著者:大泉 一貫[おおいずみ・かずぬき] (1949-) 農業経営学、農政学、地域政策学。
NHKブックス No.1219 希望の日本農業論 | NHK出版
このポジティブなタイトルの下敷きには、おそらく神門『日本農業への正しい絶望法』(新潮社)がある。
【目次】
目次 [003-008]
はじめに [009-013]
第一章 日本の農業は稲作偏重農政で衰退し続けてきた 015
稲作の一人負け
輸出小国の日本
稲作の生産調整で輸出に消極的になった日本
論出したくてもノウハウが見当たらない
稲作偏重農政が続く日本
三つの「負の特徴」
第二章 稲作偏重が生む日本農業の不思議 029
1 稲作偏重農政が生む農業生産の不思議 030
稲作偏重農政が生む農業システムの複雑化
生産調整するコメと生産拡大するコメ
コメを輸出するためには生産調整が必要?
「生産拡大してもいいコメ」はなぜ生まれたのか
生産調整しているのにコメを輸入するという不思議
不自然な計画経済から生まれる不正
2 なぜ稲作偏重農政が続くのか 041
稲作偏重農政の本質
稲作偏重を招くロジック
米価は農村の社会保障政策のツールと化した
米価は「政官業のトライアングル」によって支えられた
稲作偏重農政とは、実は農家保護農政である
3 政局化する農政が日本農業の課題
農業成長か農家保護か
米政策改革大綱と品目横断的経営安定政策
全農七〇〇〇円ショック
農政の逆流
民主党の戸別所得補償
自民党「攻めの農林水産業」を打ち出す
第三章 成熟先進国型の農業で成長産業を目指せ 059
1 成熟先進国型農業とは何か 060
世界には三つの農業の型がある
成熟先進国型農業登場まで
成熟先進国型農業の四つの特徴
2 オランダ・デンマークの成熟先進国型農業 068
情報産業化するオランダ農業
農業技術輸出に見る知識産業化
オランダの戦略を見習った韓国農業の戦略
シリコンバレーならぬフードバレーを作るオランダの戦略
ニッチ戦略で顧客指向を貫くデンマーク農業
デンマークアーラフーズかフォンテラか?
オランダ・デンマーク農業の教訓
第四章 我が国の農業を成長産業に 081
1 日本の先進農業県 082
我が国の農業県は成長法則を踏まえている
①顧客指向型農業
②新規投資に前向きで生産性の向上を目指す農業
③他産業とのネットワーク、融合化
成熟先進国型農業を目指す農業の成長法則
2 日本農業の挑戦 088
「営農・販売会社」の登場
マーケットインという当たり前の手法
営業が商談をまとめられなければ農業の仕事が発生しない
マーケットニーズを背景にした農業者教育
ニーズを実感できる直売所というビジネスモデル
他産業と連携して生産性を上げる日本の農業
「融合産業」というビジネスモデル
農商工連携法と六次産業化法
六次産業化の不安材料
第五章 稲作・水田農業の成長を考える 111
1 大規模水田複合経営への道 112
農家が減少し、否が応でも進む規模拡大
機関車農家論と離農政策
収益力の違いについて
収益力の高い大規模水田複合経営とは
自立した水田農業への道
内圃と外圃
稲作での粗放と集約の関係はどうだったのか
2 コメの輸出の可能性 128
「攻めの農林水産業」
ターゲットは国際コメ市場
思いはあっても世界ではマイナーな日本のコメ
コメ輸出は可能か?
我が国のコメ輸出戦略
技術支援や現地生産など世界で展開する日本のコメ作り
コメの価格競争力は弱くはない
世界のコメ価格は日本で作られるという戦略構想を
第六章 何といっても必要とされる経営者 145
1 成熟先進国型農業には経営者が必要 146
農村自営業者の存在が我が国農村の健全さだった
百姓像の転換
「一国の元気は中産にあり」
農業経営者の復活が我が国農業を救う
2 我が国のどこに農業経営者がいるのか? 154
農家はいるが経営者はいない我が国農村
多様な農家概念と農家の実態
「効率的かつ安定的な農業経営」の育成
農業経営の定義と三種類の農業経営解釈
販売額で経営者の特定を試みると
農業を成長軌道に乗せるには
3 国民に農業を開放し新規参入を進める 168
農業生産法人による企業参入
二〇〇〇年以降の農業経営政策
「農地法」という壁
所有から利用へ―― 二〇〇九年農地法改正
自治体の関与―― 二〇〇九年の前史
農地中間管理機構への期待と懸念
農業も農業経営者も普通になることが大切
第七章 農協の改革は可能か? 181
1 稲作偏重農政を続けている農協 182
農協総合事業の実態
農協はなぜ米価維持に固執するのか
行政の下請け機能を持つ民間団体
集落営農への固執
営農指導・販売事業の弱体化
2 進む農協の脱農化 192
農協の変化がはじまった一九九〇年前後
信用事業が先行した農協改革と農協の金融機関化
准組合員・非農業者の増加による地域組合化
事業ごとに進む子会社化・株式会社化
農協の実態は矛盾統合体
3 農協改革で農業を成長産業に 200
農協批判の八つの類型
自立的農協を築くための七つの基準
農業振興団体を別組織にして農業成長を実現
農協改革で農業を成長産業に
終章 自由貿易交渉と成熟先進国型農業構築の可能性 213
1 TPPと日本農業の選択 214
TPP交渉への四つのポイント
経済成長の恩恵に浴してきた農村経済
貿易自由化に反対して農業を衰退させた日本
国際交渉力が試される舞台
国際化時代をどう認識するか――アジアの成長の取り込みに後れをとる日本
2 戦後農政システムの終わりと日本農業の未来 222
あらためて「稲作偏重農政」とは何か?
役割を終えた戦後農政システム
希望はどこにあるのか
戦後農家システムの転換がはじまった
おわりに(二〇一四年六月 著者) [229-233]
主要参考文献 [234-237]
【関連記事】
『「食」の研究――これからの重要課題』(生駒俊明[編] 丸善出版 2017)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20200629/1593437400
※山下一仁「2章 食料安全保障」
※小林茂典「4章 食の6次産業化」
『経済政策論――日本と世界が直面する緒課題』(瀧澤弘和ほか 慶應義塾大学出版会 2016)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20160625/1468839977
※山下一仁「第9章 農業政策」を参照。
『日本は世界5位の農業大国――大嘘だらけの食料自給率』(浅川芳裕 講談社+α新書 2010)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20121025/1351090800