contents memorandum はてな

目次とメモを置いとく場

『ミリタリー・カルチャー研究――データで読む現代日本の戦争観』(吉田純[編] 青弓社 2020)

編著者:吉田 純
著者:ミリタリー・カルチャー研究会
  伊藤 公雄
  植野 真澄
  太田 出
  河野 仁
  島田 真杉
  高橋 三郎
  高橋 由典
  新田 光子
  野上 元
  福間 良明
デザイン:山田 信也
NDC:391 戦争・戦略・戦術


https://www.seikyusha.co.jp/bd/isbn/9784787234698/



【目次】
目次 [003-005]
凡例 [006]


第1部 ミリタリー・カルチャーとは何か 

1-1 なぜミリタリー・カルチャー研究をするのか 008
注 


1-2 どのように調査をしたか 013
  1 プレ調査による対象者の抽出
  2 対象者の性別と年齢層
  3 ミリタリー関連趣味と安全保障問題への関心
  4 性別・年齢層とミリタリー関連趣味
注 


1-3 回答者はどのような人々か 023
  1 関心の内容――批判的関心層と趣味的関心層
  2 関心のきっかけ
注 


1-4 回答者の情報行動はどのようなものか 034
  1 よくアクセスする軍事関係のサイト
  2 軍事に関して信頼のできる情報提供者
  3 軍事について語り合う仲間
  4 軍事をめぐるコミュニケーション
注 


第2部 日本の戦争と戦後 

2-1 戦争の呼び方 046
  1 なぜあの戦争の呼称を問題にするのか
  2 戦争呼称の背景
    「大東亜戦争
    「太平洋戦争」
    「十五年戦争
    「アジア・太平洋戦争
    「日中戦争
    「第2次世界大戦」
  3 あの戦争を実際にどう読んでいるか
  4 調査結果――朝日新聞世論調査(2006年)との比較を通して
  5 本書の立場
注 


2-2 戦争・軍隊のイメージ 055
  1 架空の戦争、架空のヒーロー
  2 関心のきっかけ
  3 フィクションとノンフィクション
  4 戦争娯楽作品を概観する
  5 戦争・軍隊のイメージ再論
注 


2-3 戦争責任をどうみるか 064
  1 侵略戦争自衛戦争
  2 戦争責任は誰に 
注 


2-4 戦争裁判をどうとらえるか 074
  1 東京裁判をどの程度知っているか
  2 東京裁判に対する印象
  3 東京裁判に対する印象と慰霊追悼施設のあり方について
  4 BC級戦犯裁判をどの程度知ってるか
注 


2-5 「特攻」をどう考えるか 085
  1 「自己犠牲」の称賛の少なさ
  2 軍組織への評価と特攻への評価
注 


2-6 空襲の被害 092
  1 戦略爆撃の被害
  2 日本本土に対する戦略爆撃
  3 本土空襲の被害
  4 本土空襲と戦後社会
注 
参考文献 


2-7 戦争孤児 100
  1 「戦争孤児」の歴史
  2 「戦争孤児もの」
  3 戦争孤児と戦後社会
注 


2-8 戦友会を知っているか 106
  1 戦友会とは何か
  2 戦友会大会
  3 戦友会と退役軍人団体
  4 戦友会と戦後日本社会
注 


2-9 戦没者の慰霊と追悼 113
  1 「公的な施設」としての靖国神社
  2 「公的な施設」としての千鳥ヶ淵戦没者墓苑
  3 「わからない・何ともいえない」の回答選択肢
  4 新たな公的な施設
参考文献 


2-10 戦跡訪問と戦争・平和博物館 123
  1 戦後日本における国立戦争博物館の不在
  2 戦跡訪問の有無と訪問場所
  3 戦争・平和展示施設訪問の経験の有無と訪問場所
  4 各地の戦跡保存と博物館の開設――平和教育と空襲記録運動
  5 沖縄戦の「集団自決」認識をめぐる対立
  6 旧軍資料と自衛隊ならびに旧軍人団体
  7 戦争の加害展示と日本の戦争責任問題
  8 「戦後50年」以降の戦跡と戦争・平和博物館
注 
参考文献・サイト


第3部 メディアのなかの戦争・軍隊 

3-1 日本の戦争映画 142
  1 『永遠の0』と『火垂るの墓』――それぞれのインパク
  2 映画にふれるメディア環境
  3 大作映画の限定的なインパク
  4 「継承」の前景化と忘却の力学
注 


3-2 外国の戦争映画 148
  1 戦争映画というジャンル
  2 調査結果の特徴
  3 第2次世界大戦関連映画
  4 ベトナム戦争関連映画
  5 中近東の最近の戦争に関連する映画
  おわりに
注 
参考文献 


3-3 活字のなかの戦争・軍隊 161
  1 体験記録・ノンフィクション作品のなかの戦争
  2 圧倒的な回答数の『火垂るの墓』と『はだしのゲン
  3 資料利用と「小説/ノンフィクション」
  4 外国のノンフィクション
  5 「体験記・ノンフィクション」と重なる「小説」
  6 「活字のなかの戦争・軍隊」のために
注 


3-4 マンガ・アニメのなかの戦争・軍隊 172
  1 反戦と鎮魂――『はだしのゲン』と『火垂るの墓
  2 2つの「大きな物語」――『宇宙戦艦ヤマト』と『機動戦士ガンダム
  3 戦争・軍隊の4種類のリアリティー
  おわりに――マンガ・アニメが表現するリアリティーの可能性 
注 


3-5 朝ドラと戦争 194
  1 『おはなはん』から始まる朝ドラのなかの戦争
  2 戦争ばなれする朝ドラ
  3 朝ドラと戦争――印象に残ったものは?
  4 世代で異なる戦争の記憶との向き合い方
  5 戦後平和主義と朝ドラ
  6 『ゲゲゲの女房』と変容する朝ドラのなかの戦争
  7 朝ドラの現在
注 
参考文献


3-6 軍歌を歌えるか 206
  1 軍歌の戦後
  2 どんな軍歌が歌われているか
  3 軍歌の忘却と継承
  4 軍隊の脱文脈化/再文脈化
注 


3-7 歌のなかの戦争と平和 225
  1 よく歌う戦争と平和の歌――「軍歌」をめぐって
  2 トップは「戦争を知らない子供たち
  3 「リンゴの唄」から始まった敗戦後の日本社会
  4 戦争を歌わない、敗戦後の日本の歌
  5 戦後社会におけるたたかいの歌の系譜
  6 ベトナム戦争反戦の歌
  7 二つの「岸壁の母」のあいだで
  おわりに
注 


3-8 自衛隊作品 242
  1 小説とマンガ
  2 自衛隊作品の3タイプ
  3 有川浩自衛隊作品
  4 自衛隊作品と現代
注 


第4部 趣味としてのミリタリー 

4-1 趣味としてのミリタリー・概観 250
  1 ミリタリー関連趣味の費用
  2 ミリタリー関連趣味の内容――「鑑賞」と「上演」
  3 ミリタリー関連趣味の「棲み分け」
注 


4-2 ミリタリー本・ミリタリー雑誌 257
  1 書店のミリタリー・コーナー
  2 ミリタリー雑誌
注 


4-3 兵器への関心 267
  1 日常と兵器
  2 兵器に関心がありますか?
  3 個別の兵器への関心


4-4 「戦闘」を体験する 281
  1 サバイバルゲーム
  2 エアガン・モデルガン
  3 海外射撃ツアー
注 


4-5 プラモデル 294
  1 大和、零戦とタイガー重戦車――少年たちがみた夢と夢の続き
  2 プラモデル制作での「リアル」とは?――単体作品からダイオラマ(ジオラマ)へ
注 
参考文献 


4-6 ミリタリー・グッズとミリタリー・ファッション 305
  1 ミリタリー・グッズ
  2 ミリタリー・ファッション
注 
参考文献 


4-7 軍事施設見学とイベント参加 315
  1 「娯楽」としてのミリタリー・カルチャー
  2 ミリタリー・カルチャーの「消費」
  3 「ミリタメ」を求めて
注 


第5部 自衛隊と安全保障 

5-1 自衛隊への印象と評価 328
  1 自衛隊に対する印象
  2 自衛隊災害派遣活動の評価
  3 自衛隊の実力集団としての能力の評価 
注 


5-2 女性自衛官 339
  1 女性自衛官の任用拡大
  2 女性自衛官の配置制限
  3 考察――軍事組織でのジェンダー主流化をめぐるモラル・ジレンマ
注 


5-3 自衛隊と広報 351
  1 自衛隊広報の重要性
  2 「萌えキャラ」の起用に対する態度
  3 「ゆるキャラ」「女性アイドル」の起用に対する態度
  4 自衛隊のさまざまな広報活動
  5 メディア表現での自衛隊の「協力的広報」
  6 自衛隊広報の歴史性
注 


5-4 日本軍と自衛隊――断絶性と連続性 367
  1 終戦と日本軍の解体
  2 朝鮮戦争勃発と再軍備への道――警察予備隊から保安隊
  3 自衛隊の創設
  4 組織文化のDNA ――継承と変化
  5 旧日本軍の印象
  6 自衛隊と旧日本軍との断絶性・連続性
  まとめ
注 


5-5 侵略されたらどうするか 389
  1 軍事・戦争への具体的関与をめぐる態度を問うことの難しさ
  2 本調査で明確になった属性との関連
  3 他調査どの比較を加えて 
注 


あとがき(2020年9月 吉田 純) [397-400]
資料 調査票・単純集計表 [401-425]
著者略歴 [426-428]





【関連文献】

戦友会研究ノート | 青弓社


日本社会は自衛隊をどうみているか 「自衛隊に関する意識調査」報告書 | 青弓社




【抜き書き】


・本書における「ミリタリー・カルチャー」の定義。吉田純[執筆]「1-1 なぜミリタリー・カルチャー研究をするのか」より。

ここにいうミリタリー・カルチャーとは、「市民の戦争観・平和観を中核とした、戦争や軍事組織に関連するさまざまな文化の総体」[注1]という意味である。

  海外(欧米ーの戦争社会学・軍事社会学では、「ミリタリー・カルチャー」概念をもっぱら「軍事組織それ自体の文化」という意味に限定して定義・使用してきた。それに対し、この概念をこのように広く定義するのは、わたくしたちの独自の発案である。ただし近年の日本では、「ミリタリー・カルチャー」概念を明示的に用いていなくとも、実質的にはわたくしたちと同様、広義のミリタリー・カルチャーを対象とした研究が存在する。たとえば、越野剛/高山陽子[編著]『紅い戦争のメモリースケープ――旧ソ連・東欧・中国・ベトナム』(〔スラブ・ユーラシア叢書〕、北海道大学出版会、2019年)は、旧社会主義国の戦争映画などを通して、戦争に関わる「メモリースケープ(記憶の風景)」の特徴を明らかにしようとしたものであり、その種の研究として優れたものの一例である。

  この意味での戦後日本のミリタリー・カルチャーは、戦前・戦中のそれへの徹底的な批判ないし否定から出発せざるをえなかった点に最も基本的な特徴があった。この点が、海外諸国と異なる日本のミリタリー・カルチャーの固有性をつくりだし、また後述のように、平和・安全保障問題をめぐる論の場で、戦争・軍事のリアリティーがしばしば隠蔽・忌避されるという逆説をももたらした。