著者:三谷 博[みたに・ひろし] (1950-) 日本近代史。
NDC:210.6 日本史(近代 1868- .明治時代 1868-1912)
NDC:311.3 国粋主義.ナショナリズム.民族主義
筑摩書房 愛国・革命・民主 ─日本史から世界を考える / 三谷 博 著
【目次】
献辞 [002]
目次 [003-006]
はじめに [009-013]
第1講 愛国 一 015
1 【問題】なぜ「愛国」を論ずるのか 016
政治的死者の内外差を調べる
2 【定義】ナショナリズムの基本モデルと副次モデル 025
特徴の共有では説明できない
定義してみると
アンダーソンとスミスの内部生成モデル
基本モデル――福島真人の境界生成モデル
第二のモデル――多層世界のなかの境界昇降
3 ナショナリズム形成の三局面――東アジア三国 041
日本
中国
朝鮮
スタートのずれ
4 分権体制からの出発――日本 048
初期条件
徳川公儀による国境形成
無意識化の境界形成――文字と話し言葉
政治運動と制度改革
第2講 愛国 二 071
1 科挙体制からの出発――中国 072
初期条件
対外戦争が連続しても火がつかない
日清戦争による創発
「中国」実体観と「支那」分裂
移民の役割
改革と敵の造型
抗日戦争
政治統一後
2 歴史記憶の相互作用――「忘れえぬ他者」 097
本居宣長の「忘れえぬ他者」
「忘れえぬ他者」の非対称性――「中心」と「周辺」
両義性と複数性のダイナミズム
モデルの応用――歴史記憶への対処法
第3講 革命 一 123
1 【問題】明治維新の謎 124
明治維新はなぜか世界比較に登場しない
維新でおきた変化は巨大だった
何が変わったのか――歴史のスナップショット
維新の原因は特定できない
2 「復古」による「開化」――明治維新 136
明治維新をどう訳すのか
「復古」の資料を読む(1)――古賀侗庵『海防臆測』
「復古」の資料を読む(2)――徳川家茂の改革宣言
「復古」の資料を読む(3)――王政復古の沙汰書
3 フランス革命 149
フランス革命のなかの「復古」
ナポレオンの古代ローマ
4 革命の時間的表象――「復古」「進歩」「世直り」 155
啓蒙思想と「進歩」
ルネサンスと「復古」
歴史を読む社会と「復古」
口頭伝承と世直り
「世直り」「復古」「進歩」
天皇はなぜ残ったのか
第4講 革命 二 177
1 変化理解の方法――因果関係と複雑系 178
法則とは何か――マルクスによる因果法則と経験的一般化の混同
因果的説明――必然と偶然の対概念は不要
因果法則が予測不可能性を生む――ローレンツの決定論カオス
秩序の生成と崩壊――金子邦彦のカオス結合系
金子・安富の共依存的生滅系
2 秩序の生成と乱れ――儀礼の機能 202
徳川初期の安定化政策
変化の吸収と安定――役割分業
ノイズの混入――尊王思想
外交政策の硬直化――「鎖国」
乱れの発生と悪循環の増幅
乱れが開く新たな可能性
3 秩序の再生と犠牲――間接的経路への無意識侵入 220
間接的アプローチ――最終局面
間接的経路へのはまり込み(1)――幕末の第一局面
間接的経路へのはまり込み(2)――公儀から王政復古へ
王政復古以後――意識的応用へ
世界への意味
第5講 民主 一 233
1 【問題】なぜ民主、あるいは政治的自由が必要なのか 235
政治的自由なき繁栄は他人ごとか
西洋モデルの押しつけは有効か
政治的自由は必須なのか
「自由」な政治は「決定」ができるのか
とりあえずのヒント
2 民主化への様々なアプローチ 247
政治制度からのアプローチとその限界
コミュニケーションのあり方
メディアの問題/経済利害と政党組織
3 経路の多様性・様々なモジュール 258
「官」・「民」・「国」
多様な経路への配慮
モジュールの状況的投入
伝統への訴求
4 民主化の初期条件――日本の歴史的前提 266
初期条件――中国・朝鮮と比べた不利
初期条件(1)――「官」内部の決定手続き
阿波徳島の藍専売
手続きの専制――ボトム・アップのメリットとデメリット
初期条件(2)――「民」のなかの文芸的公共圏
学塾の討論文化とナショナル・ネットワーク
文芸から政治への転写
第6講 民主 二 287
1 公論空間の創発――幕末 289
(1) 政府のイニシアティブ(1)
対外政策の諮問
大大名の政権疎外と参加願望
大大名の幕政参加構想
(2) 政府の分裂
(3) 政治参加の拡大
尊王運動と公儀運動
「王政」「公儀」政体へ
(4) 公論と暴力との親和性と空間の閉鎖性
公論と暴力
閉じた公論空間
2 公論空間のビッグ・バン――明治初期 306
(1) 政府のイニシアティブ(2)
五箇条誓文と「政体」
人材登用・会議・建白奨励
(2) 公衆を造るメディアの輸入――新聞と演説会
新聞の定期刊行と政論
同一紙面での公論
演説会とジャーナリズム
(3) 公論の暴力との訣別
3 公論空間の制度化――明治中期 319
(1) 「民」からの政治運動
娯楽としての演説会
「愛国」のレトリック
(2) 「官」側の忍耐と譲歩――政府の分裂と「歴史への見栄」
(3) 立憲制による「官」「民」の妥協
「君」の位置づけ
暴力の抑制と「敗者」の復活
4 比較と教訓 328
上からと下からのイニシアティブ
ナショナリズムの二義的機能
暴力の放棄
代議制と独立司法権
公論の慣習
国境をまたぐ公論
あとがき(二〇一三年七月 三谷 博) [347-349]