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『眠れなくなる進化論の話――ダーウィン、ドーキンズから現代進化学まで全部みせます』(矢沢潔ほか[著] 技術評論社 2011)

編集:矢沢サイエンスオフィス(1982-) "科学情報グループ"。
著者:河田 雅圭[かわた・まさかど](1958-) 生態学、進化生物学。
著者:三中 信宏[みなか・のぶひろ](1958-) 進化生物学、生物統計学
著者:長野 敬[ながの・けい](1929-2017) 生物学、翻訳、評論。医学博士。
著者:矢沢 潔[やざわ・きよし](1943-) 科学ジャーナリスト
著者:Heinz Horeis[ハインツ・ホライス] 矢沢サイエンスオフィス・スタッフ。科学ジャーナリスト
訳者:新海 裕美子[しんかい・ゆみこ] 矢沢サイエンスオフィス・スタッフ
訳者:田中 智行[たなか・ともゆき] "海洋研究所勤務後、国内の研究所研究員"。
装丁:中村 友和[なかむら・ともかず] 装丁家
本文イラスト・作図:十里木 トラリ + 高 美恵子
本文レイアウト・DTP制作:Crazy Arrows(曽根 早苗、小宮 あずさ)
シリーズ:知りたい!サイエンスシリーズ
NDC:467.5 遺伝学
感想:研究者とサイエンス・ライターの共作。ライター集団が異端説も担当。いいのか。


眠れなくなる進化論の話 ―ダーウィン,ドーキンズから現代進化学まで全部みせます―:書籍案内|技術評論社


【目次】
折り込み 進化論マップ [\]
はじめに(2011年晩秋 矢沢 潔) [008-009]
目次 [010-012]


第1章 ラマルキズム 最初の科学的進化論・誕生と顛末[Heinz Horeis/田中智行] 013
1-1 初めて「生物は進化する」と主張した博物学者 014
  ラマルクに不安を抱く者
  軍人から科学者への転向

1-2 ラマルク理論の核心はどこにえるか? 022
  “ホムンクルス”の時代との決別
  人類史におけるもっとも偉大な思想転換のひとつ
  ラマルクとダーウィンの共通点

1-3 「しぼみゆく運命、そして無視という屈辱」 032
  真実の発見を受け入れさせる困難
  行方不明のラマルクの遺体


第2章 ダーウィニズム――ダーウィンの自然選択への道程[矢沢 潔] 037
2-1 誰であれダーウィンから出発しなくてはならない 038
  ダーウィンの墓はどこにあるか?
  「ニュートンでもアインシュタインでもなく、ダーウィンである」
  「進化の光に照らさなければすべては無意味」

2-2 “万能の酸”のごときダーウィンの見方 049
  「これに気づかなかったとは私は何と愚かだったことか」
  ダーウィニズムについての誤解
  
2-3 ビーグル号の大航海で生まれた異端的思想 053
  青二才から熟練したナチュラリスト
[図]ビーグル号の南半球1周の航海 [054-055]
  ガラパゴスのフィンチと種のゲシュタルト

2-4 マルサスの『人口論』から自然選択による進化へ 063
  環境によりよく適応するものとそうでないもの
  『種の起源』の執筆を急がせたウォーレス[Alfred Russel Wallace]の手紙

2-5 ダーウィンの5つの重要な進化理論 072
  ダーウィン進化論は自然選択だけではない
    第2の理論:本性としての進化理論
    第3の理論:共通祖先の理論
    第4の理論:種形成の理論
    第5の理論:漸進主義の理論
  「自然選択」を可能にする2つのステップ
  自然選択を人間に当てはめるとなぜ問題が起こるのか?


第3章 ダーウィニズム異見 ダーウィニズムに対置するユニーク理論[矢沢サイエンスオフィス] 083
  進化を生み出す別の力?
  [ダーウィニズム異見]1 有望な怪物説――将来有望な新しい種が突然現れる 085
  [ダーウィニズム異見]2 反復説と社会ダーウィニズム――個体発生は系統発生を繰り返す 090
  [ダーウィニズム異見]3 ルイセンコ学説――政治思想に隷属した遺伝科学 094
  [ダーウィニズム異見]4 今西進化論――生物は“棲み分け”を経て進化する 099


第4章 現代的総合説はいまどこにいるか?――ダーウィニズムは黄昏から再興へ[三中信宏] 105
4-1 ダーウィニズムの黄昏から1世紀 106
  ダーウィンの木の根元から見えるもの
  紆余曲折をくぐり抜けてきた進化学
  ダーウィニズムの逆境の時代
  進化の何を「総合」しようとしたのか

4-2 現代的総合を俯瞰する 114
  集団遺伝学がもたらした進化観
  “小進化”が“大進化”をもたらす
[図]現代的総合鳥瞰図(1930〜1980年) [118-121]
  歴史的イベントとしての現代的総合
  「進化学」がたどってきた歴史


第5章 ジェイ・グールドの断続平衡説 機が熟したとき,いっきに進化が起こる[Heinz Horeis/新海裕美子] 127
5-1 ダーウィン理論に疑問を呈した2人の古生物学者 128
  ダーウィニズムと創造主義が対立する世界
  グールドとドーキンズの「ダーウィン戦争」

5-2 “跳躍的進化”というグールドの革命的アイディアの行方 136
  どのような「進化の跳躍」か?
  「特殊化」が終わると進化が停滞する
  蒸発したグールド自認の革命


第6章 ドーキンズの利己的遺伝子 「利己的遺伝子」は進化を説明する上で重要か[河田雅圭] 145
6-1 自然選択の議論から登場した「利己的遺伝子」 146
  一般読者を誤解させる比喩やパロディー
  「自然選択」は何を意味するか?
  個体の「自己犠牲」は集団にとって有利か?

6-2 個体の利益より遺伝子の利益という味方 153
  「生物は遺伝子を運ぶための乗り物」という概念
  利己的遺伝子は進化理論ではない
  「致死遺伝子」はなぜ生き残ったか?

6-3 現代の進化学における利己的遺伝子の位置づけ 160
  ゲノムに寄生する“利己的なDNA”
  現在の進化学による利己的遺伝子とは?
  21世紀の進化学の課題は何か?
  進化のメカニズムは比喩的表現では表せない


第7章 マーギュリスの細胞共生説――生物は「共生」によって進化する[長野 敬] 167
7-1 共生説の先駆者たちの苦戦の歴史 168
  大きな期待とともに登場した「共生説」
  共生は“著者”、選択は“編集者”
  共生説論者の傍流の時代

7-2 共生説を現代に復活させたリン・マーギュリス 177
  ミトコンドリアは DNA をもっていた
  研究目的と方向性ヲ示したマーギュリス
  「ネオダーウィニズムは資本主義的」
  共生の“三つ揃い”
  終わりに
[コラム■ダーウィンのもう一つの進化理論]赤の女王仮説――生き残るには進化し続けねばならない 187 


第8章 進化論を数学で支える2つの理論[矢沢サイエンスオフィス] 191
1 進化ゲーム理論 192
  数学者フォン・ノイマンの今のゲーム理論の誕生
  遊び人と家庭人のどちらが有利に生きるか?
  「n人ゲーム」を生きる生物の生き方
2 分子進化の中立説 200
  “適者生存”のことわり
  利用されない遺伝子はスピーディーに進化する


補遺 「エピジェネティクス」の新世界――ラマルキズムの現代的復活?[Heinz Horeis/新海裕美子] 208
  いくら食べても満腹しない少女
  遺伝子ハンティングから見えたもの
  遺伝子と環境は連携してはたらく
  ラマルキズムが21世紀の現代に復活する?


第9章 言い遅れた最終章――ダーウィニズムは21世紀の進化科学へ[矢沢 潔] 221
9-1 創造説へのアンチテーゼと無神論の日本人 222
  理論が飛び交う惑わしい世界
  ドーキンズという不動のものさし

9-2 ネオダーウィニズムから遥かなる自己組織化へ 227
  ダーウィニズムからネオダーウィニズム
  ネオダーウィニズムと総合説
  ドーキンズとグールドは何が違うか
  非ダーウィン的なマーギュリスほ共生説
  カウフマンは生物学を「自己組織化」に格上げする?


進化生物学の構造(資料・Andrew Zachary colvin) [240-241]
主な参考資料 [242-244]
著者翻訳者紹介 [245]






【メモランダム】
・(執筆者の一人)三中信宏 氏による短いコメントと目次。
 なおその目次にも著訳者が含まれているが、書籍にあるクレジットとは異なっている(書籍によると、新海訳が2箇所、田中訳が1箇所としている)。
https://leeswijzer.hatenadiary.com/entry/20111206/1323666346



・研究者による書評。
「眠れなくなる進化論の話」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
 全体の評価として:

全体として理解が浅い部分も散見され統一感が欠けた書物ではあるが,お手軽本にしては比較的きちんとしているし専門家寄稿の3章はそれぞれ充実している.


 矢沢サイエンスオフィス・スタッフの担当した部分について。

この手のお手軽本にしてはきちんと原典に当たって書かれているようで,個別の記述に特にトンデモや致命的な誤りが含まれているようなことはなく,比較的良心的な作りになっている.〔……〕トンデモに近い筋悪な学説ときちんとした学説の区別がはっきりなされていないのは大変気になるところだ.具体的にはグールドの考え方や今西進化論やカウフマンについて好意的すぎるように思われる.