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『沈まぬアメリカ――拡散するソフト・パワーとその真価』(渡辺靖 新潮社 2015)

著者:渡辺 靖[わたなべ・やすし](1967-) 文化政策論、文化人類学、現代アメリカ研究、パブリック・ディプロマシー論。
NDC:302.53 社会科学 >> 政治・経済・社会・文化事情 >> 北米 >> アメリカ合衆国


渡辺靖 『沈まぬアメリカ―拡散するソフト・パワーとその真価―』 | 新潮社

 願望まじりの「衰退論」とは裏腹に、いまだ世界はアメリカの魅力と呪縛から逃れられない。中国や中東へ積極的に進出する大学やウォルマート、アフリカのメガチャーチ……こうしたアメリカの「文化的遺産」が、政治・教育・宗教などあらゆる分野で世界中に拡散、浸透している。アメリカ研究の第一人者が現場を歩き、その影響を考察する意欲的論考。


【目次】
引用 [001]
目次 [003-005]


はじめに――衰退か、それとも拡張か 009


第一章 ハーバード――アメリカ型高等教育の完成 017
  ハーバードの神話
  ハーバードとは何だったのか
  リベラル・アーツ教育
  反知性主義と「アメリカ型高等教育」


第二章 リベラル・アーツ――アメリカ型高等教育の拡張 037
  中東のニューヨーク
  アブダビにとっての「アメリカ」
  東アジアの新興国
  理念の拡張か、妥協か
  「アメリカ型高等教育」のレガシー


第三章 ウォルマート――「道徳的ポピュリズム」の功罪 059
  ウォルマートの「聖地」
  スモールタウンの経営哲学
  「ウォルマート・ネーション」
  ウォルマートの南部性
  ウォルマーティゼーション
  道徳的ポピュリズム


第四章 メガチャーチ――越境するキリスト教保守主義 083
  「ウガンダへのクリスマス・ギフト」
  「神様はウガンダを愛する」
  Cストリート
  したたかなダブルスタンダード
  ワトト教会
  アメリカのジレンマ
  シンガポールメガチャーチ
  拡散する信仰のOS


第五章 セサミストリート――しなやかなグローバリゼーション 105
  “セサミストリート”はどこにある?
  革新的な制作手法
  リベラルマインドの結晶
  綿密なローカライゼーション
  その理念は日本にも届いたのか
  文化外交のツールとして
  中国化するセサミストリート


第六章 政治コンサルタント――暗雲のアメリカ型民主主義 127
  政治のビジネス化の幕開け
  「信条よりもビジネス」
  越境するアメリカの政治手法
  色褪せるアメリカン・デモクラシー


第七章 ロータリークラブ――奉仕という名のソフト・パワー 149
  奉仕のクラブ
  日本人も会長に
  第二次世界大戦後の躍進
  世界的展開とその限界
  奉仕大国・アメリ
  ミドルクラスが担う世界


第八章 ヒップホップ――現代アメリカ文化の象徴 169
  セジウィック・アベニュー1520番地
  現代アメリカ文化の顔へ
  ポストモダン的拡張
  政治や外交の手段としてのヒップホップ
  ヒップホップとアメリカ文化の伝統


終章 もうひとつの「アメリカ後の世界」 189
  地域コミュニティからテーマ・コミュニティへ
  アメリカナイゼーションの実態
  通底するデモス=市民へのこだわり
  マーケットの論理や力学への信頼
  アメリカナイゼーション批判の陥穽
  私たちは如何なる代替案を持ち得るのか


おわりに [205-206]




【メモランダム】
・たまに見かけるアメリカ衰退論の一つとして、『沈みゆく大国アメリカ』(堤未果 集英社新書 2014) があった。本書(『沈まぬアメリカ』)刊行の一年前。


・2021年にはNewsweekで、このテーマの鼎談(オンラインフォーラム)が設けられた。文字版を下記リンク先で読める。
繰り返される衰退論、「アメリカの世紀」はこれからも続くのか|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト