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『アジア系アメリカ文学を学ぶ人のために』(山本秀行,村山瑞穂[編] 世界思想社 2011)

監修:植木 照代[うえき・てるよ] 神戸女子大学名誉教授
編者:山本 秀行[やまもと・ひでゆき] 神戸大学教授
編者:村山 瑞穂[むらやま・みずほ] 愛知県立大学教授
著者:篠田 左多江[しのだ・さたえ] 東京家政大学教授
著者:桧原 美恵[ひはら・みえ] 京都女子大学教授
著者:臼井 雅美[うすい・まさみ] 同志社大学教授
著者:小林 富久子[こばやし・ふくこ] 早稲田大学教授
著者:河原崎 やす子[かわらさき・やすこ] 岐阜聖徳学院大学教授
著者:吉田[よしだ・みつ] 松山大学教授
著者:荘中 孝之[しょうなか・たかゆき] 京都外国語短期大学准教授
著者:原 恵理子[はら・えりこ] 東京家政大学教授
著者:長畑 明利[ながはた・あきとし] 名古屋大学教授
著者:稲木 妙子[いなぎ・たえこ] 共立女子大学教授
著者:山口 知子[やまぐち・ともこ] 関西学院大学非常勤講師
著者:野﨑 京子[のざき・きょうこ] 京都産業大学名誉教授
著者:杉山 直子[すぎやま・なおこ] 日本女子大学教授
著者:元山 千歳[もとやま・ちとし] 京都外国語大学教授
著者:有馬 弥子[ありま・ひろこ] 恵泉女学園大学教授
著者:中村 理香[なかむら・りか] 成城大学准教授
著者:山出 裕子[やまで・ゆうこ] 明治大学兼任講師。
著者:神田 稔[かんだ・みのる] 会社役員。
著者:深井 美智子[ふかい・みちこ] 神戸女子大学非常勤講師。
装丁:井上 二三夫[いのうえ・ふみお] ブックデザイナー。
NDC:930.29 アメリカ文学


アジア系アメリカ文学を学ぶ人のために - 世界思想社


【目次】
目次 [i-iii]
凡例 [iv]


プロローグ 二一世紀から展望するアジア系アメリカ人の歴史と文学[植木照代] [v-xxv]
1 「アジア系アメリカ人」とは vii
  多様化するアジア系エスニック集団
  「オリエンタル」から「アジア系アメリカ人」へ
2 アジア系アメリカ人の歴史――旧移民と新移民の時代 ix
  旧移民の時代
  第二次大戦からマッカラン=ウォルター法に至るまで
  新移民の時代
3 アジア系アメリカ文学の流れ xv
  二方向の文学運動――過去と未来に向かう
  アジア系作家の文学的特徴――エスニシティからトランスナショナリティへ?
注 xxii


  I エスニシティから見るアジア系アメリカ文学 


1 日系文学のパイオニアたち―― 一世文学の誕生[篠田左多江] 002
英語文学をめざした日本人たち 003
  ウォーキン・ミラーの丘の住人――野口米次郎と菅野衣川
  東部の日本人たち――金子喜一と前田河廣一郎
  日本語による初期の文芸活動――翁久允〔おきな きゅういん〕と尾籠賢治
  定住期以後の一世文学――山崎一心と文学アンソロジー
参照文献 019


2 日系アメリカ文学(戦後…本土)――表象としての「マンザナール」をめぐって[桧原美恵] 020
日系二世・三世の文学 020
「マンザナール」に込められた意味 023
  収容体験を超えて
  重層化する「マンザナール」
連帯の絆を強めて 034
参照文献 037


3 日系アメリカ文学 (戦後…ハワイ) ――「ローカル文学」への道のり[臼井雅] 041
ハワイの日系文学 041
戦後のハワイと二世作家 044
一九七〇年代後半のローカリズム誕生秘話 046
もう一つのローカリズム運動――クム・カファとハワイのローカル劇 048
一九八〇年代のバンブーリッチと三世作家 050
一九九〇年代以降のローカル文学からカノンへの挑戦 054
ハワイ日系ローカル文学の未来 056
参照文献 057


4 中国系アメリカ文学の歴史的展開――初期移民文学からディアスポラ文学まで[山本秀行] 062
初期移民文学から「チャイナタウン物語」まで 063
  中国系初期移民の中国語による文学
  「教養のある中国人たち」の英語による著作
  中国系アメリカ人初の小説家スイ・シン・ファー[Sui Sin Far]
  第二世代の中国系アメリカ人の自叙伝
  「チャイナタウン物語」
「中国系アメリカ文学」の誕生から発展・多様化まで 069
  「アジア系アメリカ文学」という概念の誕生
  「中国系アメリカ文学」という文学ジャンルの確立
  「中国系アメリカ文学」の発展
  多文化主義隆盛期の「中国系アメリカ文学」の多様化
中国系ディアスポラ文学としての新たな展開 074
  グローバル化の時代の中国系ディアスポラ文学
  ハ・ジンの文学
  イーユン・リーの文学
  中国系ディアスポラ文学としての展開
参照文献 082


5 コリア系アメリカ文学の流れ断片化された記憶から紡がれる亡命者たちの語[小林富久子] 085
過去のトラウマの遺産としてのコリア系アメリカ文学 085
  コリア系文学の認知
  「自分とは何か」を問うグローバルな語り
初期から八〇年代までのコリア系文学 088
  パイオニア的(男性)作家たちの文学
  八〇年代のフェミニズム(女性)文学
九〇年代以降の新しい作家た 094
  ポスト冷戦期のコリア系「戦争文学」
  「慰安婦文学」とシャーマニズム
  多様性をますコリア系ディアスポラの作品
注・参照文献 101


6 フィリピン系アメリカ文学――アメリカ植民の歴史を負って[河原﨑やす子] 104
フィリピン人のコロニアル体験とアメリカへの移民 104
  スペインとアメリカの植民統治
  第二次大戦とその後のポストコロニアル状況
  アメリカへの新移民の波
フィリピン系アメリカ文学概観 108
  フィリピン系アメリカ文学の特徴と系譜
  初期文学の担い手とテーマ
  フィリピン系文学の新たな潮流
  フィリピンへのこだわりと作家の意識
ブロサンとヘゲドン――フィリピン系文学の二つの方向 114
  ブロサンのアメリカンドリームとアメリカ批判
  ヘゲドンのポストコロニアルの故国へのまなざし
  二方向の文学の共通項
参照文献 119


7 ヴェトナム系アメリカ文学――ヴェトナム戦争を超えて[吉田美津] 121
ヴェトナム系の「声」の誕生 121
  祖国を離れて
  第一世代から第二世代へ
  アイデンティティの変容
難民ナラティヴ――自由への脱出 125
  解放と自立の物語
  父の国アメリカへ
ヴェトナムとアメリカの狭間で 128
  越僑〔ヴェット・キュ〕として生きる
  「ヴェトナメリカン」の場所
「女としてのヴェトナム」を超えて 130
  アメリカ的再生
  新たな女性像を求めて
  父なるアメリカに抗して
戦争のヴェトナムを超えて 135
注・参照文献 136


8 南アジア系アメリカ文学―――その周縁性と可能性[莊中孝之] 139
アジア系アメリカ人の歴史と現状 140
南アジア系アメリカ文学の周縁性 142
南アジア系アメリカ文学の傾向 145
南アジア系アメリカ文学の可能性 149
参照文献 154


コラム① カナダの独自性を生み出す文学――ケベックのアジア系女性作家たち[山出裕子] 157
  参照文献 158


  II ジャンルの多様性


9 アジア系アメリカ演劇・パフォーマンス――見えるもの見えないものを表象する[原恵理子] 160
アジア系アメリカ演劇史の重要性 160
  歴史をつくる
  他者の表象
  エスニック・シアターの使命
アジア系アメリカ演劇の豊かさと複雑さ 164
  演劇人の努力の結実
  『M・バタフライ』のまなざし
  連帯する女性演劇人
演劇表象とソロ・パフォーマンス 168
  自伝と演劇
  パフォーマンス・アートの旗手
  ソロ・パフォーマンスと自己表象
ダイアナ・ソンの演劇戦略 172
  「私たちはかわっている」
  『R・A・W――女だから』――セクシュアリティの差異
  『ストップ・キス』――「愛の物語」
  〈新しい〉アジア系アメリカ演劇
参照文献 179


10 アジア系アメリカ人の詩――アジアとアメリカ[長畑明利] 182
アジア系アメリカ人の詩の歴史 182
歴史と伝統への離反 184
ディアスポラとアジア系アメリカ詩人 193
アジアとアメリカ 199
参照文献 201


11 アジア系アメリカ児童文学――境界線上の子どもたち[稻木妙子] 203
アジア系の子どもたちとアメリカ児童文学 203
  ヨシコ・ウチダの収容所物語
アジア系アメリカ児童文学のパイオニア――ローレンス・イエップ 206
  ローレンス・イエップの歴史的ファンタジー
現代のアジア系アメリカ児童文学――新たな潮流 212
  二一世紀からみる収容所体験――『草花とよばれた少女』
  記憶の共同体の多様化
参照文献 218


12 大衆文学――「越境」のみえる場所[山口知子] 221
大衆文学とは? 221
リズットとルヴォワル――自伝を超えて 222
ナオミ・ヒラハラ――「ヒロシマ」という新しい主題 227
デイル・フルタニ――「時代物」への移行 230
スジャータ・マッセイ 233
「越境」のみえる場所 235
参照文献 236


13 公文書との出会いと記憶の再生ストーリーを生み出す歴史文書[野崎京子] 239
歴史文書とは 239
  パブリック・ドキュメント
  写真・記憶・証言
NA(国立公文書館 National Archives) 244
  収容者ファイル申請と入手
  公文書館から送られて北収容者記録
地方局公文書館(Regional Archives) 247
  国立公文書館ノースウェスト地域ニューヨーク支局
  国立公文書館パシフィック地域サンフランシスコ支局
  ノースダコタ州リテージ・センター公文書館
手紙 249
  政府による手紙の検閲
  ファイルに明記された検閲
フォート・リンカーン抑留所跡の落書き 252
  UTTC(United Tribes Technical College)
  「報国青年団
公文書から何を読み取るか 254
  
参照文献 256


コラム② アジア系アメリカ文学と音楽[神田稔] 258


  III パースペクティヴの多様性 


14 アジア系女性作家の作品におけるジェンダーフェミニズム――M・K・キングストンを中心に[杉山直子] 262
アジア系女性作家の活躍 262
  多様性の中で
  マキシン・ホン・キングストンフェミニズム
中国系アメリカ人とジェンダーフェミニズム 264
  アジア系として女性として
  『五番目の中国の娘』
  マイノリティ女性の戦略
「誰にもいうな」――沈黙を破るフェミニスト 267
  強いられた沈黙という抑圧
  『アメリカの中国人』
  『トリップマスター・モンキー』
ジェンダー撹乱エピソード 271
  ジェンダー撹乱の意義
  「女武者」になること
  アメリカという「女人国」?
  古典の中のジェンダー撹乱エピソード
全能の語り手という戦略 275
  「わたし」という視点
  「語り手」とは誰か
  全能の語り手としての観音菩薩

参照文献 278


15 クイア・ポリティックス性の文化戦略[元山千歳] 281
  欲望の形
  クイアに至る歴史
  クイア
  アメリカ人とオリエンタル
  アジア系クイア
  男と男のテキスト
  女と女のテキスト
  エロティカ
  カーニバレスク[Carnivalesque]とクイア・ポリティックス
参照文献 294


16 ディアスポラの女性の自己再生――バーラティ・ムカジーの作品にみるインド出身の女性たち[有馬弥子] 296
南アジア系ディアスポラの現状 296
  現代におけるディアスポラとは
  アメリカ合衆国における南アジア系・インド系ディアスポラ
ムカジー[Bharati Mukherjee]の作品に見るディアスポラの女性達 302
  インド系アメリカのディアスポラとしてのムカジーの短編の女性達
  『ジャスミン』に見るインドにおける女性の過酷な抑圧
  パナとマーヤの新しい歩み
ディアスポラ状況における女性の新たな展開 311
  女性の脱出とディアスポラとしての行動と発展

参照文献 315


17 アジア系アメリカ文学および研究にみる他世界との交渉――「アジア系ポストコロニアル批評」の可能性[中村理香] 318
「ポストコロニアリズム」が顕在化するもの 318
  グローバルな枠組みから見た米国マイノリティ研究
  「誰の視点なのか」――アジア系アメリカと植民地主義への抵抗/参与
  第三世界連帯の継承と見直し
  アジア(系)間における植民地主義の歴史と暴力
アジア系アメリカによる世界との交渉 326
  アジア系文学にみるアジアへの視線
  ノラ・オッジャ・ケラーの『慰安婦』に見るアジアの回復
  他者の物語を語る/シャーマニズム
  他者の言語を聞くということ
注・参照文献 335


18  アジア系アメリカ文学にみる異人種間関係――「ポストエスニック」時代の異人種間結婚のテーマを中心に[村山瑞穂] 340
  アジア系アメリカ文学にみる異人種間関係
  公民権運動から多文化主義、そして「ポストエスニック」へ
  一九九二年のロサンゼルス暴動
  複雑な異人種間関係を描くアジア系アメリカ文学
  人種・民族の本質主義を疑う――異種混淆的人種・民族アイデンティティの構築
  アジアと南米からの移民をつなぐ異人種間連帯の可能性
  移民のアメリカ――混血のこどもを悼む喪の作業
  変化する偉人種間関係―― 二一世紀アメリカを展望する
参照文献 356


19 ヒストリー/フィクションの境界攪乱―― K・T・ヤマシタの「ぶらじる丸」にみるトリックスター性[植木照代] 358
ヤマシタ作品のトリックスター性 358
『ぶらじる丸』はヒストリーかフィクションか 361
  「歴史の虚構化」
  なぜ「歴史書」から「小説」へ?
ブラジル移民史における「知られざるアリアンサ運動」 363
  日米紳士協定――北米航路から南米航路へ
  「知られざるアリアンサ運動」と「コムニダーデ・ユバ」
  ブラジル日系移民社会の集団の力学
『ぶらじる丸』の語りの手法――「小さな物語」に「大きな物語」を投射する 368
エスペランサ」の物語 371
  エスペランサ――異文化共生の実験場
  エスペランサの基礎――カンタロー・ウノ
  野球と「新世界農場」の建設
  皇国臣民か世界市民
  アイディアリズムとプラグマティズムの葛藤
  ユートピアからディストピア
  『ぶらじる丸』の示す歴史の方向性
注・参照文献 380


コラム③ 環境問題とアジア系アメリカ文学――日系アメリカ人の作品を中心に[深井美智子] 385


あとがき [389-392]
主要文献案内 [393-410]
アジア系アメリカ文学年表 [411-418]
索引 [420-430]
執筆者紹介 [431-436]




【抜き書き】

・巻末の執筆陣の略歴。

執筆者紹介
植木 照代[うえき・てるよ] 神戸女子大学名誉教授
主な業績: エレイン・キム 「アジア系アメリカ文学作品とその社会的枠組』(共訳) 世界思想社, 2002年。
『アジア系アメリカ文学――記憶と創造』 (共編著) 大阪教育図書 2001年。
『日系アメリカ文学――三世代の軌跡を読む』(共編著)創元社1997年。


篠田 左多江[しのだ・さたえ] 東京家政大学教授
主な業績:「ウラジオストック在留日本人の生活と文化『浦潮日報』 文芸欄を中心に」 「国際文化表現研究』 6,2010年。
ユリコチヤマ 『ユリコチヤマ回顧録――日系アメリカ人女性 人種・差別・連帯を語り継ぐ』 (共訳) 彩流社, 2010年。
「黎明期のハワイ日系日本語文学――尾籠賢治を中心に」『移民研究年報』13,2007年。


桧原 美恵[ひはら・みえ] 京都女子大学教授
主な業績: ヒサエ・ヤマモト『ヒサエ・ヤマモト作品集――「十七文字」ほか十八篇』(共訳) 南雲堂フェニックス, 2008年。
「アジア系アメリカ文学――「再生」をめぐって」『二〇世紀アメリカ文学を学ぶ人のために」 世界思想社, 2006年。
『越境・周縁・ディアスポラー三つのアメリカ文学』(共編著) 南雲堂フェニックス, 2005年。


臼井 雅美[うすい・まさみ] 同志社大学教授
主な業績: 「トランスナショナル時代におけるヴァージニア・ウルフの娘たち」 「表象と生のはざまで」 南雲堂, 2004年。
"Shipwrecks along the Cornish Coast." Across the Generations. Pace UP, 2003.
"Velina Hasu Houston. and "Darrell H. Y. Lum." Asian American Playwrights. Greenwood, 2002.


山本 秀行[やまもと・ひでゆき][編者] 神戸大学教授
主な業績: 「マイノリティのソロパフォーマンスにおけるメディアと身体――ダン・クワンのマルチメディア・パフォーマンス」 『メディアと文学が表象するアメリカ』 英宝社, 2009年。
『アジア系アメリカ演劇――マスキュリニティの演劇表象』世界思想社、2008年。
エレイン・キム 「アジア系アメリカ文学――作品とその社会的枠組』(共訳)世界思想社, 2002年。


小林 富久子[こばやし・ふくこ] 早稲田大学教授
主な業績: 「「ナショナル」 な物語を超えて――今日のアジア系アメリカ女性作家のナラティヴ」 『社会文学』 30,2009年。
「現代の伝承文学としての日系人強制収容語り」『英語文学とフォークロア』南雲堂フェニックス, 2008年。
ジェンダーエスニシティで読むアメリカ女性作家――周縁から境界へ』學藝書林, 2006年。


原崎 やす子[かわらさき・やすこ] 岐阜聖徳学院大学教授
主な業績: 「『キューバを夢見て』 にみるポストコロニアルキューバ――「回帰線」 アメリカ文学からみる故国表象」『ポスト/コロニアルの諸相』彩流社 2010年。「基地文学と越境・混血――フィリピン系アメリカ文学からの論考」 AALA Journal 16, 2010.
「フェスティバルとジャングルと――フィリピン系作家にみるポストコロニアルディアスポラ意識」『越境・周縁・ディアスポラ』南雲堂フェニックス, 2005年。


吉田[よしだ・みつ] 松山大学教授
主な業績: 「空間的表象としてのチャイナタウン「骨」における移民の歴史と家族の物語」『中・四国アメリカ研究』5、2011年。
『エコトピアと環境正義の文学――日米より展望する広島からユッカマウンテンへ』 (共編著)晃洋書房、2008年。
ローレンス・ビュエル『環境批評の未来――環境危機と文学的想像力』(共訳) 音羽書房鶴見書店、2007年。


荘中 孝之[しょうなか・たかゆき] 京都外国語短期大学准教授
主な業績: 「カズオ・イシグロー 〈日本〉と〈イギリス〉の間から』春風社, 2011年。
カズオ・イシグロと原爆――アラキ・ヤスサダ事件を参照して」『楽しく読むアメリカ文学』 大阪教育図書 2005年。
「月をめぐる四つの物語『月はどっちに出ている』」 『日米映像文学に見る家族』 金星堂, 2002年。


原 恵理子[はら・えりこ] 東京家政大学教授
主な業績: 「境界を架橋する表現者―― Dan Kwongのマルチメディア・パフォーマンス」AALA Journal 13, 2007.
ジェンダーアメリカ文学――人種と歴史の表象」 (共編著) 勁草書房, 2002年。
"An Untold History: The Challenges of Self-Representation in Asian American Women's Theater." Crucible of Cultures. P.I.E.-Peter Lang. 2002.


長畑 明利[ながはた・あきとし] 名古屋大学教授
主な業績: 「はるか彼方の土地から先祖たちが呼ぶ声――エスニシティの抑圧と顕現」『現代思想』 38.6(臨時増刊 総特集=ボブ・ディラン)、2010年。
「現代詩の潮流声の諸相を聞く」『二〇世紀アメリカ文学を学ぶ人のために』世界思想社, 2006年。
母語の外へ――『ディクテ』 のエクソフォニー体験」『異郷の身体』人文
書院, 2006年。


稲木 妙子[いなぎ・たえこ] 共立女子大学教授
主な業績: 「木と水と空とエスニックの地平から」 (共編著) 金星堂、2007年。
「境界への眼差し――ヒサエ・ヤマモトとワカコ・ヤマウチ」『行動するフェミニズム』新水社, 2003年。
「戦前の日系社会とその変容――トシオ・モリとヒサエ・ヤマモト」『アジア系アメリカ文学』大阪教育図書, 2001年。


山口 知子[やまぐち・ともこ] 関西学院大学非常勤講師
主な業績: 「「私」を超える物語―― Hiromi Goto, Half World にみる無国籍
神話の世界」『関西学院大学英米文学』 55 2011年。
エスニシティの臨界へ――ポスト・リドレスの「日系アメリカ文学」」 『立命館言語文化研究』 16.4, 2005年。
"From Ideology to Myth: Shifting Voices in Ethnic North American Literature." Diss. Kwansei Gakuin U, 2001.


野﨑 京子[のざき・きょうこ] 京都産業大学名誉教授
主な業績: "Internment and Identity Shift: Through Transnational War Memory." AALA Journal 14, 2008.
『強制収容とアイデンティティ・シフト――日系二世三世の「日本」と「アメリカ」』世界思想社, 2007年。
日系人のなかの周辺性 日本に傾倒した二世たち ケリー・サカモトのOne Hundred Million Heartsを基に」『立命館言語研究』16.4, 2005年。


杉山 直子[すぎやま・なおこ] 日本女子大学教授
主な業績: 「アメリカ・マイノリティ女性文学と母性キングストン、モリスン, シルコウ」 彩流社, 2007年。
「新しい家族像, 新しい母親像を求めて」『シリーズ アメリカ研究の越境4』ミネルヴァ書房, 2007年。
「人種をこえる娘たち――トニ・モリスンの「パッシング」 小説 「レシタテイフ」と『パラダイス』」 『言語文化』23,2006年。


元山 千歳[もとやま・ちとし] 京都外国語大学教授
主な業績: 「物語テキストへの同一化と上演英雄ジェシカ・リンチの生還」『SELL』 2010年。
「性のイデオロギー ――韓国系アメリカ人のテキストとN・O・ケラー」『表象と性のはざまで』 南雲堂, 2004年。
『ポオはドラキュラだろうか』 勁草書房, 1989年。


有馬 弥子[ありま・ひろこ]
恵泉女学園大学教授
主な業績: "One Story in the South Asian American Diaspora: The Case of My Own Country by Abraham Verghese.” 『恵泉女学園大学紀要』 20,2008年。
Beyond and Alone !: The Theme of Isolation in Selected Short Fiction of Kate Chopin, Katherine Anne Porter, and Eudora Welty. UP of America, 2006.


中村 理香 なかむら・りか
成城大学准教授
主な業績: "Allied Masculinities' and the Absent Presences of the Other: Recuperation of Japanese Soldiers in the Age of American Wars in Iraq and Afghanistan―An Analysis of Flags of Our Fathers and Letters from Iwo Jima." In PAJLS Proceedings of the Association for Japanese Literary Studies. Rutgers UP, 2010.
"Attending the Languages of the Other: Recuperating 'Asia,' Abject, Other in Asian North American Literature." Diss. Rutgers, the State U of New Jersey. U.S.A., 2009.
「女・家族・国家/ディアスポラ――ノーラ・オッジャケラーの『従軍慰安婦』にみる 「二つの帝国」と脱出記の攪乱」『越境周縁・ディアスポラ』南雲堂フェニックス,2005年。


村山 瑞穂 むらやま・みずほ 愛知県立大学教授
主な業績: 「『ノー・ノー・ボーイ』にナショナリズムの機制を読む――二十一世紀の視点から」『国家・イデオロギー・レトリック』南雲堂フェニックス, 2009年。
「アジア系アメリカ文学研究における精神分析批評の可能性」 AALA Journal 14, 2008年。
オリエンタリズムの彼方に――カレンテイ・ヤマシタのブラジルの森をめぐる二つの小説が提示するエコロジカル・ヴィジョン」『木と水と空と』金星堂 2007年。


山出 裕子[やまで・ゆうこ] 明治大学兼任講師。


神田 稔[かんだ・みのる] 会社役員。


深井 美智子[ふかい・みちこ] 神戸女子大学非常勤講師。

・プロローグから。黒字強調は引用者(id:Mandarine)による。

アジア系作家の文学的特徴――エスニシティからトランスナショナリティへ?

 「アジア系アメリカ文学」の第一の特徴はエスニシティ」の追求がアイデンティティ構築の前提となっている文学ということである。「アジア系アメリカ文学」の発掘者でもあり作家でもあるフランク・チン等『アイイイー!』の編集者たちは、当初「アジア系アメリカ人」を「アメリカ生れでアメリカで搾取を体験した者」と限定する狭隘な文化ナショナリズムを主張していたが、外国生れで全く異なる体験を持つ新移民が流入してくると、その論理は通用しなくなる。とはいえ、アメリカ国内での差別搾取を体験した旧移民であれ、アジアを舞台とする戦乱、あるいはポストコロニアルな社会経済不安を抜け出してきた新移民であれ、アジア系作家に共通の文学的特徴は、自民族の固有の歴史、文化、民族性 (エスニシティ)と向き合うことなしにはものが書けないという状況に置かれているということである。
 例えば、旧移民の子孫である中国系作家の場合、『鶏小屋のチャイナマン』を書いたフランク・チンにせよ、〔……〕『骨』のフェイ・ミエン・インにせよ、すべて「チャイナタウン物語を語り直す」ことから創作活動を始めている。それは長年にわたって白人の三文小説やハリウッド映画を通してチャイナタウンに貼り付けられたステレオタイプ・イメージを打破し、悪の巣窟としてのチャイナタウン、 悪魔的で不可解な中国人といったオリエンタリズム的言説の呪縛から自らを解放し、同時に自身の生れ育ったルーツとの関係を測り直し、外社会に向けて飛翔するための必要不可欠な作業であったと考えられる。
 また、日系作家にとっては、「強制収容体験とその記憶の継承」は永遠のテーマとして付きまとう。〔……〕近年では強制収容を語らない作家と言われていた作家(シンシア・カドハタやカレン・ティ・ヤマシタ)も、強制収容を体験していない若い世代の作家たち(ラーナ・レイコ・リズット、ジュリー・オオツカ)もその記憶の再生・継承に新たな文学的創造の糸口を見いだしている。それは九・一一テロ後の「パール・ハーバー」への対抗言説でもあるが、他民族との連帯・和解・平和の使者となり得る日系人の歴史への再認識に立つからであろう。
 エスニシティを離れ、トランスナショナルな意識で人間の苦境を普遍的な形で描き始めている中国系新移民のハ・ジンやイーユン・リー、個々人の日常生活における些細な感情を拾い上げる「小声の文学」を書くインド系新移民のジュンパ・ラヒリや、出自とは関係なしに純粋に読者を楽しませるミステリや時代ものを書くアジア系大衆文学作家も登場している。が、朝鮮戦争ヴェトナム戦争といった戦乱、民族的悲劇をかいくぐってアメリカに逃れ、ようやく成人期を迎えた新移民が、手に入れた英語による表現手段で祖国の記憶を手繰り寄せ、文学表出しようとしている現在、脱エスニシティに至るにはもう少し時間がかかるのではないかと思われる。〔……〕

 「アジア系アメリカ文学」の第二の特徴は公的歴史文書が創作の引き金になっている文学であるということである。〔……〕戦争文学の珠玉といわれるカナダのジョイ・コガワの『オバサン』もまた公文書記録との出会いから生れている。アメリカでは強制収容に関する公文書が解禁され、国立公文書館へのアクセスが容易になったことから、実際に強制収容を体験した者の記憶の再生、照合が可能となっている。それを基にさらなる証言が生れている。野崎京子の『強制収容とアイデンティティ・シフト』もその一例である。このように北米に移住した日系人に関しては、歴史文書の公的回収・蓄積・調査が進んでいるが、南米に移住した日系人の歴史的記録に関してはまだ不可視の状態である。〔……〕このようにグローバル化トランスナショナル化するアジア系アメリカ文学研究の視野には、南米の日系文学研究、在日ブラジル人研究、さらにはカナダにおける日系人を含むアジア系カナダ文学研究や英国におけるアジア系ブリティッシュ作家研究も看過できない課題として入り始めている。

 「アジア系アメリカ文学」の第三の特徴は文化理論を呼び寄せる文学であるということである。フェミニズムジェンダー、クイア、オリエンタリズム多文化主義ディアスポラ、ポストコロニアリズムといった文化理論はアジア系移民諸集団のおかれた戦争、暴力、離散の歴史、人種差別・性差別の文化状況の解明に有効なツールを提供する。しかし、理論はあくまでも洞察の道具である。理論的公式を作品に当てはめるのに忙しく、作品の持ち味を殺したのでは文学批評とは言えない。理論は主役である作品の響きを引き立てる脇役であってこそ光る。「優れた批評とは批評された作品を読者が読んでみたくなるような批評である」とはある英文学の泰斗の言葉である。