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『エクソダス――移民は世界をどう変えつつあるか』(Paul Collier[著] 松本裕[訳] みすず書房 2019//2013)

原題:Exodus: Immigration and Multiculturalism in the 21st Century (Oxford University Press)
著者:Paul Collier(1949-) 開発経済学
訳者:松本 裕[まつもと・ゆう] 翻訳。
装丁デザイン:川添 英昭[かわぞえ・ひであき](1979-) ブックデザイナー/グラフィックデザイナー。
NDC:334.4 人口.土地.資源


エクソダス | みすず書房


【目次】
献辞 [i]
目次 [iii-viii]


プロローグ 001


第I部 疑問と移住プロセス 

第1章 移民というタブー 009


第2章 移住はなぜ加速するのか 026
  繁栄の4本の柱
  所得格差が移住にどう影響するか
  均衡が必要ない理由
  モデルの導入
  事実とそれが示唆するもの


第II部 移住先の社会――歓迎か憤りか? 

第3章 社会的影響 055
  相互共感
  相互共感――信頼と助け合い
  移民の文化
  移住、信頼、助け合い
  いくつかの事例的逸話
  相互共感と公正
  ディアスポラの吸収率
  ディアスポラの吸収と内訳
  移民の吸収と態度――移住者なのか入植者なのか
  多文化の二つの意味
  同化と融合
  分離主義と入植者
  先住人口の移民に対する態度と吸収
  吸収率と受入国政府の政策


第4章 経済的影響 108
  賃金への影響
  住居への影響
  民例外論の影響
  高齢化の相殺に移民は必要か?
  技能不足を埋めるのに移民は必要か?
  移民の流入は国外流出を誘発するか?
  ゲストワーカーの経済学


第5章 移民政策を取り違える 131
  経済的・社会的影響を組み合わせる
  パニックの政治経済


第III部 移民――苦情か感謝か? 

第6章 移民――移住の勝ち組 141
  移民が移住の勝ち組になる理由
  移住による利益は誰のもの?
  投資としての移住
  どうぞ入れてください
  命綱
  ドラマチックな含意


第7章 移民――移住の負け組 164


第VI部 取り残された人々 

第8章 政治的影響 173
  国外移住はより良いガバナンスへの圧力を生むか?
  国外移住は善き指導者の供給を増やすのか?


第9章 経済への影響 188
  「頭脳流出」は正しい懸念なのか?
  やる気の流出はあるのか?
  仕送り
  国外移住は人口過密を緩和するか?


第10章 取り残された? 210
  援助としての移住


第V部 移民政策を再考する 

第11章 国家とナショナリズム 223
  イギリス人のためのイギリス?
  コミュニティか個人か?
  国家はコミュニティか?
  国民的アイデンティティは急速な移住と調和しているか?


第12章 移民政策を目的に合致させる 237
  移住を規制する権利
  移民――加速原則
  取り残された人々――幸福な中間地点
  先住人口――メリットとデメリット
  政策パッケージ
  上限
  選択性
  統合
  不法移民を合法化する
  政策パッケージの仕組み
  結論――収束する経済、分岐する社会


参考文献 [11-16]
原注 [5-10]
索引 [1-4]




【抜き書き】
・「プロローグ」から

本書の執筆に際して、私は三つの質問に答える必要があった。移民の決断の根拠はなんなのか? 移住によって、取り残された人々はどのような影響を受けるのか? 移住先の国にもともといる先住人口にはどのような影響があるのか? これらの質問は、それぞれにはっきりと分かれた専門家がいる。だが、私は移住が主に経済の話ばかりではないということをますます意識するようになった。移住は社会現象であり、学術的な専門分野という観点からは、パンドラの箱を開けるようなものだ。これらの異なる分析の上にあるのが、倫理的な問題だ。さまざまな影響は、どういった道徳的な測定基準で判断するべきなのだろう? 経済学者たちは「功利主義」という、便利だが薄っぺらい倫理的ツールを持っている。これはよくある状況にはうまく使えるため、標準になった。だが、移住の倫理のような疑問には、嘆かわしいほどに不十分だ。 結果として生まれた本書は社会科学と道徳哲学にまたがり、幅広い異質な専門的調査の分析の統合を試みるものだ。