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『経済成長って何で必要なんだろう?』(芹沢一也,荻上チキ[編] 光文社 2009)

編者:芹沢 一也
編者:荻上 チキ
著者:飯田 泰之
著者:岡田 靖
著者:赤木 智弘
著者:湯浅 誠


【目次】
はじめに 芹沢一也 [003-008]
目次 [009-013]


序章 議論の前に 飯田泰之×芹沢一也 015
  本書の見取り図
  ケインズハイエクフリードマンの違い
  理論家と実証家のバランスが悪い日本
  経済の勝利、政治の敗北
  争点とならない経済政策
  経済成長で格差・貧困を吹き飛ばす


1章 高度成長とは何だったのか――戦後日本経済思想の源流と足枷 岡田靖×飯田泰之  049
  「心の師匠」岡田靖
  現代社会の原点としての世界大恐慌
  誤った戦前のイメージ
  平均所得に見る今と昔
  GDPのGとはなにか?
  昭和30年代の東京の風景
  インド的低賃金と革命前夜
  所得倍増計画
  GDPとは何か?
  もうけはインチキか?
  経済成長と賃金
  年2.0〜2.5%成長は当たり前
  素人社会の日本が経済成長した理由
  20%の消費税を取られているようなもの
  景気が良ければ、ダメ企業は淘汰される
  エリート官僚の堕落という幻想
  なくすべきか、なくさざるべきか公共事業
  なぜ経済成長は嫌われるのか
  高度成長と環境問題
  高度経済成長期的構造からの脱却


2章 戦争よりバブル、希望はインフレ 赤木智弘×飯田泰之(司会・芹沢一也)  105
  左派原論への幻滅
  三つの「安定」
  2%仮説
  正社員待遇はやめるべき
  個人の問題でもシステムの問題でもなく、単なる経済政策の失敗
  なぜ引退世代をここまで優遇するのか?
  革命ではなく、問題を雲散霧消させる
  不人気な成長とインフレ
  なぜ貧困率の高い若者から貧困率の低い老人に再分配するのか
  日本人の生涯所得を決める最大の要因は?
  タイムリミット


3章 何が貧困を救うのか 湯浅誠×飯田泰之(司会・荻上チキ)  155
  なぜ「溜め」は失われたのか
  「所得倍増」か「規制・公的給付」か
  活動家を再生産する仕組みづくり
  正規と非正規が連携するためには
  強すぎる労働イデオロギー
  半就労・半福祉と負の所得税
  福祉の財源
  格差を解消する累進課税強化
  若者に冷たいメディアと政治
  「秩序を乱す自治の暴走は許すまじ」という空気
  貧困調査のない日本
  岩盤と新自由主義批判
  「溜め」の指標化


終章 議論を終えて 飯田泰之×芹沢一也×荻上チキ 213
  「お薬経済学」と「筋トレ経済学」
  経済学はプレカリアートにどう語りかけるか
  言論の責任
  バブルとデフレは同じ問題
  経済学者の責任
  景気が悪い中での改革は上手くいかない
  経済学者の役割
  懐古趣味の壁
  小さな啓蒙と情報戦を繰り返すしかない
  地域コミュニティは人を幸せにするか
  価値論争の重要性
  意図的な社会問題化
  まったく機能していない日本の再分配政策
  田舎に住む自由を確保すべきか 


あとがき 飯田泰之 [288-291]
執筆者紹介 [292-294]




【抜き書き】
 第3章後半[本書pp. 203-204]から、日本の公的な統計調査の貧しさを指摘する部分を引用する。個人的には、民間やシンクタンクがデータを採る分を、飯田先生がどう評価してるのか気になる。

飯田  〔……〕湯浅さんの話で「おお!」と思ったのは、貧困調査をやれということ。まったくそのとおりで、日本って本当に調査・統計が少ないんです。何といっても国富統計がないめずらしい先進国ですから。

荻上  何でそういう状況になっているんですか?

飯田  統計はカネを食うから、と。
 国富統計がないというのは恐ろしいことで、いま日本にどれだけの生産力があるか、だれも知らないんです。日本って、けっこう海外にあるはずの統計がないんです。もともと何のために国富統計をとり始めたのかというと、継戦能力をはかるためでした。だから戦後に風当たりが強くなったというのもあるでしょう。でも、戦争をしなくても、実はけっこう大切なんですよね。
 何を計算するにも、日本の場合、生産機械がどこにどれだけあるというのがちっともわからないので、全部推計になるんです。でも推計はしょせん推計ですから、ブレが出ます。国富統計は、75年がラストの調査だから、34年間ブレを続けてきてしまって、もう何がなんだか全然わからない。
 僕ら経済学者が欧米などでよく行われる分析をしても、どうも明確な結果が出ない。生産設備の質と量をどう推計したかによって方向も違えばレベルも全然違うので、数字での分析ができない。
 話がそれましたが、日本の場合、具体的な数字に基づいてという考え方がほんとにできていない。貧困調査もそうですし、国富調査もそう。そういったものをやっていかなければならない。
 で、そういうのをやる独立した機関が必要だと思うんですね。いま実際に日本の統計をどうやって組んでいるかというと、各省庁が、例えば財務省は税務、徴税のため、経済産業省は業界への行政指導のため、厚生労働省社会保険上の計算のためとかいって、その都度泥縄で、これがないと何もできないからと調査している。日本経済全体、または日本社会全体をきちっと把握している部署がないんです。

荻上  思想史的には、近代国家の根幹は、国体の統計的把握だということになっているんですが(笑)。

飯田  だからね、近代国家じゃないんですよ(笑)。明治期に、一生懸命戦争をするために近代国家モドキをつくったんですけれどね。