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『検証 アベノミクス「新三本の矢」――成長戦略による構造改革への期待と課題』(福田慎一[編] 東京大学出版会 2018)

編者:福田 慎一[ふくだ・しんいち]
著者:中村 純一[なかむら・じゅんいち]
著者:田中 茉莉子[たなか・まりこ]
著者:宇南山 卓[うなやま・たかし]
著者:作道 真理[さくどう・まり]
著者:宮里 尚三[みやざと・しょうぞう]
著者:田中 隆一[たなか・りゅういち] 
NDC:332.107 日本経済史・事情(昭和時代後期.平成時代 1945-)

 

検証 アベノミクス「新三本の矢」 - 東京大学出版会 (utp.or.jp)

 

 

【目次】
はじめに(2018年5月) [i-iv]
目次 [v-x]

 

序章 新たなステージのアベノミクス[福田慎一] 001
一 はじめに 001
二 わが国の「失われた20年」 006
三 第1本目の矢――強い経済 009
四 第2本目の矢――子育て支援 013
五 第3本目の矢――安心の社会保障 017
六 「新三本の矢」の課題 021
参考文献 023


  第I部 第一の矢――強い経済 
第1章 設備投資活性化の条件を探る――企業の保守的投資財務行動の変革[中村純一] 027
一 はじめに 027
二 いざなみ景気下の投資行動の特徴――保守的すぎたのか 030
三 世界金融危機以降の投資行動の特徴――投資計画の下方修正幅拡大の背景 037
四 なぜ現預金が積み上がっているのか 044
五 先進国共通の現象としての企業部門の貯蓄超過 050
六 おわりに 054
注・参考文献 056

 

第2章 これからの「人材の活躍強化」――リカレント教育に関する分析[田中茉莉子] 059
一 はじめに 059
二 超少子高齢社会における「人材の活躍強化」の重要性 061
三 アベノミクスにおける「人材の活躍強化」の取組み 064
四 OECDによるリカレント教育に関する分析 069
五 リカレント教育を高めるために72
六 おわりに 085
補論 期待効用最大化 087
参考文献 090


  第II部 第二の矢――子育て支援
第3章 出生率向上の政策効果――子育てと就業の両立支援策[宇南山 卓] 093
一 はじめに 093
二 数値目標としての希望出生率 095
三 女性の活躍と少子化対策 097
四 子育てと仕事の両立可能性の動向
五 有効な両立支援策とは 104
六 保育所整備と待機児童 107
七 保育所整備の課題 112
八 希望出生率1・8の実現可能性 115
九 おわりに 120
注・参考文献 121

 

第4章 家庭・職場環境と働き方――企業における女性就業[作道真理] 125
一 はじめに 125
二 家庭生活と雇用環境 127
三 政府による取り組み 132
四 企業における雇用環境 137
五 おわりに 145
注・参考文献 146


  第III部 第三の矢――安心の社会保障
第5章 安心につながる社会保障とは――財政的観点による世代間格差の解消[宮里尚三] 151
一 はじめに 151
二 世代間格差の推移 153
三 医療貯蓄勘定についての検討 166
四 おわりに 171
注・参考文献 173

 

第6章 少子高齢化社会における社会保障のあり方――介護離職と労働力問題[田中隆一] 177
一 はじめに 177
二 介護保険制度と介護サービス市場 180
三 介護と就業 185
四 介護サービス施設整備と就業 187
五 介護保険制度と就業 190
六 保育問題と介護問題の関連について 195
七 おわりに 201
注・参考文献 202

 

終章 構造改革としての「新三本の矢」[福田慎一] 205
一 はじめに 205
二 なぜ構造改革は必要か 209
三 長期停滞という視点 212
四 日本経済の構造的問題 214
五 需要不足の原因 217
六 賃金の低迷とデフレ 220
七 日本経済復活に向けた処方箋 224
参考文献 227

 

索引 [5-9]
編者・執筆者紹介 [1-4]



 

『人間進化の科学哲学――行動・心・文化』(中尾央 名古屋大学出版会 2015)

著者:中尾 央[なかお・ひさし](1982-) 自然哲学、人間進化学。
NDC:140 心理学
件名:進化心理学
件名:行動心理学
件名:文化人類学

 

人間進化の科学哲学 « 名古屋大学出版会

人間進化の科学哲学―行動・心・文化―

人間進化の科学哲学―行動・心・文化―

 

 

ダーウィン種の起原』刊行から150年以上が過ぎた。だが、人間の心や文化を進化の枠組みで考えることは、いまだ容易ではない。人間の行動進化をめぐる諸科学のプログラムを横断的に検討することを通して、「人間とは何か」という問いに新たにアプローチ。




【目次】
目次 [i-iv]
はじめに [001-008]

  第I部 人間行動進化学の研究プログラム 009

 

第1章 進化心理学 010
1 進化心理学の歴史的経緯 010
2 進化心理学の基本構造とそれへの批判 014
3 進化心理学批判への応答 023
  3.1 第一の批判:変動する環境 024
  3.2 第三の批判:過去から現在を推測すること 026
  3.3 第二の批判:心はモジュールの集合体か 030
  3.4 まとめ 033
4 結語 033

 

第2章 人間行動生態学 035
1 人間行動生態学の歴史的経緯 036
  1.1 人間社会生物学の研究プログラム 036
  1.2 人間社会生物学への批判 042
2 現在の人間行動生態学 044
  2.1 表現型戦略に基づく第一の批判への応答 044
  2.2 人間行動生態学における表現型戦略は成功しているか 045
  2.3 最適化モデル使用の擁護 048
3 進化人類学としての人間行動生態学 055
4 結語 056

 

第3章 遺伝子と文化の二重継承説 058
1 二重継承説の基礎 058
2 二重継承説の検討(1):模倣バイアスの進化 070
3 二重継承説の検討(2):信頼性判断研究による拡張 073
4 結語 077

 

  第II部 文化進化研究へのアプローチ 081

 

第4章 文化進化のプロセス研究 082
1 いくつかの準備 082
  1.1 文化進化研究とは何か 083
  1.2 文化進化研究 086
    1.2.1 社会進化論的な研究と文化進化研究 
    1.2.2 文化進化研究は他分野を生物学に統合するのか? 
2 文化進化のプロセス研究 091
  2.1 文化の疫学モデルと文化の適応度 092
  2.2 言語進化と文化進化研究 099
  2.3 人間行動生態学と文化進化研究 103
  2.4 まとめ 105
3 文化進化プロセス研究の今後:文化進化のプロセスに影響を与えるその他の要因 106
4 結語 110

 

第5章 文化進化のパターン研究 111
1 系統学の基礎 112
2 文化系統学の歴史的経緯 115
  2.1 1990年代:文化系統学の黎明期 117
  2.2 2000年代半ばまで:文化系統学という研究プログラムの興隆 120
  2.3 2000年代半ば以降:パターンとプロセスの結びつき 123
4 方法論的問題 125
5 結語 129

 

  第III部 人間行動進化の実例を検討する 131

 

第6章 罰の進化 132
1 概念の整理 133
  1.1 罰の行動的特徴付け 134
  1.2 さまざまな罰の形 138
2 罰の進化に関する二つの仮説 139
  2.1 行動修正戦略としての罰 140
  2.2 行動修正なしの罰 142
  2.3 行動修正かせの直観的妥当性 146
3 植物や昆虫における罰 147
  3.1 植物や昆虫でも一般的な罰 147
  3.2 罰と罰への反応 151
4 脊椎動物における罰 152
  4.1 魚類における罰 153
  4.2 人間以外の哺乳類における罰 154
  4.3 行動修正なしの罰 157
  4.4 まとめ 158
5 人間の系統における罰 158
  5.1 隠された罰 159
  5.2 村八分オストラシズム) 162
  5.3 罰の背後にある心理メカニズム 163
  5.4 罰と協力の関係 166
  5.5 まとめ 173
6 反論への応答 173
7 結語 175

 

第7章 教育の進化 177
1 ヒト以外の動物における教育の進化 178
  1.1 ヒト以外の動物における教育行動 178
  1.2 ヒトとヒト以外の動物における教育行動の比較 180
2 ナチュラル・ペダゴジー説 183
  2.1 発達心理学からの証拠 183
  2.2 ナチュラル・ペダゴジーの進化 186
3 ナチュラル・ペダゴジー説への反論(1):矛盾する証拠 189
4 ナチュラル・ペダゴジー説への反論(2):経験的証拠への批判 194
  4.1 過剰模倣 194
  4.2 明示的シグナルの機能 198
5 結語 203

 

おわりに [205-208]
参考文献 [209-235]
あとがき(2014年12月 著者) [237-240]
図表一覧 [241]
索引 [242-244]

 

 

 

『英語接辞の魅力――語彙力を高める単語のメカニズム』 (西川盛雄 開拓社 2013)

 著者:西川 盛雄[にしかわ もりお] (1943-) 英語学、異文化理解。

【目次】
はしがき(2013年5月24日 西川盛雄) [v-viii]
目次 [ix-xiii]

第1章 接辞の諸相 001
1. 英語接辞の魅力 002
2. 語の生産工場 005
  2.1. 語は生産されるということ 005
  2.2. 語の生産工程 007
3. なぜ接辞が語形成において大切か? 012
4. 接辞の特徴 015
  4.1. 接辞と連結辞 016
  4.2. 接辞のはたらき 018
  4.3. 英語語彙の組み立て 020
    4.3.1. 語の基本形式 20
    4.3.2. 複合接辞 20
    4.3.3. 複合接辞の順序性 20
    4.3.4. 接頭辞・接尾辞付与の順序性 22
5. 屈折と派生 023
6. 接辞の語源 025
  6.1. 英国の略歴史 025
  6.2. 英語の略歴史 026
7. 変異体(variants)と同化(assimilation) 030
  7.1. [ex-] の場合 30
  7.2. [con-] の場合 32
  7.3. [ad-] の場合 33
  7.4. [in-] の場合 35
  7.5. [ob-] の場合 36
  7.6. [sub-] の場合 36
8. 強勢(stress)の位置変化の有無 038
9. ラテン語由来の連結辞と辞書記述 040
10. PC(Political Correctness)と接辞 042

第2章 そうだったのかの接辞学  045
1. [-less] と less 046
2. [-ful] と full 047
3. [-ful] と [-ous] 049
4. [X-able] の成立条件 052
5. [-ee] の正体 054
6. [-ize], [-(i)fy], [-en] 056
7. [Afro-], [Anglo-], [Euro-], [Greco-], [Sino-] など 057
8. [with-] の本意 058
9. 否定の接頭辞([un-], [a-], [in-], [dis-], [non-], [de-]) 059
  9.1. [un-] 60
  9.2. [a-] 62
  9.3. [in-] 63
  9.4. [dis-] 63
  9.5. [non-] 64
  9.6. [de-] 65
  9.7. 日本語の否定接頭辞 66
10. 指小辞 067
  10.1. [-y/-ie] 67
  10.2. [-let] 69
  10.3. [-cle]/[-cule] 70
  10.4. [-et], [-ette] 71
  10.5. [-ling] 72
  10.6. [-kin] 73
  10.7. 指小辞の認知論的推論過程 74
  10.8. 日本語の指小辞 76
11. [-oon] 078
12. オーストラリア英語の [-ie] と [-o] 079
13. 多様な〜学:[-(o)logy] と [-ics] 080
14. 同一語源結合の原則 082
15. [aqua-] と [hydro-] 085
16. ラテン語由来接頭辞 086
17. 演奏家の接尾辞([-er/-or] と [-ist]) 089
18. 負の評価的接辞の [-ist] 091
19. [-er/-or] の多様性 091
20. [-ess] 094
21. 意味の特化 095
22. 語彙化した接辞 pros 096
23. [-boy]0 97
24. [-ness] の力 098
25. [-さ] と [-み] 100
26. 句から語へ(語彙化) 101
27. [tele-] の話 103
28. [he-] と [she-] の話 104
29. [-wise] と [-ways] 105
30. [self-] と [auto-] 108
31. [ana-] と [cata-] 108
32. 半分([half-] と [demi-] と [semi-] と [hemi-])の話 111
33. [X-to-be] は接尾辞か形容詞か? 112
34. 数詞の接辞 114
  34.1. 「1」から「10」 114
  34.2. 「1000」/ 「1000 分の 1」 117
  34.3. 「100」/ 「100 分の 1」 118
  34.4. 「10」/ 「10 分の 1」 119
35. [poly-] と [multi-] 120
36. [-ter] と [-ric] 120
37. [micro-], [macro-], [mega-], [mini-] の話 121
38. [cardio-] の話(医学用語の仕組み) 123
39. 複雑述語 [out-] と [over-] の場合 126
40. 語形成における拡がりのネットワーク 128
41. [ante-] 130
42. [pre-] と [post-] 132
43. [fore-] と [back-] 135
44. [after-] と [before-] 136
45. [al-] の話 137
46. オノマトペ 138
  46.1. オノマトペよりできた接辞(英語) 138
  46.2. オノマトペよりできた接辞(日本語) 139
47. 地名にみる接尾辞([-caster], [-borough], [-ham] など) 141
48. [-esque] 142
49. 人名にみる接辞 143
50. [-burger] 148
51. [-onym] 149
52. 複数形 150
53. 直喩の接尾辞 152
54. [-ly] と [-like] の話 155
55. [quasi-] と [pseudo-] 156
56. ゼロ派生 158
57. 複合語から接辞へ 159

第3章 接辞教育の必要性 161
1. あー,そうだったのか! の積み上げ 162
2. Why と Because の鎖 163
3. 授業における接辞の活用 165
  3.1. 人名の場合 166
  3.2. 町・村の名前の場合 169
  3.3. 月の名前の場合 171
4. 言語は時代・歴史を反映している 173
5. 専門用語が出てきたら 174
6. 接辞の辞書記述 176

 

付録 英語接辞リスト [183-205]
あとがき [207-209]
参考文献 [211-212]
索引(用語・接辞) [217-222]


『こころの病に挑んだ知の巨人――森田正馬・土居健郎・河合隼雄・木村敏・中井久夫』(山竹伸二 ちくま新書 2018)

著者:山竹 伸二[やまたけ・しんじ] (1965-) 作家。評論家。

 

 

筑摩書房 こころの病に挑んだ知の巨人 ─森田正馬・土居健郎・河合隼雄・木村敏・中井久夫 / 山竹 伸二 著

こころの病に挑んだ知の巨人 (ちくま新書)

こころの病に挑んだ知の巨人 (ちくま新書)

 

 【目次】
目次 [003-008]

序章 日本の心の治療を支えてきた人々 009
1 日本における心の治療の歩み 011
  黎明期の日本の精神医療
  戦後日本の精神病理学
  精神医療現場の変化
  心理学から生まれた心理臨床の専門家
2 人間存在の本質的解明へ 022
  心の治療の現場はどのように変わるのか?
  五人の心理的治療者の人間論に学ぶ

第1章 森田正馬――思想の矛盾を超えて 029
1 心の病はなぜ起きるのか?――森田理論の原理 031
  森田正馬の生涯
  神経質とヒポコンドリー性基調説
  精神の交互作用
  森田理論の核心――“思想の矛盾”
  「あるがまま」に生きる
  〈気分本位〉と〈事実本位〉
2 森田療法の実践 051
  森田療法の治療プロセス
  神経質の治療法
  強迫観念の治療法
3 森田正馬の人間論 063
  生の欲望と死の恐怖
  森田理論の問題点
  自己観察と自己了解
  森田療法の可能性

第2章 土居健郎――「甘え」理論と精神分析 075
1 精神療法と精神分析 077
  「甘え」理論はいかにして生まれたか?
  精神療法(精神分析)の目的
  治療者の感情を活かす
  抵抗の解釈
  洞察と「甘え」の問題
  土居健郎の治療例
2 「甘え」理論と治療への応用 095
  『「甘え」の構造』を読む
  甘えと現代社会の病理
  「わかる」患者と「わからない」患者
  「甘え」理論から見た治療論
3 土居健郎の人間理解と治療論 108
  自然科学的な枠組みを超えて
  なぜ患者の感情を感知できるのか?
  一般存在様式としての「甘え」

第3章 河合隼雄――無意識との対話 119
1 日本人の心の深層 121
  臨床心理学からの挑戦
  日本社会の中空構造
  ユング派の昔話論
  『昔話と日本人の心』を読む
2 カウンセリングとそのプロセス 133
  初期のカウンセリング論
  若き日の事例
  事例の検討――心理臨床家の役割
  成熟モデルと自然モデル
3 深層意識の構造と心理療法 150
  深層意識と自己
  自己実現と物語
  治療者の態度と逆転移
4 日本人論と治療の本質 160
  日本人への心理的治療
  クライエントは自分で治るのか?
  心の治療の本質

第4章 木村敏――現象学から生命論へ 173
1 自己と「あいだ」の思想 175
  思想家と臨床家のあいだ
  「あいだ」の思想の原体験
  うつ病の罪責感から見た日本人
  統合失調症と“自己”
  現象学的直観診断
  「あいだ」の病としての統合失調症
2 精神病理の時間論 192
  統合失調症の時間意識
  うつ病の時間意識
  精神病理における二つの存在構造
  永遠の現在を生きる祝祭の精神病理
  時間と自己
3 生命論と人間論 208
  生命論と医学的人間学
  共通感覚とアクチュアリティ
  「時間」と「自己」からみた人間論
  生命論の問題点と可能性

第5章 中井久夫――「世に棲む」ための臨床 221
1 統合失調症の病理論 223
  臨床の着地点
  統合失調症
  発病から寛解、あるいは慢性化へ
  慢性化の危険性
2 治療者の態度と精神療法 234
  「心の生ぶ毛」とベース・チェンジ
  「あせり」から「ゆとり」へ
  風景構成法の考案
3 統合失調症の治療プロセス 245
  治療的合意と信頼関係 発病の論理」と「寛解の論理」
  急性精神病状態の治療原則
  治療の終結と社会復帰
  発達論と思春期問題
4 治療の背景にある人間像 259
  治療者の主観性と対人関係
  中井久夫の人間論
  人間存在と心理臨床

終章 文化を超えた心の治療へ 271
1 治療論と人間論の共通性 273
  心の治療と人間理解
  人間の欲望と不安
  〈自己了解〉は生じているか?
  治療者の内面性
2 日本人論から見た心の治療 289
  日本人論を超えた関係性の原理
  人間論から治療論へ

あとがき(二〇一七年一二月 山竹伸二) [299-302]

 

 

『中動態の世界――意志と責任の考古学』(國分功一郎 医学書院 2017)

著者:國分 功一郎[こくぶん・こういちろう] (1974-) 近世哲学(17世紀の)、現代フランス哲学。
装丁:松田行正 + 杉本聖士
シリーズ:ケアをひらく
NDC:104 哲学(論文集.評論集.講演集)

 

中動態の世界 | 書籍詳細 | 書籍 | 医学書院

 

 

 【目次】

プロローグ――ある対話 [002-006]
目次 [007-012]

 

第1章 能動と受動をめぐる諸問題  013
1 「私が何ごとかをなす」とはどういうことか 015
  体に指示を出しているわけではない
  歩き方を選んだわけでもない
  そもそも意志が最初にあったのか?
  どうなれば謝ったことになるか

2 「私が歩く」と「私のもとで歩行が実現されている」は何が違うのか 020
  能動態だが能動ではない行為
  だが受動でもない
  意志という謎の登場
  接続されつつ切断されたもの?
  しかし「意志は幻想」では終わらない

3 意志と責任は突然現れる 024
  叱られるか、褒められるか
  意志は後からやってくる
  アルコール依存なら? 薬物依存なら?
  では殺人や性犯罪ならどうか

4 太陽がどうしても近くにあるように感じられる――スピノザ 030
  行為は意志を原因としない
  効果としての意志は残る

5 文法の世界へ 032
  能動/受動の外部
  能動態と受動態の対立は普遍的ではない
  もともと能動態は中動態と対立していた!
  「私が自分の手をあげる」から「私の手があがる」を引くと?
  nothingをなぜ思い描くのか


第2章 中動態という古名 039
1 「中動」という名称の問題 041
  中動態が先にあった
  ではなぜこの名が?

2 アリストテレス『カテゴリー論』における中動態 043
  古代ギリシアの文法研
  アリストテレス、一〇のカテゴリーの謎
  バンヴェニストの推測
  透けて見える中動態と受動態の位置づけ

3 ストア派文法理論における中動態 047
  三つの類型がすでに提示されていた
  「どちらでもないもの」としての中動態

4 文法の起源としてのトラクス『文法の技法』 049
  今日まで影響を与え続ける最古の文法書
  「動詞は…能動と受動を表す」
  「能動と受動の対立」に従属するものとしての中動

5 エネルゲイアとパトスをめぐる翻訳の問題 053
  エネルゲイアは「遂行すること」、パトスは「経験すること」
  メソテースは「例外的なもの」

6 パトスは「私は打たれる」だけではない 056
  「テュプトー」と「テュプトマイ」
  「打たれる」から「悼む」まで
  パトスはむしろ中動態を示す

7 メソテースをめぐる翻訳の問題――四つの例 060
  「私はそこに留まっている」
  「私は正気を失っている」
  “完了”がもつ特別の地位とは?
  「私は自分のために作った」
  「私は自分のために文書を書いた」
  メソテースは単に例外を名指している
  メソテースがなぜ「中動態」とされてきたのか?

8 奇妙な起源 068
  これは単なる誤読ではない
  あるパースペクティヴがそれ自身によって強化されるプロセス


第3章 中動態の意味論 071
1 中動態に注目する諸研究――第三項という神秘化 074
  自殺? 他殺? それとも……
  神秘化するほど「能動/受動」図式は強化される
  デリダラカンもまた

2 中動態の一般的定義――なぜ奇妙な説明になるのか? 078
  「利害関心」とはこれいかに
  失われたパースペクティヴを求めて

3 中動態を定義するために超越論的であること 080
  主語の被作用性――アランの着眼点
  中動態は能動態との対比によって定義されなければならない

4 バンヴェニストによる中動態の定義 084
  バンヴェニストはなぜ発見できたのか
  「能動/受動」図式の悲鳴――形式所相動詞
  中動態のみの動詞と能動態のみの動詞を比べてみる
  「するかされるか」ではなく「内か外か」
  能動態の例を検討する
  中動態の例を検討する
  「在る」「生きる」はなぜ能動態か

5 中動態の一般的な定義との関係 091
  対立だけで説明できるのか?

6 受動態、能動態との関係 093
  中動態から受動態が発生したメカニズム
  四つのメソテースの例文再読

7 「中動態」という古名を使い続けること 096
  「内態/外態」というクリアーな説明で何が失われるか
  意志、ふたたび……


第4章 言語と思考 099
1 ギリシア世界に意志の概念はなかった 101
  「奇妙な欠落」とは
  能動態が中動態に対立している世界に「意志」はない

2 ある論争から 103
  バンヴェニストデリダ
  デリダの三つの批判

3 『カテゴリー論』読解への貢献――デリダの批判(a)に対して 105
  重要な先行論文を参照していないという批判
  中動態研究にとって重要な指摘

4 思考の可能性の条件としての言語――デリダの批判(b)に対して 108
  分けられないものを分けているという批判
  思考を言語に還元しているという批判
  思考の「可能性」を規定するとはどういうことか
  デリダはなぜ誤認したのか

5 哲学と言語――デリダの批判(c)に対して 114
  ギリシア語の特殊性が哲学を可能にした――バンヴェニストの主張
  ハイデッガー存在論、ヨーロッパ ――デリダの印象操作
  見当違いの言いがかり
  成果はどちらに?
  哲学は中動態の抑圧の上に成立した


第5章 意志と選択 121
1 アレントの意志論 123
  きっかけはアイヒマン
  参照先はアリストテレス

2 アリストテレスの「プロアイレシス」 125
  理性と欲望だけでは説明できない
  「選択」という契機を挟み込んだアリストテレス

3 プロアイレシスは意志ではない 127
  意志と選択は違う
  「意志」の場所=未来はあるか
  「選択」は過去からの帰結に過ぎない

4 意志と選択の違いとは何か? 130
  過去の要因の総合としての「選択」
  過去を断ち切るものとしての「意志」
  選択が意志にすり替えられてしまう
  では意識の役割は?

5 意志をめぐるアレントの不可解な選択 135
  意志を擁護する方向に進むアレント
  意志が存在しえないことをアレント自身が証明してしまう
  なぜそこまでカントを批判するか
  「意志を否定する哲学を否定する」ことの効果は?

6 カツアゲの問題 140
  自発か非自発か
  脅されて金を渡すのも自発的行為?

7 「する」と「させる」の境界 144
  フーコーの権力論
  暴力は抑え込み、権力は行為させる
  権力を行使される側に残される「能動態」
  相手の自由を完全に奪っては便所掃除をさせられない

8 権力関係における「能動性」 149
  「する」と「される」では説明できないこと
  能動態と中動態の関係でこそ、権力は説明できる

9 アレントと一致の問題 152
  アレントもまた暴力と権力を区別しているが……
  権力と暴力は同居できるか
  アレントは自発的でない同意は認めない

10 非自発的同意の概念 156
  「仕方なくソバにする」をどう説明するか
  自発性と同意は分けて考える

11 アレントにおける政治、意志、自発性 158
  「仕方なく」を排除した先
  「非自発的一致」の可能性へ


第6章 言語の歴史 161
1 動詞は遅れて生じた 164
  先に名詞的構文があった
  共通基語を足がかりに
  名詞的構文の化石を探す
  スピーヌムという化石も

2 動詞の起源としての非人称構文 169
  it rains は「例外」ではなく「起源」である
  動詞はもともと行為者を指示していなかった
  「私に悔いが生じる」から「私が悔いる」へ

3 中動態の抵抗と新表現の開発 172
  形式所相動詞
  再帰的表現

4 出来事の描写から行為の帰属ヘ 175
  出来事が主、行為者が従だった時代
  出来事を私有化する言語へ

5 日本語と中動態 177
  驚くべき論文
  自動詞と受動態は、中動態を親にもつ兄弟である
  バンヴェニストの三〇年以上前に……

6 自動詞と受動態 181
  自動詞と受動態の兄弟関係が切り裂かれる
  by での置き換えに「心を奪われてはならない」
  中動態を担う「ゆ」
  「自然の勢い」=自発の位置

7 「自然の勢い」としての中動態 185
  煮え切らない細江の説明
  「自発の勢い」が中動態の根底にある
  力の度合いによって中動態は区分される

8 中動態をめぐる憶測 188
  中動態は自動詞・他動詞・使役表現の培地
  細江の言語史観は「能動態から中動態へ」
  中動態が先にあった!? ――憶測的起源として

9 抑圧されたものの回帰 191
  中動態が担っていた意味はどこへ?
  中動態が顔をのぞかせるとき
  行為の帰属を尋問する力とそこから逃れる力
  言語――抑圧と矛盾のなかで蠢くもの


第7章 中動態、放下、出来事――ハイデッガードゥルーズ 197
1 ハイデッガーと意志 200
  転換点としてのニーチェ
  「用具性」にひそむ意志
  「覚悟性」「決断」と意志のねじれた関係
  彼はなぜ意志を強く否定したいのか

2 ハイデッガーの意志批判 204
  意志することは忘れること
  意志することは考えないこと
  意志することは憎むこと 

3 「放下 Gelassenheit」 207
  後期ハイデッガーのキーワード
  意志と無思慮――ある対話から
  意志からの脱却は可能か
  「能動/受動」の外部に横たわるもの
  謎めいた言い回しを中動態から解釈すること
  失われた“態”を求めて

4 ドゥルーズ『意味の論理学』――その古典的問題設定 216
  「雨が降る」をどう言うか
  出来事の水準へ
  存在はどのように言われうるか?

5 出来事の言語、動詞的哲学 219
  出来事は能動的でも受動的でもない
  出来事に先立って主語はない――可能世界論
  動的発生の理論へ

6 動詞は名詞に先行するか? 223
  ドゥルーズ、徹底した動詞優位論者
  出来事が動詞を可能にする
  「不定法礼賛」であることの意味
  出来事を名指す動詞的なもの――動詞のイデア


第8章 中動態と自由の哲学――スピノザ 229
1 スピノザの書いた文法書『ヘブライ語文法綱要』 231
  なぜそこまで文法に関心を示すのか
  快活で喜びに満ちたスピノザ

2 動詞の七つめの形態――文法論 233
  演奏そのものを書き起こす楽譜のように
  自分自身で自分のところを訪れる
  能動/受動の外側にあるもの

3 内在原因、表現、中動態――存在論(1) 236
  神に他動詞はない
  「表現」という概念を導入する
  唯一の実体と、その変状としての「様態」
  様態的存在論――アガンベン
  神に受動はありえない――「される」ではなく「なる」
  中動態だけが説明できる世界

4 変状の二つの地位――存在論(2) 243
  スピノザの言う「能動」「受動」とは
  変状――その二つの意味
  能動と受動を単なる視点の問題に還元しない道はあるか?

5 変状の中動態的プロセス――倫理学(1) 248
  人間はすべて受動ではないか?
  外部刺激によって内部の変状が開始するプロセス
  能動態→中動態という二つの段階を経る

6 スピノザにおける能動と受動――倫理学(2) 252
  「変状する能力」が本質である
  中動態としての「コナトゥス」
  刺激を受け、変状し、自らに影響する
  行為の「方向」の違いではなく「質」の差
  これでカツアゲが説明できる!

7 能動と受動の度合い――倫理学(3) 258
  純粋な能動にはなりえない
  殴打はいつ受動になるか
  どうすれば受動から脱することができるか

8 自由について 261
  「能動と受動」から「自由と強制」へ
  必然性に基づいた行動が自由である
  自由は認識によってもたらされる


第9章 ビリーたちの物語 
1 メルヴィルの遺作 266

2 キリスト、アダム 269
  歴史を背負ったアダム
  ビリーは思うように行為できない

3 ねたみの謎 271
  クラッガートの側から読んでみる
  引きつけられるがゆえのねたみ
  相手に自分を見るとき、人はねたむ
  クラッガートも思うように行為できない

4 歴史 277
  ビリーという読者、クラッガートという読者
  歴史的コンテクストによって読解は決まる
  ヴィアの「錯乱」
  ヴィアもまた思うように判断を下せない  
  人は自分で選んだことなどない
  歴史の強制力――マルクスの言葉

5 彼らはいったい誰なのか? 286
  アレントの読解
  暴力的な善
  人をつらい思いにさせる真理
  自由ではいられないわれわれ

6 中動態の世界に生きる 292
  自由へ近づくために 


註 [296-325]
あとがき(二〇一七年二月 國分功一郎) [327-335]

 

 

 

 

【抜き書き】
□76頁

  神秘化するほど「能動/受動」図式は強化される
 能動態と受動態の対立を大前提としたうえで、それに収まらない第三項として中動態を取り上げるやり方が問題なのは、それがこの態を、不必要に特別扱いすることにつながるからである。それはしばしば神秘化の様相を呈する。特に哲学においてこの傾向は著しい。【註04】
 哲学ではこの100年ほど、西洋近代哲学に固有の〈主体/客体〉構造が凝問視されてきたという経緯があるため、この構造を能動/受動の文法構造に重ねつつ中動態を称揚するという事例が散見される。
 たとえば、近代的な〈主体/客体〉構造を乗り越えようとした代表的な哲学者はマルティン・ハイデッガーだが、その哲学を中動態の観点から論じたチャールズ・スコットやデイヴィッド・レヴィンらの論文はたいへん残念なことにあまり学ぶべきことのないものになってしまっている。【註05】
 彼らが言っているのは――そして、彼らが知っているのは――能動態にも受動態にも属さない中動態があったということであり、そしてそれだけである。こうして中動態を神秘化すればするほど、能動態と受動態の対立は、日常感覚に根ざした普遍的な対立として強固になっていく。

 

註04
 ロラン・バルトバンヴェニストのすぐれた理解者であり、彼の中動態論を正確に把握しながら「書くは自動詞か?」(1966年)という一種の中動態論を展開している(Roland Barthes, Le Bruissement de la langue, Seuil, 1984ロラン・バルト『言語のざわめき〈新装版〉』花輪光訳、みすず書房、2000年)。ただ、バルトの記述が中動態の比喩的な理解、「能動でも受動でもない中動」という理解への道を開く可能性をもっていたことも確かで、たとえばヘイドン・ホワイトはそのホロコースト論のなかで、ロラン・バルトのこの講演原稿だけを読んで中動態を論じ、「旧来の表象様式では適切に表象することができない」ホロコーストを表象する鍵をそこに見出しているが、これは単にホワイトが、バンヴェニスト等々の言語学者達の論文を読むのを面倒がって省いたがために得られた結論に過ぎない(ソール・フリードランダー編『アウシュビッツと表象の限界』上村忠男他訳、未來社、1994年、57-89頁)。

註05
 Carles E. Scott "The Middle Voice in Being and Time", John C. Sallis, Giuseppina Moneta & Jacques Taminaux (eds.), The Collegium Phaenomenologicum: The First Ten Years, Kluwer Academic Publishers, 1988, p.159-173.
David Lewin, "The Middle Voice in Eckhart and Modern Continental Philosophy", Medie val Mystical Theology, The Eckhart Society, Vol. 20 (1), 1992, p.12-26.
 後者はタイトルにエックハルトの名前があがっているが、ハイデッガーが論じたGelassenheit (放下)の起源としてエックハルトに言及しているのであって、実際にはハイデッガー論である。どちらも重要な問題提起をしていると思われる。だが、中動態をめぐる言語の歴史が考察されていないため、中動態を第三の態としてしか扱えていない点が非常に残念である。
 ハイデッガーと中動態の関係をめぐって注目すべき論点を提出しているのは、ブレット・W・デイヴィスの『ハイデッガーと意志』(Bret W. Davis, Heidegger and the Will: On the Way to Gelassenheit, Northwestern UP 2007)で、これはハイデッガーにおける「精神」の語の用法を詳細に検討したデリダの『ハイデッガーと問い』に匹敵する仕事になっている。