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『経済学は役に立ちますか?』(大竹文雄,竹中平蔵 東京書籍 2018)

著者:大竹 文雄[おおたけ・ふみお] (1961-)
著者:竹中 平蔵[たけなか・へいぞう] (1951-)
企画・編集:堀岡 治男(堀岡編集事務所)
ブックデザイン:長谷川 理
写真:宗野 歩
NDC:331 経済学.経済思想


『経済学は役に立ちますか?』 - 東京書籍


【目次】
はしがき(大竹文雄) [002-007]
目次 [008-016]


第1章 エピソードに翻弄される世界 ……いま日本と世界で何が起きているか? 017
富の再分配を放棄したアメリ 018
  「エピソード」の攻勢を受けて「エビデンス」は劣勢を強いられている
  今の状況を生み出したのは、分配問題を放置したアメリカ自身の責任
  正論を吐くジャーナリストや正統派のエコノミストが、頑張らなければいけない

非効率的な富の再分配を続ける日本 027
  「地方」という切り口だけでおカネが地方自治体に配られている
  年金機構と国税庁を一体化した歳入庁が効率的に歳入を確保すればいい

機能マヒ状態の日本の政策委員会 033
  日本のポリシーボードでは利益相反が平気で行われている
  ポリシーボードは国民全体のためにどういう政策がいいかを議論する場
  エピソードで政策論議をする委員たち 


第2章  経済学を学ぶと世の中が面白く見える? 043
新古典派経済学から行動経済学 044
  社会還元の一つの方法が本を書くこと
  「経済学を使って予測できればお金儲けができる」と考えて経済学部へ進学
  経済学部にお金儲けの講座はなかった?…新古典派経済学が万能と考えられていた時代 

経済学の理論と政策の現場 053
  「経済学を使うとエキサイティングに世の中を議論することができる!」 
  経済学の考え方と政策現場との間には巨大なギャップが横たわる
  ギャップを埋めるために伝統的経済学から行動経済学

経済学の世界と霞が関の世界 064
  非合理の中に真実がある! 
  日本のエコノミストと称する人たちは、きわめて安直なコメントをする
  エビデンスベースで政策効果を測るときにはランダム化比較試験がベスト
  アメリカの大学では財務担当のバイスプレジデントが資産運用をしている
  経済学は進化する……所得格差論争 


第3章 経済的センスで考える 085
日本はなぜデフレから抜け出せないのか? 086
  デフレの時はおカネを借りている人が損をする
  政府の側に規制緩和等々の努力が足りず、日銀のインフレ目標政策は失敗した 
  経済は極端に行き過ぎると、元に戻すために大きな犠牲を払うことになる 
  マッチング機能の向上によって完全雇用失業率が下がったかもしれない
  人口減少によってデフレになるという議論はあまりにおかしい
  実験を繰り返して新しい制度設計をすることが必要な時代になっている
  露店でスマホ決済。インドではものすごいことが起きている
  海外の先進事例を学んで日本で実施するという手法はもはや使えない
  サンドボックスは、特区の中でもゼロベースの特区

価格メカニズムは機能しているのか? 109
  価格競争を良しとしない風潮が日本にはまだかなり残っている
  価格競争をしたくないという運動法則がこの社会には強く働いている
  みんな同じでなければいけないという価値観が強く反映されている
  効率的な人が活躍できて社会全体の利益が最大になるが、なんとなく不公平感が残る
  市場メカニズムの裏面として再分配のシステムが必要
  タクシー運転手の過酷な労働とタクシーの規制緩和は別問題
  「雨の日にはどうしてタクシーはつかまらないのか」という経済学の研究がある
  日本のタクシー制度は参入障壁を高くして、その分規制を厳しくする典型 

働き方改革」の行方 126
  「働き方改革」は伝統的な経済学ではなかなか説明できない問題
  長時間労働をする人には二つのタイプがある
  長期雇用をベースにした雇用システムは価値観の多様化に対応できない
  ベンチャー企業で終身雇用・年功序列を採用することはできない
  終身雇用・年功序列が日本の正社員のデフォルトになっていることが問題
  一人一人のライフスタイルに合った働き方ができるようにすることが大事
  世界の常識と日本の常識が非常に違っているもう一つの例:金銭解雇 
  ヨーロッパの国にはきちんとした金銭解雇のルールがある
  「同一労働同一賃金」は簡単な話ではない
  霞が関を「同一労働同一賃金特区」にして、具体的な事例を示すべきだ
  労働政策審議会と「フィラデルフィア宣言」の原則 

移民問題」は日本の問題でもある 152
  2020年以降、「移民」は避けて通ることができない問題として表面化してくる
  移民のメリットを理解するようにならないと、デメリットのほうが大きくなる
  明治維新で最大の経済的な効果をもたらしたものは移動の自由
  ヒトの自由移動によるメリットはモノの自由移動よりもはるかに大きい
  外国人に対するネガティブな感情は変えることができる
  グローバリゼーションによる負担は大きいかもしれないがメリットはより大きい 

日本の教育における課題はなぜ起きているのか? 160
  奨学金を一律に給付型にすることには賛成できない
  個人の投資と企業の投資の違いをどう考えるか
  給付型奨学金の枠を少し広げることは理屈としてはありうる
  「大学生が選挙権を持つようになるので、給付型の奨学金にしよう」? 
  若者は今を我慢して、将来を大事にすることが苦手
  若者たちは将来年金がもらえるかどうかを心配している
  初等中等教育では「読む」ことと「書く」ことが重要
  スタンフォードの幼稚園で行われたマシュマロ・テストでわかったこと
  夏休みの宿題をいつやるのかと大人になってからの肥満に関係があることがわかった
  典型的なアクティブ・ラーニング教育をするミネルバ大学のモットー
  「反競争的教育」によって助け合い精神は希薄になる
  競争してこなかった人は相手の立場に立つことができない 


第4章 経済学はもっと面白くなる! 195
日本の経済学と世界の経済学 196
  政策オリエンテッドな問題をどう解くかという研究が進んでいる
  政策論としては、大きな流れを捉えて予測するところに関心が向かっている
  日本の経済学は進んでいるのか、遅れているのか、微妙!
  日本では「検証」という概念が乏しい
  若者の労働力人口が大幅に減っているのは、日本にとって大きな問題
  日本は完全雇用を実現しているのに、なぜ賃金が上がらないのか

メディアに欠落する経済リテラシー 212
  今起きている問題や政策についてきちんと議論できるジャーナリストがほとんどいない
  「カジノ法」と「年金カット法」――メディアの経済リテラシーが大きな課題
  経済学と政策やメディアとの距離がありすぎるのも問題
  日本にはパブリックインテレクチャルズという概念が希薄

経済学は新しい学問。もっと面白くなる! 223
  経済学は役に立つと思われ過ぎているから努力してこなかった
  「寄付をすると幸福になる」という研究
  経済学の大きな流れを見ると面白い
  日本の経済界で圧倒的な人気を誇る経済学者シュンペーター
  人物を通じて「経済」を教えることがあってもいい
  社会科学的な発想をきちんと歴史で教えてこなかったのは事実


あとがき(竹中平蔵) [242-247]





【関連記事】
・大竹先生の著作(一部)
『労働経済学入門』(大竹文雄 日経文庫 1998)

『日本の不平等』(大竹文雄 日本経済新聞社 2005)

『こんなに使える経済学――肥満から出世まで』(大竹文雄[編] ちくま新書 2008) - contents memorandum はてな


新自由主義について。

『新自由主義の復権――日本経済はなぜ停滞しているのか』(八代尚宏 中公新書 2011)

『日本型新自由主義とは何か――占領期改革からアベノミクスまで』(菊池信輝 岩波現代全書 2016)

『新自由主義の妖怪――資本主義史論の試み』(稲葉振一郎 亜紀書房 2018)


・対話形式で経済学を啓蒙する。

『経済成長って何で必要なんだろう?』(芹沢一也,荻上チキ[編] 光文社 2009) - contents memorandum はてな

『脱貧困の経済学』(飯田泰之,雨宮処凛 ちくま文庫 2012//2009)

『対話でわかる 痛快明快経済学史』(松尾匡 日経BP社 2009)


・その他。

『行動経済学入門』(多田洋介 日経文庫 2014//2003)