著者:太田 博樹[おおた・ひろき](1968-) 人類集団遺伝学、ゲノム人類学。
NDC:467 遺伝学
NDC:469 人類学
筑摩書房 遺伝人類学入門 ─チンギス・ハンのDNAは何を語るか / 太田 博樹 著
- 作者: 太田博樹
- 出版社: 筑摩書房
- 発売日: 2018/05/09
- メディア: 新書
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【目次】
目次 [003-005]
プロローグ――遺伝人類学とはなにか 007
第1章 ゲノム・遺伝子・DNA 013
1 遺伝学用語の基礎知識 014
遺伝子・染色体・DNA・ゲノムは区別すべき
ゲノムとDNA
ゲノムはビッグデータ、DNAは物質
染色体と遺伝子
遺伝子は1つの情報の単位
二重らせんと塩基
水素結合と複製の仕組み
2 遺伝情報とセントラル・ドグマ 024
性を決定するSRY
なぜ性は2つなのか
ミトコンドリアDNAとY染色体
性によって異なる遺伝的近縁性
遺伝の仕組み――セントラル・ドグマと転写
全生命共通の遺伝暗号表
DNAの遺伝情報がアミノ酸の並びを決める
3 遺伝的な個人差をどう分析するか 038
「ゲノム解読完了」は「写経が終わった」に過ぎない
予測より少なかった遺伝子の数
遺伝子のバリエーション
遺伝子タイプと表現型
遺伝的多型とはなにか
犯罪捜査に使われるDNA配列
DNA鑑定はどこまで「鑑定」できるのか
SNPとはなにか――お酒を飲めない人の遺伝子
遺伝子を手がかりとした疾患リスク
ゲノム医学の注意点
第2章 アウト・オブ・アフリカ 057
1 ヒトの起源、人類の起源 058
人類学上の「ヒト」の呼び名
ヒトとチンパンジーのゲノムの違いはわずか1・2パーセント
「ヒト科」という分類
種をどこまで分けるか
ヒトの起源と人類の起源は違う
2 化石から辿る人類の進化 066
サルからヒトへ、さまざまな種が混在していた時代
ヒトとサルを分ける手がかり
猿人の発見――ほぼ完全な骨格ルーシー
ラミダス猿人
チャド猿人
ホモ・ハビリス
ホモ・エレクトスと出アフリカ
3 多地域進化説とアフリカ単一起源説 078
多地域進化説と脳の2倍化の問題
アフリカ単一起源説と2回目の出アフリカ
「ノアの箱舟」と出アフリカ
ミトコンドリア・イヴ仮説
ミトコンドリア・イヴ仮説の詳細
第3章 遺伝子の系統樹から祖先をさぐる 089
1 DNA配列から描く系統樹の基礎 090
系統樹とは何か
系統樹の作成法
一番少ない説明で樹を描く=最大節約法
情報サイトからネットワークをつなぐ
進化の道筋が分からない部分
樹の形にすることを優先する=距離行列法
一番簡単な枝のつなぎ方=平均距離法
2 分岐年代をどう推定するか 108
日本人が考え出した近隣結合法
分子時計による分岐年代の計算
アフリカ集団、非アフリカ集団を仮定すると……
3 祖先は混血していたのか 115
ネアンデルタール人は本当に滅びたのか
クロマニヨン人とネアンデルタール人
現生人類はネアンデルタール人と混血していた
DNAに残る混血の証拠
「デニソワ人」の発見
種の混血を加味した新しい系統樹
第4章 適応 vs. 中立 131
1 ミトコンドリアDNAとY染色体で男女の拡散を追跡する 132
遺伝距離と地理的距離
土地によって違うY染色体
遺伝子頻度を変動させる要因
各要因を検証してみる
2 進化とはなにか、遺伝とはなにか 139
ダーウィンが発見した「生物の進化」
ダーウィンが提唱した「自然選択」
「生物の変化」についての諸概念
獲得形質は遺伝するか、という問題
用不要説 vs. 自然選択説
適者生存という曲解
メンデルとダーウィンは同時代人だった
科学論文の査読システム
再発見された遺伝の法則
科学論文の言語と公平性
3 集団遺伝学の誕生と中立説 156
木村資生によるパラダイム転換
分子進化の中立理論とは
進化とはなにかを再考する
突然変異とは
子孫に伝わる変異、伝わらない変異
遺伝的多型とは、アレルとは
遺伝子頻度とは
ハプロタイプとは
遺伝的浮動とは
偉大なる偶然の効果
4 突然変異が残るのは必然か偶然か 172
生まれつきマイノリティーな突然変異
幸運者生存という常識
進化を研究する難しさ
生存に有利な変異の例
ベーリンジア経由の移住とビン首効果
ABO血液型は中立進化で説明できるか?
遺伝距離と地理的距離、再び
Y染色体に環境適応の手がかりはあるか?
女性より男性が早死にした?
婚姻システムが関係する可能性
ヨーロッパ社会における「嫁入り」と遺伝距離との関係
第5章 男女で異なる移動パターン ―― sex-based migration 191
1 父系社会か母系社会か 192
実験室を飛び出して……
地理的距離と遺伝距離との関係、再び
「妻方居住」の人類学的意義
ゴールデン・トライアングル
タイ北部での山岳民族フィールドワーク
ユダヤ人に見られる分量集団構造
集団分化とは
ヒト特有の「集団内の分集団」
2 集団間の多様性と集団内の多様性を調べる 206
DNAをどう調べるか
集団間、集団内の遺伝的なバラエティーを測る尺度
「遺伝的違い」のイメージと数値にはギャップがある
タイ北部山岳民族におけるDNA分析の結果は
DNAから追跡した男女の移動の違い
東アジアの男女はどうか?
3 日本列島人のルーツをさぐる 219
琉球諸島の中学生の歯型を手がかりに
高校生のDNAを調べる
琉球諸島民調査で見えた男性・女性の動き
日本人のルーツという問題
縄文人、弥生人、アイヌ、琉球列島人
日本人の二重構造説とは
遺伝人類学からの「日本人のルーツ」へのアプローチ
日本列島にも「男女によって異なる移動パターン」があった?!
第6章 チンギス・ハンのDNA 232
1 古代DNA分析を活用する 236
前章までのまとめ
「性によって偏る」遺伝子頻度、日本でも
古代DNA分析と『ジュラシック・パーク』
基礎技術のPCR法とは
ウィルソンによる世界初の古代DNA分析
スバンテ・ペーボによるミイラのDNA分析
古代DNA分析で重宝されたミトコンドリア
恐竜のDNA分析成功?! 反面教師となった論文
2 日本人の古代DNA分析 251
日本列島の人類史
縄文時代と弥生時代
弥生時代渡来民の遺跡
甕棺墓[かめかんぼ]と土壙墓[どこうぼ]が併存する遺跡の調査結果は……
古代DNA分析から見えてきた埋葬パターン
弥生人の故郷を追って大陸へ
タテの調査からヨコの調査へ
3 東アジアのY染色体分析から見えてきたもの 266
現在の漢民族のDNA分析との比較
地理的距離と遺伝距離の相関を、歴史的に考える
チンギス・ハンのDNAとは
Y染色体だけに見られる星状クラスター
生殖的に大成功を収めた系統
アジア全体に拡散した?
遺伝子頻度と進化の問題
変異の連鎖とヒッチハイキング
選択的一掃とは
4 社会的・文化的・環境的要因も考える 281
チンギス・ハン遺伝子の進化論的意義とは
類人猿とヒトの配偶システム
配偶システムとチンギス・ハン遺伝子との関係
ヒトゲノム解読以降
個人個人のゲノムを読む
文化的要因・環境要因とどう対峙するか
エピローグ――ゲノム時代の人類学 293
女性17人に男性1人の地獄?
有効集団サイズとは
第2のボトルネック
「1000人ゲノム計画」と「ゲノム・アジア100K」
そのY染色体は本当にチンギス・ハンのものなのか?
ゲノム時代の人類学
あとがき(2018年3月10日 太田博樹) [304-310]
参考文献 [311-314]
図版出典 [i-ii]