著者:渡辺 靖[わたなべ・やすし](1967-) 文化政策論、文化人類学、現代アメリカ研究、パブリック・ディプロマシー論。
NDC:302.53 社会科学 >> 政治・経済・社会・文化事情 >> 北米 >> アメリカ合衆国
渡辺靖 『沈まぬアメリカ―拡散するソフト・パワーとその真価―』 | 新潮社
願望まじりの「衰退論」とは裏腹に、いまだ世界はアメリカの魅力と呪縛から逃れられない。中国や中東へ積極的に進出する大学やウォルマート、アフリカのメガチャーチ……こうしたアメリカの「文化的遺産」が、政治・教育・宗教などあらゆる分野で世界中に拡散、浸透している。アメリカ研究の第一人者が現場を歩き、その影響を考察する意欲的論考。
【目次】
引用 [001]
目次 [003-005]
はじめに――衰退か、それとも拡張か 009
第一章 ハーバード――アメリカ型高等教育の完成 017
ハーバードの神話
ハーバードとは何だったのか
リベラル・アーツ教育
反知性主義と「アメリカ型高等教育」
第二章 リベラル・アーツ――アメリカ型高等教育の拡張 037
中東のニューヨーク
アブダビにとっての「アメリカ」
東アジアの新興国へ
理念の拡張か、妥協か
「アメリカ型高等教育」のレガシー
第三章 ウォルマート――「道徳的ポピュリズム」の功罪 059
ウォルマートの「聖地」
スモールタウンの経営哲学
「ウォルマート・ネーション」
ウォルマートの南部性
ウォルマーティゼーション
道徳的ポピュリズム
第四章 メガチャーチ――越境するキリスト教保守主義 083
「ウガンダへのクリスマス・ギフト」
「神様はウガンダを愛する」
Cストリート
したたかなダブルスタンダード
ワトト教会
アメリカのジレンマ
シンガポールのメガチャーチ
拡散する信仰のOS
第五章 セサミストリート――しなやかなグローバリゼーション 105
“セサミストリート”はどこにある?
革新的な制作手法
リベラルマインドの結晶
綿密なローカライゼーション
その理念は日本にも届いたのか
文化外交のツールとして
中国化するセサミストリート
第六章 政治コンサルタント――暗雲のアメリカ型民主主義 127
政治のビジネス化の幕開け
「信条よりもビジネス」
越境するアメリカの政治手法
色褪せるアメリカン・デモクラシー
第七章 ロータリークラブ――奉仕という名のソフト・パワー 149
奉仕のクラブ
日本人も会長に
第二次世界大戦後の躍進
世界的展開とその限界
奉仕大国・アメリカ
ミドルクラスが担う世界
第八章 ヒップホップ――現代アメリカ文化の象徴 169
セジウィック・アベニュー1520番地
現代アメリカ文化の顔へ
ポストモダン的拡張
政治や外交の手段としてのヒップホップ
ヒップホップとアメリカ文化の伝統
終章 もうひとつの「アメリカ後の世界」 189
地域コミュニティからテーマ・コミュニティへ
アメリカナイゼーションの実態
通底するデモス=市民へのこだわり
マーケットの論理や力学への信頼
アメリカナイゼーション批判の陥穽
私たちは如何なる代替案を持ち得るのか
おわりに [205-206]
【メモランダム】
・たまに見かけるアメリカ衰退論の一つとして、『沈みゆく大国アメリカ』(堤未果 集英社新書 2014) があった。本書(『沈まぬアメリカ』)刊行の一年前。
・2021年にはNewsweekで、このテーマの鼎談(オンラインフォーラム)が設けられた。文字版を下記リンク先で読める。
繰り返される衰退論、「アメリカの世紀」はこれからも続くのか|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト