著者:
前川 啓治[まえがわ・けいじ](1957-) 文化人類学。グローバリゼーション論、地域開発。
箭内 匡[やない・ただし](1962-) 文化人類学。映像人類学。
深川 宏樹[ふかがわ・ひろき](1981-) 社会人類学。人格論。
浜田 明範[はまだ・あきのり](1981-) 医療人類学。アフリカ地域研究。
里見 龍樹[さとみ・りゅうじゅ](1980-) 文化人類学。メラネシア民族誌。
木村 周平[きむら・しゅうへい](1978-) 文化人類学(日本、トルコ)。
根本 達[ねもと・たつし](1975-) 文化人類学。南アジア地域研究。
三浦 敦[みうら・あつし](1963-) 農村開発研究、協同組合研究。
装幀:加藤 光太郎[かとう・こうたろう] ブックデザイナー。
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【目次】
はじめに [003-006]
目次 [007-012]
序章 「人類学的」とはどういうことか[前川啓治] 013
超越的・超越論的 「文化」の客体化 015
民族誌と批評
超越論的な文化相対主義へ
フィールドワークと文化の客体化
個別の文化と文化一般
[コラム]「超越的」と「超越論的」の変遷 030
超越論的展開 過去から未来へ生成する人類学 032
出来事と出会いの構造
文化戦争とそれ以降――構造からイメージへ
パラダイム・シフトと生成する人類学
[コラム]クック船長の死 047
I 部 自然・存在・イメージの生成 051
1章 人格と社会性[深川宏樹] 053
人間の概念 変容可能性 056
地図
カメレオン的フィールド・ワーカー
変容
構造と機能 人間社会の自然科学 065
構造機能主義
祖先崇拝
社会を「発見」する
身体とサブスタンス 生殖=再生産の「事実」からの解放 074
生殖=再生産の「事実」
サブスタンス
「発明」する記述
社会性 切断=拡張する思考 083
「我々/彼ら」の内化
人格化と物化
展開
[コラム]マリリン・ストラザーンとの対話――研究現場での「部分的つながり」[前川啓治] 093
2章 アクターネットワーク理論以降の人類学[浜田明範] 099
アクターネットワーク理論 科学と政治が絡まり合いながら変化する世界を探る 102
存在論的 具体的なものを通して反・自文化中心主義を深める 108
ポストプルーラル 二つ以上のものが互いに別個に存在していると言えないこと 114
疾病/病い 文化の複数性からポストプルーラルな自然へ 120
生物学的市民 生物学的なステータスが駆動する政治 126
3章 「歴史」と「自然」の間で――現代の人類学理論への一軌跡[里見龍樹] 133
歴史人類学 「文化」を問い直す 136
人類学における歴史の問題
歴史人類学
「海の民」の歴史人類学
歴史人類学とその後
カーゴ・カルト 〈新しいもの〉をとらえる 146
「カーゴ・カルト」とは
マライタ島のマーシナ・ルール運動
カーゴ・カルトをどうとらえるか
ストラザーンのカーゴ・カルト論
[コラム]想起されるマーシナ・ルール 156
景観 「歴史」と「自然」の間で 159
景観人類学の登場
オセアニアにおける景観人類学
忘れっぽい景観
「自然/文化」をめぐる人類学 南アメリカにおける展開 168
問い直される「自然/文化」
デスコラ『自然と文化を超えて』
ヴィヴェイロス・デ・カストロの「パースペクティヴィズム」論
「人間」を超える人類学 可能性の探究 177
コーン『森は考える』
マルチスピーシーズ民族誌
コスモポリティクス
II部 実践――生成する世界へ 187
4章 公共性[木村周平] 189
「表象の危機」その後 『文化を書く』からの展開 192
公共性 関与・介入・貢献 198
リスク 未来の予測可能性をめぐって 210
エスノグラフィ 知の創造と活用 216
5章 運動と当事者性――どのように反差別運動に参加するのか[根本達] 223
アイデンティティ・ポリティクス 不確実な世界における暴力的な対立 223
被差別者と人類学 差別に抗する、差別から逃れる 233
生活世界の声 動態的で輻輳的なそれぞれ 239
寛容の論理 等質でないものの繫がり 245
生成変化の政治学 当事者性を拡張する 251
III部 社会科学と交差する人類学 259
6章 持続可能性と社会の構築――ハイブリッドな現実の社会過程の多元的な分析の必要性[三浦敦] 261
合理的個人 合理的には見えない個人の行動を、合理的に説明する 264
個人の行為と合理性
未開人と合理性
人間の合理性
RCT
家族制生産とグローバル経済 なぜ資本主義経済において小規模家族制生産は維持され続けるのか 274
家族制生産をめぐる問題
チャヤノフ理論
小商品生産論
「世帯」概念のあいまいさ
多元的法状況における所有 「ものを所有する」ということは、自明なことではない 282
所有の重要性
法とは何か
土地所有
所有のイデオロギーと政治過程
コモンズ 自然環境を守ること、それはわれわれの生活を守ること 290
コモンズの悲劇
オストロムのコモンズ論
情報のコモンズ
コモンズと文化人類学
開発 大資本の手先か住民の味方かという、不毛な二元論を超えて 298
開発と社会科学
戦後の開発の歴史
開発と文化人類学
開発分析の枠組み
アソシエーションと社会的連帯経済 連帯はどのように可能なのか、連帯は人々を救えるのか 306
アソシエーションの歴史
アソシエーションと文化人類学
社会的連帯経済の現状
社会的連帯経済における理念と現実
[コラム] 十九世紀のフランス農村と文化人類学の前史 316
終章 過去・現在・未来[箭内 匡] 319
文化人類学の現在と過去 人類学は今、どこにいるのか 320
一九九〇年代以降の人類学
一九九〇年代以降の社会状況
「外」 人類学的思考を貫く本質的要素とは何か 326
人間と社会に関する理論を「外」に引き出す
(広義での)自然人類学
不可量部分 人類学者がフィールドで出会うものとは? 330
マリノフスキ主義の遺産
不可量部分の現在
不可量部分をめぐるジレンマ
イメージ フィールドの現実を新たな目で捉えなおす 336
イメージ的な雑多さ、イメージ的な結び合い
映像人類学の可能性
時間 未来の人類学に向かって思考の軸をずらしてみる 342
可能性の人類学へ
時間のなかでの「外の思考」
あとがき(二〇一八年四月 前川啓治) [348-351]
引用文献 [352-370] ([12-30])
事項索引 [371-377] ([5-11])
人名索引 [378-381] ([1-4])
【メモランダム】
・60頁5行目に登場する空白二つは、本来は二倍ダッシュにするはずだったのだろう。
・三浦「合理的個人」(pp. 264-273)は、経済学の概念について文化人類学から評価している点が興味深い。
・また、三浦「アソシエーションと社会的連帯経済」では、マイクロファイナンスについての記述(p. 312)がある。
・事項索引に「ホーリスティック」が無い。何故だ。