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目次とメモを置いとく場

『ポライトネスの語用論』(Geoffrey Leech[著] 田中典子[監訳] 熊野真理ほか[訳] 研究社 2020//2014)

原題:The Pragmatics of Politeness
著者:Geoffrey N. Leech(1936-)
監訳:田中 典子[たなか・のりこ](1954-) 
訳者:熊野 真理[くまの・まり](1964-) 
訳者:斉藤 早智子[さいとう・さちこ](1957-) 
訳者:鈴木 卓[すずき・たかし](1964-) 
訳者:津留崎 毅[つるさき・たけし](1955-) 
装丁:黒瀬 章夫[くろせ・あきお](1984-) ナカグログラフ
件名:ポライトネス (言語学)
NDLC:KE12
NDC:801 : 言語学


研究社 - 書籍紹介 - ポライトネスの語用論


【目次】
Colophon [ii]
目次 [iii-ix]
監訳者はしがき(2020年5月 新型コロナウイルスの収束を祈りつつ 田中典子) [xi-xv]
まえがき [xvii-xxii]
省略形と特殊記号 [xxiii-xxv]


第1部 基礎を固める
 
第1章 序論
1.1 ポライトネスの8つの特徴 005
1.2 覚えておくべきいくつかの区別 012
  1.2.1 三価と二価のポライトネス 
  1.2.2 Pos-ポライトネスとNeg-ポライトネス
  1.2.3 語用言語学と社会語用論
  1.2.4 語用言語学的ポライトネスと社会語用論的ポライトネス
  1.2.5 聞き手に対するポライトネスと第三者に対するポライトネス
  1.2.6 ポライトネスの社会的説明と心理的説明
    1.2.6.1 ポライトネスの社会的説明:礼譲
    1.2.6.2 ポライトネスの心理的な説明:フェイス


第2章 ポライトネス:様々な視点
2.1 何が説明されるべきか? 5つの被説明事象 043
2.2 ポライトネス理論またはポライトネス・モデルの概観 047
  2.2.1 Robin T. Lakoff
  2.2.2 Brown and Levinson
  2.2.3 Geoffrey Leech
  2.2.4 Yueguo Gu
  2.2.5 Sachiko Ide
  2.2.6 The Cross-Cultural Speech Act Realization Project (CCSARP)
  2.2.7 Bruce Fraser and William Nolen
  2.2.8 Horst Arndt and Richard Janney
  2.2.9 フレーム・アプローチ:Aijmer, Terkourafi, 他
  2.2.10 Spencer-Oateyとラポール・マネジメント
  2.2.11 Richard J. Watts
2.3 本書で示すモデルと他のモデルとの比較 062
2.4 その他の基本的な問い 069
  2.4.1 ポライトネスを解剖する
  2.4.2 ポライトネスは、話し手、聞き手、あるいは双方の、心にあるのか?
  2.4.3 ポライトネスにはどのような論拠が挙げられるか
  2.4.4 ポライトネスはどの学問分野に属しているか
2.5 結論 077


第3章 語用論、間接性、neg-ポライトネス:ポライトネス・モデル構築のための基礎
3.1 語用論に関する問題解決的視点:Sの問題とHの問題 079
3.2 単文、命題、語用論的効力 082
  3.2.1 行為指定のカテゴリー
  3.2.2 統語論的、意味論的、語用論的レベルにおける抽象化のための用語
3.3 感嘆文とその他の孤立表現(語用論的小辞を含む) 092
3.4 デフォルト解釈とデフォルト決定 094
3.5 語用論的意味の表示 097
3.6 新グライス流のデフォルト思考 101
3.7 言語規約による含意と語用論化 105
3.8 要約と結論 108


第4章 ポライトネス:そのモデル
4.1 Brown and Levinson (1978/1987) とLeechの Principles of Pragmatics(1983) への批判 114
  4.1.1 私の Principles of Pragmaticsに対するBrown and Levinsonその他による批判

4.2 Principles of Pragmatics (Leech 1983) におけるポライトネス理論を述べ直す 123
  4.2.1 ポライトネスの原則
  4.2.2 2種類のポライトネス尺度線
  4.2.3 発語内行為のゴールと社会的ゴール

4.3 Principles of Pragmaticsにおけるポライトネスの行動指針を再考する 127
  4.3.1 GSPを追求し、Sは表4.1(M1) ~(M10) の価値判断を示す意味を表現/暗示する
    (M1) Oの欲求に高い価値を置け(気前のよさの行動指針) 
    (M2) Sの欲求に低い価値を置け(気配りの行動指針) 
    (M3) Oの特質に高い価値を置け(是認の行動指針) 
    (M4) Sの特質に低い価値を置け(控えめの行動指針) 
    (M5) Oに対するSの責務に高い価値を置け(Oに対するSの責務の行動指針)
    (M6) Sに対するOの責務に高い価値を置け(Sに対するOの責務の行動指針) 
    (M7) Oの意見に高い価値を置け(同意の行動指針) 
    (M8) Sの意見に低い価値を置け(意見抑制の行動指針) 
    (M9) Oの感情に高い価値を置け(共感の行動指針) 
    (M10) Sの感情に低い価値を置け(感情抑制の行動指針) 
  4.3.2 さらに調査を要する事柄

4.4 重要な注意書き及び補足説明 141
  4.4.1 人はポライトであると同様インポライトである
  4.4.2 ポジティブ・ポライトネスとpos-ポライトネス
  4.4.3 会話のアイロニーとからかい
  4.4.4 制約は競合したり衝突したりする
  4.4.5 適度なポライトネスを算定するため、私たちは(社会語用論的)尺度を用いる
  4.4.6 ポライトネスをHに帰する

4.5 ポライトネスに関する言語・文化間の違い 150
  4.5.1 ポライトネスの語用言語学的側面
  4.5.2 ポライトネスの社会語用論的側面
    4.5.2.1 ポライトネスの規範に影響を与える尺度上の量的差異
    4.5.2.2 ポライトネスの規範に影響を与える尺度上の質的差異
      社会的距離は文化によって異なる解釈がなされる:
      社会的に規定された権利と責務の違い:
      負担/利益の評価における違い:
  4.5.3 三価ポライトネス:3つの次元だけでいいか

4.6 敬語に関するポライトネスについての補遺 154
4.7 フェイスについての補遺 157
4.8 ポライトネスの普遍性についての暫定的結論 158


第2部 英語使用におけるポライトネスとインポライトネス
 
第5章 ケース・スタディ:謝罪
5.1 謝罪:プロトタイプ・カテゴリーとして見る発話事象 164
5.2 余談:謝罪その他の発話事象 170
5.3 典型的謝罪と非典型的謝罪 173
5.4 謝罪:語用言語学的側面 177
  5.4.1 Sorry
  5.4.2 Excuse me / Pardon (me)
  5.4.3 I apologize, I beg your pardon
5.5 謝罪:社会語用論的側面 183
5.6 謝罪に対する応答 185
5.7 公的な謝罪 187
5.8 結論 190


第6章 依頼と、その他の行為指示
6.1 依頼とは何か? 依頼とそれに関連する発話事象 192

6.2 依頼領域の変数 198
  6.2.1 Oに焦点を当てた依頼とSに焦点を当てた依頼 201
  6.2.2 オン・レコードとオフ・レコードのストラテジー 204
  6.2.3 連続性についての余談 209

6.3 行為指示のためのストラテジー 211
  6.3.1 直接的ストラテジー 211
  6.3.2 オン・レコードの間接的ストラテジー:陳述 213
  6.3.3 オン・レコードの間接的ストラテジー:質問 220
    (a) will, would を伴う意志のの質問
    (b) 能力・可能性の質問:can you, could you, etc.
  6.3.4 文を用いないストラテジー 227
  6.3.5 ヒント:オフ・レコードの間接的依頼 229
    (a) 陳述によるヒント
    (b) 疑問文によるヒント

6.4 語用論的修飾表現 232
  6.4.1 内的修飾表現 233
  6.4.2 外的修飾表現 251
  6.4.3 支持的ムーブ 256
6.5 依頼への応答 259
6.6 結論 262


第7章 その他のポライトネスに敏感な発話事象
7.1 申し出、招待、請負 265
7.2 ほめと批判 275
  7.2.1 ほめへの反応 279
  7.2.2 間接的な、または緩和された批判 284

7.3 感謝 292
  7.3.1 感謝への応答 298

7.4 同意、不同意、助言、そしてOに焦点を当てた提案 299
  7.4.1 同意と不同意 299
  7.4.2 助言とOに焦点を当てた提案 304

7.5 祝い、哀悼、祈願 310
  7.5.1  祝い 310
  7.5.2 哀悼、弔意 314
  7.5.3 祈願、挨拶、告別 317

7.6 結論 321


第8章 ポライトネスと、その「反対概念」
8.1 ノンポライトネス:ポライトネスもしくはインポライトネスの不在 322

8.2 インポライトネス 326
  8.2.1 ポライトネス理論はどの程度までインポライトネス理論になりうるか 328
  8.2.2 インポライトネスのタイプを例証する:『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』より 333
    (M1) 気前のよさの行動指針への違反 
    (M2) 気配りの行動指針への違反 
    (M3) 是認の行動指針への違反 
    (M4) 控えめの行動指針への違反 
    (M5) Oに対する責務の行動指針への違反、(M6) Sに対する責務の行動指針への違反 
    (M7) 同意の行動指針への違反 
    (M8) 意見抑制の行動指針への違反 
    (M9) 共感の行動指針への違反 
    (M10) 感情抑制の行動指針への違反 
  8.2.3 話者交替、発言権保持、及び談話管理のその他の側面におけるインポライトネス 339
  8.2.4 ポライトネスとインポライトネスが対にならない場合:「無礼」(rudeness)の定義 341
  8.2.5 無礼に関する結び 345

8.3 冷笑または会話のアイロニー(conversational irony) 346
  8.3.1 アイロニーの原則:疑似ポライトネス 347
  8.3.2 会話のアイロニーへの2つの引きがね:控えめ表現と態度衝突 353

8.4 からかい(Banter):疑似インポライトネス 355
  8.4.1 最後の覚え書き:語用論的諸原則の階層とは? 359


第3部 さらなる展望
 
第9章 データ収集の方法:実証的語用論
9.1 各方法の概観 365

9.2 ランクづけ、多肢選択、面接の各タスク 369

9.3 談話完成テスト (DCT) 371

9.4 クローズド・ロールプレイとオープン・ロールプレイ 373

9.5 本物の談話の観察 375
  9.5.1 フィールドノート
  9.5.2 談話分析
  9.5.3 コーパス分析  

9.6 結論 383


第10章 中間言語語用論と異言語・異文化間ポライトネス
10.1 中間言語語用論の背景 385
10.2 ILP研究の枠組み 389
10.3 異なるL1を持つ英語学習者に関する研究 395
10.4 ILPデータ収集の方法 396
10.5 ILP研究とポライトネス 398
10.6 ILPとポライトネスの原理 400
10.7 ILPと異文化間語用論 402
10.8 GSPモデルに基づいたILP仮説 410
10.9 結論 411


第11章 ポライトネスと英語史
11.1 歴史語用論とポライトネス 414
11.2 古英語におけるポライトネス(1100年以前) 416
11.3 中英語におけるポライトネス(1100~1500年) 419
11.4 近代英語におけるポライトネス(1500年以降) 423
11.5 最近そして現在の変化 430
11.6 結び:ポライトネスの衰退? 434


付録 語用論とneg-ポライトネス:その背景
A1 現代のポライトネス研究の先駆者たち:素描 446
  A1.1 語用論への哲学的前書き:(A) 発話行為
  A1.2 語用論への哲学的前書き:(B) Griceの協調の原則
  A1.3 語用論への哲学的前書き:(C) 間接発話行為
A2 サール-グライス流語用論への新たな「見方」 465
A3 結論 470


参考文献 [471-489]
索引 [491-500]
訳者紹介 [501]





【関連記事】
・語用論の日本語文献。
『ポライトネス――言語使用における、ある普遍現象』(Penelope Brown, Stephen C. Levinson著 斉藤早智子ほか訳 研究社 2011//1987)

『わきまえの語用論』(井出祥子 大修館書店 2006)

『語用論の基礎を理解する』(Gunter Senft著 石崎雅人, 野呂幾久子訳 開拓社 2017//2014)

『「させていただく」の語用論――人はなぜ使いたくなるのか』(椎名美智 ひつじ書房 2021)

『人間の偏見 動物の言い分――動物の「イメージ」を科学する』(高槻成紀 イースト・プレス 2018)

著者:高槻 成紀[たかつき・せいき](1949-) 生態学、動物保全生態学
イラスト:chizuru 
デザイン:albireo
NDC:481
備考:タイトル通り、著者の偏見や誤りを含んでいる。


書籍詳細 - 人間の偏見 動物の言い分|イースト・プレス


【目次】
まえがき [003-010]
  カニの小噺
  動物に対する偏見
  本書の構成について
もくじ [011-016]


第1章 たくさんある動物にまつわる言葉
会話に動物が出てくる 018
特徴をうまくとらえた言葉 019
  哺乳類にまつわる言葉
  鳥類・爬虫類・両生類・魚類にまつわる言葉
  虫にまつわる言葉
想像上の動物に対しての言葉 031
現状ではピンとこなくなった言葉 034


第2章 動物のイメージはどこからきたのか?
進化生物学的に見た好まれる動物の条件 042
パンダはどうして人気者なのか? 046
恐怖心や不快感が嫌われる動物を生む 049
ヘビはなぜ気味が悪いのか? 051
質感も好悪を左右する 056
文化によって違う扱い!? 058
  洋の東西で違うオオカミ
  コウモリが福をもたらす?
想像上の動物はなぜ生まれたのか? 061


第3章 ペットとしての動物
人と動物の関係による類型 066
身近な存在であるペット 070
  「ペット」という呼び方
  ペット・ブームの背景
  人はなぜペットを飼うのか?
忠実で人なつっこいイヌ 073
気まぐれで孤独なネコ 076
ペットの品種と処理 079
  イヌの品種の豊富さ
  殺処分という末路
可愛さを絵に描いたようなウサギ 082
  ウサギといっても2種類ある
  少なくなったノウサキ
ネズミなのに愛されるモルモット・ハムスター 086
  ネズミの仲間であるモルモット
  食べるしぐさが可愛いハムスター
なぜネズミは嫌われてしまうのか? 088
  かつては家でも見かけた身近な存在
  伝染病をもたらす媒介者
  カヤネズミの巣を神棚に供える?
ペットとして飼われる鳥と魚 094

コラム*「南極物語」は美談か? 096
  有名な「南極物語」のあらまし
  感動する前に考えるべきこと


第4章 家畜としての動物
家畜はどのようにして生まれたのか? 102
  「衣食住」にかかわる家畜という存在
  家畜化という大事業
のんびりと牧歌的なウシ 106
  ウシはおとなしい動物?
  日本でもいたるところにいた
  のんびりと牧歌的なイメージ
颯爽と駆けるウマ 111
  ウマの速さの秘密
  天馬を想像させる颯爽としたイメージ
鼻が印象的なブタ 114
  イノシシを改良
  ブタはなぜ見下される存在なのか?
モコモコの毛でおおわれたヒツジ 119
  モンゴルでは最も身近な動物
  印象的な角と毛
  キリスト教では聖なる存在
ヒツジとは似て非なるヤギ 125
  山岳地帯に住むヤギ
  ヤギによる生態系破壊
  悪魔とされた理由
家禽と養殖・養蚕・養蜂 130
  家禽の代表であるニワトリ
  伝達手段としての伝書バト
  養殖か進んだ意味
  品種改良された昆虫であるカイコ
  群れで飼うミツバチ

コラム*反芻獣の進化の秘密 137
  反芻という画期的進化
  進化史上の反芻の意義


第5章 代表的な野生動物
人によく似たサル 144
  サルがいる国は珍しい
  サルに対する特別な感覚
  猿回しという特殊な利用の仕方
  サルによる農業被害
間抜けでずんぐりしたタヌキ 154
  「狸」は都市にも順応?
  ぽんぽこタヌキとして愛される
狡猾であやしいキツネ 158
  キツネは広く分布している
  どうしてずる賢いとされるのか?
タヌキやキツネが「化かす」のはなぜか? 161
巨大だけどお人好しなクマ 164
  日本の陸上哺乳類最大を誇る
  童話に登場するクマのイメージ
  里に降りるクマ
身近な野鳥、不思議な野鳥 169
  少なくなったスズメ
  都市を荒らすカラス
  平和の象徴であるハト
  高山の鳥、ライチョウ
  知恵の鳥、フクロウ


第6章 利用される「野生」動物
本当は飼育が難しいアライグマ 180
野鳥・魚・昆虫の飼育 183
家畜化・養殖の試み 185
  サンタのソリを引くトナカイ
  生簀による養殖
観光客を呼ぶ奈良のシカ 187
  「鹿政談」に見る奈良のシカの扱い
  仏教にとってのシカ
枝角が特徴的なシカ 191
捕鯨とイルカショー 194
  捕鯨を続けるか?
  イルカショーの不思議
狩猟される鳥・漁獲される魚 198
  食糧としてのキジ・ヤマドリ
  釣られる魚

コラム*薬用と毛皮という利用法 200
  鹿茸〔ろくじょう〕やクマの胆〔い〕には薬効がある?
  衣服への毛皮の使用
  

第7章 動物観の変遷
急激な人口の変化 204
狩猟採集・農業・都市生活における生活の変遷 206
  道具の使用
  調理と栽培・飼育というステップアップ
  衣・住と死について
都市生活はヒトをどう変えたか? 215
  シカ猟の体験
  「食べること」の範囲
  「食べること」の分断
時代ごとに動物観はどう変遷したか? 220
  狩猟採集時代の動物観
  農業時代の動物観
  都市生活時代の動物観
民話・伝承に読み取る動物観の変遷 229
  「鹿〔しし〕踊り」と「追い上げ式」
  タヌキと民話
    かちかち山/ぶんぶく茶釜
  キツネを祀る稲荷神社
  「大神」であり「悪魔」であるオオカミ


第8章 私たちは動物とどう向き合うか
史実に残る「動物裁判」 240
高等・下等の境界はあるか? 243
都市生活がもたらす非寛容さ 246
パンダ・フィーバーについて 248
  アイドル・シャンシャンの誕生
  パンダは野生生物である
現代人と動物のステレオタイプ 252
  人の生活が与えた影響
  ヒトのDNAと都市生活の隔たり
  我が国の伝統を振り返る
  「自然保護」がはらむ意識
私たちは動物にどう向き合うか? 260
  私が生態学から学んだこと
  私たちがこれからすべきこと


あとがき(2018年3月1日 父の命日に 高槻成紀) [265-267]
文献 [268-271]





【メモランダム】
・本書は、人類史における農業化(&動物の家畜化)と都市化の影響を、とても重視している。これは参考文献にあるJared Diamond『銃・病原菌・鉄』に準拠している。


・「捕鯨とイルカショー」(pp.194-199)で、日本の捕鯨を扱っているが、かなり感情的(まるでシーシェパードのニュースを見てSNSに怒りの投稿をしたかのよう)。
 シカやタヌキの生態についての冷静な記述との落差が大きい。

・「住居(排泄・トイレ)」にも言及している(p.211)。しかし雑すぎて、トイレの話としても、農業における排泄物の利用の話としても駄目だと思う。

『正解は一つじゃない 子育てする動物たち』(齋藤慈子,平石界,久世濃子[編] 東京大学出版会 2019)

編者:齋藤 慈子[さいとう・あつこ] 上智大学総合人間科学部准教授
編者:平石 界[ひらいし・かい] 慶応義塾大学文学部准教授
編者:久世 濃子[くぜ・のうこ] 国立科学博物館人類研究部日本学術振興会特別研究員
監修:長谷川 眞理子[はせがわ・まりこ] 総合研究大学院大学学長
著者:蔦谷 匠[つたや・たくみ] 海洋研究開発機構ポストドクトラル研究員
著者:藤原 摩耶子[ふじはら・まやこ] 京都大学野生動物研究センター日本学術振興会特別研究員
著者:後藤 和宏[ごとう・かずひろ] 相模女子大学人間社会学部准教授
著者:吉田 さちね[よしだ・さちね] 東邦大学医学部助教
著者:山田 一憲[やまだ・かずのり] 千葉大学大学院人文科学研究院准教授
著者:牛谷 智一[うしたに・ともかず] 大阪大学大学院人間科学研究科講師
著者:香田 啓貴[こうだ・ひろき] 京都大学霊長類研究所助教
著者:川原 玲香[かわはら・りょうか] 元・東京農業大学博士研究員
著者:古藤 日子[ことう・あきこ] 産業技術総合研究所生物プロセス研究部門主任研究員
著者:竹ノ下 祐二[たけのした・ゆうじ] 中部学院大学看護リハビリテーション学部教授
著者:森 貴久[もり・よしひさ] 帝京科学大学生命環境学部教授
著者:篠塚 一貴[しのづか・かずたか] 理化学研究所神経科学研究センター研究員
著者:小池 伸介[こいけ・しんすけ] 東京農工大学大学院農学研究院准教授
著者:田中 啓太[たなか・けいた] 野生動物保護管理事務所計画策定支援室主任研究員
著者:山根 明弘[やまね・あきひろ] 西南学院大学人間科学部教授
著者:今野 晃嗣[こんの・あきつぐ] 帝京科学大学生命環境学部講師
著者:松本 卓也[まつもと・たくや] 総合地球環境学研究所日本学術振興会特別研究員 
著者:酒井 麻衣[さかい・まい] 近畿大学農学部講師
イラスト:スソアキコ(1962-) アニメーション、イラストレーション、帽子作家。
デザイン:三木 俊一[みき・しゅんいち](1973-) 文京図案室
件名:動物行動学
件名:育児
NDC:481.78 自然科学 >> 動物学 >> 一般動物学 >> 動物生態学 >> 動物の行動・心理.攻撃・防御.保護色.擬態
NDLC:RA441 科学技術 >> 生物学 >> 動物 >> 生態・分類
備考:各章末の「子育てエッセイ」には、執筆者の経験したヒトの子育てについて書かれている。


正解は一つじゃない 子育てする動物たち - 東京大学出版会


【目次】
はじめに(編者を代表して 齋藤慈子) [i-iv]
本書での基本事項 [v-vi]
目次 [vii-viii]


I まずは知りたい! 子育てといういとなみ

1 進化の中で子育てをとらえる[平石 界] 003
  1 親の役割とは何か
    親の力は弱い?
    双子はなぜ似る/似ないのか
  2 進化とは何か
    自然が淘汰する?
    進化に「ゴール」はない
  3 子育ての進化
    なぜ子育ては大変なのか
    何にどれくらい手間がかかるか
    誰が子育てをするのか
    「子孫を増やそうとか思ってない」
  4 再び親の役割について
  研究紹介コラム/子育てエッセイ 
  さらに学びたい人のための参考文献/引用文献


2 ヒトという動物の子育て[蔦谷 匠] 019
  1 どんな動物? 019
    二足歩行で脳の大きなおサルさん
    ゆっくり成長して長く生きる
    ペアが集まって社会をつくる
  2 どんな子育て? 022
    大変な出産
    手のかかる乳幼児
    しかし多産
  3 現代の子育て 028

  研究紹介コラム/子育てエッセイ  029
  さらに学びたい人のための参考文献/引用文献


3 「母親」をめぐる大きな誤解[齋藤慈子] 033
  1 「三歳までは母の手で」のワケ 
  2 母性神話のウソ 
    「母の手で」は産業化の結果
    「母は強し」は本当?――母親の生理的・心理的変化
    母性だけ? いや父性も
    母性神話に反する事実
    育児ストレスの原因――経験不足と女性のライフコースの変化
    子育て観の多様性
  3 愛着の実態 039
    愛着理論の背景
    愛着のタイプとその要因
    愛着理論の再考
  4 母親が専念して育てなかったら? 043
    保育所での育ち
    母親だけいても……、仲間がいれば……

  研究紹介コラム/子育てエッセイ  046
  さらに学びたい人のための参考文献/引用文献 048


4 卵子精子・生殖にまつわるふしぎ[藤原摩耶子] 049
  1 いのちをつなぐ 049
    無性生殖と有性生殖――オスとメス
    いのちの始まり――卵子精子による受精
  2 いのちのもとができるまで 052 
    始まりは始原生殖細胞
    卵子ができるまで
    精子ができるまで
    体の中の信号――ホルモンのはたらき
  3 いのちのつながりを支える 057
    生殖における壁
    生殖補助技術の役割
    野生生物のいのちをつなぐ

  研究紹介コラム/子育てエッセイ 060
  さらに学びたい人のための参考文献/引用文献 063


II みんな同じ……子育てをめぐる葛藤

5 出産・子育てをめぐる心と体のしくみ――ラット[後藤和宏] 067
  1 どんな動物? 067
    ラットとは
    ドブネズミからラットへ
  2 どんな子育て 069
    ラットの妊娠・出産と子育て
  3 ヒトとの比較・つながり 071 
    子育て行動の脳のしくみ
    子育ての動機

  研究紹介コラム/子育てエッセイ 075
  さらに学びたい人のための参考文献/引用文献 077


6 抱っこで落ち着くのはなぜ?――マウス[吉田さちね] 079
  1 どんな動物? 079
    マウスとは
  2 どんな子育て? 081
    マウスの交尾と妊娠
    マウスの出産と子育て
  3 ヒトとの比較・つながり 085
    子どもの輸送反応

  研究紹介コラム/子育てエッセイ 090
  さらに学びたい人のための参考文献/引用文献 092


7 おっぱいはいつまであげる?――ニホンザル山田一憲] 093
  1 どんな動物? 093
    ニホンザルとは
    会いに行ける野生動物の赤ちゃん
  2 どんな子育て? 095
    ニホンザルの妊娠
    ニホンザルの出産場面
  3 ヒトとの比較・つながり 098
    さまざまな子育て行動
    いつまで子育てを行うか?

  研究紹介コラム/子育てエッセイ 104
  さらに学びたい人のための参考文献/引用文献 106


8 ミルクでパパも子育て――ハト[牛谷智一] 107
  1 どんな動物? 107
  2 どんな子育て? 109
  3 ハトの子育てはわれわれに何を教えてくれるか 111
  4 二一世紀の子育てについて 114

  研究紹介コラム/子育てエッセイ 115
  さらに学びたい人のための参考文献/引用文献 118


9 歌はことばを育てる――テナガザル[香田啓貴] 119
  1 どんな動物? 119
    テナガザルとは
    夫婦で唱和、核家族
  2 どんな子育て? 122
    テナガザルの妊娠・出産と子育て
    子どもの成長と自立
    駆け出しの頃
  3 教えないがそばにいる親・歌い学ぶ子ども 127
    歌を覚える
    親の役割

  研究紹介コラム/子育てエッセイ 131
  さらに学びたい人のための参考文献/引用文献 134


III どこか似ている? さまざまな子育てのかたち

10 ママのワンオペ孤育て――オランウータン[久世濃子] 137
  1 どんな動物? 137
    東南アジアに生息する唯一の大型類人猿
    唯一の単独生活者で最大の樹上性動物
      唯一の単独生活者
      最大の樹上性動物
      オスの二型成熟
  2 どんな子育て? 141
    長い出産間隔と授乳期間
    食べ物の学習と樹上移動のサポート
    父親の役割
  3 少産少死社会 145
    捕食される危険性が少ない
    感染症のリスクが低い
    類いまれなる母性のたまもの?

  研究紹介コラム/子育てエッセイ 150
  さらに学びたい人のための参考文献/引用文献 153


11 献身的すぎる? パパのワンオペ――トゲウオ[川原玲香] 155
  1 どんな動物? 155
    トゲウオとは
    「トゲ」ウオ
  2 どんな子育て? 157
    オスの巣作り
    オスの子育てとメスの選択
    トゲウオの仲間の多様な繫殖行動
  3 ヒトとの比較・つながり 162
    子育ての有無とオスメスの役割
    ヒトの子育てとの比較

  研究紹介コラム/子育てエッセイ 165
  さらに学びたい人のための参考文献/引用文献 167


12 女系家族の子育てスタイル――アリ[古藤日子] 169
  1 どんな動物? 169
    アリの生態
    コロニーの始まり
  2 どんな子育て? 173
    アリの労働分業
    労働アリの大活躍
    アリの集団生活を守る社会性免疫のしくみ
  3 ヒトとの比較・つながり 177
    アリの「真社会性」とは
    労働アリの柔軟なシフト管理
    それぞれの子どもと環境に合った子育て

  研究紹介コラム/子育てエッセイ 180
  さらに学びたい人のための参考文献/引用文献 182


13 パパは超イクメン――マーモセット[齋藤慈子] 183
  1 どんな動物? 183
    マーモセットとは
    ヒトとの関係
  2 どんな子育て? 186
    マーモセットの妊娠・出産と子育て
    子育て行動とその分担
    珍しいメスによる子殺し
    超イクメン
  3 ヒトとの比較・つながり 191
    ヒトのイクメンは一日にしてならず?
    ヒトの共同保育と比較して

  研究紹介コラム/子育てエッセイ 193
  さらに学びたい人のための参考文献/引用文献 195


14 ママは放任主義?――ゴリラ[竹ノ下祐二] 197
  1 どんな動物? 197
    ゴリラは二種、四亜種
    一夫多妻型の家族的な群れ
  2 どんな子育て? 199
    性による繁殖努力の違い
    ないないづくしの放任主義
    ただ見守る
    お父さんは「弱いものの味方」
  3 「放任主義」と「無条件かつ全面的なわが子の味方」 204
    放任主義
    無条件かつ全面的なわが子の味方
    しつけは社会で

  研究紹介コラム/子育てエッセイ 207
  さらに学びたい人のための参考文献/引用文献 210


15 平等な育児と保育園――ペンギン[森 貴久] 211
  1 どんな動物? 211
  2 どんな子育て? 213
    繁殖生態
    子育て――産卵からふ化
    子育て――ふ化したら
  3 保育園 221

  研究紹介コラム/子育てエッセイ 223
  さらに学びたい人のための参考文献/引用文献 226


16 子育ての正解は一つじゃない――シクリッド[篠塚一貴] 227
  1 どんな動物? 227
    シクリッド[Cichlidae]って何?
    進化の実験場――爆発的な種分化
  2 どんな子育て? 229
    シクリッドの子育ての進化
    どうやって育てる?――見張り型保護と口内保育
    どっちの仕事?――一夫一妻の役割分担
    シクリッドが子育てをやめる時
  3 ヒトとの比較・つながり 236
    なぜ子どもを育てるのか
    正解は一つじゃない

  研究紹介コラム/子育てエッセイ 239
  さらに学びたい人のための参考文献/引用文献 241


IV のぞいてみよう! 驚きの子育て戦略

17 冬眠中の出産! 身を削っての子育て――ツキノワグマ[小池伸介] 245
  1 どんな動物? 245
    ツキノワグマとは
    クマの一年
  2 どんな子育て? 248
    クマの妊娠
    クマの出産と子育て
    オスと子どもとの関係
  3 ヒトとの比較・つながり 252
    クマによる事故にも理由がある
    女系家族のつながり
    身を削っての子育て

  研究紹介コラム/子育てエッセイ 256
  さらに学びたい人のための参考文献/引用文献 258


18 進化がとぎすましただまし術――ジュウイチ[田中啓太] 259
  1 どんな動物? 259
    托卵の方法
    ジュウイチ[Cuculus fugax]の雛のあやつり術
  2 どんな子育て? 263
    托卵をする鳥
    鳥以外の托卵
  3 ヒトでも托卵が? 267

  研究紹介コラム/子育てエッセイ 270
  さらに学びたい人のための参考文献/引用文献 272


19 意外なイクメンぶり――ノラネコ[山根明弘] 273
  1 どんな動物? 273
    イエネコとは
    ネコは家畜
    ノラネコの生き方
  2 どんな子育て? 276
    ノラネコの繁殖期の行動
    母親ネコによる子育て
    オスネコによる子殺し
    共同保育
  3 ヒトとの比較・つながり 281
    ノラネコにイクメンはありえないのか
    子殺しからわが子を守るオスネコ
  4 ヒトの子育てと比較して 284

  研究紹介コラム/子育てエッセイ 285
  さらに学びたい人のための参考文献 286


20 失われた父性――オオカミからイヌへ[今野晃嗣] 287
  1 どんな動物? 
    イヌの祖先はオオカミ
    オオカミからイヌへの家畜化
  2 どんな子育て? 289
    「狩人」のオオカミを支える「核家族
    オオカミの核家族による育児
    「掃除屋」のイヌで進んだ「無家族」化
    イヌの母親によるワンオペ育児
  4 ヒトとの比較・つながり 294
    失われた父性
    似ている!? オオカミとヒトの父性
    イヌを「子育て」するヒト!?
    子育ても「十犬十色」!?
  研究紹介コラム/子育てエッセイ 298
  さらに学びたい人のための参考文献/引用文献 301


21 タンザニアの森で障害児を育てる――チンパンジー松本卓也] 303
  1 どんな動物? 303
    チンパンジーという種
    進化の隣人、チンパンジー
  2 どんな子育て? 307
    交尾と出産
    幼少期の発達
    多様な子育て――母子のみからベビーシッターまで
  3 障害児を育てる 311
    出会い
    まわりの個体の反応
    人類の進化における障害者
    その後のクリスティー

  研究紹介コラム/子育てエッセイ 317
  さらに学びたい人のための参考文献/引用文献 320


22 子育て経験がなくても里親になる――イルカ[酒井麻衣] 321
  1 どんな動物? 321
  2 すべて水中で行う出産と子育て 324
    出産・授乳・休息
    イルカの抱っこ
    仮親行動
  3 里親になるイルカ 327
    なぜ他者の子どもを育てたのか
    イルカの「他者を助ける」という特性

  研究紹介コラム/子育てエッセイ 330
  さらに学びたい人のための参考文献/引用文献 333


おわりに(二〇一九年九月 長谷川眞理子) [335-337]
執筆者紹介 [338]





【関連記事】
・下記の本も、研究と(研究者本人の子育ての)実体験の両方が書かれている。
乳幼児のこころ――子育ち・子育ての発達心理学』(遠藤利彦ほか 有斐閣アルマ 2011)

『広がる!進化心理学』(小田亮, 大坪庸介[編] 朝倉書店 2023)

編者:小田 亮[おだ・りょう]名古屋工業大学大学院工学研究科
編者:大坪 庸介[おおつぼ・ようすけ] 東京大学大学院人文社会系研究科
著者:鮫島 和行[さめじま・かずゆき] 玉川大学脳科学研究所
著者:大平 英樹[おおひら・ひでき] 名古屋大学大学院情報学研究科
著者:竹澤 正哲[たけざわ・まさのり] 北海道大学大学院文学研究院
著者:坂口 菊恵[さかぐち・きくえ] 大学改革支援・学位授与機構
著者:齋藤 慈子[さいとう・あつこ] 上智大学総合人間科学部
著者:中西 大輔[なかにし・だいすけ] 広島修道大学健康科学部
著者:玉井 颯一[たまい・りゅういち] University of Tübingen
著者:村山 航[むらやま・こう] University of Tübingen
著者:三船 恒裕[みふね・のぶひろ] 高知工科大学経済・マネジメント学群
著者:小林 春美[こばやし・はるみ] 東京電機大学理工学部
著者:豊川 航[とよかわ・わたる] University of Konstanz 
著者:内藤 淳[ないとう・あつし] 法政大学文学部
著者:石井 辰典[いしい・たつのり] 日本女子大学人間社会学
著者:平石 界[ひらいし・かい] 慶應義塾大学文学部
著者:安藤 寿康[あんどう・じゅこう] 慶應義塾大学文学部
著者:喜入 暁[きいれ・さとる] 大阪経済法科大学法学部
装丁:designfolio
件名:進化心理学
NDLC:SB21 科学技術 >> 心理学 >> 心理学 
NDC:140 心理学


広がる! 進化心理学 |朝倉書店


【目次】
執筆者一覧 [/]
まえがき(2023年5月 編集者一同 大坪庸介・小田亮) [i-ii]
目次 [iii-vi]


Chapter 1 進化心理学とは何(ではないの)か?[小田 亮] 001
1.1 進化心理学は心の進化についての学問ではない
1.2 進化には目的はない
1.3 適応論は「なぜなぜ物語」ではない
1.4 進化心理学は遺伝決定論ではない
1.5 文化と進化は(必ずしも)対立するものではない


Chapter 2 進化心理学と神経・生理[鮫島和行] 012
2.1 神経科学と進化
2.2 マーの3レベルとティンバーゲンの四つの行動要因
2.3 報酬の予測とドーパミン神経系
2.4 他者の行為認知と社会性
2.5 他者の報酬認知と共感性
2.6 直感的社会性と熟慮的社会性
2.7 計算論と進化心理学の接点


Chapter 3 進化心理学と感情[大平英樹] 023
3.1 感情の用語と定義
3.2 基本情動理論と構築主義
  a. 基本情動理論
  b. 構築主義
  c. 基本情動理論の改訂:新基本情動理論
3.3 感情の予測符号化
  a. 予測符号化の理論
  b. 内受容感覚の予測符号化
3.4 感情の主観的経験とその機能
3.5 感情を進化心理学的に考察する意義


Chapter 4 進化心理学と認知[竹澤正哲] 038
4.1 進化心理学と心のモジュール性
4.2 進化と合理性
  a. 人間と合理性
  b. 限定合理性と生態学的合理性
  c. 機能とメカニズムの区別
  d. メカニズムからみる合理性
  e. 合理性の再興
4.3 モジュール性から階層性へ


Chapter 5 進化心理学と性[坂口菊恵] 051
5.1 環境影響偏重へのアンチテーゼとしての性差研究
5.2 進化心理学はどのような現象をうまく説明したか
5.3 性淘汰理論から親の投資理論へ
5.4 ホルモン研究の沼
5.5 進化心理学神経科学に包摂されるか
5.6 異性愛を前提とした理論の普遍性・妥当性に対する疑念
5.7 文化規範がジェンダーと性行動との結びつきを決める
5.8 性淘汰理論の死?
5.9 自由意志は存在するか?


Chapter 6 進化心理学と発達[齋藤慈子] 063
6.1 発達とは
6.2 進化心理学的視点を取り入れた発達の理解
  a. 遺伝の影響の認識:行動遺伝学
  b. ヒトの普遍的特徴
  c. 親子の対立
  d. 狩猟採集社会を参考にする
  e. 進化心理学的視点を取り入れることの注意点
6.3 進化を取り入れた発達研究分野:進化発達心理学
6.4 文化と発達
6.5 これからの発達心理学


Chapter 7 進化心理学とパーソナリティ[中西大輔] 073
7.1 パーソナリティとは何か
7.2 パーソナリティは存在するのか
7.3 選択的中立理論による説明
7.4 反応性遺伝率
7.5 平衡淘汰


Column 1 心理統計[玉井颯一・村山 航] 085
  心理学における統計の利用/帰無仮説検定の注意点/統計を用いるということ


Chapter 8 進化心理学と社会[三船恒裕] 090
8.1 利他行動の進化
8.2 最小条件集団における集団間バイアスと社会的アイデンティティ理論
8.3 社会的アイデンティティ理論と複数レベル淘汰理論
8.4 閉ざされた一般互恵性理論と間接互恵性理論
8.5 外集団攻撃の謎


Chapter 9 進化心理学と言語[小林春美] 101
9.1 生成文法理論の考え方
9.2 群れ社会への適応とコミュニケーションの道具としての言語
9.3 語用論の能力
9.4 意図明示的推論コミュニケーション
9.5 協力的コミュニケーションの進化
9.6 進化心理学のアプローチがもたらしたこと


Chapter 10 進化心理学と文化[豊川 航] 114
10.1 文化に適応する心理
10.2 人間以外の動物における文化
10.3 適応的な社会的学習戦略
10.4 忠実な文化の伝達と累積的文化進化
10.5 文化的ニッチ構築と遺伝子-文化共進化
10.6 社会制度と人口動態の共進化


Chapter 11 進化心理学と道徳[内藤 淳] 126
11.1 利他性と道徳性の区別
11.2 ルースの「道徳感覚」論
11.3 道徳心理学での展開
  a. ハイトの道徳基盤理論
  b. その意義①:直観主義
  c. その意義②:道徳の基盤要素の多様性
  d. 反論
11.4 メタ倫理学での展開
  a. メタ倫理学における道徳的実在論
  b. 進化的暴露論証による道徳的実在論批判
  c. 反論
  d. 改革的虚構主義にみる道徳の機能
11.5 規範倫理学での展開


Chapter 12 進化心理学と宗教[石井辰典] 138
12.1 宗教と進化の「対立」
12.2 宗教認知科学
12.3 適応的道具としての宗教
12.4 「対立」を超えて


Column 2 心理学の再現性危機と進化心理学[平石 界] 148


Chapter 13 進化心理学と教育[安藤寿康] 152
13.1 教育は生物学的現象である
13.2 教育をどう定義するか
13.3 知識に依存する動物:知識の意味とニッチ構築
13.4 教育の至近要因
13.5 文化の駆動因としての遺伝的多様性
13.6 新しい教育学を目指して


Chapter 14 進化心理学と犯罪[喜入 暁] 165
14.1 犯罪性の一般的傾向
14.2 競争と対人攻撃,暴力,殺人
  a. リスクテイキングおよび犯罪の年齢―犯罪曲線への進化心理学的アプローチ
  b. 年齢-犯罪曲線の本質と日本の特異性
14.3 窃盗,財産犯
  a. 頻度依存淘汰と代替戦略
  b. 年齢-犯罪曲線との対応
14.4 裏切り,だまし
  a. 生活史理論に基づく戦略の個人差
  b. 早い生活史戦略を反映するダークパーソナリティ
   c. ダーク・トライアドと反社会的な行動傾向
14.5 性差
14.6 進化心理学に基づく犯罪(心理学)研究の可能性 


索引(欧文索引/和文索引/主要人名) [178-183]






【メモランダム】
・本書の編者(小田亮)による記事(2023年8月20日)。
進化心理学5つの誤解|小田亮
 進化心理学に対するの誤解をほどく記事(一般人向けとしては、すこし文が込み入ってる)。

『進化と人間行動 第2版』(長谷川寿一, 長谷川眞理子, 大槻久 東京大学出版会 2022//2000)

著者:長谷川 壽一[はせがわ・としかず](1952-) 動物行動学、進化心理学
著者:長谷川 眞理子[はせがわ・まりこ](1952-) 行動生態学、自然人類学。
著者:大槻 久[おおつき・ひさし](1979-) 数理生物学(社会生物学、血縁淘汰理論、進化動学、行動生態モデル、人間行動進化学、文化進化)。
装画:スソアキコ(1962-) アニメーション、イラストレーション、帽子作家。
装丁:佐々木 由美(1970-) 株式会社designfolio
件名:人類
件名:進化
件名:行動
件名:進化心理学
NDLC:SA41 科学技術 >> 人類学 >> 形質人類学 >> 化石人類・人類の起源
NDC:469 人類学


進化と人間行動 第2版 - 東京大学出版会


【目次】
第2版まえがき(2022 年春 著者を代表して 長谷川寿一) [i-ii]
目次 [iii-v]


I 進化とは何か

第1章 人間の本性の探求 003
1 生物としての人間
  人間とは何か
  人間の本性と人間観
  進化によって作られた人間の本性

2 遺伝と環境――古くて新しい問題
  人文社会科学の人間観
  ミードの進化
  遺伝決定論と差別
  エピジェネティクス

3 進化的人間理解をめぐる誤謬と誤解
  社会ダーウィニズムの波紋
  ウィルソンの「社会生物学」の衝撃
  社会生物学論争の論点
  人間行動進化学の発展

さらに学びたい人のための参考文献 024

BOX 1.1 エドワード・ウィルソン 018


第2章 古典的な進化学 025
1 ダーウィン以前の世界観
2 進化とは
3 自然淘汰
4 適応
5 適応度
6 様々な適応の例
  ダーウィンフィンチのくちばし
  オオシモフリエダシャクの工業暗化
  ヒマラヤを渡るガン
  鎌状赤血球遺伝子
7 人間の活動が引き起こす進化
  病原体の抵抗性獲得
  乱獲による生育の変化
  
さらに学びたい人のための参考文献 046
BOX 2.1 027
BOX 2.2 オオシモフリエダシャクの体色の遺伝的背景 038


第3章 現代の分子進化学 047
1 遺伝学の幕開け
2 遺伝子の物理化学的実体
3 遺伝子の発現機構
4 突然変異の実体
5 中立進化と分子系統樹
6 ゲノム科学の時代
7 遺伝子から行動へ
さらに学びたい人のための参考文献 073
BOX .1 053
BOX .2 067


第4章 「種の保存」の誤り 075
1 種の保存と群淘汰 
  群淘汰による動物行動の解釈

2 群淘汰 vs.個体淘汰
  個体淘汰による再説明
  子殺し
  儀礼的な闘争の進化
  タカ・ハトゲームと進化的に安定な戦略
  蛍光菌のマット形成
  群淘汰が働く場合

さらに学びたい人のための参考文献 095
BOX 4.1 進化的に安定な戦略 089
BOX 4.2 群淘汰はなぜ支持されるのか 091


II 生物としてのヒト

第5章 霊長類の進化 099
1 生物界におけるヒト
  生物界におけるヒトの地位
  ヒトと類人猿の系統関係
  霊長類とは
  霊長類はなぜ大きな脳を持つのか――社会脳仮説
2 大型類人猿――ヒトのゆりかご
  大型類人猿の系譜
  社会構造と社会関係――チンパンジーを中心に
  チンパンジーは協力するか
  道具使用
  コミュニケーションと言語訓練研究

さらに学びたい人のための参考文献 118


第6章 人類の進化 119
1 人類進化の大きな流れ
  犬歯の退化
  直立二足歩行の進化
  臼歯の発達と退化
  大脳の発達
2 初期猿人――直立二足歩行する類人猿
3 猿人――草原への進出 
4 原人の進化
5 アジアの原人の多様性
6 肉食の起源と食物分配――ハンター仮説とホームベース仮説 
7 ホモ・エレクトゥスの生活 
8 火の利用と調理仮説
9 旧人から新人へ
10 新人の誕生
さらに学びたい人のための参考文献 141


第7章 ヒトの生活史戦略 143
1 生活史戦略――人生のタイムスケジュール 
2 様々な生物の生き方――rとK 
3 霊長類の生活史戦略 
4 ヒトの生活史戦略の特徴 
  人類の脳の大型化
  生理的早産?
  離乳の時期
  長い子ども期と思春期
  繁殖可能期間と寿命
  「おばあさん」はなぜいるのか

さらに学びたい人のための参考文献 157


第8章 血縁淘汰と家族 159
1 血縁淘汰理論 
  行動の四分類
  協力行動と利他行動
  血縁淘汰理論とハミルトン則
  血縁度
  血縁度とハミルトン法則におけるbとc

2 生物界における血縁淘汰
  社会性昆虫の不妊ワーカー
  警戒声の進化
  鳥類のヘルパー

3 血縁認識 
  表現型マッチング
  物理的近縁性
  親族呼称 【※日本語圏だけの話を人類全体に敷衍している】

4 血縁者間の協力
  バイキングの連合形成
  イヌイット捕鯨船クルー
  ヤノマミの争い
  おばあさん仮説
  アヴァンキュレート[avunculate]
  チベットの一夫多妻
  全きょうだいと半きょうだいの親密度の違い

5 非血縁者間の葛藤 
  殺人の研究
  子殺し(infanticide)

6 血縁者間の葛藤
  親と子の対立
  親の投資理論の簡単なモデル
  親子の心理戦
  母親と胎児の対立
  ゲノム刷り込み
  親による選択的投資
  父系社会における女児差別
  女児への偏向投資

さらに学びたい人のための参考文献 192

BOX 8.1 血縁度の計算 165
BOX 8.2 ウェスターマーク効果 170
BOX 8.3 アヴァンキュレートが成立するわけ 175
BOX 8.4 絆の実体に迫る 178


第9章 血縁によらない協力行動の進化 193
1 直接互恵性 
  直接互恵性とは
  直接互恵性の例

2 動物における直接互恵性 
  チスイコウモリによる血の吐き戻し
  精子を作るか卵を作るか

3 直接互恵性の成立条件
  繰り返し囚人のジレンマゲーム
  直接互恵性の進化した心理メカニズム

4 裏切り者検知から進化した心理メカニズム
5 間接互恵性とモラル 
  間接互恵性の実証研究

6 実験室で明らかにされるヒトの社会性 
  囚人のジレンマゲーム
  公共財ゲーム
  罰あり公共財ゲーム
  最後通牒ゲーム
  ヒトは元来協力的か

さらに学びたい人のための参考文献 217


第10章 雄と雌:性淘汰の理論 219
1 生物における性差 
  「男と女」と「雄と雌」
  無性生殖と有性生殖
  性差の存在

2 性淘汰の理論 
  ダーウィンの性淘汰の理論 
  性淘汰の強さを決めるもの――「親の投資」と「潜在的繁殖速度」

3 配偶者の獲得をめぐる競争と配偶者の選り好み 
  量と質の問題
  同性間競争
  精子間競争
  配偶者の選り好み
  優良遺伝子とハンディキャップの原理
  フィッシャーのランナウェイ

4 雄と雌の葛藤と対立 
  配偶者防衛
  一夫一妻の鳥類における「つがい外交尾」
  子殺し
  雌による対抗戦略
  雄雌の対立と軍拡競争

さらに学びたい人のための参考文献 244


第11章 ヒトにおける性淘汰 245
1 ヒトの生物学的特徴と配偶システム 
  ヒトの性決定のメカニズム
  身体から推測される配偶システム
  歴史的・民族史的に見たヒトの配偶システム
  ヒトの配偶に関する多層的な構造

2 ヒトにおける配偶者獲得競争と配偶者選択 
  ヒトの配偶を考える時の枠組み
  狩猟採集民における配偶
  伝統的父系社会における配偶競争
  伝統的父系社会における配偶者選択
  狩猟採集社会における恋愛と結婚
  恋愛と現代の結婚
  社会的に共有される性的魅力と文化のランナウェイ

3 ヒトにおける配偶者防衛と家父長制 
  伝統社会における慣習
  家父長制の起源
  出生地からの分散の影響
  経済力、暴力、権力

さらに学びたい人のための参考文献 272


III 心と行動の進化

第12章 ヒトの心の進化へのアプローチ 275
1 他の動物種との比較研究
2 心の発達と進化
3 人類学・考古学との協働
4 文化間の比較
5 進化理論にもとづく仮説検証型研究

さらに学びたい人のための参考文献 290


第13章 ヒトにおける文化の重要性 293
1 遺伝と環境、学習、文化 
  文化とは何か
  文化伝達の道筋
  遺伝情報の伝達と文化情報の伝達

2 ニッチェ構築 
  ヒトのニッチェ構築としての文化
  遺伝子と文化の共進化

3 文化変容の蓄積と発展
4 ヒトの進化環境と現代社

さらに学びたい人のための参考文献 309


引用文献 [311-324]
人名索引 [325-326]
事項索引 [327-331]
著者略歴 [332]





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『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』(吉川浩満 河出書房新社 2018)

『複雑さに挑む社会心理学――適応エージェントとしての人間[改訂版]』(亀田達也, 村田光二 有斐閣アルマ 2010//2000)

『進化でわかる人間行動の事典』(小田亮ほか編 朝倉書店 2021)

『モラルの起源――実験社会科学からの問い』(亀田達也 岩波新書 2017)

『ヒトの本性――なぜ殺し、なぜ助け合うのか』(川合伸幸 講談社現代新書 2015)

『人間進化の科学哲学――行動・心・文化』(中尾央 名古屋大学出版会 2015)


・応用例。
『道徳感情はなぜ人を誤らせるのか――冤罪、虐殺、正しい心』(菅賀江留郎 洋泉社 2016)