著者:安田 峰俊[やすだ・みねとし](1982-) ライター。
解説:広中 一成[ひろなか・いっせい](1978-) 中国近現代史、日中戦争史。
件名:人種問題
件名:民族問題
NDLC:EC131
NDC:316.8 国家と個人・宗教・民族
「移民 棄民 遺民 国と国の境界線に立つ人々」安田峰俊 [角川文庫] - KADOKAWA
【目次】
はじめに
「国籍」を持たない人々/わけの分からない、めちゃくちゃ恐ろしい黒い穴/マジョリティはマイノリティに同情する、ただし理解はしない/境界の民は、国民国家体制のスキマから生まれてくる
第一章 クラスメイトは難民――日本のなかのベトナム
在日ベトナム人たちの寺院/自分が難民であることを知らない難民たち/目立たぬマイノリティは、私たちのすぐ隣にいる/儒教国家ベトナム式、モーレツ教育/お寺と童子と獅子舞と/往年の難民少年はガハハ社長に変わった/〝黒い洞窟〟の入り口に立つ、境界の高校生/報じられ方を気にする人、助ける相手の方を向く人/「好きなマンガは『マギ』、好きな小説家は乙一さん」/「自分が過剰に日本人であろうと」する/「無理矢理かわいそうなこと言わせてるよね」/日本に溶け込むことは日本の病理を背負うことだ/「ただの『違い』ですから。そこに『焦る』ことはないです」/「なあんも考えんと付き合ったら、おもろい人らやんか」
第二章 偽りのシルクロード(上)――迷走するウイグル
一日に四度も拘束を受ける町/密告・尋問・虐殺・亡命が代名詞となる情勢/以前はまだ「マシ」だった/「アイヌが同化された歴史は、ウイグルと似ているかもしれない」/「九・一一でいちばん被害を受けたのはウイグル人だ」/「ウイグル人と連帯する」日本人たち/〝色の濃い〟団体/迷走する「ウイグルの母」/「ウイグル人のことはウイグル人に決めさせてくれ」/使いやすい〝ネタ〟になった中国の少数民族問題
第三章 偽りのシルクロード(下)――道具としてのウイグル
中国の体制下で大学生になった男/「だって、俺たちはウイグル人ですから」/シャリーア/三〇〇万人のウルムチ市民から目的の人物を捜し出せ/ウイグル人の口コミ世界に入り込む/「女を騙して連れてきちゃ駄目じゃないか」/私利私欲/ネット派の誕生と「努力」/絶対的権威はウイグル人であるために生まれた/気まぐれな「弱者の帝王」と、踊らされる忠義の士たち/「本心がわからないんです」/「ここまで理不尽に迫害されているのは、神からの罰なのではないか」
第四章 ガラパゴスのコスモポリタン――引き裂かれる上海
「自分が育った国」日本の姿/レゲエ学生たちは祖国の危機に立ちあがった/日中ハーフの留学生が見た「三・一一」とニッポンの社会人/「祖国」の社会は彼女らを排除した/微博とジャパニーズ・メディア/業務内容とリスクは日本人基準だが、給料と安全性は中国人基準が適用される/「なんとかして撮れ」/くだらない不文律/「支那通」は最前線で銃を撃つ/「漢奸」の嘆き/社会の免疫機能は異分子を排除する
第五章 黒いワイルド・スワン――軍閥、文革、歌舞伎町
日本人女性の売春事情/〝山西王〟、閻錫山/祖父、李鴻文/科挙官僚から紅灯の巷へ/日本と軍閥とフライング・タイガース/革命とは階級を転覆させる暴動である/「貴様は最悪の家庭に生まれた、人間のクズだ」/中国の社会はどうあるべきか、人間の自由はいかに得られるべきか/天安門と文学青年と新宿歌舞伎町/中国的読書人は仮面を被った虎に変わる/現代中国を生んだ、歴史のオセロゲーム/語られざる物語は草木に変わる
第六章 甘すぎる毒の島――幻想としての台湾
「海外の人たちも俺たち台湾の事例から大いに学んでほしい」/「太陽花学運(ヒマワリ学運)」/デモが築いた「自由」な社会/たいわん、がくせい、がんばります/『中国の赤い星』の教訓/占拠中の立法院の内部に入る/情不自禁/私も黄色いリボンを結びたかった/台湾は日本人を酔わせる/ヒマワリ学運に踊り、勘違いする日本人たち/甘い毒/「台湾の民主主義の方が日本よりもいいです」/日本人の台湾に対する「誤解」/台湾人にとっての日本も所詮は外国でしかない/自己國家自己救
おわりに
多数派による傲慢/境界の民たちの「大事なもの」/動揺する世界を理解するキーは何か
文庫版あとがき――その後の「境界の民」
主要参考文献
解説――アジア主義の呪縛(広中一成)
人物相関図(第五章)
画像出典
カバー、章扉写真について