原題:Wars, guns, and votes: democracy in dangerous places. (Harper, 2009)
著者:Paul Collier(1949-) 開発経済学。
訳者:甘糟 智子[あまかす・ともこ] ライター、翻訳家。
装丁:川上 成夫[かわかみ・しげお](?-2017) 装丁デザイナー。
【目次】
目次 [001ー003]
序章 最底辺の国々の恐るべき逆説 004
第一部 現実の否定としてのデモクレイジー 019
第一章 選挙と暴力 020
第二章 民族間の権力闘争 070
第三章 煮えたぎる釜のなかで――紛争後調停 102
第ニ部 現前する暴力と対峙せよ 137
第四章 銃――火に油を注ぐ武装 138
第五章 戦争――破壊の政治経済学 160
第六章 クーデター ――誘導装置のないミサイル 186
第七章 破綻国家コートジボワール 206
第八章 国づくりの過程と条件 222
第九章 餌をもらうくらいなら死ぬほうがましか? 248
第十章 現実の変革のさなかで 302
謝辞 [310ー313]
付録:最底辺の一〇億人の国々 [314]
本書の基礎となった研究 [316ー318]
【抜き書き】
・018頁
政治的暴力の打破という領域は、われわれの幻想が、われわれの希望や戦略と最も分かちがたく密接に結びついている場所だ。そしてまた、そうした幻想に基づいたわれわれの誤りの代償が最も大きい分野でもある。〔……〕憂慮すべきことに、最底辺の一〇億人の国々はこれまで、政治的暴力を縮小するどころか増加させてきた。しかし、私のメッセージは、自分たちの民主的権利のために闘ってきた勇敢な人々の努力を過小評価するものでは決してない。私は断じて独裁制を擁護しない。われわれは幻想から踏み出すことでのみ、善良な力としての疑いのない民主主義の可能性を、どんな実践的な方法なら活用しうるかを解明できるだろう。
・144頁
これまでわれわれの防衛思想は外的脅威というものによって支配されてきた。〔……〕しかし、実のところ国際戦争は今やほぼ過去のものだ。現在、最底辺の一〇億人の国々の軍事費を牽引している要素は、そうした国自身の内部に見いだされる。脅威は国内的なもので、外的なものではなくなっている。
・302-303頁
煎じ詰めると、最底辺の10億人の国々が直面しているのはどんな構造問題なのだろうか。彼らは「民族国家(ネーション)としては大き過ぎ、国家(ステート)としては小さ過ぎる」。大き過ぎるというのは、そうした国は集団の行動に必要な求心力に欠けているからだ。小さ過ぎるというのは、公共財を効率的に生産するために必要な規模に満たないからだ。