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『因果推論の科学――「なぜ?」の問いにどう答えるか』(Judea Pearl, Dana Mackenzie[編] 夏目大[訳] 文藝春秋 2022//2018)

原題:The Book of Why: The New Science of Cause and Effect (Basic Books, 2018)
著者:Judea Pearl(1936-) 計算機科学、哲学。[ヘブライ語יהודה פרל
著者:Dana Mackenzie(?-) サイエンスライター(数学)。
監修:松尾 豊[まつお・ゆたか](1975-)
訳者:夏目 大[なつめ・だい](1966-) 
編集協力:上原 弘二 編集者、英日翻訳者。
装丁:関口 聖司[せきぐち・せいじ](1973-) 文藝春秋デザイン室。
件名:数理統計学
件名:因果性
NDLC:MA211
NDC:417 確率論.数理統計学


「人工知能の巨人」が放つ、データ分析・統...『因果推論の科学 「なぜ?」の問いにどう答えるか』ジューディア・パール ダナ・マッケンジー 松尾豊 夏目大 | 単行本 - 文藝春秋


【目次】
目次 [001-005]
献辞 [006]
はじめに(二〇一七年一〇月、ロサンゼルスにて ジューディア・パール) [007-009]


序章 「因果推論」という新しい科学 011
第一章 因果のはしご 043
第二章 シューアル・ライトが起こした革命――因果推論創世記 087
第三章 結果から原因へ――ベイジアンネットワークの真価と限界 149
第四章 交絡を取り除く――ランダム化比較試験と新しいパラダイム 209
第五章 タバコは肺がんの原因か?――喫煙論争の煙を吹き飛ばす 255
第六章 パラドックスの詰め合わせ――因果のレンズで世界を見る 289
第七章 介入――険しい山を登るための強力な道具一式 337
第八章 反事実――「こうであったかもしれない」世界を考える 395
第九章 媒介――因果関係の背後にはどんな仕組みがあるのか? 457
第一〇章 ビッグデータ、AI、ビッグクエスチョン 527


謝辞 [561-564]
原注 [565-567]
解説(二〇二二年 初夏 松尾 豊) [569-576]
参考文献 [577-597]
索引 [598-605]




【抜き書き】
「解説」から、カテゴリという概念について(573頁)。

本書は、極めて深い洞察に満ちていると述べた。その理由を、私自身の個人的な意見として、少し述べてみたいと思う。
 本書で扱った因果ダイアグラムは、主観的である。著者自身もそう述べている。一方で、例えば、頻度主義は客観的であるという(144頁)。ところが、本当にそうなのだろうか?
 頻度を数えるという行為には、同じ現象かどうかを判定するというカテゴリの概念が内在する。このカテゴリの概念は、誰にとってもそれほど差がないように思われているが、それは人間の認知の仕組み(脳の仕組み)、そして言語によって概念がコミュニティで共有されるようになることに依存している。実際、カテゴリの個体差は存在する。
 そもそも、現象の捉え方は主観的である。例えば、ある物体が存在するということ、物体間にある関係性があるかを認識すること、現象をある評価軸で捉えること、こういったことのいずれにも、本来無限の可能性があるのだが、それを我々の認知の仕組みが個々人で比較的似ているがゆえに、結果として同じような捉え方をする場合が多い。それを客観性と呼んでいるわけである。科学の客観性にはそうした欺瞞の一面がある。