著者:中西 嘉宏[なかにし・よしひろ](1977-) 地域研究,比較政治学,ミャンマー政治研究。
地図作成:地図屋もりそん
NDC:316.8238 カチン族
ロヒンギャ危機―「民族浄化」の真相 -中西嘉宏 著|新書|中央公論新社
【目次】
はしがき [i-v]
目次 [vi-ix]
凡例 [x]
地図 [xi-xii]
序章 難民危機の発生 001
難民とアジア
予兆のあった危機
ミャンマー
バングラデシュと接するラカイン州
ロヒンギャとは誰か
ムスリムとロヒンギャとの違い
ラカイン州の経済的停滞
紛争の発生
難民の流出
難民の保護
本書の視覚と構成
第1章 国民の他者――ラカインのムスリムはなぜ無国籍になったのか 027
1 大英帝国の辺境で形成された国家 028
開かれたムラウー朝とその崩壊
イギリスによる殖民地統治
複合社会の形成
ラカインの複合社会
2 ナショナリズムの排他性 040
ミャンマー・ナショナリズムの勃興
アミョー・バーダー・ターダナー(民族・言語・仏教)
反インド人暴動と仏教徒の危機感
3 日本軍政下での紛争勃発 050
日本軍がもたらした混乱
インパールの南で起きた衝突
ラカインの奪還とムスリムの動員
4 独立とロヒンギャの「誕生」 054
ミャンマー独立
ラカインからみたミャンマー独立
ロヒンギャの「誕生」
第2章 国家による排除――軍事政権下の弾圧と難民流出 063
1 二つの軍事政権 063
ネーウィンによる社会主義的な軍事政権―― 一九六二〜一九八八
タンシュエによる「なし崩し」の軍事政権―― 一九八八〜二〇一一
2 タインインダー(土着民族)と国籍法改正 069
ネーウィンのナショナリズム
国籍法の改正
ロヒンギャの位置づけ
3 難民流出による国際問題化 079
バングラデシュ独立戦争
ヌガーミン作戦―― 一九七八
二度目の大規模流出―― 一九九一〜一九九二
ボート難民化
4 国家安全保障とロヒンギャ 086
西から迫る脅威?
イスラーム復興の影響
5 ラカイン人とロヒンギャ 093
ラカイン民族主義
ポスト軍事政権へ
第3章 民主化の罠――自由がもたらした宗教対立 099
1 軍事政権の終焉 100
軍事政権下の統制
民政移管はなぜ起きたのか
民主化の進展
拡大する自由
2 民主主義のダークサイド 112
どうして民主化が暴力につながるのか
二〇一二年のコミュナル運動
メッティーラでの衝突
紛争が拡大した理由
3 自由の代償 121
969とマバタ
民族・宗教保護のための四法
右翼僧の役割
背後にあるもの
スーチー政権の成立
第4章 襲撃と掃討作戦――いったい何が起きたのか 135
1 ロヒンギャ武装勢力の変容 136
ARSA[Arakan Rohingya Salvation Army]とアタウッラー
二〇一六年事件の衝撃
2 二〇一七年八月二五日 142
再び、ARSAの襲撃
掃討作戦に関する二つの報告書
3 何が起きたのか 148
三つの段階、三つの紛争
動員の手段
初動
4 掃討作戦の実態 153
ミンジー村――最大規模の殺戮
チュッピン村――村人への無差別発砲
マウンヌ村――村人の処刑
アレータンジョー村――村人の大量流出
その他の事例
掃討作戦はいつ終わったのか
犠牲者数について
国際社会の反応
第5章 ジェノサイド疑惑の国際政治――ミャンマー包囲網の形成とその限界 173
1 アウンサンスーチー、法廷に立つ 173
国際司法裁判所
裁判の背景
ガンビア、ミャンマー、それぞれの言い分
スーチーはなぜジェノサイドを否定するのか
裁判の行方
2 ミャンマー包囲網と日本・中国 183
ミャンマー批判の発展
国際司法機関の動き
日本の対応
中国の対応
3 ジェノサイド疑惑の国内政治 194
受け身のリーダーシップ
民意と政治
圧力を受ける国軍
特別軍事法廷の設置
ふたつの反動的ナショナリズム
第二次スーチー政権へ
終章 危機の行方、日本の役割 209
1 難民帰還を阻む要因は何か 209
(1) 国籍問題
(2) 帰還後の支援への不安
(3) 治安の急速な悪化
(4) ロヒンギャとミャンマー政府・仏教徒との間の相互不信
2 日本の役割を考える 215
理想主義と現実主義とのバランス
踏まえるべき前提
現実を変える関与のために
(1) 人道支援と帰還プロセスの支援
(2) 国内司法による事実解明と責任者訴追への働きかけ
(3) ラカイン州開発のための改発支援
(4) 新しい連邦制の構築支援
(5) 国軍・警察の能力開発
3 おわりに 226
あとがき(二〇二〇年一一月 中西嘉宏) [231-234]
主要参考文献 [235-242]
関連年表 [243-252]