原題:Au nom de la Torah : Une histoire de l'opposition juive au sionisme (Presses de l'Université Laval)
著者:Yakov M. Rabkin(1945-) 科学史、ロシア史、ユダヤ史。
訳者:菅野 賢治[かんの・けんじ] (1962-) フランス語圏研究(フランス・ユダヤ教史、フランス植民地主義、戦時期日本・上海のユダヤ難民に関する研究)。
備考:本書は『トーラーの名において――シオニズムに対するユダヤ教の抵抗の歴史』(平凡社 2010年)の普及版。
NDC:227.9 イスラエルの歴史
NDC:316.88 ユダヤ人.シオニズム
【目次】
目次 [003-007]
凡例 [008]
第一章 今日のイスラエル 009
基本情報
イスラエルと西洋
ナショナリズムの典型かつ例外
イデオロギー的な「もろさ」
第二章 ヨーロッパのユダヤ教徒とユダヤ人――平等と絶滅のはざまで 023
市民としての〈解放〉
帝政ロシアの状況
ポグロムとテロリズム
瀞待と恥辱
異なる「民」概念
非宗教的ユダヤ人の誕生
反ユダヤ主義(反セム主義)とは何か
非宗教化(世俗化)とは何か
第三章 シオニズムのキリスト教的起源 049
言葉以前のシオニズム
キリスト教と帝国主義の接合
聖書の政治的、歴史的利用
存在はせず、ひたすら約束する神
第四章 シオニズムの企図 061
シオニズムが突き付ける問い
同化ユダヤ人の苛立ち
すべてに優先する「民族」の次元
二重の忠誠心(二重国籍)の問題
ヨーロッパ式ナショナリズムの模倣
「神なき宗教」――宗教の機能主義的利用
植民地主義としてのシオニズム
入植者かつ先住者?
領土のシオニズム化=非アラブ化
専守防衛のエートスから先制攻撃のエートスへ
新しい言語の創出
忘却の必要性
〈聖なる言語〉の非宗教化
「イスラエル国」の意味
むしろ「イスラエル語」か
「土地」=「母」のイメージ
新しい人間の創出
他者への気つかい
移民の再教育
ユダヤ教への敵意
優生学と社会ダーウィニズム
踏み出せない伝統再接近への一歩
ユダヤ人とは誰のことか
第五章 シオニスト国家の形成と維持 127
政治・軍事的側面
流入の波
分割にいたるまで
独立宣言をめぐる状況
イスラエル政治の一貫性
アラブ系ユダヤ人の境遇
アーズフ人ユダヤ人ユダヤ教徒
文化的ジェノサイド
第六章 ユダヤ教の伝統にとって〈イスラエルの地〉が意味するもの 151
「選ばれてあること」の意味
〈聖地〉に住むことの危険
流謫〔るたく〕とは何か
三つの誓い
神慮としての流謫、帰還
帰還の祈り―― 二つ感受性
ふたたびユダヤ人とは誰のことか
歴史と集団記憶
歴史への回帰と〈かの地〉への回帰
歴史の脱=神話化
第七章 ナチスによるジェノサイド、その記憶と教訓 185
第二次大戦とシオニズム
救出者の「選抜」
シオニズムとナチズム
「ショアーの日」
ユダヤ人ジェノサイドの教育効果
問い直しの気運
正統派ユダヤ教における「大災厄」解釈
アムラム・ブロイの「ネトゥレイ・カルタ」
神は見捨てていない
第八章 シオニズムに対するユダヤ世界内部からの抵抗 213
見落とされてきた抵抗の潮流
イスラエルの外における伝統的ユダヤ教からの抵抗
〈聖地〉における伝統的ユダヤ教からの抵抗
民族ユダヤ教に抗して
ユダヤ教・反シオニズム思想の伝播と受容
改革派ユダヤ教からの抵抗
敵の一味か、不人気な預言者か
シオニズムに対する政治・社会的抵抗
ヤコブ・イスラエル・ド・ハーンの活動
ユダヤ教の反戦主義
預言思想の伝統
左翼系の反シオニズム
伝統的ユダヤ教における暴力と平和
武力行使への抵抗
ヤコブ・イスラエル・ド・ハーンの暗殺
過去の犠牲と眼前の暴力
スピルバーグの「ミュンヘン」
ユダヤ世界の反シオニズムが問いかけるもの
第九章 変貌するイスラエル社会とユダヤ共同体 279
左も右もなく
犠牲者感情
イスラエルの公民宗教
イスラエルを後にする人々
ポスト=シオニズムの動向
冷静な議論を不可能にするもの
イスラエル主義
ユダヤ世界を引き裂くイスラエル国の存在
第十章 国際的視点から 303
イスラエルの対外関係
「もろさ」の感情
一国家構想
イスラエルと国際世論
反アラブ、反イスラームの本質主義
アメリカの「イスラエル化」
イスラエルをありのままに見る
訳者あとがき(二〇一二年三月 菅野賢治) [325-328]
用語集 [329-332]