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『「健康食品」ウソ・ホント――「効能・効果」の科学的根拠を検証する』(高橋久仁子 講談社ブルーバックス 2016)

著者:高橋 久仁子[たかはし・くにこ] (1949-) 農学博士。栄養学、食生活教育。
装幀:芦澤 泰偉・児崎 雅淑
イラスト:添田 あき 
本文デザイン・図版制作:鈴木 知哉+あざみ野図案室
NDC:498.5 


『「健康食品」ウソ・ホント 「効能・効果」の科学的根拠を検証する』(高橋 久仁子):ブルーバックス|講談社BOOK倶楽部


【目次】
はじめに [003-005]
目次 [006-011]


序章 健康志向にしのびこむ「機能性幻想」 012
序-1 蔓延する機能性幻想 012
  食生活は健康や病気に大きく影響します!
  制度かされた機能性幻想
  食品の良し悪しは「食べ方」で決まる

序-2 いわゆる「健康食品」と「保健機能食品」はどう違う? 019
  保健機能食品の登場は1991年
  そもそも「食品」とは?
  きわめて小さいトクホの「効果」
  「栄養機能」をはたす成分は?
  機能性表示食品の「科学的根拠」は貧弱
  食品なのに「用法・用量」?

序-3 「健康食品」利用者が健康のためにしていること 031
  「栄養・運動・休養」の実践率からわかること
  「健康食品」利用者の特徴は?


第1章 「健康食品」で健康は買えない――むしろ危ない10の理由 039
1-1 「健康食品」による健康被害 040
  「有害・無益」にお金を出しますか?
  ①有害物質を含むものがある
  ②医薬品成分を含むものがある
  ③一般的な食品成分でも病態によっては有害作用をもたらすことがある
  ④抽出・濃縮・乾燥等による特定成分の大量摂取が問題を生むことがある
  ⑤高齢者の代謝に過剰な負担を強いる
  ⑥医薬品利用者における薬剤との相互作用が起こりうる
  ⑦食生活の改善を錯覚させる
  ⑧生活習慣の見直しが不要と錯覚させる
  ⑨治療効果の過信で医療を軽視する
  ⑩非食品の食品化

1-2 「○○に良い」という情報に出会ったら 061
  〈「健康食品」の安全性・有効性情報〉サイトをチェックする
  「神話便乗商法」に要注意!

1-3 「効けばOK」という考え方が危ない 064

1-4 「健康食品」の販売戦略を知る――「三点セット」に要注意 066
  ①キーワードはずし
  ②架空「研究会」からの情報発信
  ③効果体験談
  「クロレラチラシ」配布差止等請求事件
  インフォマーシャルにご用心
  ネット通販ならではの注意点


第2章 トクホの“罠”――“科学的根拠”を解読してわかったこと 081
2-1 法的根拠は「健康増進法」  082

2-2 許可を受けたトクホ「1242商品」からわかること 085
  実は60パーセント以上が飲料――「食品の種類」を分類する
  トクホの3分の1を占める“人気”成分――「関与する成分」の実態
  「整腸効果」だけで35パーセント超――「許可を受けた表示内容」
  「商品名」≠「関与成分」
  「関与成分」と「許可表示」の関係は?
  「二つの効果」を謳うトクホの矛盾

2-3 変化するトクホCM 098
  放映数は減少したが……

2-4 「効果」は強調されています 100
  高濃度茶カテキン飲料「ヘルシア」シリーズ
  飲んでいい人、悪い人
  クロロゲン酸コーヒー飲料ヘルシアコーヒー」
  グラフの「視覚効果」に惑わされずに
  コーラ飲料「キリン メッツ コーラ」 「ペプシスペシャル」
  「根拠論文」を読んでみると……?
  「脂肪の吸収を抑える」根拠は?
  むなしく見える「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」
  ケルセチン配糖体茶系飲料伊右衛門 特茶
  体重はむしろ増えていた
  ウーロン茶重合ポリフェノール飲料「黒烏龍茶
  「中性脂肪の上昇抑制効果」?
  「脂肪の排出促進効果」?
  「全脂肪面積変化量の推移」?
  中鎖脂肪酸が多い食用調理油「ヘルシーリセッタ」
  「対照群に現れた結果」こそ重視すべき
  難消化性デキストリン配合大麦若葉青汁「ヘルスマネージ」
  「血糖値が上がりにくい人」の数値に異常が……?
  トマト酢生活
  「国が許可した唯一の……」でなくても


第3章 “第三の保健機能食品”「機能性表示食品」を考える 141
3-1 わずか2年弱でつくられた制度 142
  騒動の始まりは2013年6月5日
  「国民の健康」より「国富の拡大」を重視

3-2 機能性表示食品の情報をチェックする148

3-3 「届出一覧表」から実態を読み解く 150
  「それって食品?」――「食品の区分」
  トクホに存在しない物質が続々登場――「機能性関与成分名」
  販売事業者のアピール内容――「表示しようとする機能性」
  「認知症の急増」にもいち早く“対応”

3-4 機能性表示食品の「科学的根拠」を点検する 161
  「臨床試験」を科学的根拠とする場合
  「研究レビュー」を科学的根拠とする場合
  「研究レビューから宣伝広告作成」に対する違和感

3-5 トクホより悪質な広告の問題点 166
  ガセリ菌SP株含有「恵ガセリ菌SP株ヨーグルト」
  広告に書かれない「不都合な真実」――実は体脂肪率が増えていた
  ラクトフェリン含有錠剤「ナイスリムエッセンス ラクトフェリン
  「実験期間」は適切か
  ビフィズス菌配合「ビフィーナ」シリーズ
  実験に使われていた食品は……?
  論文としての基本を欠いた「根拠論文」
  科学的根拠は「推測」?
  甘草抽出物グラブリジン含有商品
  体重はほぼ変わらず、皮下脂肪面積は増加

3-6 トクホの許可表示を超える煽り文句――“言った者勝ち”の世界? 185
  「トクホ以上の効果」を明示

3-7 「生鮮食品に機能性表示」の違和感――国の制度が食生活を混乱させる 187


第4章 「栄養機能食品」を再点検する 189
4-1 「健康食品」業界にとって魅力に欠ける制度 190

4-2 消費者を誤認させる表示の横行――過去の例から 196

4-3 消費者の誤認が懸念される表示――現在の例から 198

4-4 「バランス栄養食」を考える 201
  「食事の代わり」としての妥当性は?
  規格・基準がないからといって……

4-5 乱立する食用油の実態 205

4-6 肝油ドロップをめぐる疑問 207
  栄養機能食品の基準値変更を把握せず
  たった3粒で「基準値超え」に


終章 「ふつうに」食べましょう 213
終1-1 フードファディズムに要注意 214
  フードファディズムとは
  フードファディズムニセ科学

終1-2 ヒトは雑食性の生物 218
  動物性食品と植物性食品
  タンパク質は?
  脂質は?
  コレステロールは?
  ビタミンは?
  無機質は?
  野菜代わりの野菜ジュース!?
  野菜そのものにも注目しましょう
  動物性食品忌避の問題点
  乳幼児を栄養不良に陥れてはいけません!
  ヒトは従属栄養生物

終1-3 「何を」「どのくらい」食べるか235
  日本人の食事摂取基準
  食品構成とは
  太るも痩せるも「エネルギー収支の長期結果」


おわりに(2016年6月吉日 高橋久仁子) [245-248]
参考図書 [249]
さくいん [250-254]



【図表一覧】
序-1 経口的に摂取する物質の区分 022
序-2 保健機能食品の定義 024-025
序-3 食品摂取の多様性 033
序-4 「栄養・運動・休養」の実践状況 034-035

1-1 「健康食品」の販売戦略――「三点セット」 067
1-2 禁止対象となった表示 074

2-1 トクホ食品の種類 087
2-2 トクホの「関与成分」 090-093
2-3 「おなかの脂肪面積 9.3cm減!」をグラフにしてみると…… 108
2-4 「脂肪面積の低減」が認められた……? 118
2-5 脂肪の吸収量をグラフにすると……? 124

3-1 「機能性表示食品」誕生の背景 144
3-2 「2 その他の加工食品」の「名称」による分類 152
3-3 「機能性関与成分名」一覧 154
3-4 表示しようとする機能性 156-157
3-5 不親切なグラフ 168
3-6 ラクトフェリン摂取による内臓脂肪面積とBMIの変化 171

4-1 栄養機能食品の栄養成分、含有量の範囲、栄養成分の機能、摂取する上での注意事項 192-195
4-2 栄養機能食品の例 198

終-1 野菜ジュースの栄養価 228
終-2 大人向けの食品構成の例 238-240
終-3 一日分の献立の例 240




【関連記事】
『市場における欺瞞的説得――消費者保護の心理学』(David M. Boush, Marian Friestad, Peter Wright[著] 安藤清志ほか[訳] 誠信書房 2011//2009)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20141129/1490067822

『フードトラップ――食品に仕掛けられた至福の罠』(Michael Moss[著] 本間徳子[訳] 日経BP 2014//2013)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20150313/1426172400




【抜き書き】

□有用なサイトの紹介。

pp. 61-62

 華々しい効果を謳う「健康食品」やその広告が気になったら、まずは、インターネットを開いて国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所国立健康・栄養研究所の〈「健康食品」の安全性・有効性情報〉(https://hfnet.nibiohn.go.jp/)というウェブサイトを確認するようにしましょう。

 同研究所は、「国民の健康の保持・増進及び栄養・食生活に関する調査・研究を行うことにより、公衆衛生の向上及び増進を図る公的機関」であり、信頼度の高い責任ある情報を発信しています。右のサイト上で、たくさんの種類の「健康食品」に関する情報を確認することができます。そこで情報をチェックすると、たいていの食品・食品成分の「有効性」に関して、ヒトにおけるきちんとしたデータがないだけでなく、むしろかなりの「危険情報」があることなどがわかります。

□著者曰く、トクホですら効果小さめ、と。

p. 23, 26

◆きわめて小さいトクホの「効果」
 トクホは消費者庁の審査を経た製品であり、許可された範囲内で保健効果を記載できます。すなわち、「トクホである」ことはヒトを対象に行った実験研究において、ある測定項目の値の差が、実験群と対照群とのあいだで「統計的に有意」であった(有意差があった)ことを意味しています。
 しかし従来、この有意差が実用的に意味をもつのか否かは考慮されていませんでした。その証拠に、トクホの許可要件の一つは、制度が始まって以降2015年末まで「食生活の改善が図られ、健康の維持増進に寄与することか期待できないのであること」(強調引用者)であり、決して「寄与するものであること」ではなかったのです。
 たとえば、食後の血糖値の上昇を数ミリグラム抑制する保健効果をもつトクホがあった場合に、「これを食べることが将来的に糖尿病の予防につながるか否か」はまったく考慮されていませんでした。
 もし、「健康の維持増進に寄与するものであること」を許可要件としたならば、許可されるトクホは存在しなくなってしまいます。私はかねて、あくまでも「寄与することが期待できる」という文言で煙に巻いていることを批判してきましたが、なんとその項目さえ、現在はなくなってしまいました。