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『教養としての歴史問題』(前川一郎[編著] 東洋経済新報社 2020)

著者:前川 一郎
著者:倉橋 耕平
著者:呉座 勇一
著者:辻田 真佐憲
装丁:橋爪 朋世



教養としての歴史問題 | 東洋経済STORE


【目次】
はじめに(編著者) [001-014]
  本書の目的――歴史認識問題の現状を正確に把握し、未来を考えるきっかけを作る
  三つの論点
  「歴史コミュニケーション」を広げていく
目次 [015-022]


第一章 「歴史」はどう狙われたのか?――歴史修正主義の拡がりを捉える[倉橋耕平] 023
  はじめに 
1 日本版歴史修正主義の展開とその特徴 026
  「慰安婦」像をめぐって
  脅迫と嫌がらせ
  利用された大衆文化
  歷史修正主義元年
  安倍首相の足跡
  新たなフェーズ
2 「歴史」をめぐるヘゲモニー争い 039
  ヘゲモニー争い
  排外主義と歴史修正主義
  人権問題と歴史修正主義
  歴史修正主義と女性蔑視
3 歴史から神話への「気づき」 047
  希求しながら歴史から逸れていく歴史修正主義
  「縄文ブーム」
  歴史を超える歴史修正主義
4 専門知はもはやいらないのか 057
  もう少し複雑な世界
  平等観の問題?
  おわりに


第二章 植民地主義忘却の世界史――現代史の大きな流れのなかで理解する[前川一郎] 065
  はじめに 
1 忘却された植民地主義 067
  植民地支配の歴史
  植民地問題が注目された「例外的」国際会議
  植民地問題が外交問題に発展しなかった二〇世紀後半
2 妥協を強いられた植民地の独立 073
  「解決済み」として独立したケニア
  国際社会から制裁を受けたジンバブウェ
  開発援助による植民地問題の「解決」
3 冷戦の終焉と「謝罪の時代」 079
  動き始めた清算の歴史
  なぜ九〇年代だったのか
  国際社会の「正義の記憶」
  「謝罪の時代」を後押ししたグローバリゼーション
4 日独両国に共通する加害者意識の欠如 085
  一筋縄ではいかない「過去の克服」
  法的責任を認めないドイツの戦後措置
  植民地統治下で起こったジェノサイド
  植民地主義を不問に付した、日本の戦後処理
  「慰安婦」問題は解決したのか
  問われているのは法的責任、植民地主義の“違法性”
5 ヨーロッパの戦勝国の描く植民地主義史 
  賠償ではなく、未来志向の経済支援
  謝罪を拒絶し続けるイギリス
  おわりに――いま、ようやく「歴史」が「狙われる」ようになった


第三章 なぜ 加害の歴史を問うことは難しいのか――イギリスの事例から考える[前川一郎] 107
  はじめに 
  個別の犯罪事案を植民地支配全体の責任から切り離す「選別的思考」
  「栄光の下水処理」
1 植民地主義を肯定する“中立的”歴史観 113
  功罪両論併記の歴史教育
  イギリス社会に染み渡る「選別的思考」
2 「アムリットサルのキャメロン」 119
  頭を下げても、謝罪しないイギリス
  植民地統治の「良かったところがあったとしたら、私たちはこれを称えるべき」だ
  キャメロン訪印に一定の評価を下すメディア
3 イギリス政府に受け継がれてきた「選別的思考」 127
  事件当時の政府の対応
  ハンター委員会最終報告書と政府の対応
  エリザベス二世の訪印
  法的責任実践と「選別的思考」の皮肉な関係
4 「選別的思考」を受け入れる日本 138
  「国際社会のなかの日本」という見立て
  近現代史再評価と歴史修正主義のあいだ
  国際社会をどう捉えるか?――むすびに代えて


第四章 「自虐史観」批判と対峙する――網野善彦の提言を振り返る[呉座勇一] 147
  はじめに 
1 網野善彦と「新しい歴史教科書」 152
  「自由主義史観は戦後歴史学の鬼子」
  「自由主義史観は右からの国民的歴史学運動」
2 「自虐史観」批判にどう反論するか 166
  「自由主義史観こそが自虐史観
  国民的歴史学運動のトラウマをどう克服するか
  歴史教育歴史学の敗北
  おわりに


第五章 歴史に「物語」はなぜ必要か――アカデミズムとジャーナリズムの協働を考える[辻田真佐憲] 183
  はじめに
1 「人間の生物的な限界」と「メディアの商業主義」 186
  アカデミズムとしての歴史とジャーナリズムとしての歴史
  「実証主義的マッチョイズム」の弊害
  「思想的潔癖主義」の弊害
2 キャッチフレーズの活用 194
  安全装置としての「物語」
  保守派の物語――教育勅語君が代御真影
  キャッチフレーズ活用の実例
3 「大まかな見取り図」と座談会文化の見直し 202
  「一冊でわかる」「早わかり」はすべてトンデモか
  「鋼のメンタル」だけが生き残る?
  信頼関係を醸成した座談会文化
  それでも「健全な中間」を模索すべき


第六章 【座談会】「日本人」のための「歴史」をどう学び、教えるか 214
  歴史学だけの問題ではない
  曖昧になった右左の概念
  主張のパッケージ
  学知に閉じ籠っていた歴史学
  歴史を概観する図式を描けなくなった歴史学
  フラットな社会
  歴史学歴史教育のあり方
  植民地主義を学校でどう教えるのか
  「植民地になればよかった」
  国民史の物語
  学校だけが歴史教育の場ではない
  「良質な物語」をいかに作るか
  学知と社会――外に出ることの意味
  学知と一般社会の乖離


おわりに(二〇二〇年六月一三日 前川一郎) [249-253]
日本語参考文献 [254-257]
執筆者紹介 [258]




【関連記事】


【メモランダム】
・木畑洋一による書評(in『立命館アジア・日本研究学術年報』)。
 なお、件の騒動(本書著者のひとりである呉座勇一がSNSで仲間とつるんで女性研究者を執拗に侮辱していたことが明るみになった件)についての「追記」と「編者による応答」が、末尾に付されている。
https://ritsumei.repo.nii.ac.jp/index.php?action=repository_view_main_item_detail&item_id=15079&item_no=1&page_id=13&block_id=21
(追記)URL変更 https://www.ritsumei.ac.jp/file.jsp?id=503125