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『功利主義』(John Stuart Mill[著] 関口正司[訳] 岩波文庫 2021//1871//1863)

原題:Utilitarianism, 4th edition. (1871)
原題: (Chapter 2.) Of liberty and necessity & (Chapter 12.) Of the Logic of Practice, or Art; including Morality and Policy, in A System of Logic: Ratiocinative and Inductive: Being a Connected View of the Principles of Evidence and the Methods of Scientific Investigation, 8th edition.
著者:John Stuart Mill (1806-1873)
訳者:関口 正司[せきぐち・まさし](1954-) 政治学、政治哲学。 
NDC:133.4 哲学 >> 西洋哲学 >> 近代哲学 >> 19世紀:#グリーン Thomas Hill Green 1836-1882,#スペンサー Herbert Spencer 1820-1903,#ベンサム Jeremy Bentham 1748-1832,#ミル John Stuart Mill 1806-1873.
備考:『功利主義』全体と『論理学体系』(のうち、Book VI. On The Logic Of The Moral Sciences)から2編。
   昔の岩波文庫なら『功利主義 ほか二編』というタイトルにしていたかもしれない。


功利主義 - 岩波書店

 最大多数の最大幸福をめざす功利主義は、目先の快楽追求に満足しないソクラテスの有徳な生き方と両立する。人間生活全般の根本原理として、個人や社会が正義とともに個性や人類愛を尊重するよう後押しする功利主義のあり方を追究したJ.S.ミルの円熟期の著作(初版一八六三年)。『論理学体系』の関連部分も併せて収録。


【目次】
凡例 [003-006]
目次 [007-008]


功利主義 010
第一章 概論 011
第二章 功利主義とは何か 021
第三章 道徳的行為を導く動機づけについて 069
第四章 効用の原理の証明について 089
第五章 正義と効用の関係について 105


附録 161
附録・一 自由と必然について(『論理学体系』第六巻第二章) 163
  第一節 人間の行為は因果性の法則に従っているか
  第二節 哲学的必然性とふつう呼ばれている説はどういう意味で正しいのか
  第三節 必然性という言葉の不適切さと有害な影響
  第四節 動機はつねに快楽や苦痛の予想だとは限らない


附録・二 道徳と思慮を含む実践あるいは技術の論理学について(『論理学体系』第六巻第一二章) 183
  第一節 道徳は科学ではなく技術である
  第二節 技術の規則と、技術に対応する科学の定理との関係
  第三節 技術の規則が担う本来の役割とは何か
  第四節 技術は演繹的なものではない
  第五節 どの技術も、実践で用いるのに適した形に整えられた科学的真理で構成される
  第六節 目的論(目的に関する理論)
  第七節 目的論の究極基準あるいは第一原理の必然性
  第八節 結語


訳注 [207-230]
解説(二〇二一年三月 関口正司) [231-252]
  ミルが本書を執筆した経緯
  ミルがめざしていたこと
  動機や感情の心理的事実に注目する視角
  あるべきこと(目的)への視角
  有意義な感情と心理学的決定論
  人生の技術と中間原理(二次的原理)
  ミルの考察と現代的課題
  具体的な人間観察にも注目を
  本書の邦題について
索引 [1-2]

 


【メモランダム】
プロジェクト・グーテンベルクで読める。
A System of Logic, Ratiocinative and Inductive by John Stuart Mill | Project Gutenberg



・J. S. Mill『論理学体系』六巻の構成。黒字強調された2タイトルは、本書(岩波文庫版)の附録に収録された部分。

Book I. Of Names And Propositions.
Chapter I. Of The Necessity Of Commencing With An Analysis Of Language.
Chapter II. Of Names.
Chapter III. Of The Things Denoted By Names.
Chapter IV. Of Propositions.
Chapter V. Of The Import Of Propositions.
Chapter VI. Of Propositions Merely Verbal.
Chapter VII. Of The Nature Of Classification, And The Five Predicables.
Chapter VIII. Of Definition.


Book II. On Reasoning.
Chapter I. Of Inference, Or Reasoning, In General.
Chapter II. Of Ratiocination, Or Syllogism.
Chapter III. Of The Functions And Logical Value Of The Syllogism.
Chapter IV. Of Trains Of Reasoning, And Deductive Sciences.
Chapter V. Of Demonstration, And Necessary Truths.
Chapter VI. The Same Subject Continued.
Chapter VII. Examination Of Some Opinions Opposed To The Preceding Doctrines.


Book III. Of Induction.
Chapter I. Preliminary Observations On Induction In General.
Chapter II. Of Inductions Improperly So Called.
Chapter III. Of The Ground Of Induction.
Chapter IV. Of Laws Of Nature.
Chapter V. Of The Law Of Universal Causation.
Chapter VI. On The Composition Of Causes.
Chapter VII. On Observation And Experiment.
Chapter VIII. Of The Four Methods Of Experimental Inquiry.
Chapter IX. Miscellaneous Examples Of The Four Methods.
Chapter X. Of Plurality Of Causes, And Of The Intermixture Of Effects.
Chapter XI. Of The Deductive Method.
Chapter XII. Of The Explanation Of Laws Of Nature.
Chapter XIII. Miscellaneous Examples Of The Explanation Of Laws Of Nature.
Chapter XIV. Of The Limits To The Explanation Of Laws Of Nature; And Of Hypotheses.
Chapter XV. Of Progressive Effects; And Of The Continued Action Of Causes.
Chapter XVI. Of Empirical Laws.
Chapter XVII. Of Chance And Its Elimination.
Chapter XVIII. Of The Calculation Of Chances.
Chapter XIX. Of The Extension Of Derivative Laws To Adjacent Cases.
Chapter XX. Of Analogy.
Chapter XXI. Of The Evidence Of The Law Of Universal Causation.
Chapter XXII. Of Uniformities Of Co-Existence Not Dependent On Causation.
Chapter XXIII. Of Approximate Generalizations, And Probable Evidence.
Chapter XXIV. Of The Remaining Laws Of Nature.
Chapter XXV. Of The Grounds Of Disbelief.


Book IV. Of Operations Subsidiary To Induction.
Chapter I. Of Observation And Description.
Chapter II. Of Abstraction, Or The Formation Of Conceptions.
Chapter III. Of Naming, As Subsidiary To Induction.
Chapter IV. Of The Requisites Of A Philosophical Language, And The Principles Of Definition.
Chapter V. On The Natural History Of The Variations In The Meaning Of Terms.
Chapter VI. The Principles Of A Philosophical Language Further Considered.
Chapter VII. Of Classification, As Subsidiary To Induction.
Chapter VIII. Of Classification By Series.


Book V. On Fallacies.
Chapter I. Of Fallacies In General.
Chapter II. Classification Of Fallacies.
Chapter III. Fallacies Of Simple Inspection; Or A Priori Fallacies.
Chapter IV. Fallacies Of Observation.
Chapter V. Fallacies Of Generalization.
Chapter VI. Fallacies Of Ratiocination.
Chapter VII. Fallacies Of Confusion.


Book VI. On The Logic Of The Moral Sciences.
Chapter I. Introductory Remarks.
Chapter II. Of Liberty And Necessity.
Chapter III. That There Is, Or May Be, A Science Of Human Nature.
Chapter IV. Of The Laws Of Mind.
Chapter V. Of Ethology, Or The Science Of The Formation Of Character.
Chapter VI. General Considerations On The Social Science.
Chapter VII. Of The Chemical, Or Experimental, Method In The Social Science.
Chapter VIII. Of The Geometrical, Or Abstract, Method.
Chapter IX. Of The Physical, Or Concrete Deductive, Method.
Chapter X. Of The Inverse Deductive, Or Historical, Method.
Chapter XI. Additional Elucidations Of The Science Of History.
Chapter XII. Of The Logic Of Practice, Or Art; Including Morality And Policy.


Footnotes

『経済学と合理性――経済学の真の標準化に向けて』(清水和巳 岩波書店 2022)

著者:清水 和巳[しみず・かずみ](1961-) 実験政治経済学、行動経済学、社会科学方法論。
シリーズ:ソーシャル・サイエンス
件名:経済学--方法論
NDLC:DA3
NDC:331.16 経済 >> 経済学.経済思想 >> 経済哲学 >> 経済学方法論


経済学と合理性 - 岩波書店

従来、ミクロ経済学マクロ経済学は、その分析対象を異にするだけではなく、共通の分析手法を持っていなかったが、この断絶状態は終焉を迎えつつある。近年の目覚ましい経済学の進化をトレースし、両者の方法論的な対立を乗り越えた先に見える「標準的経済学」の現在と未来を、「合理性」をキーワードに解説する。


【目次】
巻頭言[シリーズの筆者を代表して 東京大学 井上彰] [v-vi]
目次 [vii-ix]


第0章 再び「静かな革命」か?


第1章 経済学の歴史を分析単位から振り返る
 1 古典派から新古典派
 2 新古典派総合とその破綻
 3 ゲーム理論の導入


第2章 合理的経済人と最適化
 1 期待値から効用へ
 2 選好における合理性:期待効用理論の公理的基礎付け
 3 リスクに対する態度と効用関数の形状 
 4 時間選好
 5 ゲーム理論的状況における合理性
 6 共有知識


第3章 合理的経済人の見直し
 1 限定された合理性
 2 プロスペクト理論:期待効用理論の自然な拡張とその乗り越え
 3 2段構えの構造
 4 期待効用理論の自然な拡張
 5 利得と損失の局面におけるリスク態度の逆転
 6 損失回避
 7 参照点の移動:フレーミング効果
 8 時間非整合性
 9 共有知識としての合理性:自然な拡張か原理的な批判か
 10 共有知識への原理的な批判:「無知の仮定」


第4章 マクロ経済学とミクロ的基礎付け
 1 ソローモデル
 2 ミクロ的基礎付け:代表的個人ではあっても
 3 「代表的個人」の問題点
 4 異なるタイプの合理的経済人の導入
 5 情報処理能力の限界:合理的不注意
 6 ミクロ的基礎に基づいたマクロ経済シミュレーション:カリブレーションという方法


第5章 標準的経済学の未来像:「合理性」と「ミクロ的基礎付け」の使い方


参考文献 [157-162]
あとがき [163-168]


〈Box一覧〉
  方法論的個人主義
  ベルヌーイによる解法
  非経済財への選好
  連続時間における時間割引関数と時間割引因子
  経済計算論争
  アレのパラドクス[Allais paradox]とプロスペクト理論による説明
  確率に関わるバイアス
  ヒューリスティクス
  ベイジアン・アップデート:仮説の相対的ランキングを題材に
  シンプソンのパラドクス 






【抜き書き】


・「第0章 再び「静かな革命」か?」から。下線部は引用者による。

より一般的に言っても,ミクロの行動――例えば,個人の消費・生産行動――の積み重ねが,マクロの現象――経済成長や失業――を生み出しているのは事実だろう.そうであるならば,ミクロ経済学マクロ経済学の間に,個人の行動・意思決定に着目した共通の理論やモデルがあっても不思議ではない.しかし,残念ながら,かなり最近になるまで,ミクロ経済学マクロ経済学はその分析対象を異にするだけではなく,共通の分析手法を持っていなかったのだ.〔……〕幸いなことに〔……〕,近年の経済学の進化は目覚ましく,この奇妙な断絶状態は終焉を迎えつつあるように見える.キーワードは,合理性の再検討と,合理性によるミクロ的基礎付け(micro foundation by rationality)だ.ミクロ経済学は,その理論モデルの基本的な単位である「合理的経済人」を保持しつつも,場合に応じて,それを緩めたり乗り越えたりすることに寛容になってきた.マクロ経済学は,そのような「合理的経済人」によるミクロ的基礎付けを様々な形でモデルに適用し,独自の進化を遂げつつある.この2つの流れに乗って,経済学は遅20世紀の終わりから第二の「静かな革命」を経験しているように思われる[著者註 1980年代に非協力ゲーム理論ナッシュ均衡の概念とともに急速に広まりあっという間にゲーム理論は経済学になくてはならないツールになった.この急激かつスムーズなゲーム理論の受容・普及を,神取道宏は「ゲーム理論による経済学の静かな革命」と呼んだ.].


 下線部(1)「近年の経済学の進化」という表現について。
 まず、毎日新聞校閲センター「毎日ことばplus」の「「近年」っていつごろ?」(2019.07.12)という記事では(出典不明のアンケートにせよ)一般人と辞書編纂者の意見を踏まえて、「近年」の指定範囲はせいぜい10年以内だろう、年長者ほど指す期間が長い、としている。
 そして引用者(id:Mandarine)の知る限りでは、「マクロ経済学のミクロ的基礎付け」を直近10年以内の出来事だと表現することは珍しい。
 というわけで、下線部(1)の近年とは、あくまで著者の言語感覚または著者の時間軸における近年であって、日常的な言葉でいうところの近年とは、意味するものが異なっているかもしれないという可能性が浮上する。
 それ以外に、掛かり方が違う可能性はある。つまり、上記引用の“近年の経済学の進化は目覚ましく,この奇妙な断絶状態は終焉を迎えつつあるように見える”という一文の解釈だ。
  ①「近年」が「……を迎えつつある」という部分にも掛かるという解釈(※私はこちら)。
  ②「近年」は「進化」のみに掛かるという解釈(「……を迎えつつある」が数十年のスパンの漸進を表している場合)。

 もちろん、本書の第0章が刊行年(2022年)よりずっと過去の時点で書かれたという可能性もあるが、それは最後に考える可能性だ。


 下線部(2)の出典は第0章に明示されていないが、業界では有名なので省略されたのだと思われる。
 神取(1994)「ゲーム理論による経済学の静かな革命」、『現代の経済理論』(岩井克人,伊藤元重編 東京大学出版会 1994)、15-56頁。

『イン/ポライトネス研究の新たな地平――批判的社会言語学の広がり』(大塚生子, 柳田亮吾, 山下仁[編] 三元社 2023)

編者:大塚 生子[おおつか・せいこ] 社会言語学、 語用論
編者:柳田 亮吾[やなぎだ・りょうご] 社会言語学・語用論、(批判的)談話研究
編者:山下 仁[やました・ひとし]  社会言語学
著者:石部 尚登[いしべ・なおと] 社会言語学、 批判的談話研究
著者:中川 佳保[なかがわ・かほ] 言語人類学、 語用論
著者:NonoBa EkarepuHa[ポポヴァ・エカテリーナ] 言語文化、 社会言語学日本語教育
著者:高木 佐知子[たかぎ・さちこ] 談話研究、 社会言語学
著者:王 一瓊[おう・いっけい/Wang Yigiong] 社会言語学、 多文化共生論
著者:糸魚川 美樹[いといがわ・みき] 社会言語学スペイン語ジェンダー医療通訳研究
著者:毋 育新[ぶ・いくしん/WU Yuxin] 日本語教育、語用論
illustration:せいの みわお(1998-) イラストレーション、切り絵。
design:臼井 新太郎(1971-) 臼井新太郎装釘室
件名:語用論
件名:言語社会学
NDLC:KE12 
NDC:801 言語学


イン/ポライトネス研究の新たな地平


【目次】
目次 [III-XII]


まえがき[大塚 生子・柳田 亮吾・山下 仁] 001
  イン/ポライトネスと利害・関心 004
  イン/ポライトネスと感情 007
  本書の構成 012
  参考文献 019


第1章 イン/ポライトネス研究の新たな地平を目指して[柳田 亮吾] 021
  1. はじめに 021
  2. ポライトネス研究の誕生と発展 021
    2.1. 伝統的なポライトネス研究 22
      協調の原理・会話の格率とLakoff、Leech
      GoffmanとBrown and Levinsonのフェイス概念
      発話行為とストラテジー
      ポライトネスの普遍性と個別性
    2.2. インポライトネス・ルードネス研究の胎動 27
    2.3. ポライトネス研究の隣接分野:批判的談話研究 30
  3. イン/ポライトネスへの談話的アプローチ 33
    3.1. 1 次的ポライトネスと 2 次的ポライトネスの区別 034
    3.2. 話し手中心主義への批判 35
    3.3. ポライトネス偏重への批判 37
    3.4. 均質な文化観への批判 38
  4. イン/ポライトネス研究の広がり 040
    4.1. イン/ポライトネス研究の対象 41
    4.2. 表出的イン/ポライトネス 43
    4.3. 分類的イン/ポライトネス 47
    4.4. メタ語用論的イン/ポライトネス 48
    4.5. イン/ポライトネスと利害・関心、感情 50
  5. おわりに 053
  参考文献 053


第2章 イン/ポライトネスと感情[大塚 生子] 059
  1. はじめに 059
  2. イン/ポライトネス研究の射程 060
    2.1. 一次的評価と二次的評価 61
    2.2. より広い枠組みを求めて 66
  3. イン/ポライトネスと「感情」 069
    3.1. イン/ポライトネス研究における「感情」 69
    3.2. 感情とは何か? 72
  4. 事例分析 074
    4.1. 「表示されない感情」にまつわる問題 74
    4.2. 実質的利害を超越する感情 82
    4.3. 感情の「不適切」な表出は「失敗」か? 87
  5. おわりに:感情の可能性と不可能性 091
  参考文献/資料 092


第3章 協調的ではないコミュニケーション――協調の原理、ポライトネス理論とジークフリート・イェーガーの装置分析[山下 仁] 095
  1. はじめに 095
  2. 協調の原理の問題 096
    2.1. 協調の原理と含みについて 96
    2.2. 協調の原理の合理性について 99
    2.3. 協調の原理と含みのつながりに関する説明について 101
    2.4. 含みという概念に関する説明について 103
  3. ポライトネス理論 105
    3.1. ロビン T. レイコフ 106
    3.2. ペネロピ・ブラウンとスティーブン・C. ・レヴィンソン 108
    3.3. その他のポライトネス理論 112
  4. 批判的談話分析、批判的談話研究の概観 117
    4.1. 批判的談話研究の概観とウェルフェア・リングイスティックス 117
    4.2. ジークフリート・イェーガーの装置分析 119
  5. 国会での議論 122
  6. おわりに 128
  参考文献 129


第4章 断絶のコミュニケーションをイン/ポライトネスの観点から考える[石部 尚登] 133
  1. はじめに 133
  2. 断絶のコミュニケーション 135
    2.1. ポライトネス理論からみた立花発言 135
    2.2. インポライトネス理論からみた立花発言 138
    2.3. 政治的ディスコース 141
  3. 複数の多様な聞き手 144
    3.1. イン/ポライトネス研究における二者間モデル 145
    3.2. 参与枠組み 147
    3.3. 複数の聞き手が話し手の発話行為に与える影響 150
  4. 再び立花発言について考える 152
    4.1. 立花発言における聞き手 152
    4.2. 複数の聞き手を措定することでみえてくるもの 153
  5. おわりに 156
  参考文献 156


第5章 「マウンティング」をイン/ポライトネス研究から考える[大塚 生子] 161
  1. はじめに 161
  2. 「マウンティング」「マウントをとる/とられる」とは 164
    2.1. 一次的使用 164
    2.2. 関連先行研究 167
  3. 談話分析 171
    3.1. 分析データ 171
    3.2. 談話分析 173
      3.2.1. 談話例 1 173
      3.2.2. 談話例 2 177
  4. マウンティングとイン/ポライトネス 182
    4.1. 「円滑なコミュニケーション」と聞き手の評価 183
    4.2. 話し手のフェイス 185
    4.3. 品行と感情 187
    4.4. 参与の枠組み 191
  5. おわりに 194
  参考文献 196


第6章 参与者が傷ついたとされるコミュニケーションのイン/ポライトネス―― Twitter における事例から[中川 佳保] 201
  1. はじめに 201
  2. 先行研究 202
    2.1. ことばによる傷つきに関する先行研究 202
    2.2. ことばによる傷つきの研究に対するポライトネス理論の貢献可能性 206
  3. 理論的背景 208
    3.1. B&L (1987)のポライトネス理論 208
    3.2. 本稿で用いる枠組み:談話的アプローチにもとづいて 209
      3.2.1. インポライトネスの考慮 210
      3.2.2. 話し手中心主義からの脱却 210
      3.2.3. フェイス 211
    3.3. フェイスと傷つきの関係 212
  4. 事例分析 213
    4.1. Twitter およびデータについて 213
    4.2. 分析 217
      4.2.1.D からの攻撃と T の反撃 217
      4.2.2. ツイートという形での反撃 218
      4.2.3. 読み手による T のフェイスの回復 219
      4.2.4. リプライへの応答 221
      4.2.5. さらなる応答 222
  5. 考察 223
    5.1. 傷つきについての示唆 223
      5.1.1. 分析総括 223
      5.1.2. 傷ついた者に対する第三者の位置取り 224
    5.2. 傷つき研究におけるフェイスという観点の限界 225
  6. おわりに 228
  参考文献 229


第7章 医療隠語に見るイン/ポライトネス・ストラテジー[ポポヴァ エカテリーナ] 233
  1. はじめに 233
  2. 医療ポライトネスについて 234
  3. 医療隠語とは何か 238
    3.1. 本稿における隠語の定義 238
    3.2. 医療現場において使用される隠語 240
  4. 調査概要 242
    4.1. 調査方法 242
    4.2. 調査協力者 244
  5. イン/ポライトネスとしての医療隠語の使用 245
    5.1. ① (ポライトネス)医療従事者 ⇔ 医療従事者/(発話)医療従事者 ? 医療従事者 245
    5.2. ② (ポライトネス)医療従事者 ⇒ 患者/(発話)医療従事者 ? 医療従事者 249
      5.2.1. 患者の羞恥心への配慮 249
      5.2.2. 患者の不安への配慮 253
    5.3. ③ (ポライトネス)医療従事者 ⇒ 第三者/(発話)医療従事者 ? 医療従事者 262
    5.4. ④ (ポライトネス)患者 ⇔ 医療従事者/(発話)患者 ? 医療従事者 266
  6. 結論と今後の課題 268
  引用文献 270


第8章 組織ディスコースにみるポライトネスとパワー行使の一考察[高木 佐知子] 273
  1. はじめに 273
  2. 先行研究 275
  3. データと方法論 279
  4. 分析と考察 281
    4.1. 上司から部下に対するパワー行使 281
      4.1.1. パワー行使が明示的になされた場合 281
      4.1.2. パワー行使が非明示的になされた場合 284
    4.2. 部下から上司に対するパワー行使 287
  5. まとめ 292
  参考文献/データ 294


第9章 公的機関で使用される「やさしい日本語」とポライトネス――若い世代の日本在住外国人の意識に着目して[王 一瓊] 297
  1. はじめに 297
  2. 「やさしい日本語」について」 299
    2.1. 多様な「やさしい日本語」 299
    2.2. 「やさしい日本語」の課題 300
  3. ポライトネスについて 301
    3.1. ポライトネスとインポライトネス 301
    3.2. ポライトネスと「やさしい日本語」 303
    3.3. 公文書を「やさしく」するためのジレンマとポライトネス 304
    3.4. 本稿の位置付け 305
  4. 調査概要 306
    4.1. 調査方法 306
    4.2. 調査協力者の概要 309
    4.3. 質問項目 309
  5. 調査結果 310
    5.1. 外国人住民の言語使用実態 310
    5.2. 「やさしい日本語」の捉え方 312
    5.3. やさしい日本語の可能性:外国人住民たちの提案 318
  6. 分析及び考察 320
    6.1. その実用性から、「やさしい日本語」は「易しい」か 321
    6.2. 「優しさ」の観点から、「やさしい日本語」は丁寧か 322
    6.3. 外国人は「やさしい日本語」を必要としているのか 323
  7. 終わりに:「やさしい日本語」の可能性 325
  参考文献 326


第10章 大学「初修外国語教育」におけるジェンダーセクシュアリティを考える[糸魚川 美樹] 329
  1. はじめに 329
    1.1. 問題の所在 329
    1.2. 無意識の差別、偏見 331
    1.3. ジェンダー、外国語教育、ポライトネス研究 333
  2. スペイン語学習を通して出会うジェンダーセクシュアリティ 335
    2.1. スペイン語の性とジェンダー化 335
    2.2. 「性を正す」という行為 338
    2.3. 文法上の性と女の不可視化 341
    2.4. 教科書におけるジェンダーステレオタイプ 343
    2.5. 外国語教育における異性愛主義 346
  3. 言語規範への抵抗 348
  4. おわりに:批判的な視点を養う場として外国語教育 351
  参考文献/資料 352


第11章 ポライトネスの観点から見た中国語の「新敬語」――「親」を手掛かりとして[毋 育新] 355
  1. はじめに 355
  2. 「礼」と中国語の敬語 356
  3. 文化大革命時の敬語 360
  4. 敬語の「復権」 362
  5. AIが造る「新敬語」 364
  6. 日本語のケース 366
  7. 「新敬語」のメカニズム 368
  8. 終わりに 370
  主要参考文献/例文出典 370


執筆者紹介 [373-375]

『イン/ポライトネス――からまる善意と悪意』(滝浦真人, 椎名美智[編] ひつじ書房 2023)

編者:滝浦 真人
編者:椎名 美智
著者:阿部 公彦
著者:大塚 生子
著者:佐藤 亜美
著者:滝浦 真人
著者:福島 佐江子
著者:柳田 亮吾
装丁:坂野 公一[さかの・こういち](welle design)
件名:ポライトネス(言語学)
件名:善悪
NDC:801 言語学


ひつじ書房 イン/ポライトネス 滝浦真人・椎名美智編


【目次】
目次 [iii-iv]


序論 日本(語)でイン/ポライトネス研究が必要な理由〔わけ〕[滝浦真人] 001
1. 本書の目指すところ 001
  1.1 日本語コミュニケーションにおける「3つの偏重」
  1.2 言語研究の状況は如何に?
  1.3 日本(語)のイン/ポライトネス――各論考の概要
2. “言葉の暴力”をめぐる小考察 013
  2.1 先行する現実の後ろ姿を見ながら
  2.2 悪口のランキング説
  2.3 「過剰般化」の厄介さ
  2.4 事実を“かする”小さな差別的言説に抗して
注/参考文献 022


  ▷Part 1 善意なのか悪意なのか

ママ友の対立場面におけるイン/ポライトネス分析――感情と品行のフェイスワーク[大塚生子] 029
1. はじめに 029
2. イン/ポライトネスと「対立」のコミュニケーション
  2.1 イン/ポライトネスと感情
  2.2 対立場面におけるフェイスと「品行」
3. 談話分析 035
  3.1 分析資料
  3.2 対立の前段階(1A~5A)
  3.3 対立の展開(6B~8B)
  3.4 対立の収束(9A~11B)
4. 対立場面におけるフェイスワークと距離調整のストラテジー 042
  4.1 対立場面における悪意の隠匿
  4.2 距離調整のストラテジー
    4.2.1 関西弁――共通語使用について
    4.2.2 常体使用
    4.2.3 敬体使用
    4.2.4 記号・絵文字等の使用
  4.3 スピーチレベル/スタイル・シフト
5. おわりに 053
謝辞/注/参考文献 055


バラエティ番組における毒舌トーク――擬似インポライトネスの観点から[佐藤亜美] 061
1. はじめに 061
2. イン/ポライトネスから見た毒舌トーク 063
  2.1 毒舌とFTA――インポライトな言語形式
  2.2 インポライトネスの判断――聞き手の視点と文脈
  2.3 毒舌と笑い――ポライトな機能
  2.4 疑似インポライトネス[mock impoliteness]
3. 調査方法 070
  3.1 言語データ
  3.2 分析方法と問い
  3.3 ラポールマネジメント(RM)
4. 分析結果 074
  4.1 ビートたけしの毒舌トーク――「ソーシャルディスタンス」
    4.1.1 なぜ疑似インポライトネスか
    4.1.2 RMストラテジーとして――相互作用の目標の管理
  4.2 有吉弘行の毒舌トーク――「楽天敗戦後のミニライブ」
    4.2.1 なぜ疑似インポライトネスか
    4.2.2 RMストラテジーとして――交際の権利の管理
  4.3 マツコ・デラックスの毒舌トーク――「クリームパンは人気がない?」
    4.3.1 なぜ疑似インポライトネスか
    4.3.2 RMストラテジーとして――FTAバランス探究行動
  4.4 坂上忍の毒舌トーク――「横粂ゼミ」
    4.4.1 なぜ疑似インポライトネスか
    4.4.2 RMストラテジーとして――相互作用の目標の達成
5. 考察 092
  5.1 毒舌はどのような言語行為か
    5.1.1 RQ1についての考察(1) ――フレームの形成
    5.1.2 RQ1についての考察(2) ――フェイス・ワーク
    5.1.3 RQ1についての考察(3) ――毒舌によるラポール維持
6. まとめ――今後の調査課題 095
謝辞/注/参考文献 097


身体の政治・ジェンダー・イン/ポライトネス[柳田亮吾] 103
1. はじめに 103
2. イン/ポライトネス研究 104
  2.1 イン/ポライトネスへの談話的アプローチ
  2.2 イン/ポライトネスとジェンダー
3. 身体の政治とイン/ポライトネス 110
  3.1 身体に対する「揶揄」
  3.2 身体に対する「褒め」
    3.2.1 「褒め」か「嫌味」か
    3.2.2 身体評価は適切か不適切か
  3.3 考察
4. おわりに 125
謝辞/注/参考文献 126


  ▷回顧と展望
気配りから見るイン/ポライトネス研究[福島佐江子] 133
1. はじめに 133
2. イン/ポライトネス研究 134
3. 気配り 137
  3.1 気配り
  3.2 気配り
  3.3 気配り
  3.4 気配り
4. 気配りの評価 142
  4.1 評価
  4.2 異文化間の気配り評価
    4.2.1 文化
    4.2.2 日英瑞西の気配り評価
    4.2.3 日英の気配り評価
    4.2.4 日米の気配り評価
    4.2.5 日台の気配り評価
5. おわりに 151
謝辞/注/参考文献 153


  ▷Part 2 イン/ポライトネスの宝庫・文学

意地を張りあう人びと――『明暗』におけるイン/ポライトネス[阿部公彦・椎名美智・滝浦真人] 165
1. はじめに 165
2. 「対決小説」としての『明暗』 166
  2.1 『明暗』のストーリー
  2.2 会話における三つのポイント
  2.3 登場人物たちの対決場面
3. 3人のバトル場面 169
  3.1 「津田 対 妻・お延」の対決
  3.2 「津田 対 妹・お秀」の対決
  3.3 「お秀 対 お延」の対決
  3.4 「津田 対 」妻・お延の対決
  3.5 「お秀 対 津田夫婦」の対決
4. 会話の応酬の奥にある丁寧さの作法 190
5. おわりに 192
注/参考文献 195


悪態をつく人びと――シェイクスピア時代のコメディを分析する[椎名美智] 197
1. はじめに 197
2. リサーチ・クエスチョン 199
3. 書記近代期の呼称――2人称代名詞と呼びかけ語 201
4. 量的分析 203
  4.1 親愛語と卑語の語彙構成の比較――RQ1 どのようなインポライトな呼びかけ語が使われていたのか?
  4.2 卑語・親愛語が使われる相互行為の比較――RQ2 インポライトな呼びかけ語はどのような相互行為で使われていたのか?
  4.3 量的分析のまとめ
5. 質的分析 215
  5.1 親愛語と卑語の用法の比較――RQ3 インポライトな呼びかけ語の語用論的役割は何なのか?
  5.2 卑語ではない呼びかけ語のインポライトな用法
  5.3 質的分析のまとめ
6. 結論――RQ4 インポライトな呼びかけ語はなぜ多様性に富むのか? 225
注/参考文献 228


ポライトネス理論と文学研究をつなぐ――志賀直哉「灰色の月」の「無愛想」の戦略[阿部公彦] 231
1. ポライトネスと文学の接点 231
2. 話し言葉と書き言葉の狭間 234
3. 志賀直哉「灰色の月」における「拒絶」の身振り 237
4. 「私」が自己紹介をしないのは失礼なのか? 242
5. 時に抗う「後悔」のジェスチャー 249
6. 結び 252
注/参考文献 258


編者あとがき(2023年3月 編者 椎名美智) [255-258]
索引 [259-265]
執筆者紹介 [266-267]



【関連記事】
・Brown and Levinson (1987)の邦訳。そこそこ大部。
『ポライトネス――言語使用における、ある普遍現象』(Penelope Brown, Stephen C. Levinson[著] 斉藤早智子ほか[訳] 研究社 2011//1987) - contents memorandum はてな

Culpeper (1996) は、まだ翻訳されていない。

『おしゃべりなポライトネス――会話の中の共話・話題交換・笑い・メタファー』(笹川洋子 春風社 2020)

著者:笹川 洋子[ささがわ・ようこ] 社会学。コミュニケーション論。
装丁:矢萩 多聞[やはぎ・たもん] (1980-) 画家・装丁家。 
件名:ポライトネス(言語学
NDLC:KE12
NDC:801 言語 >> 言語学


おしゃべりなポライトネス―会話の中の共話・話題交換・笑い・メタファー | 春風社 Shumpusha Publishing


【目次】
目次 [002-006]


はじめに 007


第一章 会話の中のポライトネス 015
一 会話のルールとポライトネス 015


二 言語文化圏による会話のルールの違い 019
  二・一 ターン・テイキング 020
  二・二 隣接ペアと優先応答体系 024
    二・二・一 優先応答体系の有標性
    二・二・二 優先応答体系における発話連鎖
    二・二・三 発話の修復
  二・三 会話の構造の多様性 032
    二・三・一 会話の構造
    二・三・二 会話の中のマルチモダリティ
註 039


第二章 協調的発語媒介行為としての共話 041
一 協調的発語媒介行為としての共話 041
  一・一 共話とは何か 041
  一・二 共話の類型 049
  一・三 会話調査の概要 052


二 異文化コミュニケーションに見られる一文型の共話 053
  二・一 一文型の共話の類型 053
  二・二 日本人女性どうしの会話に見られる一文を作る共話の型 055
    (1) 後半部予測型の共話
    (2) 前半部予測型の共話
    (3) 共感表現型の共話
    (4) 言い換え型の共話
    (5) まとめ型の共話
    (6) 情報添加型の共話
    (7) 先取り回答型の共話
    (8) 助け舟型の共話
    (9) 相互作用型の共話

  二・三 初対面の話者による異文化コミュニケーション状況で起こる一文を作る共話の型 063
    (一) 後半部予測型の共話
    (二) 前半部予測型の共話
    (三) 共感表現型の共話
    (四) 言い換え型の共話
    (五) まとめ型の共話
    (六) 情報添加型の共話
    (七) 先取り回答型の共話
    (八) 助け舟型の共話
    (九) 相互作用型の共話

  二・四 異文化コミュニケーションにおいて話者が共話を担う回数 083
    二・四・一 異文化コミュニケーションにおける共話の総数について
    二・四・二 後半部予測型の共話数について
    二・四・三 情報添加型の共話数について

  二・五 異文化コミュニケーションにおける共話 092


三 異文化コミュニケーションに見られる添加型の共話 098
  三・一 添加型の共話 098
  三・二 あいづちやパラフレーズなどの副次言語による共話 101
    (1) 笑いやあいづちを用いる
    (2) パラフレーズする
    (3) オーバーラップが起こる
  三・三 共感を表す文を添加する共話 105
    (1) 予測により相手の言うべき文を付け加える
    (2) 共感を示す感情表現を加える
    (3) 共感を示す意見を加える
    (4) 情報を付け加える
    (5) 相手の表現を言い換える
    (6) 先取りの回答をする
  三・四 発話行為方略などをストラテジーとして用いる共話  113
    (1) 興味を示す質問したり、発話に対する関心を表現する。
    (2) 交話的な挨拶を交わす
    (3) 励ましの表現を用いる
    (4) 誉めの表現を用いる
    (5) 謙遜表現とそれに対する否定という、謙遜表現に関わる相互作用を行う。
    (6) 謝りの表現を用いる
  三・五 助け舟型、共話連鎖、共感表現の増幅、話題交換、先行話題導入による共話 122
    (1) 助け舟による共話
    (2) 共話の連鎖が起こる
    (3) 共感表現を増幅させていく
    (4) 共話的な話題交換が行われる
    (5) 先行話題を導入する
  三・六 異文化コミュニケーションにおける添加型共話 130
註 132


第三章 話題交換から探るポライトネスとジェンダー 135
一 会話構造を分析する視点 135
  一・一 会話スタイルに見られるジェンダー  135
  一・二 談話構造としての話題フロアと話題領域 139
    一・二・一 話題を捉える視点
    一・二・二 話題フロアの設定
    一・二・三 会話調査の方法と手順


二 初対面の話者に対する日本人女性の名乗りの談話方略について 149
  二・一 談話交換としての名乗り 149
  二・二 自己紹介の場面における日本人女性(JF)の談話方略の変化について 150
    二・二・一 名乗りの談話方略
    二・二・二 日本人女性(JF)どうしの自己紹介
    二・二・三 日本人女性(JF)と日本人男性(JM)との自己紹介
    二・二・四 日本人女性(JF)と中国人女性(CF)との自己紹介
    二・二・五 日本人女性(JF)と中国人男性(CM)との自己紹介
    二・二・六 日本人女性(JF)とアメリカ人女性(EF)との自己紹介
    二・二・七 日本人女性(JF)とアメリカ人男性(EM)との自己紹介
  二・三 日本人女性の名乗りの談話方略について 160
    二・三・一 日本人女性の名乗りの談話の方略変化
    二・三・二 話題領域から考えた名乗りの談話方略の意味


三 初対面の話者に対する日本人女性の談話構成の変化について――性差と異文化差の視点から 165
  三・一 話題フロアの設定 165
    三・一・一 話題フロア
    三・一・二 分析の視点
  三・二 日本人女性の話題フロア割合の変化 168
    三・二・一 日本人女性(JF)どうしの会話
    三・二・二 日本人女性(JF)と日本人男性(JM)の会話における話題フロアの傾向について
    三・二・三 日本人女性と中国人女性の会話における話題フロアの傾向について
    三・二・四 日本人女性と中国人男性の会話における話題フロアの傾向について
    三・二・五 日本人女性とアメリカ人女性・アメリカ人の会話における話題フロアの傾向について
    三・二・六 日本人女性とアメリカ人男性の会話における話題フロアの傾向について
  三・三 話題フロアの全体的傾向 178
    三・三・一 日本人女性と対話者の話題フロア導入の傾向
      (1) 自分の話題を「話す」話題フロアの傾向
      (2) 相手のことを「聞く」話題フロアの傾向
    三・三・二 日本人女性自身の領域に属する話題フロアの優先度
    三・三・三 日本人女性の話題フロアの主導率
  三・四 「積極的な聞き手」と「積極的な話し手」 182


四 話題転換における意図の了解過程 186
  四・一 話題転換の捉え方 186
    四・一・一 話題転換とは
      (1) 話題の終了部
      (2) 新しい話題の導入について
    四・一・二 話題転換の捉え方
      (1) 話題の終了部と話題の導入・展開部
      (2) 話題の話者領域
  四・二 会話事例に見られる話題転換 194
    四・二・一 話題転換が行われた事例
      四・二・一・一 話題交換が見られる会話例
      四・二・一・二 話題が共有され、話題転換が起こる例
    四・二・二 話題転換が行われない事例
  四・三 話題転換と発話行為交換としての談話の構造 210
    四・三・一 話題転換の構造
      (1) 話題の終了部について
      (2) 話題の導入表現・展開
        (A) 話題転換が起きた事例
        (B) 話題転換が起こらなかった事例
      (3) 話題領域
    四・三・二 発話行為交換としての談話の構造
註 222


第四章 発語媒介行為としての笑い 227
一 発語媒介行為の装置――儀礼行為としての笑い 227
  一・一 笑いをどう捉えるか 227
    一・一・一 笑いをどう捉えるか
    一・一・二 笑いはどう考えられてきたか――先行研究の中の笑い
    一・一・三 笑いを捉える視点
  一・二 どのような笑いがあるか――電話会話の中の笑い 237
    一・二・一 「呈示儀礼」に関わる笑い
    一・二・二 回避儀礼に関わる笑い
    一・二・三 品行に関わる笑い
  一・三 儀礼行為としての笑い 246


二 異文化コミュニケーションに現れる笑いの発語媒介行為調整機能について 251
  二・一 対他機能としての笑い 251
  二・二 対面会話に現れる笑い 253
    二・二・一 対面会話調査の概要
    二・二・二 笑いの分類と記述
  二・三 発話行為に添えられる笑い――発語媒介行為としての笑い 256
    二・三・一 「ア:おかしさや嬉しさを表現する笑い」
    二・三・二 「イ:共感を表現したり、付加される笑い」
    二・三・三 「ウ:感嘆等の感情表現に付加される笑い」
    二・三・四 「エ:話し手の評価を高める文脈に付加する笑い」
  二・四 発話行為を実行する笑い 270
    二・四・一 「オ:発話行為の遂行と、その応答に付加される笑い」
    二・四・二 「カ:話題転換時に現れる間をとる笑い」
    二・四・三 「キ:悪い情報や会話の流れを遮る言語表現につく笑い」
  二・五 笑いによる対人関係機能の調節 283
註 291


第五章 発語媒介行為としてのメタファー 295
一 会話におけるメタファーの機能 295
  一・一 メタファーを捉える視点 295
    一・一・一 メタファーを捉える視点
    一・一・二 概念メタファー
  一・二 会話の中のメタファー 302
    一・二・一 言語行為としてのメタファー
    一・二・二 会話の中のメタファー
  一・三 会話の中のメタファーの機能 310
    一・三・一 教育的な会話場面:専門分野について話す会話
    一・三・二 社交的な会話場面:親しさを示す会話
    一・三・三 闘争的な会話場面:政治ポリシーに関わる党首会談(2011年2月9日)
    一・三・四 発話媒介行為としてのメタファー表現


二 物語構造の中のメタファー ――『流星花園花より男子)』台湾、日本、韓国版の物語構造の比較 326
  二・一 ドラマの中の物語構造 326

  二・二 物語の中のメタファーをめぐって 331
    二・二・一 「戦う少女」としてのつくし
      (一) 「戦う少女」像
      (二) 台湾、日本、韓国版における物語の背景とつくし像の比較
    二・二・二 戦いのメタファー ――いじめ、富、白馬の王子との闘い
      (一) いじめ、富、白馬の王子との闘い
      (二) 台湾、日本、韓国版における描写の比較
        (1) いじめの描写
        (2) 富との闘い
        (3) 白馬の王子様、類との闘い

  二・三 物語行為としてのメタファー 347
註 350


引用文献 [353-375]
初出一覧 [376-378]
おわりに [379-384]





【メモランダム】
336頁。第5章の二・二・二の見出しに、二倍の長音が出現している。上記目次では勝手に長音と二倍ダッシュに修正した。
  「戦いのメタファーーいじめ、富、白馬の王子との闘い」 
  「戦いのメタファー ――いじめ、富、白馬の王子との闘い」





【抜き書き】
「はじめに」から、本書の概略。

 第一章〔……〕ポライトネスや会話のルールもそうした社会現象の一つである。そして、私たちの周りに隠れている ポライトネスの一部は、会話のルールの現象に現れる。ここでは、ポライトネスに関わり、特に多言語文化圏における言語行為及び会話を比較した言語研究の知見について、(1)会話の順番取り(Turn- taking)、(2) 隣接ペア (Adjacency Pair)、(3) 修復(Repair)、(4) 会話の全域的構造(Overall Structural Organization)、 (5) マルチモダリティ(Multimodality)の、五つの視点を選び研究動向を探りたい。
 第二章では〔……〕「共話」という現象を観察する〔……〕。一文型の共話では、話者は相手の発話内行為を予測し、協調的発語媒介効果を勘案し、話し手の発話を完成させるという行為を示す。話し手の心に添い、共感を示す共話は、協調的発語媒介行為と考えることができよう。はじめに、日本人女性どうしの会話を分析し、共話を取り出した。一文完成型共話は、(1) 後半部予測型の共話、(2) 前半部予測型の共話、(3) 共感表現型の話、(4) 言い換え型の共話、(5) まとめ型の共話、 (6) 情報添加型の共話、(7) 先取り回答型の共話、(8) 助け舟型の共話、(9) 相互作用型の共話に分けられる。
 さらに、日本人女性と対話する中国人女性、中国人男性、アメリカ人女性、アメリカ人男性が共話を行っているかどうかを観察したところ、すべての共話の型が見られ、しかも異言語文化圏の話者も共話の担い手となっていた。なお、中国人女性、中国人男性は母語話者である日本人女性より多く共話を行っていた。日本人女性の特徴としては、先取り発話、すなわち相手の発話を予測して完成させる共話が多かったが、他の言語文化圏の話者は情報添加型の共話が優勢であった。
 同じように、文に文を加えていく、添加型共話についても日本人女性どうしのコミュニケーション場面に見られる型を取り出した〔……〕。
 第三章では、談話レベルのコミュニケーションを考えるために、話題交換をとりあげる〔……〕。ここでは、ジェンダーに言語文化という視点を加え、また親疎上下の要因が影響しないような、初対面の大学生どうしの会話状況において「日本人女性が日本人(女性・男性)、中国人(女性・男性)、アメリカ人(女性・男性)との対話で、談話方略をどう変化させるか」を観察する。〔……〕言語とジェンダーの研究者からは、一般的に女性が受け身的な聞き手、男性は能動的な話し手と言 われるが、本節では、まず能動的な聞き手という視点が必要なこと、また中国語話者ではこうした ジェンダーステレオタイプが逆転することから、受け手性は決して本質的に女性に備わったもので はないことを指摘したい。
 さらに、第三章の最後で、話題交換の状況を質的に分析する。会話の中で、日本人女性は合意を重 ねながら、話題 フロア、すなわち談話を構成していく。会話例では、「相手の所属するサークル」を 聞くという、相手の話題フロアを導入する質問が、どのように談話構成に連なっていくかを観察する。 話題転換にあたって、話者はある時は話題交換を行い、または先行話題に戻るなど、協働作業により 合意を目指す。そして話題の話者領域の認識が話題転換に関わってくることが確認された〔……〕。
 第四章では、会話における笑いを観察し、私たちが笑いをどのように用いるかを考える。 はじめに、 日本人どうしの電話会話で起こる笑いを観察する〔……〕。ここでは、印象操作の方略としての自己呈示 の笑いに焦点をあて、以下のように分類した。①相手のフェイスを評価することを示す「呈示儀礼」に関わる笑い、②相手のフェイスを脅かさないことを示す「回避儀礼」に関わる笑い、③自分のフェイスを保持する「品行」に関わる笑いである。
 さらに、日本人のコミュニケーションで見られた笑いが、異文化コミュニケーションでも現れるか どうかを確認する。日本人、中国人、アメリカ人の対面会話データを見ると、異言語文化圏の話者も日本人と同様、様々な文脈で笑いを用いており、儀礼行為に関わる笑いの三つのタイプが確認された〔……〕。
 第五章では、メタファーを観察する。〔……〕会話の中のメタファーにはそうした話者の発話の調整 意識が顕在化する。まず、メタファーを捉える視点を整理し、レイコフとジョンソン(Lakoff G. & M Johnson, 1980)の概念メタファーと、鍋島弘治朗(二〇〇五)の紹介する応用研究に触れる。フェアクラフ (Fairclough N, 1995) やヴァン・ダイク (Van Dijk T., 1988) による新聞記事の分析では、概念メタファーが印象 そして、表現効果を強めるとともに、概念をすり替えることで、問題の本質を見えなくしていることが指摘されている。そして、会話の中のメタファーを扱った、カーター (Carter R, 2004他)、キャメロン (Cameron L., 2003他)等による研究を見る〔……〕。最後に、実際の会話で、話者がどのようにメタファーを用いているかについて、①専門的な知識を伝える会話、②友達どうしの会話、③政治論争の場面をとりあげ、観察した〔……〕。
 最後に、研究の範囲を広げ、日本、韓国、台湾のドラマの中のメタファーを比較する。 映像は瞬時 に消えるため、ストーリーは映像の中にメタファーとして描かれることが多い。視聴者が好感を持っ てドラマのモティーフやストーリーを受け入れるために、その言語文化圏にふさわしい行為として、 評価を受けられる、すなわちポライトネスにかなった行為がドラマでは選ばれ、描かれるであろう〔……〕。ここで は、主人公となる少女がどう描かれるかを観察し、物語構造として現れるメタファーを探る。