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『快楽としての動物保護――『シートン動物記』から『ザ・コーヴ』へ』(信岡朝子 講談社選書メチエ 2020)

著者:信岡 朝子[のぶおか・あさこ](1974-) 比較文学
カバー図版:Ernest Thompson Seton, Animal Heroes, New York: Charles Scribner's Sons, 1905 より(Library Book Collection/PPS通信社)
NDC:480.9 動物学 >> 動物保護


『快楽としての動物保護 『シートン動物記』から『ザ・コーヴ』へ』(信岡 朝子):講談社選書メチエ|講談社BOOK倶楽部


【目次】
はじめに [003-010]
  動物保護の背後にあるもの
  本書の構成
目次 [011-013]


序論――東西二元論を越えて 015
  「動物の扱い」の歴史と変遷
  動物表象と保護思想


第I章 忘れられた作家シートン 027
一 『動物記』とアメリ 028
  1 セトン登場 028
  2 「自然の捏造」をめぐる議論 030
    ネイチャーフェイカーズ論争
  3 論争の本質 036
    「自然」と「科学」の対立


二 「人種再生」のビジョン 042
  1 ネイチャースタディー運動との連動 042
    ネイチャースタディーの衰退
  2 自然回帰と発達心理学 048
    発生反復説と退化の不安
    退化の恐れとネイチャースタディー批判
  3 学習と本能 056
    バローズの野生動物観
    自動回復する自然


三 日本科学の精神と『動物記』 063
  1 平岩米吉と雑誌『動物文学』 063
    平岩による「動物文学」の理念
  2 「児童研究」の広がり 068
    アメリカ児童研究と元良勇次郎
    『動物文学』と児童への関心
  3 人種的階層の不在 074
    都市生活への不信
  4 太平洋戦争と「日本科学」 077
    文学と科学の融合
    日本科学の精神 


四 孤高の人々――平岩とシートンの動物観 084
  1 ジャック・ロンドン再び 084
    平岩のロンドン批判
    高等な動物の「愛」
  2 優しい野生の探究 092
    平岩が見る動物の「愛」
  3 科学への嫌悪と信頼 096
    英雄としての動物
    机上の科学への反論
    平岩の考える飼育
    野蛮への共感
  4 観察者の系譜 111
    自然回帰への恐れと欲望
    擬動物主義の可能性
    ローレンツからの賛辞


第II章 ある写真家の死――写真家・星野道夫の軌跡 121
一 Michioの死とその周辺 122
  1 越境する旅人 122
    アラスカの「アマチュア
    日本人である「利点」
  2 余白の意味 128
    「ヒキ」の構造
  3 写真の「読み」への疑念 134
    本章の目的


二 原野をめぐる言説 138
  1 写真のデジタル加工をめぐる論争 138
    美術〔アート〕としての動物写真
  2 銃とカメラ 141
    カメラによるハンティング
    「汚れなき野生」の追求
  3 美による感化 149
    傭人される画像加工
    美的価値の発見
  4 Zenとエコロジー 158
    アメリカでの禅への注目
    エコロジー・禅・星野


三 星野が見た「アラスカ」 163
  1 ラスト・フロンティアの神話 163
    『ナショナル・ジオグラフィック』の思想
    拡張するアメリカとNGS
    融和するアラスカという幻想
  2 自然保護への疑い 174
    消えゆく文化への共感
    土地の帰属をめぐる対立
    動物を見ること、食べること
    狩猟民の実像
    求められたエコロジスト像
    自然の秩序についてのイメージ
    アラスカを生きる人々
    「文化遺産」という西欧的概念
  3 「不在」の描き方 202
    広さと脆さへの無自覚
    描ききれない生命の「不在」
  4 都市的思考の罠 212
    本でもテレビでもないアラスカ
    「ふつう」の感覚への敬意
    敗北する都市
    分からないアラスカへの興味
  5 問いかけるアラスカ 227
    見過ごされる「分からなさ」
    希望を見る力


第III章 快楽としての動物保護――イルカをめぐる現代的神話 237
一 なぜイルカなのか 238
  1 映画『ザ・コーヴ』の上映中止運動 238
   顔の見えない日本人漁師 
  2 反捕鯨運動のメディア戦略 242
    イルカ追い込み漁への圧力
  3 なぜイルカが問題か 245
    文化批評から見た捕鯨

二 イメージの系譜学 249
  1 神話の中のイルカとクジラ 249
    古代ギリシャのクジラ類
    イルカの友愛と怪物クジラ
  2 神話から博物学へ 254
    ルネサンスから近代のクジラ類図像
  3 資源としてのイルカとクジラ 260
    近代捕鯨とクジラ類像
  4 現代捕鯨のスーパーホエール 265
    商業捕鯨モラトリアムとスーパーホエール
    二〇世紀のイルカ・イメージ

三 人種階層と動物保護 272
  1 人間と動物の境界 272
    聖書と動物裁判
    人と動物の連続性
  2 人種階層の誕生 279
    野蛮と人種の接合
    人の序列の身体化
  3 野蛮な自己への恐れ 285
    「下等な人々」への嫌悪
    内なる野蛮の回避

四 宇宙を泳ぐイルカ 292
  1 自然回帰としての対抗文化〔カウンター・カルチャー〕 292
    ベビーブーマーたちの時代
    科学技術の脅威
  2 ジョン・C・リリィのイルカ研究 298
    脳科学者リリィとイルカの出会い
    ヤヌス計画の失敗
  3 宇宙からきたイルカ 307
    地球外生物としてのイルカ
  4 人と自然を結ぶもの 312
    残忍なサル、優しいイルカ
    サルとイルカ
  5 同一化への願望 320
    自然としての女性
    ガイア仮説ニューエイジ
  6 惑星〔プラネット〕イメージの弊害 326
    宇宙の中の野生動物
    記号化する環境問題
    演じられる環境保護

五 再び『ザ・コーヴ』へ 334
  1 狩猟をめぐる差別 334
    正しい狩猟の発明
  2 シー・シェパードのレトリック 339
    シー・シェパードの自己規定
    正義の物語への渇望
  3 救済という快楽 346
    フィクションと現実の還流
    「思想の生態系」の未来


おわりに(二〇二〇年六月 信岡朝子) [353-362]
    
    
注 [363-369]
文献一覧 [370-399]
初出一覧 [400]





【メモランダム】
・書評(by今村純子 @『映像学』2021年106巻 pp.134-138)。
信岡朝子著『快楽としての動物保護――『シートン動物記』から『ザ・コーヴ』へ』講談社選書メチエ、2020年10月