著者:姜 尚中[かん・さんじゅん] (1950-) 政治思想史。評論。
著者:Tessa Morris-Suzuki[テッサ・モーリス-スズキ] 日本近代史。
【目次】
エピグラフ [002]
目次 [003-011]
序章 ヤギさん郵便、あるいはデモクラシーの議論への誘い 012
◎テッサ・モーリス‐スズキから姜尚中 へのメール 012
◎担当編集者から姜尚中へのファックス 016
◎姜尚中からテッサ・モーリス‐スズキへのメール 017
◎テッサ・モーリス‐スズキから姜尚中への手紙 018
◎姜尚中からテッサ・モーリス‐スズキへの返信 020
◎テッサ・モーリス‐スズキから姜尚中に宛てた、対談のレジュメ冒頭部 021
◎姜尚中からテッサ・モーリス‐スズキへのファックス 022
◎テッサ・モーリス‐スズキから姜尚中への手紙 024
第一章 デモクラシーの空洞化――冷戦構造崩壊後、自由は勝利し、それによって自由な選択肢はなくなった 026
あなたは、自分たちが暮らしているこの世界をより良い方向に変えていくことが可能だとしたら、そうすることを選びますか
デモクラシーの担い手とは――「それを望むすべての人々」
リーダー選びの手続きにおいてすら機能しなくなったデモクラシー ――選挙に負けていた、史上最高支持率の大統領
イシュー(論争点)を発見することができない政党――アジェンダ(競技事項)設定の機能不全
ボタンがない――孤立化する草の根の声
重要な議論を隠蔽している世論調査
マニフェストと二大政党制――有権者は消費者、小冊子は通販
無党派層――代表されていない人々の増大
自由が勝利した瞬間、自由な選択肢が消失した―― マーガレット・サッチャーのあだ名「TINA」
先進デモクラシー国家に浸透する寡頭制(オリガーキー)
市場の社会的深化――刑務所と警備に関する事業の、世界的な複合ネットワークの誕生(ワッケンハット社のケース)
しばし休憩――昼寝の間に、論点を整理しましょう!
第二章 グローバル権力の誕生小史・第二次大戦後五〇年――国家と企業の癒着、民営化 052
南太平洋の夕闇のなかで対談再開!
新分業体制と情報革命
1960年代後半以後、ポスト・フォーディズムへの移行期――国籍も職場も違う労働者たちと、組合運動の世界的な衰弱
福祉国家構想の世界的な終焉
ネオリベラリズム(新自由主義)は原理主義――自由市場は神様です
個人と国家、あるいは個人と企業をつなぐ中間項の消失
戦後日本のネオ・コーポラティズム ――経済総動員体制下における労働運動の限界
公的領域と私的領域の境界線が消失している!
民営化――国家と企業の癒着の進行
矯正施設や職業安定所が、民営化されたら?
ソビエト崩壊はハード・ランディングで、ネオ・リベラリズムはソフト・ランディング
戦争もしくは政治に寄生した資本主義―― ハリバートン、ケロッグブラウン&ルートの場合
生ぬるい夜風に吹かれて
第三章 政党、世論、ポピュリズム――デモクラシーのブラック・ボックス 083
一 政党をめぐるおしゃべり 083
渚にて
政党というブラック・ボックス
二大政党制か多党連立制か――民意の反映から効率性の重視へ
政党は階級から生まれた―― 一七世紀イギリスのトーリーとホイッグ
国民政党に脱皮した民主党は、誰を代表しているのか?――階級の変容と、日本党の誕生
自由民主党の「派閥」は代表制の代替物だった――巨大な利益代表機関
一院制のほうが「効率的」とは?
選挙のときは、有権者に寝ていてほしい―― オーストラリアでは、小政党への投票が死に票にならない
二大政党制のなかで、市民運動がイシューをどれだけ公約に載せられるか
政党は、マルティチュードを抑圧する―― NGOやNPOなど、多様な連帯を志向する人々の可能性を、国民国家の内部に封じ込めようとする権力装置
「支持政党なし党」をつくろう!
いちばん負担を被る人たちの発言力を増大させる――難民受け入れに関する議論に、送り出した側の代表者も参加する
二 世論をめぐるおしゃべり 107
第二次大戦中の小山栄三による世論研究――世論はどこにも存在せず、国家と国民の関係性のなかで人工的につくられる
世論は「虚焦点」をつくる―― フィクショナルな焦点をめぐる幻想民主主義
憲法と世論――近代国家の、二つの権力抑制機能が崩壊している
テレビ番組『ビッグ・ブラザー』――強化されていく相互監視と、世論と国家の一体
三 ポピュリズムをめぐるおしゃべり 118
リスクを回避するメディア ―― ポピュリズムの温床
ポピュリズムとは何か
自民党の利益誘導政治(派閥政治)の機能不全と、ポピュリズム ――中心政党と癒着した日本型ポピュリストたち
失敗しつづけるポピュリスト・石原慎太郎の支持基盤――都市型中産階級の怨念
東京では、地方からの「移民」一世と二世間で、階層の再生産がうまく機能していない
石原ポピュリズムの特徴――逆・毛沢東主義、つまりは、地方切り捨て
企業資本主義とデモクラシーの原理を切り離すこと
第四章 直接民主主義と間接民主主義――デモクラシー思想の歴史と「外国人」 137
時には歴史の話を
デモクラシーの対談に関するレジュメ(日本語訳)――あるいは、デモクラシーのオーソドックスな歴史の見取り図
プラトンの哲人王を待ち望む雰囲気の蔓延
決断主義
デモクラシーは爆弾とともに空から降ってくる
人間のなかに秩序はない
ホッブズと歴史の忘却
バークと歴史の復権
ルソーの可能性――暮らしのなかからデモクラシーを考えること
国民国家の成立――消失していく直接民主主義の理想
公共圏――アーレントのいう相互承認に、在日は含まれるか
女性――公共圏のカヤの外
外国人の誕生――国境管理所の人権侵害
五番目の「戦後民主主義」
戦争と大衆デモクラシー
民主主義の拡大と非民主主義の拡大――在日の投票券
ギリシャ哲学のビオスとゾーエー ――国民ではない住民とは何か
遠き水面に、日は落ちて
第五章 間奏曲「月夜の対位法」――デモクラシーは酸素なんだよね 180
月下のドライブ
オーストラリアへの移住――白豪主義から多文化主義への激変の時期
「朝鮮半島は、デモクラシーとは無縁だ」という刷り込み
セキュリティの彼方には、デモクラシーなど存在しない――韓国の民主化闘争四〇年
すべての人間は、外国人である
第六章 ふたたび「暮らし」のなかへ――今、私たちに何ができるのか 196
一 想像力を奪うものへの抵抗 196
デモクラシーの未来
被害者への過剰な感情移入と、無関心な第三者意識の蔓延
視聴率調査をする会社が、なぜ一つだけなのか?
ドキュメンタリー番組の蘇生法
ワイドショーは、地縁や血縁の代替物
テレビのイデオロギー ――この退屈な日常はずっと続いていく
オンラインの可能性――北東アジア新聞
オンラインで司法を民主化できるか
二 グローバル権力と、内なる無力感への抵抗 216
企業の民主化――労働者だけでなく、消費者が企業経営に関わること
企業の知的所有権を過剰に保護する国際協定「TRIPS」と、第三世界の人権侵害――グローバル権力に勝利したエイズ・キャンペーン
北東アジア共同の家――地域主義的なデモクラシーを支えるもの
北東アジア共同の家の境界線さえも解体する
内なる無力感と、憎悪の連鎖に抗して
あとがき(姜尚中 テッサ・モーリス‐スズキ) [235-242]
用語解説 [243-269]
みんなでつくるデモクラシー・マニフェスト [270]