著者:山室 恭子[やまむろ・きょうこ](1956-) 日本近世史。
件名:東京都--商業--歴史
NDC:672.1361 商業史・事情(@江戸)
『大江戸商い白書――数量分析が解き明かす商人の真実』(山室 恭子):講談社選書メチエ|講談社BOOK倶楽部
零細店舗あふれる江戸の町。外食屋7000軒。一二六人に一軒の古道具屋。米屋は1日30名程度の来店客――。十数年しか続かず、血縁原理も働かなかった商家がほとんどだった花のお江戸の商人たちの選択のドラマとは? 狭くて人口密度が高く、売り手買い手ともに自由な一大消費都市江戸の商いのありようとは? 4000軒の商家を徹底的に数値解析することで、従来の大商家「越後屋=三井」史観に決別する。
【目次】
はじめに 熊吉についてわかるすべてのこと [003-006]
目次 [007-009]
第一章 五坪に四人 江戸の人口密度を推計する 011
緻密な悉皆〔しっかい〕調査
髪結沽券金高〔きんだか〕
江戸の人口分布
日本橋地区に四五パーセント
小間高〔こまだか〕から町人地面積へ
人口密度の算出
家の大きさを推定
時間差推定
数値解析の効用
第二章 江戸商人データ解析 029
1 江戸商人データベースの作成 030
三井史観の呪縛
情報源
データベースの作成
2 平均存続わずか一五・七年 036
年代分布の偏り
オドロキの存続年数
度数分布
3 株の五割は非血縁譲渡 045
相続か譲渡
既存か新規か
存続年数と移動事由の関係
選択のドラマ
4 店の五割は米屋か炭屋 055
米屋と炭屋が二大業種
嘉永四年の一斉店舗調査
長寿な札差〔ふださし〕 短命な舂米〔つきごめ〕屋
流動性係数
5 番組編成の三類型 064
舂米屋の番組編成事情
炭薪〔すみたきぎ〕仲買の番組編成事情
札差たちの場合
全域型・特化型・都心型
流動性との関係
第三章 競争と共生 077
1 地区別店舗分布 078
類型別店舗数
築別店舗数
地区別×業種別店舗数
2 大江戸ショッピングガイド 089
菓子に呉服に袋物
薬屋さんの全面広告
高付加価値商品
ニーズの多様性
よそゆきの江戸
3 本所・深川の米流通網 098
グリッド単位の分析
町・丁目単位の分析
暮らしに寄り添う商い
4 御用金をいくら出す? 107
競争と共生
御用金の醵出〔きょしゅつ〕金
札差の千両箱
四〇両多い都心型
三〇両多い日本橋
第四章 江戸の完全競争市場 115
1 薄利寡売の茨道 116
どちらが先?
全域型が先行
ベーシック比率
二〇〇人に一軒のお米屋さん
米屋と炭屋の売上試算
兼業という選択
薄利寡売の茨道
2 江戸の完全競争市場 131
オドロキからの出発
三類型の検出
消費者視点と店舗視点
なぜ店舗数が多いのか
全域型店舗の特性
完全競争市場の成立条件
自由な買い手と身軽な売り手
ヤドカリ・スタイル
消える利潤
全員がプライス・テイカー
小商い栄える街
3 リサイクルショップとファストフード 152
一二六人に一軒の古道具屋さん
一一七人に一軒の飲食店
四人に一人が他所者〔よそもの〕
第五章 大江戸商い模様 161
1 桜吹雪の町奉行 162
ただいま噴火中
問屋再興へ
株の担保機能
計画始動
ミスター正論登場
戦術的撤退
個別撃破作戦
集団の叡智
緊張感が育てたシステム
2 豆腐屋甚吉の町売り攻勢 180
罠
店売りか町売りか
第二の事件
自法禁止
ラッパの系譜
3 肴屋松五郎の鰤一〇〇本 190
築地〔つきじ〕河岸の攻防
押し込まれる老舗問屋
訴状撤回
三度目の正直
消えたリーダー
水の利
4 三人の両替商 198
チクデン瀧之助
カゼヨミ栄助
ジミチ吉之助
5 髪結常吉と三〇〇人の仲間 205
小川屋での蹶起〔けっき〕集会
髪結床〔どこ〕の算盤勘定
暴発寸前
常吉、勝利す
6 湯屋のぬくもり 212
町奉行の決意
混浴禁止令
ライバルは薬湯
二文値引きの慣行
「軽キものども」の難儀
反対派の理由
湯屋の公共性
おわりに(二〇一五年六月 著者) [226-227]