著者:三土 修平[みつち・しゅうへい] (1949-) 経済学(理論経済学、経済学説史)。評論。華厳宗僧侶。
シリーズ:新経済学ライブラリ;10
NDC:331.2 経済学説史.経済思想史
経済学史 - 株式会社サイエンス社 株式会社新世社 株式会社数理工学社
【目次】
まえがき(1993年5月 三土修平) [i-iv]
目次 [v-viii]
1 経済学史を学ぶにあたって 001
1-1 なぜ経済学史を学ぶか 002
古典研究から実証科学へ
諸学説の同時並行的存在
相対主義と絶対主義
言葉の問題の重要性
政治経済学という言葉の問題
1-2 経済学史の概説 009
古典派経済学まで
異端の経済学者の群像
限界革命と新古典派経済学
ケインズと政策的経済学の発展
現代の経済学
1-3 技術的予備知識 017
投入産出表
投入係数と連立方程式
価格と投下労働量
生産可能性集合
比較生産費原理
価格‐正金流出入機構(price-specie flow mechanism)
1-4 参考文献 030
1-5 練習問題 031
2 古典派以前の経済学 033
2-1 重商主義 034
重商主義者の群像
重金主義から貿易差額主義へ
重商主義者のディレンマ
古典派経済学へのつながり
重商主義の現代的教訓
2-2 重農主義 040
重農主義者の群像
経済表の概略
経済表における付加価値と最終需要
本当に農業だけが生産的か
重農主義の現代的教訓
2-3 参考文献 051
2-4 練習問題 052
3 スミスの経済学 053
3-1 富と価値の理論 054
スミスの生涯と著作
富の概念
分業の理論
支配労働と投下労働
労働価値説から価値構成説へ
資本と収入
3-2 資本蓄積と生産的労働 065
貯蓄は美徳
製造工と召使い
後世の混乱
3-3 見えざる手のはたらき 072
重商主義への反対
自然価格と市場価格
見えざる手の限界
3-4 後世への影響 076
経済学の貯水池
セーとマルサス
3-5 参考文献 079
3-6 練習問題 080
4 リカードの経済学 081
4-1 価値論と賃金論 082
リカードの生涯と著作
使用価値と交換価値の峻別
投下労働価値説
賃金生存費説
価値分解説
4-2 差額地代論と蓄積論 091
古典派経済学と利潤低下論
差額地代論
蓄積論
悲観的将来像の政策的含意
4-3 比較生産費説 094
自由貿易の利益
金本位制と貨幣数量説
4-4 ミルによる継承と修正 098
リカードからミルへ
生産と分配
賃金基金説
国際価値論
4-5 参考文献 106
4-6 練習問題 107
5 マルクスの経済学 109
5-1 労働価値説と搾取説 110
社会主義思想の発展とマルクス
労働と労働力の峻別
剰余価値論
転化問題
価値から独立な論証
所有論における不備
要素価格の資源再分配機能の軽視
5-2 価値を生む労働 121
特殊な価値概念
スミスとリカードの遺産
5-3 蓄積論と利潤率低下法則 123
有機的構成の高度化
反対に作用する諸要因
窮乏化論との矛盾
5-4 マルクス経済学の光と影 126
弁証法論理
再生産表式
帝国主義の理論
「社会主義」崩壊とマルクス
マルクスが読み継がれる理由
5-5 参考文献 133
5-6 練習問題 134
6 限界革命 137
6-1 限界革命の人物像 138
先駆者たち
3人の立役者
後継者たち
スウェーデン学派
6-2 価値論の革新 147
限界効用逓減の法則
限界効用均等の法則
富と価値の統一的説明
6-3 費用の理論 154
労働の限界不効用
高次財の価格
機会費用
帰属理論
6-4 参考文献 161
6-5 練習問題 162
7 一般均衡理論 165
7-1 純粋交換経済 166
需要・供給曲線の導出
ワルラスの法則
未知数の個数と方程式の個数
模索過程と均衡の安定性
未知数とパラメーター
7-2 生産の理論と限界生産力説 174
生産を含む一般均衡方程式体系
利潤最大化と限界生産能力
1次同次生産関数と完全分配
生産規模の選択と完全分配
7-3 「最大満足」をめぐる問題 181
ワルラスとヴィクセル
自然価値からの乖離
クラークの勇み足
7-4 資本理論における不備 187
経済量の次元
ワルラスの資本理論
7-5 参考文献 189
7-6 練習問題 190
8 資本理論の発展 193
8-1 ベーム=バヴェルクの資本理論 194
帰属理論から利子の理論へ
生産期間と資本量
生産期間の選択による利子率の決定
新・賃金仮説
前提に含まれる問題点
定常状態の比較静学の限界
「待ち時間」は存在するか
8-2 シュンペーターとハイエク 205
シュンペーターの生涯と著作
企業者と革新
革新と景気循環
リカード効果
ハイエクの景気循環論
8-3 フィッシャーの資本理論 212
フィッシャーの生涯と著作
資本と所得の位置を逆転する
利子率は相対価格のひとつの表現方法である
異時点間均衡による利子率の決定
資本財の価格
8-4 参考文献 219
8-5 練習問題 221
9 マーシャルの経済学 223
9-1 経済学の方法 224
マーシャルの生涯と著作
ワルラス対マーシャル
部分から全体へ
均衡状態から動的過程を重視
国民所得論による総括
9-2 期間概念の明確化 228
市場期間と短期と長期
価格調整と数量調整
産業の供給曲線と準地代
需要と供給の役割
9-3 有機的成長の理論 234
所得の諸範疇
修正された賃金基金説
生物学との類比
9-4 収穫逓増と独占的競争 238
完全競争と企業規模拡大
森と木のたとえ
独占的競争の理論
9-5 ピグーの厚生経済学 242
効用の個人間比較
厚生経済学の基本命題
私的限界純生産物と社会的限界純生産物
9-6 新古典派経済学のまとめ 246
階級から機能へ
賃金前貸し論の衰退
いくつかの誤解
9-7 参考文献 249
9-8 練習問題 250
10 数理経済学とその周辺 253
10-1 一般均衡理論の発展 254
一般均衡理論のディレンマ
斉一成長のモデル
一時的一般均衡の理論
その後の発展
新厚生経済学
社会的厚生関数の不可能性定理
10-2 計画化の経済学 266
社会主義経済計算論争
レオンチェフと投入産出表
カントロヴィッチと線形計画法
10-3 参考文献 273
10-4 練習問題 275
11 ケインズの経済学 277
11-1 貨幣理論の歴史 278
地金論争
通貨論争
貨幣数量説と貨幣ベール観
貨幣的景気理論
11-2 ケインズ体系 283
ケインズの生涯と著作
所得に依存する貯蓄
資本の限界効率
流動性選好
赤字財政の奨励
11-3 均衡か不均衡か 293
貯蓄と投資の一致
セーの法則
不均衡論的解釈
賃金切り下げの効果
11-4 参考文献 301
11-5 練習問題 303
12 ケインズ以後の経済学 305
12-1 景気循環論と経済成長論 306
景気循環論の発展
投資の生産力効果
ハロッドとソロー
新古典派総合
12-2 リカード経済学の復興 311
スラッファ理論の登場
ベーム=バヴェルク型資本理論と賃金・利潤率曲線
技術の再切り替え
誤解の原因
新リカード学派と新マルクス学派
12-3 反ケインズ派経済学の復興 319
スタグフレーションとマネタリズム
自然失業率仮説
合理的期待学派
12-4 経済学史のいろいろな見方 325
対抗図式の弊害
着眼点の整理
3つの対抗図式の意味
12-5 参考文献 328
12-6 練習問題 330
あとがき [333-336]
索引 [337-344]
【抜き書き】
重商主義という学説は、スミスに論破されて以後、経済学の第一線の理論としては、廃棄されたかたちになっているが、その後の世界の歴史を見ると、あからさまに「重商主義」とは名乗らないものの、事実上重商主義に近い考え方は、手を変え品を変えて、あちこちに再登場している。たとえば、貿易黒字の獲得をよしとするような価値観は、戦後復興期から1970年代ごろのわが国でも、大いに幅をきかせていた。その価値観への反省から内需拡大論がうまれてくるあたりも、重商主義の歴史を想起させるところがあり、われわれが重商主義の歴史から学ぶべきことは、まだまだ尽きそうにはない。
『経済学史』p. 49