著者:籾山 洋介[もみやま・ようすけ](1961-) 認知言語学。
あることばの意味が複数の意味をもつまでの現象を整理し、複数の意味の間に存在する関係の分析手法を紹介する。単義語が複数の意味をもつ語(多義語)にいたる現象を、類似性から意味が増えていく現象(メタファー)、ある語と語の間に見られる隣接性から意味が重なりを見せる現象(メトニミー)、語と語の間に見られる類と種の関係から意味が広がりを見せる現象(シネクドキー)等の認知言語学的視点から段階的に分析・整理していく。
【目次】
はしがき(2021年7月 籾山洋介) [iii-v]
目次 [vii-x]
1 多義語をめぐる諸問題
1. はじめに
2. 多義語とは
3. 多義語・同音異義語と漢字表記
4. 多義語分析の課題
5. 単義説の問題点
6. おわりに
2 多義語の多様性:多義的別義の自立性と関連性
1. はじめに
2. 典型的な多義語
3. 単義語寄りの多義語
3.1 一方の意味の自立性が低い場合
3.2 「フレーム全体の意味」の自立性が高い場合
3.3 スキーマ的意味の自立性が高い場合
4. 同音異義語寄りの多義語
4.1 同音異義語寄りの多義語の基本的性質
4.2 同音異義語寄りの多義語の成り立ち
5. 多義語動詞と格体制
5.1 格体制が異なることと多義的別義が異なることが対応
5.2 格体制は同じであるが多義的別義としては異なる
5.3 格体制は異なるが多義的別義としては同じ
6. おわりに
3 プロトタイプ的意味の認定
1. はじめに
2. 多義語のプロトタイプ的意味とは
3. 先行研究の検討
4. 動詞・名詞・形容詞のプロトタイプ的意味の認定
4.1 動詞
4.1.1 能動形・受動形の可否
4.1.2 基本形・使役形の可否
4.1.3 本動詞・複合動詞の可否
4.1.4 肯定形・否定形の可否
4.1.5 タ形による名詞修飾に限定
4.1.6 「する」の検討
4.2 名詞
4.3 形容詞
5. おわりに
4 比喩から多義語へ:複数の意味の関連性
1. はじめに
2. 多義語の発生・成立
3. 複数の意味の関連性
3.1 メタファー
3.1.1 外見の類似性に基づくメタファー
3.1.2 抽象的な類似性に基づくメタファー
3.1.3 メタファーの認知的基盤
3.2 メトニミー
3.2.1 空間における隣接
3.2.2 全体と部分の関係
3.2.3 時間上の隣接
3.2.4 原因と結果/手段と目的の関係
3.2.5 モノとコトの関係
3.2.6 作者と作品/生産者と製品の関係
3.2.7 メトニミーの認知的基盤
3.3 シネクドキー
3.3.1 類から種への意味の転用
3.3.2 種から類への意味の転用
3.3.3 シネクドキーの認知的基盤
4. 三種の比喩の関係
5. おわりに
5 放射状ネットワークモデルに基づく多義語の分析
1. はじめに
2. 放射状ネットワークモデルとは
3. 放射状ネットワークモデルに基づく分析
3.1 「タマゴ」の分析
3.2 「言う」の分析
3.2.1 先行研究の検討
3.2.2 「言う」の意味
3.2.3 「言う」のプロトタイプ的意味
3.2.4 「言う」の多義構造
4. おわりに
6 スキーマティック・ネットワークモデルに基づく多義語の分析
1. はじめに
2. スキーマティック・ネットワークモデルとは
2.1 スキーマ関係と拡張関係
2.2 プロトタイプとスキーマ
3. スキーマティック・ネットワークモデルに基づく分析
3.1 「花」の分析
3.2 名詞「もの」の分析
3.2.1 プロトタイプ的意味
3.2.2 「人間」を表す「もの」
3.2.3 より抽象的意味へ
3.2.4 名詞「もの」の多義構造
3.3 「かたい」の分析(その1)
3.3.1 意味(1)(プロトタイプ的意味)
3.3.2 意味(2)
3.3.3 意味(3)
3.3.4 意味(4)
3.3.5 意味(5)
3.3.6 「かたい」の多義構造
3.3.7 意味区分の妥当性
3.3.8 プロトタイプ的意味
4. おわりに
7 フレームに基づく多義語の分析
1. はじめに
2. フレームとは
3. フレームと現象素
4. フレームとメトニミー
5. フレームに基づく多義語の分析
5.1 「きく」の分析
5.2 「かたい」の分析(その2)
5.2.1 「緊張状態等の平常心ではない心理状態」のフレームに基づく意味の拡張
5.2.2 「かたいもの」のフレームに基づく意味の拡張
5.2.3 各意味の用法上の自由度
5.2.4 各意味の自立性の程度
6. おわりに
8 統合モデルに基づく多義語の分析
1. はじめに
2. 統合モデル
3. 「タマゴ」再考
4. 「かたい」の分析(その3)
4.1 多義語「かたい」の統合モデルによる記述
4.2 多義語分析の課題(1)
4.3 多義語分析の課題(2)
4.4 多義語分析の課題(3)、(4):統合モデルの性質
5. 多義説の妥当性
6. おわりに
参考文献 [261-270]
索引 [271-275]