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『健康経済学――市場と規制のあいだで』(後藤励,井深陽子 有斐閣 2020)

著者:後藤 励[ごとう・れい] 医療経済学、行動経済学、保健医療政策。
著者:井深 陽子[いぶか・ようこ] 医療経済学。
装幀:神田 程史(レフ・デザイン工房)


健康経済学 | 有斐閣


【目次】
目次 [i-viii]


序章 消費者の健康を支える市場と規制 001
1 なぜ「健康経済学」なのか? 001
2 健康と病気の境目 003
  2-1 健康の定義 003
  2-2 病気の自然史と消費者の対処方法 004
  2-3 多様な病気の進行 006
3 健康に関連する財の流れとお金の流れ 007
  3-1 健康に関連する財 007
  3-2 財の提供者 008
  3-3 財の流れとお金の流れ 010
  3-4 財の取引の制限――市場と規制のバランス 012
4 健康経済学での理論と実証 014
  4-1 意思決定のモデル 014
  4-2 データと実証 015
  4-3 演繹と帰納 017
5 本書の構成 017
まとめ/練習問題/参考文献 020


  第I部 保健・医療・介護を学ぶための基礎 

第1章 健康に関する消費者の選択と制度 022
1 症状や病気がないとき 023
  1-1 社会保険に加入しているか? 023
  1-2 民間健康保険に加入するか? 024
  1-3 一次予防を行うか? 025
  1-4 二次予防を受けるか? 027
2 症状や病気があるとき 030
  2-1 サービス利用かセルフケアか? 030
  2-2 医療サービスか,補完・代替医療か? 031
  2-3 外来医療サービスを受けるか? 032
  2-4 入院医療サービスを受けるか? 034
3 消費者の選択の流れとニーズの大きさ 034
4 二つの医療費の概念 039
  4-1 国民医療費 039
  4-2 総保健医療支出 040
まとめ/練習問題/参考文献 042


第2章 健康経済学を学ぶための基礎 044
1 完全競争市場におけるモデル 044
2 消費者の意思決定——効用最大化 045
  2-1 選好とは何か? 045
  2-2 効用と無差別曲線 048
  2-3 予算制約 050
  2-4 効用を最大化する消費計画 051
  2-5 需要関数と需要曲線 053
  2-6 需要の価格弾力性 055
3 生産者の意思決定——利潤最大化 056
  3-1 生産関数 056
  3-2 企業の目的1 ――費用最小化 060
  3-3 企業の目的2 ――利潤最大化 061
  3-4 費用曲線 063
4 完全競争市場とパレート効率 065
5 市場の失敗と政府の介入 067
  5-1 情報の非対称性 067
  5-2 公共財と外部性 068
  5-3 不完全競争 069
  5-4 政府の介入 070
6 応用:医療費助成の理論分析 071
まとめ/練習問題/参考文献 074


第3章 経済学の実証分析:因果推論の基礎 076
1 エビデンスとは 076
  1-1 エビデンスに基づいた政策形成 076
  1-2 臨床ガイドラインにおけるエビデンス・レベル 078
2 因果推論の手法 080
  2-1 相関は因果を意味しない 080
  2-2 因果推論における問題 083
3 実験(ランダム化比較試験)の方法 084
  3-1 ランダム化比較試験 084
  3-2 経済学におけるランダム化比較試験 085
4 観察データに基づく因果効果の分析 086
  4-1 実験データと観察データ 086
  4-2 重回帰分析 088
  4-3 パネルデータ分析――固定効果分析 091
  4-4 自然実験と差の差の推定 092
  4-5 回帰不連続デザイン 097
まとめ/練習問題/参考文献 100


  第II部 消費者から見た保健・医療・介護 

第4章 健康に対する需要 104
1 健康を得ることと財を得ることのトレードオフ 105
2 グロスマン・モデル——健康を生産する 106
  2-1 効用関数 106
  2-2 健康資本への投資 107
  2-3 時間と予算の制約条件 110
  2-4 医療サービスの需要 113
  2-5 グロスマンモデルの特徴 115
3 医療サービス需要の実証分析 116
  3-1 医療サービス需要の価格弾力性はなぜ重要か? 116
  3-2 アメリカの事例―― RAND Health Insurance Experiment 118
  3-3 日本の研究 121
4 介護に対する需要 125
まとめ/練習問題/参考文献 128


第5章 保険とリスク 130
1 なぜ健康に保険は必要なのか? 131
  1-1 リスクとは何か? 131
  1-2 リスクが存在する場合の効用——期待効用 132
  1-3 保険の役割 137
2 なぜ健康保険の加入は義務化されているのか? 142
  2-1 逆淘汰 142
  2-2 リスク選択 145
3 モラル・ハザード 146
  3-1 事前と事後のモラル・ハザード 146
  3-2 モラル・ハザードに関する実証研究 148
4 日本の保険制度 149
  4-1 保険理論から見た日本の制度 149
  4-2 保険の財源 151
  4-3 保険の給付 152
まとめ/練習問題/参考文献 153


第6章 消費者の需要に対する政府の介入 155
1 外部性の内部化 155
  1-1 予防ワクチン接種への補助金 155
  1-2 受動喫煙対策 158
2 合理的アディクションモデル――依存性を持つ財の消費 
3 行動経済学と人間の非合理な行動 161
  3-1 リバタリアンパターナリズム 161
  3-2 現在バイアス 162
  3-3 リスク選好――プロスペクト理論 167
4 現状維持バイアス 172
  4-1 臓器提供の意思表示 172
  4-2 後発医薬品の利用促進政策 174
5 ナッジの応用とそれをめぐる議論 175
まとめ/練習問題/参考文献 176


  第III部 生産者から見た保健・医療・介護 

第7章 健康サービス供給の特殊性 182
1 需要と供給の独立性 182
  1-1 健康・医療における選択の違い 182
  1-2 情報の非対称性下における医師の行動 184
2 供給者誘発需要 187
  2-1 供給者誘発需要の理論と実証 187
  2-2 診療報酬の変化と供給者誘発需要 190
  2-3 情報の非対称性の有無で供給者が行動を変えるか? 193
3 どこまでが「誘発需要」なのか? 194
  3-1 健康の改善と供給者誘発需要 194
  3-2 EBMエビデンスに基づいた医療)の進展 195
4 グレーゾーンの多い個別患者における選択 198
5 医療における競争と市場の範囲 201
  5-1 医療サービス供給における競争の程度 201
  5-2 地域による医療の格差 203
  5-3 公的医療と民間医療 204
 5-4 価格の競争と質の競争 206
まとめ/練習問題/参考文献 207


第8章 保健・医療専門職の労働市場 210
1 保健・医療専門職の就業者数 210
2 医療専門職の労働市場の特徴 214
  2-1 業務独占 215
  2-2 総量規制 216
3 看護師と医師の労働市場 218
  3-1 介護職の労働市場(完全競争市場) 218
  3-2 看護師の労働市場買手独占 219
  3-3 医師の外部労働市場 226
  3-4 内部労働市場と医局制度 230
4 医師不足と偏在 233
  4-1 日本全体の医師不足 234
  4-2 医師の診療科の偏在 236
  4-3 地域の偏在 237
まとめ/練習問題/参考文献 240


第9章 健康における製造業の役割:製薬・医療機器産業 244
1 薬の分類と市場規模 244
2 研究開発型製薬産業の参入障壁 248
3 医薬品における情報の非対称性と政府の役割 250
  3-1 承認審査と保険適用・薬価の決定 250
  3-2 医療用医薬品の広告規制 254
4 新薬の研究開発費用とリスク 257
5 医療機器と再生医療 260
まとめ/練習問題/参考文献 262


第10章 介護に関わる民間企業と介護保険制度 264
1 介護の経済学的特徴 264
2 介護サービスの供給――フォーマルケアとインフォーマルケア 268
  2-1 介護保険による介護サービス 268
  2-2 介護におけるフォーマルケア供給の特徴 270
  2-3 介護におけるインフォーマルケアの重要性 273
3 家族による介護提供の影響と動機 274
  3-1 インフォーマルケアが与える就労・健康に対する影響 274
  3-2 インフォーマルケア提供の動機 276
4 介護保険――フォーマルケアを支える支払いの仕組み 277
  4-1 日本の介護保険制度 277
  4-2 アメリカの介護保険市場 279
5 介護報酬と介護サービス労働市場 280
  5-1 介護報酬 280
  5-2 介護労働市場 281
まとめ/練習問題/参考文献 282


  第IV部 政府・規制の役割 

第11章 政府の役割と診療報酬制度 288
1 政府による介入の目的 288
2 政府による介入の種類 291
  2-1 公的供給 292
  2-2 公的資金提供 293
  2-3 公的規制 295
3 診療報酬制度と保険者機能 296
  3-1 出来高払いと包括払い 297
  3-2 人頭払いと総予算制 299
  3-3 それぞれの支払い方式の短所と短所への対応 300
4 診療報酬の機能と決まり方 303
  4-1 診療報酬決定のプロセス 304
  4-2 個々の技術の診療報酬の調整 306
5 医療の質に基づいた診療報酬 308
6 医療機関の設立主体と医師個人の関係 310
まとめ/練習問題/参考文献 313


第12章 保健・医療の経済評価 316
1 医療技術評価とは何か? 317
2 費用便益分析の理論 318
  2-1 補償変分と等価変分 318
  2-2 功利主義に基づく社会厚生の分析——費用便益分析 320
3 保健・医療の経済評価の種類 322
  3-1 部分的な経済評価——費用のみの分析 322
  3-2 完全な経済評価——費用とアウトカムの両方を考慮した分析 323
4 経済学における健康の価値づけ 325
  4-1 健康の金銭的価値づけ 325
  4-2 QALY(質調整生存年)の価値づけ 327
5 経済評価で何がわかるか? 330
  5-1 配分の効率性と生産の効率性 330
  5-2 ICER(増分費用効果比) 331
  5-3 ICER の閾値 333
5-4 それぞれの経済評価が行うこと 334
まとめ/練習問題/参考文献 337


第13章 効率と公平 339
1 社会全体の望ましさ 340
  1-2 無限にあるパレート最適な状態 340
  1-2 社会厚生関数とその例 342
  1-3 効用可能性曲線と再分配の方法 345
2 社会厚生と保健・医療の経済評価 347
  2-1 厚生経済学と保健・医療の経済評価の関係 347
  2-2 保健・医療の経済評価における効率性以外の要素の考慮 349
3 健康の社会的決定要因 352
まとめ/練習問題 355


おわりに [359-362]
付録:健康経済学のデータソース [363-366]
索引 [367-375]
著者紹介 [376]



【Column一覧】
市販薬のネット販売規制とその規制緩和 013
健康に関する意思決定の強制 038
研究デザイン PICO とは? 081
ロジット・モデルと効用理論 099
長瀬効果とは? 125
オバマケアにおけるリスク選択と逆淘汰 144
なぜ感染症の撲滅は難しいのか? 157
身近で継続的に診てもらえる医師を育てる 202
医学部進学のリターン 229
製薬企業と医師の関係 256
地域包括ケアと病院 270
保健医療政策とデータ 303
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