,賃金,利潤,利子
【目次】
はじめに(二〇一一年一二月 小塩隆士) [i-iv]
目次 [v-x]
第1章 効率性と公平性 001
1 経済学はなぜ嫌われるのか 001
評判がよくない経済学
効率性という観点
「制約条件付き」で考える
損な立場に立たされている経済学
2 効率性と公平性をどうバランスさせるか 006
公平性という観点
公平性のあいまいさと人間臭さ
効率性と公平性のトレード・オフ
経済学が重視する「インセンティブ」
政策が生み出す予想外の効果
少子高齢化時代の効率性と公平性
3 世の中の幸せをどうとらえるか 016
パレート効率的な資源配分
効率性に対する2つの疑問
社会的厚生のとらえ方
所得が2倍になっても社会的評価は2倍にはならない
「家計調査」で見た日本の幸せの変化
4 なぜ人々は公平な社会を望むのか 027
不平等回避をリスク回避として解釈する
なぜ再分配政策が必要なのか
5 「大きな政府」と「小さな政府」のどちらがよいのか 031
政府の大きさをめぐる意見の違い
日本は「小さな政府」か
「高負担・高福祉」か「低負担・低福祉」かという選択は不適切
私たちが行ってきた無責任な選択
無責任な選択はこれからも続けられるか
注 041
第2章 公平性の受け止め方 043
1 経済学だけで公平性は語れるか 043
東日本大震災後に見られた人々の善意
伝統的な経済学以外のアプローチの必要性
所得格差・不平等そのものに対する忌避
「他人の不幸は蜜の味」――幸せの相対性
「相対所得仮説」の考え方
2 人々は格差をどう受け止めるのか 052
属性によって異なる格差の受け止め方
階層意識・所得変化と公平性
過去との比較、将来への期待も重要に
3 格差拡大というイメージはなぜ定着しているのか 058
所得格差は本当に拡大しているのか
可処分所得のジニ係数はほぼ横ばい
低いところで厚みを増す所得分布
所得水準が低下すると格差拡大を意識する
注 067
第3章 日本の再分配の問題点 069
1 再分配政策は機能しているか 069
再分配政策で大きく低下するジニ係数
年齢階層間の所得移転
年齢階層内の格差是正は限定的
日本の所得再分配の問題点
国際比較で見た日本の所得再分配
高齢層の所得格差をめぐる2つの重要な事実
深刻な「子供の貧困」
本来の所得再分配が必要に
2 なぜ低所得層ほど高負担なのか 088
社会保険料の逆進性の背景にあるもの
非正規雇用者・無業者が流入する国保
所得水準と保険料負担の関係
大きく異なる正規雇用者世帯とそれ以外の世帯
保険料不払い世帯の発生
3つの解決の方向
3 消費税率を引き上げて大丈夫か 101
消費税の逆進性は十分処理できる
複数税率の設定は必要か
給付付き税額控除――税と社会保険料の一体改革
所得税・住民税をどうするか
注 112
第4章 効率性と公平性からみた教育 115
1 経済学は教育をどうとらえるか 115
経済学から見た教育のおもしろいところ
効率性と公平性の絡み合い
教育の能力識別機能に注目するとどうなるか――思考実験
消費者が同時に生産者でもある教育
2 教育に市場原理は導入できるか 124
準市場という考え方
これまでの調査・研究でわかったこと
懸念される学校間格差の拡大
誰が学校選択・バウチャー制度を好むのか
3 学校は教育にどこまで貢献できるか 134
教育成果のとらえ方
中高一貫校に注目する理由
データをどのように集めるか
「出口」は「入口」で決まる
学校の取り組みで意味のあるものは?
要するに、成績を上げるには授業時間を長くすればよい
4 子供の学力は家庭で決まる――中学2年生の数学の点数の決定要因 148
TIMSS(国際数学・理科教育動向調査)
学力の決定要因
それぞれの要因の効果を比較する
どういう家庭に育つかで大きく差がつく
本人・家庭要因の相対的重要性
5 子供の人生は家庭でどこまで決まるか 158
「生きる力」をあらためて考える
子供の貧困への注目
子供の貧困の直接的影響
注 164
第5章 世代間のゼロサム・ゲーム 167
1 世代間格差はなぜ問題なのか 167
高まる世代間格差への注目
政府のバランスシート
ゼロサム・ゲームとしての世代間問題
世代会計が明らかにする世代間格差
世代会計に対する批判はどこまで正しいか
将来世代に先送りされる負担
2 経済学者の年金改革論はなぜ批判されるのか 181
なぜ経済学者は積立方式を望むのか
積立方式に対する批判
賦課方式は所得再分配の仕組み
積立方式への移行に伴うコストをどう処理するか
積立方式への移行は資本蓄積を促す――効率性の観点からの評価
積立方式への移行だけでは世代間格差は是正できない――公平性の観点からの評価
日本の年金改革は給付削減の歴史
実はみんな同じ方向を向いている
3 どうすれば社会保障を持続可能にできるか 197
家族、地域社会、そして社会保障
社会保障は自己破壊的である
若い世代が持続できる範囲に
世代内で財政的に完結する社会保障は拡充してかまわない
そのままでは受け入れがたい「強い社会保障」論
4 民主主義は機能し続けるか 205
逆転する若年層と高齢層の政治的パワー
代替的な選挙制度は可能か
民主主義は人口が増加しなければ機能しない
民主主義の生物学的限界
高齢世代と若年世代は、対立ではなく協調している
注目点は国全体の貯蓄の動き
生物学的制約を克服できるか
注 219
おわりに――本書のメッセージ 221
参考文献 [227-230]
人名索引 [231-232]
事項索引 [233-235]