著者:井上 智洋[いのうえ・ともひろ] 経済学(マクロ動学理論、貨幣的成長理論、金融政策、人工知能が経済に与える影響)
ブックデザイン:新井 大輔[あらい・だいすけ](1982-) 装丁。
カバー写真:
馬車 ©National Archives/Newsmakers/ゲッティ/共同通信イメージズ
コンピュータ(計算手) ©Science Source/PPS通信社
ドローン ©Hiroshi Watanabe/ゲッティイメージズ
NDC:007.13 人工知能
【目次】
はじめに [i-vi]
目次 [vii-xii]
第1章 AI時代に日本は逆転できるか
1 ディープラーニングが知覚の扉を開いた 002
なぜ日本は衰退するのか?
人工知能とは何か?
ディープラーニングとデータ
人工知能は双子を識別できるか?
デジタル・レーニン主義
眼の誕生
耳の誕生
2 第四次産業革命 020
汎用目的技術
情報空間のデジタル化
第四次産業革命ではおむつがおつむ化する
人間の脳もネットに接続される未来
AI・ビッグデータ・IoT
ドイツのインダストリー4.0
3 覇権を握るのはどの国か 038
ヘゲモニー国家
リオリエント
世界の覇権は中国に回帰する
4 頭脳資本主義と日本の衰退 050
自動車産業がAI産業になる日
頭脳資本主義とは何か?
日本が「後進国」に転落する日
5 AIがもたらすのはユートピアかディストピアか 060
技術の血塗られた歴史
未来派の戦争賛美
人類絶滅の危機は二度あった
悪魔を使いこなせなくなった魔法使い
ガンディーと情報社会
本章のまとめ 081
第2章 人工知能はどこまで人間に近づけるか
1 ニューラルネットワークの隆盛を予見した哲学者たち 084
セルフドライビングカー・セックス
ノマドの哲学
人は狼になれる
リゾーム
ニューラルネットワークの仕組み
2 今の人工知能に何ができて何ができないか 098
20世紀の人工知能
21世紀の人工知能
ライプニッツの夢は打ち砕かれたか?
感性と悟性の再現が難しい
3 人工知能に言葉の意味が理解できるか 107
知識表現
シンボルグラウンディング問題――猫の概念とは何か?
チューリングテスト
高次の概念を獲得できるか?
理系の学者は先に職を失う!?
4 人工知能に常識的な判断はできるか 122
フレーム問題
DQN[deep Q-network]
ブロック崩しの裏技もマスター
神託AIと世界内AI
フレーム問題を解くには人間らしい感性も必要だ
AIが自律的に動いていないように見えるのはなぜか?
欲望の多方向性
5 人工知能にとっての感情と意識 141
クオリアとは何か?
逆転クオリアと哲学的ゾンビ
クオリアにまつわる誤解
感情の機能的な面と現象的な面
6 汎用人工知能は実現可能か 148
特化型人工知能と汎用人工知能
全脳アーキテクチャと全脳エミュレーション
100年後、生身の人間は世界の片隅でひっそりと暮らす
リゾームシステムのツリー的理解は可能か?
生体模倣レベル
7 神が死んだように人間も死ぬのか 164
自我は虚構のようにして存在する
科学革命によって神は死んだ
人間は波打ち際の砂の表情のように消滅する
本章のまとめ 174
第3章 人工知能は人々の仕事を奪うか
1 技術的失業の実際 178
最初の技術的失業
自動車の普及によってなくなった仕事技術的失業と労働移転
2 アメリカにおける技術的失業 188
アメリカでは事務労働が減っている
トランプ大統領とその支持者たちの敵
アメリカて雇用が減っているのはなぜか?
3 日本における技術的失業 199
やはり事務労働は減少する
銀行業は大失業時代を迎える
肉体労働が減っていくのは2030年以降
4 人間並みの人工知能が出現したら仕事はなくなるか 208
汎用人工知能は根こそぎ雇用を奪うか
それでも残る仕事
AI時代に感性は重要か?
5 未来の雇用と格差 217
全人口の1割しか労働しない社会
クリエイティブな世界は残酷だ
本章のまとめ 223
第4章 技術的失業と格差の経済理論
1 経済学はなぜ技術的失業を軽視するのか 226
経済学者は教条的!?
古典派経済学における技術的失業
マクロ経済学のセントラル・ドグマ
長期・短期分離フレームワーク
2 現代経済学における技術的失業の扱い 238
技術的失業が長期化する可能性
ポストケインジアンとは何か?
需要創造的な技術進歩が失業を減らす
3 雇用が生まれにくいAI時代に必要な経済政策とは 247
ITは雇用を生まない
労働市場の二極化との関係
雇用が減少する経済で重要なのはマクロ経済政策
4 限界費用ゼロはなぜ格差を生むのか 255
限界費用ゼロと自然独占
限界費用ゼロは独占を生む
限界費用ゼロは格差を生む
本章のまとめ 266
第5章 新石器時代の大分岐――人類史上最大の愚行はこうして始まった
1 ガンディーと産業革命 270
綿布の製造から始まった産業革命
生産構造の変革
2 人類史上最大の過ちとは 274
ネアンデルタール人との命運を分けたもの
農耕の始まり
人類史上最大の過ち
マルサスの罠
3 自滅的な問題はなぜ引き起こされるのか 283
不合理な振る舞いと合成の誤謬
不合理な振る舞い
合成の誤謬
4 人々が繁栄にとり憑かれて経済成長は始まった 290
繁栄にとり憑かれる
新石器時代の大分岐
参照点
繁栄は参照点との差によって満足度を高める
新石器時代の成長パラノイア
本章のまとめ 304
第6章 工業化時代の大分岐――なぜ中国ではなくイギリスで産業革命が起きたのか
1 大分岐論争 308
ペストが蔓延すると豊かになる
マルサスの罠からの脱却
ポメランツの大分岐論
大分岐は偶然の産物か
2 地理的条件が繁栄を決定づける 317
なぜユーラシア大陸が繁栄したのか?
肩車効果を発揮しやすかった中国とインド
宋朝中国の華やぎと長いその後
交易が生んだ中東と地中海の繁栄
3 近世以降ヨーロッパが勃興したのはなぜか 331
モンゴル帝国がヨーロッパに繁栄をもたらした
軍事革命と印刷革命
ヨーロッパ世界経済から近代世界システムへ
4 中国が停滞したのはなぜか 345
東アジアでは安定と秩序が好まれた
中国における諸国併存体制の消失
本章のまとめ 350
第7章 AI時代の大分岐――爆発的な経済成長
1 なぜ中国が最初にテイクオフを果たすのか――デジタル・レーニン主義の行方 354
左側に改めろ
中所得国の罠を抜けるには
中国は中所得国の罠に陥るか
毛沢東はマーガリン・エコノミスト
易姓革命とイノベーションの促進
テイクオフとは何か
2 過去の三つの産業革命と経済成長率 376
肩車効果と取り尽くし効果
第二次産業革命の終わり
第三次産業革命
先進国の経済成長率が低いのはなぜか
3 AI時代に世界は再び分岐する 384
純粋機械化経済とは何か?
純粋機械化経済における成長率
AI時代の大分岐
テイクオフに遅れるとどのような災難に見舞われるか
4 テイクオフに必要な需要側の政策とは 395
本章のまとめ 402
第8章 AI時代の国家の役割――中枢を担うのは国家か、プラットフォーム企業か
1 1968年革命 406
敷石の下は砂浜だ
恩寵の扉は閉じられた
幻覚剤がもたらす心のアナーキズム
美は乱調にあり
2 なぜ今アナーキズムの時代なのか 419
マルチチュード vs. 帝国
リバタリアニズム
麦畑がバッハの曲を奏でる
アナーキー・イン・カリフォルニア
3 未来の社会は「不用階級」と「不老階級」に二極分化するのか 433
いちごを白書をもう一度
シンギュラリティ
ホモ・デウス
4 AI時代にソ連型社会主義は可能か 444
ソ連は怠け者の楽園ではない
中枢によってコントロール
社会主義経済計算論争
人工知能と社会主義
5 グーグルが通貨を発行してばらまく日 454
アナーキズムでもなくソ連型社会主義でもなく
市場の失敗
技術を高めるために政府がなすべきこと
プラットフォームとしての貨幣
人類史の三つのリンゴ
脱労働社会へ
本章のまとめ 477
おわりに [478-479]
Notes [480-482]
参考文献 [483-488]