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『農協』(立花隆 朝日文庫 1984//1980)

著者:立花 隆[たちばな・たかし](1940-2021) ノンフィクション・ライター。
解説:井出 耕也[いで・こうや] ジャーナリスト。
カバー装幀:多田 進[ただ・すすむ](1937-) 装丁家。 
表紙・扉:伊藤 鑛治 
NDC:611.6 農業経済 >> 農業協同組合、農業団体。
備考:『農協――巨大な挑戦』を改題・文庫化。



※本書はルビが少ないので、下記の目次ではいくつかの地名には亀甲括弧〔 〕で読み方を示した。


【目次】
はじめに(昭和五十五年五月 立花隆)/文庫版のために(昭和五十八年十一月 立花隆) [003-008]


1 規模拡大と資本装備で農民の夢を実現した日本一豊かな北海道・士幌〔しほろ〕農協の馬鈴薯コンビナート 013


2 東京にも農協がある=不動産業者・金融業者と化した偽装農民たちの宅地なみ課税への抵抗 034


3 補助金を徹底的に利用して地域農業再編を実現した鳥取・東伯農協のブロイラー・インテグレーション 


4 米づくりに賭ける庄内・余目〔あまるめ〕農協の有志共同=受委託による規模拡大がもたらす群小地主制 


5 ピンからキリまである日本の稲作と、生産性を無視した画一的転作配分のもたらす矛盾 


6 破産から立ち直り、ミカンと肉牛肥育のコンピューター管理農業で飛躍する静岡・三ヶ日農協 106


7 日本一のマンモス農協、宮崎・都城〔みやこのじょう〕農協に見る、和牛子牛生産の高コスト構造 121


8 日米農業の生産性格差=国際競争力を失った高コスト・高利潤・高価格の日本農業 136


9 「高い牛肉」を作る、高い子牛と高い飼料による長期肥育という構造と、世界一の配合飼料メーカーになった全農 151


10 施設園芸だけではない日本農業の石油づけぶりと、日本最大の石油販売業者になった農協 171


11 肥料・農薬の独占的流通業者である 農協の実力と、化学肥料・農薬づけ農業への反省 186


12 野菜王国・長野経済連の出荷調整を支える青果物情報オンラインシステムと低温流通システム 203


13 日本一の保険会社にのしあがった農協共済事業と全共連国を震撼した怪文書スキャンダル事件の真相 219


14 二十二兆円の資金量を誇る農協信用事業に頻発する金融事故のケース・スタディ=滋賀・信楽〔しがらき〕農協の場合 


15 泥沼の財政赤字を生む食管制度のもたらした諸矛盾と、それを掘りくずす自由米の横行 


16 合理化によって実力を蓄えた酪農家が実現した自主的生産調整と加工加工・流通部門への進出 


17 食肉流通業界は戦国時代。問屋、加工メーカーと対決する農田協の販売力の弱み 


18 農協の集票力はどれだけあるか=地域によって天と地ほどのちがいがある農協農政組織の実力 


19 全中が号令をかける農協農政活動の曲がり角=ひそかに進行する自民党農林議員の農民ばなれ 


20 地域農業振興計画を軸に展開される農協の八〇年代戦略と情報産業としての農協の未来像 373


参考文献ならびに取材先 [391-402]
  農業一般
  農業協同組合
  稲作及び米価
  園芸
  畜産・酪農
  肥料・農薬・農機・石油
  農協と政治・需給調整
  その他
  取材先
解説 『文明の逆説』と『農協年鑑』(昭和五十八年十一月五日 井出耕也) [403-412]




【図表目次】
図1 農家所得・農業所得・農業粗収入・生産費 015
図2 町田市南農協加盟組合員全体の所得動向 050
図3 北海道と広島の米生産性格差 098
表1 昭和53年度転作面積の各都道府県への配分要素 103
図4 数字で見る日米農業の比較 137
図5 日米の一戸当たりの農業所得と農業粗収入(1978年) 139
図6 日米の10a当たりのコメ生産費比較 145
図7 販売金額からみたアメリカ農家の階層 146
図8 肉牛生産費と牛肉価格の日米比較 152
図9 肉牛の成長速度,肥育期間,飼料コストの相関関係 158
図10 アメリカの飼料穀物化日本に来るまで(金額は51年度) 164
図11 石油総消費に占める農業生産用需要とその内訳(昭和53年度) 175
図12 農産物 1kg当たりの投入エネルギー(昭和45年度) 178
図13 食用作物生産への投入エネルギー(昭和45年度) 179
図14 日本の総エネルギー使用量に占める食糧システムの比重とその内訳(昭和45年度) 180
図15 石油元売り会社から農村への石油の流れ 182
図16 肥料流通系統図 187
図17 農薬の生産と流通 196
図18 農協の購買事業における品目別流通段階別シェア 200
図19 長野県の青果物情報オンラインシステム通信回線網 208
図20 レタスの流通形態別の温度変化とそれに伴う可食部分の変化 211
図21 農協の組織 221
図22 農協共済の運用資産残高の推移(全共連都道府県共済連合計,年度末残高) 
図23 農協共済の資金の流れ(昭和53年度) 225
写真 全共連の内情を暴露した怪文書 229
表2 全共連の主な運不動産 238
図24 農協系統信用事業の資金の流れ(昭和54年) 252
図25 農協の貯金残高と貸出金残高の推移 253
図26 農協貯金増減額の源泉別内訳の推移 254
図27 農協貸出金用途別構成比の推移 254
写真 自由米の相場表 269
図28 米価の推移・各種米価格の相関関係・米穀管理財政負担の推移 270-271
図29 米のルート別の流れ 276
表3 米の食味と品種格差 277
図30 米をめぐるお金の流れ 289
図31 牛乳の生産・消費動向と輸入量,在庫量の推移(昭和30〜52年) 302
図32 各種乳価の推移と相関関係 304
図33 生乳の生産・消費量と移出入量(昭和53年) 311
図34 食肉の流通経路 318-319
図35 食肉の価格と受給の推移 322
図36 食肉流通の諸断面 326
表4 農協の農政組織とその政治力 346-348
図37 自民党に対する農林水産業有権者の支持の推移 351
表5 各種農畜産物価格制度と決定時期 359
表6 自民党農林議員の勤務評定 366-369
図38 全国生産計画フローチャート 375
図39 農協のコンピュータ利用状況 386-387





【抜き書き】


pp.288-289

 この件にかぎらず、食管制度や米価体系の中には、さまざまの歴史的、政治的経緯から生まれた盲腸のごときものが山のように付いており、外部の者にはほとんど理解を絶する複雑怪奇なものになっている。
 その大半のものは、政府が農民と消費者の両方に色目を使って名目上の生産者米価は抑制されているようにみせかけながら、生産者の手取り額はふやしていくために手のこんだ操作を加えたためである。


【メモランダム】
関連しそうな本(どれも否定的な形で扱っているが)。

『農協の大罪――「農政トライアングル」が招く日本の食糧不安』(山下一仁 宝島社 2009)

『農協との「30年戦争」』(岡本重明 文春新書 2010)

『バターが買えない不都合な真実』(山下一仁 幻冬舎新書 2016)

『農協の闇』(窪田新之助 講談社現代新書 2022)