著者:井上 達夫[いのうえ・たつお] (1954-) 法哲学。
【目次】
目次 [003-009]
まえがき 013
第一章 世界正義論の課題と方法 023
第一節 世界法の理論から世界正義の理論へ 023
1 「世界法の理論」の問題性 024
2 世界正義論の危険性と不可避性 027
第二節 世界正義の問題系 033
1 メタ世界正義論――世界正義理念の存立可能性 035
2 国家体制の国際的正統性――人権と主権の再統合 037
3 世界経済の正義――世界貧困問題への視角 039
4 戦争の正義――国際社会における武力行使の正当化可能性 043
5 世界統治構造――覇権なき世界秩序形成はいかにして可能か 046
第三節 複眼的・包括的接近の必要 049
第二章 メタ世界正義論――世界正義理念の存立可能性 057
第一節 世界に「正義の情況」は存在するか 059
1 正義の情況 059
2 限定的利他性と国益優位論 060
3 脆弱性の共有と国力格差 068
第二節 平和は正義に優越するか 074
1 「正義の原罪」批判としての諦観的平和主義 074
2 不正最小化原理としての諦観的平和主義 078
第三節 内と外の二重基準は正義に内在するか 084
1 内在的限定論 084
2 分配的正義の境界としての社会的協働 086
3 国家的強制固有の正当化原理としての正義 096
第三章 国家体制の国際的正統性条件――人権と主権の再統合 113
第一節 世界正義の問題としての国家の正統性 114
1 実効支配還元論 114
2 正義と正統性との切断論 118
3 正義志向性としての正統性 122
(1) 最小限人権論
(2) 正義概念基底化論
第二節 ロールズの「節度ある階層社会」承認論の問題性 136
1 政治的リベラリズムへの転向と「諸人民の法」の理論 136
2 「節度ある階層社会」承認論の論理的破綻と欺瞞性 141
3 寛容拡大論の倒錯性 147
第三節 国際的特権付与としての国家体制正統性承認の規範的前提条件 150
1 主権と人権の内的結合――世界正義におけるその含意 150
2 正統性承認条件としての市民的政治的人権 157
3 正統性承認問題から世界経済正義問題へ 162
第四章 世界経済の正義――世界貧困問題への視角 175
第一節 世界分配正義へのロールズの背反 177
1 政治的リベラリズムと「諸人民の法」におけるロールズの分配的正義論の変容 177
2 世界分配正義と第八原則との距離 181
3 ロールズの世界分配正義否定論における理論的破綻と思想的頽落 184
(1) 実質的正当化論拠の脆弱性
(2) 不正黙認を交換する取引
第二節 世界分配正義と世界匡正正義の交錯――積極義務論と消極義務論との関係 193
1 積極義務論から消極義務論への重心移動の理論的・実践的意義 193
2 消極義務論は世界貧民への道徳的配慮に消極的か? 197
(1) 道徳的最小限主義が包含する道徳的最大限
(2) 積極義務論の実質的消極性
(3) 「正義の間隙」論の問題性
3 消極義務論は積極義務論に依存するか? 209
(1) 制度的加害是正論における基準線問題
(2) 消極義務論の前提としての道徳的原状設定
第三節 世界貧困問題の原因と解決策――「制度的加害」対「国民的自己責任」論争の再検討と複合的接近の視点 220
1 「説明的ナショナリズム」の呪縛 222
2 制度的加害立証責任論の虚と実 228
(1) 自己欺瞞の罠
(2) 制度変更効果懐疑論の問題
3 世界貧困問題への複合的接近――原理の相補的結合と制度戦略の相補的結合 242
(1) 複合的原理――積極的支援義務と制度的加害是正責任の相補的結合
(2) 複合的制度戦略――制度的障害除去・世界税・移民政策
第五章 戦争の正義――国際社会における武力行使の正当化可能性 273
第一節 戦争の正義論の可能性と多形性 275
1 戦争は正義の外にあるのか 275
2 戦争の正義論の諸類型 279
第二節 戦争の正義論の規範的査定と批判的再編 288
1 積極的正戦論と無差別戦争観の破綻 288
2 絶対平和主義の現実性と理想性の再考 293
3 消極的正戦論の再定位 297
(1) 予防戦争
(2) 人道的介入
第三節 国際的安全保障体制の正統性条件 307
1 たかが国連、されど国連 307
2 一貫した実施可能性 313
3 権力は義務付ける(Pouvoir oblige.) 322
第六章 世界統治構造――覇権なき世界秩序形成はいかにして可能か 331
第一節 グローバル化の両価性 333
1 世界秩序形成主体の多様化による主権国家システム侵食が意味するもの 333
2 グローバルな価値言説の両価性 344
第二節 世界秩序形成における超国家的権力集中と脱国家的権力分散の問題 350
1 なぜ世界政府は「専制の極限形態」なのか 351
(1) 離脱不能性
(2) 民主制欠損の巨大性と不可避性
(3) 覇権的・階層的支配の拡大再生産
2 多極的地域主義の陥穽 358
(1) 地域内問題――民主性欠損の深刻性
(2) 地域間問題――地域間紛争管理の困難性
3 世界市民社会の可能性と限界 365
(1) 脱国家的権力分散の可能性
(2) 市民的公共圏に潜む覇権性
第三節 〈諸国家のムラ〉をめざして 370
1 主権国家システムの再定義と再評価 370
(1) 主権と人権の共起源的結合
(2) 人権の制度的性格と「強い国家」の必要性
2 〈諸国家のムラ〉としての主権国家システム 375
(1) 代替的世界秩序構想としての〈諸国家のムラ〉
(2) ブルの「無政府社会」論との対比
あとがき(二〇一二年九月吉日 東海の小島の上を飛び渡る鳥は知らずや人界の無明 井上達夫) [386-390]
引用文献一覧 [i-viii]
【メモランダム】
井上達夫「世界正義論に向けて」『立教法学』 (83), 1-48, 2011年.
https://ci.nii.ac.jp/naid/110008667603
Hirohide TAKIKAWA, "Book Review on Sekai Seigi Ron (On Global Justice) by Tatsuo Inoue" Social Science Japan Journal 18(1) 106-109.
https://academic.oup.com/ssjj/article-abstract/18/1/106/1621559