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『認知言語学を拓く』(森雄一, 西村義樹, 長谷川明香[編] くろしお出版 2019)

編者:森 雄一[もり・ゆういち] 成蹊大学文学部教授
編者:西村 義樹[にしむら・よしき] 東京大学大学院人文社会系研究科教授
編者:長谷 川明香[はせがわ・さやか] 成蹊大学アジア太平洋研究センター客員研究員。
著者:相原 まり子[あいはら・まりこ] 東京大学教養学部非常勤講師,日本大学文理学部非常勤講師。
著者:石塚 政行[いしづか・まさゆき] 東京大学大学院人文社会系研究科助教.
著者:大橋 浩[おおはし・ひろし] 九州大学基幹教育院・大学院人文科学府教授.
著者:加藤 重広[かとう・しげひろ] 北海道大学大学院文学研究院教授.
著者:小嶋 美由紀[こじま・みゆき] 関西大学国語学部・大学院外国語教育学研究科教授.
著者:小柳 智一[こやなぎ・ともかず] 聖心女子大学現代教養学部教授.
著者:真田 敬介[さなだ・けいすけ] 札幌学院大学人文学部准教授
著者:高橋 英光[たかはし・ひでみつ] 北海道大学名誉教授.
著者:長屋 尚典[ながや・なおのり] 東京大学大学院人文社会系研究科准教授,
著者:西山 佑司[にしやま・ゆうじ] 慶應義塾大学名誉教授、明海大学名誉教授.
著者:野村 剛史[のむら・たかし] 東京大学名誉教授、
著者:三宅 登之[みやけ・たかゆき] 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授
著者:李 菲[り・ふぇい] 立教大学ランゲージセンター教育講師
シリーズ:成蹊大学アジア太平洋研究センター叢書
装丁:右澤 康之


認知言語学を拓く|くろしお出版WEB



【目次】
序(森雄一 西村義樹 長谷川明香) [iii-iv]
目次 [v-vi]


◆第1部 フィールド言語学認知言語学

第1章 バスク語の名詞文・形容詞文の文法と意味[石塚政行]
1. はじめに 003
2. 分析に用いる認知文法の概念 004
3. バスク語の名詞句とコピュラ文 007
  3.1 バスク語の名詞句
  3.2 バスク語のコピュラ文
4. 名詞文の分析 013
  4.1 名詞文はタイプと事例の関係を表す
  4.2 なぜ定冠詞か
  4.3 同定文との比較
5. 形容詞文の分析 017
  5.1 主要部闕如名詞句の意味構造
  5.2 形容詞文の補語名詞句もモノのタイプを表す
6. まとめ 022
付記・略語一覧 ・参照文献 022


第2章 意図と知識――タガログ語のma-動詞の分析[長屋尚典]
1. はじめに 023
2. タガログ語の類型論的特徴と動詞形態論 024
  2.1 タガログ語の類型論的特徴
  2.2 焦点体系(フォーカス・システム)
  2.3 無標動詞とma-動詞 026
3. ma-動詞とその多機能性 027
  3.1 ma-動詞の意味――自発――
  3.2 ma-動詞の意味――意図成就――
  3.3 ma-動詞の意味――経験――
  3.4 ma-動詞の意味――可能――
  3.5 まとめ
4. 意図と知識 036
  4.1 ma-動詞の意味のネットワーク
  4.2 ma-動詞の解釈はどのように決まるのか
5. おわりに 041

付記・略語一覧・参照文献 042


◆第2部 中国語研究と認知言語学

第1章 中国語の攻撃構文における臨時動量詞の意味機能[李菲]
1. はじめに 047
2. ニ種類の動量詞 048
  2.1 回数を表す専用動量詞
  2.2 臨時動量詞の特異性
  2.3 “V了O―N” 051
3. 攻撃構文を表す臨時動量詞構文 053
  3.1 道具という観点の問題点
  3.2 “V了(O)―N”の生産性
  3.3 攻撃構文としての四特徴
4. 攻撃構文における臨時動量詞の意味機能 060
  4.1 臨時動量詞の意味機能と成立条件
  4.2 動作対象が臨時動量詞に変わる場合
  4.3 臨時動量詞が指すモノ
5. おわりに 065

略語一覧 ・参照文献 066


第2章 行為の評価からモノの属性へのプロファイル・シフトについて――中国語の難易度を表す形容詞の事例から[三宅登之]
1. はじめに 067
2. “简单”と“容易” 067
  2.1 中国語の類義語“简单”と“容易”
  2.2 文法機能の差の調査
    2.2.1 述語
    2.2.2 連体修飾語
    2.2.3 連用修飾語
3. モノ対象形容詞と行為対象形容詞 072
  3.1 “难”の文法機能について
  3.2 形容詞の2つの類――モノ対象形容詞と行為対象形容詞
  3.3 名詞性成分が“容易”だということの解釈
4. 行為と対象の間のプロファイル・シフトについて 079
  4.1 行為からモノへ
  4.2 モノから行為へ
5. 行為を表す部分の省略可否について 084
  5.1 英語の場合
  5.2 中国語の場合
6. まとめ 088
付記・略語一覧 ・参照文献 088


第3章 中国語主体移動表現の様相――ビデオクリップの口述データに基づいて[小嶋美由紀]
1. はじめに 091
2. 移動に関わる意味要素と移動表現の類型について 091
3. 実験とその目的 093
4. 中国語データの提示と問題提起 095
  4.1 中国語における意味要素間の競合について
  4.2 中国語における各情報の言及率
5. 直示言及率が低い要因 098
  5.1 直示の種類別言及率
  5.2 直示動詞と「地」を表す名詞句との共起関係
    5.2.1 /to/における「経路」及び「地」の表現方法
    5.2.2 /into/及び/up/における「経路」及び「地」の表現方法
  5.3 /up/においてTwdS言及率が低い要因
6. ビデオクリップ口述データから見た中国語の主体移動表現の累計 112
7. おわりに 114

付記・略語一覧 ・参照文献 114


第4章 中国語における直示移動動詞の文法化――[動作者名詞句+来+動詞句]の“来”の意味と文法化の道筋[相原まり子]
1. はじめに 117
2. これまでの研究 118
  2.1 意味に関する先行研究
    動作者の意志,積極性
    話し手の願望
    発話の場での動作立ち上げ
    焦点(フォーカス)
  2.2 文法化の道筋についての先行研究
3. “来f1”の獲得した意味 121
  3.1 誰かが行うべき行為とその担い手
  3.2 必要性のありか――〔話者領域【場】〕――
  3.3 前提
  3.4 主語の脱主題化
  3.5 希求
  3.6 心理的移動
4. 文法化の経路の推定 134
  4.1 推定方法
  4.2 変化が起こった環境と文法化の道筋
    ① “来m1”としか解釈できない(=“来f1”の可能性なし)
    ② どちらの“来”とも解釈できる
    ③ “来f1”としか解釈できない場合
5. おわりに 140

付記・略語一覧・参照文献 141


◆第3部 語用論と認知言語学の接点◆

第1章 認知言語学と関連性理論[西山佑司]
1. はじめに 145
2. 認知言語学と関連性理論の親和性 145
3. 言語研究に関する合理論と経験論 146
  3.1 生成文法理論(GC
  3.2 認知言語学(CL)
  3.3 認知言語学生成文法理論批判はどこまで正当化できるか
4. 関連性理論(RT) 151
  4.1 関連性理論の位置付け
  4.2 意味論的決定不十分性(semantic underdeterminacy)
5. 論理形式と表意の区別 156
  5.1 「論理形式と表意の区別」に対する CLの見解
  5.2 論理形式と表意の区別を否定することの帰結
    5.2.1 自由変項読みと束縛変項読みの曖昧性
    5.2.2 自由拡充に対する意味論的制約
6. 認知言語学(CL)は言葉の意味をいかなるものと考えているか 163
  6.1 意味とカテゴリー化
  6.2 世界の事態の捉え方(construal)の意味論
7. 結び 167
付記 ・参照文献 168


第2章 なぜ認知言語学にとって語用論は重要か――行為指示の動詞と項構造[高橋英光]
1. はじめに 171
2. 認知言語学と語用論の関係史 172
3. 意味論と語用論の峻別が招く弊害 176
4. なぜ認知言語学にとって語用論は重要か 179
5. 行為指示の動詞と項構造 180
  5.1 行為支持の二重目的語構文―― giveの場合
  5.2 行為支持の二重目的語構文―― tellの場合
  5.3 行為支持の二重目的語構文についてのまとめと考察
6. おわりに 186
付記・参照文献 187


第3章 日本語の語用選好と言語特性――談話カプセル化を中心に[加藤重広
1. はじめに 191
2. 動的言語観と作用の反転 192
3. 言語研究は複雑系と力動性をどう利用するか 194
  3.1 複雑系の主要概念と言語
  3.2 動的語用論と複雑系
4. 談話カプセル化と引用現象 202
  4.1 引用に関する先行研究
  4.2 引用のカプセル化
5. まとめと課題 212
参照文献 212


第4章 提喩論の現在[森雄一]
1. はじめに 215
2. 認知能力から見た提喩と換喩の区別 215
3. 提喩の非対称性と分類
4. アドホック概念構築 225
5. 自己比喩 231
6. おわりに 233
参照文献 234


◆第4部 言語変化と認知言語学

第1章 認知言語学と歴史語用論の交流を探る――MUSTの主観的義務用法の成立過程をめぐって[眞田敬介]
1. はじめに 239
2. 認知言語学と歴史語用論の概観 240
  2.1 認知言語学と言語変化研究
  2.2 歴史語用論
  2.3 認知言語学と歴史語用論の交流地点としての主観化
3. MUSTの義務用法における主観性と主観化 244
4. データ源 245
5. 古英語motanの意味・用法の概観 246
  5.1 motanの意味・用法の分類
  5.2 motanの義務用法を特定した基準
  5.3 motanの義務用法の派生に関わる文脈
6. 主観的義務用法の成立過程――古英語motanの分析から――
  6.1 motanの義務用法の観察
  6.2 主観的義務用法の成立と定着――使用頻度の観点から――
  6.3 主観的義務用法の成立過程――認知言語学的観点からの考察――
7. おわりに 257

付記・参照文献・コーパス 257


第2章 譲歩からトピックシフトへ――使用基盤による分析[大橋浩]
1. はじめに 261
2. 認知的アプローチと文法化 261
3. 譲歩への変化と譲歩からの変化 265
4. Having said thatにおける意味変化 267
  4.1 構文的特徴
  4.2 生起位置
  4.3 譲歩からトピックシフトへ
  4.4 関連構文における変化
  4.5 動機づけ
  4.6 理論的意味合い
5. おわりに 280

付記・参照文献・コーパス・辞書 281


第3章 ノダ文の通時態と共時態[野村剛史]
1. はじめに 285
2. ノダ文についての説明 285
3. 共時態と通時態 287
4. ナリ文とノダ文 290
5. 中古ナリ文の振る舞い 293
6. ナリ文からノダ文へ
7. 通時態の困難 302

参照文献 304


第4章 副詞の入り口――副詞と副詞化の条件[小柳智一]
1. はじめに 305
2. 副詞の捉え方 305
3. 副詞の拡がり 308
  3.1 確認副詞と評価副詞
  3.2 量副詞
  3.3 集合副詞と例示副詞・比喩副詞
  3.4 時間副詞と空間副詞

4. 副詞化の条件 314
  4.1 副詞化の意味的条件
  4.2 副詞形成
  4.3 挿入句経由
  4.4 連体修飾句経由
5. おわりに 321

付記・資料・参照文献 322


執筆者一覧 [324-326]




【抜き書き】

 本書は,「認知言語学を拓く」というタイトルのもと,14名の言語研究者が,それぞれの問題関心において言語現象を分析した論考を収録する。本書のもととなっているのは,2015年度~2017年度成蹊大学アジア太平洋研究センター共同研究プロジェクト「認知言語学の新領域開拓研究―英語・日本語・アジア諸語を中心として―」(研究代表者:森 雄一)である。このプロジェクトにおいては,研究会を8回,公開シンポジウムを2回開催し,プロジェクトメンバーとゲストスピーカーが報告と討議を行った。ゲストスピーカーには認知言語学的手法をメインにしている研究者だけではなく,様々なスタイルの研究者をお招きすることができ,認知言語学研究の活性化のため,有意義な機会であったと考える。その成果が,成蹊大学アジア太平洋研究センターからの助成を受け,本書『認知言語学を拓く』と姉妹書『認知言語学を紡ぐ』の2巻に成蹊大学アジア太平洋研究センター叢書としてまとめられることとなった。